~ これまでのいじめ研究 ~ これまでの研究③中国・台湾・日本でのいじめ対策
いじめ問題への対策は、国によって大きく異なることをご存じでしょうか。はじめまして、いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

今回のテーマは「中国・台湾・日本のいじめ対策の比較」です。日本で起きているいじめ問題やその対策を知ることは、教育現場ですぐに役立つものになります。
しかし、教育現場も国際的になってきた今日、日本だけではなく、他の国の事例についても知っておくことで、応用できるヒントが得られると考えられます。本記事では、中国、台湾、日本それぞれのいじめ対策の特徴と学校の役割について解説していきます。
目次は以下の通りです。
① 中国の対策と学校の役割
② 中国における安全と責任の重視
③ 台湾の対策と学校の役割
④ 台湾における教育と指導の重視
⑤ 日本の対策と学校の役割
⑥ 日本における連携システムの発展
それでは、各国のいじめ対策について一つずつ見ていきましょう。ぜひ最後までご一読ください。
中国の対策と学校の役割
中国では2000年代以降、いじめ問題が大きな社会問題として認識されるようになりました。ここでは、中国のいじめ対策の特徴について説明します。
いじめ問題の社会化
中国においては、2000年代以降、身体的または心理的な攻撃を受けた生徒が自殺した事件や仕返し殺人事件がしばしばメディアで報道されました[1]。それによって、学校におけるいじめ問題が大きな社会問題として認識されるようになり、メディアや研究者たちから注目を集めてきました。
近年ではスマートフォンやインターネットが普及したことで、加害者やその目撃者である傍観者が撮影した映像がSNSなどのインターネット上に流出し、メディアに大きく取り上げられる事件も発生しています。
上海熊姐事件の影響
例えば、2009年に発生した「上海熊姐事件」は、いじめの過程が撮影され、その動画が後に動画投稿サイトにアップロードされたことで、大きな関心を集めた事件です[1][2]。その後、加害者の行為に憤った200人以上のネットユーザーが加害生徒の在籍する学校の校門前に集まり、校長の謝罪を求める事態となりました。
このことから、いじめ問題が公衆のパニックを招くというリスクが政府に重視され、教育機関だけでなく行政機関の介入が必要とされました。
中国では、2007年に全国の小中学校に配布された『中小学公共安全教育指導綱要』(小中学校における公共安全の学習指導要領)において、中国教育部がはじめていじめ問題に言及し、学校の安全教育の重要な課題であると規定しました。
いじめの定義と対策の目標
いじめの危険性と予防の必要性を認めたものの、当時の中国教育部は行為を明確に規定していませんでした[1][2]。しかし、2015年に発行された教育部の研究機構の研究報告において、はじめていじめが定義されるようになりました。
中国教育部は、いじめを「学校の教育活動を妨害し、被害生徒に心身的な傷害を与える行為」と認識し、対策の目標を「学校を最も明るく、最も安全な場所にする」と定めました。つまり、
いじめは単に子ども同士、あるいは生徒に関連する攻撃行為だけでなく、学校の教育秩序と安全をおびやかす行為でもある
という認識です。
そのため、対策の目的は加害者に対する懲戒にとどまらず、生徒全体の安全意識の向上および学校安全の実現も含んでいます。

中国における安全と責任の重視は?
中国のいじめ対策は「安全」を中心とした方針が特徴です。ここでは、その具体的な内容について見ていきましょう。
未然防止の取り組み
このような「安全」を中心とした対策は、未然防止と事件処理という2つの目的で国内に浸透しています。まず、予防教育および予防システムによって構成された未然防止では、予防教育が主に安全をめぐり、
いじめの危険性を理解し、対応の方法を学び、自分と他人の安全を守る
一方、学校の安全管理体制を充実するために、中国教育部は「学校安全条例」の制定を計画し、関係者の責任を明確にすることで事件への緊急措置を定めようとしています。さらに、学校内部の安全体制に限らず、学校周辺の地域治安を向上することも重視されています。
事後処理と責任の明確化
また、事件の事後処理として加害者に対する懲戒が強化されました。とりわけ、『刑法』、『未成年人保護法』、『予防未成年人犯罪法』など、生徒と教職員の安全を守る法律の実効性を強めると同時に、責任や処罰に関わる内容を具体的に定めています[1][4]。
いじめ対策の具体的な内容から見ると、中国教育部のいじめ対策では、いじめが特に「安全を妨害した責任事件」として取り扱われています。防止に関する政府の施策も主に「責任範囲の明確化」という方針を採用しており、いじめ問題の予防や対処における加害者の責任、学校の責任、警察の責任範囲を明確に定めました。
責任範囲の区分
具体的には、以下のような区分になっています。
学校の内部、教育活動で発生した事件
⇒学校の責任範囲
・
学校周辺および校外で起こった事件
⇒治安管理機関の責任範囲
つまり、中国のいじめ対策は公的機関の介入および対策を要請しているものの、学校と治安機関の介入は最小限に限られ、安全保護のレベルにとどまっているということです。この方針のもとで、教育部はいじめ問題を「安全責任に関する事件」と見なし、事件の責任者への責任追及を重要視しています。
そのため、安全と法律に関する教育は主に学校によって実行されますが、安全管理については場所によって、学校と地域の治安機関が分担しています。
台湾のいじめ対策と学校が果たす役割
台湾では1990年代以降、校内での問題行動が注目されるようになりました。台湾独自のいじめ防止策について見ていきます。
校内の治安を良くする取り組みがスタート
台湾では、生徒同士の暴力などの問題が1990年代から少しずつ注目を集めるようになりました[5]。2005年、台湾の教育部門がいじめに焦点を当て、学校の治安を良くするための計画を始動させました[6]。この計画では、暴力やいじめ、薬物乱用、不良グループといった課題に向き合ってきました。
ところが2010年、桃園県の八徳中学校で集団いじめが起き、学校がこれを隠していたことがニュースで明らかになりました[7]。
いじめへの理解と取り組みの強化
この出来事をきっかけに、台湾の教育部門は次々といじめを防ぐ対策を打ち出し、仕組みを整えていきました[7]。いじめを「生徒の深刻な問題行動で、いじめる側・いじめられる側・見ている側すべてに大きな悪い影響を及ぼすもの」と位置づけ、加害生徒と被害生徒の両方への支援と指導を大切にしました[8]。
2005年に始まった「学校治安改善計画」では、先生や生徒指導を担当する先生の指導力を高めることを大事な目標としました[9]。八徳中学校の事件後、2010年以降は教育指導がさらに充実し、道徳・人権・法律の知識を総合的に教えるようになりました[10]。
専門スタッフの配置
また、生徒の行動面だけでなく、心の健康も教育の重要なテーマとして認識され、この分野も強化されました。専門スタッフを確保するため、大学院で心理学を学び、教員免許と修士号の両方を持つ生徒指導の専門教員が、各小中学校や教育局に配置されるようになりました[11]。
2012年には、台湾教育部が「いじめ防止規則」を定め、予防から対処までの流れを専門的なルールで明確にしました[12]。この規則では、問題が起きた際の対応は加害生徒が通う学校が責任を持ち、学校の管理職と指導教員が対処・指導することを求めています。
台湾が重視する教育と指導のアプローチ
台湾のいじめ対策は、中国とは違った方法で進められています。台湾ならではの対策を確認しましょう。
学校が一貫して対応する体制
つまり、校外や他校で起きた問題でも、被害者や第三者、報道機関、医療・福祉関係者からの報告で発覚した場合、すべて加害生徒が在籍する学校の「いじめ対応チーム」が処理するということです[12]。
教育の力を生かす方針
台湾の取り組みは、中国が「安全と責任」を重視する方針と違い、学校の「教育と指導」という本来の働きを活用することを大切にしています[12]。台湾のいじめ対策の仕組みでは、学校は単なる場所ではなく、いじめ防止教育や問題が起きた後の改善・支援を行う中心的な存在といえます。
日本のいじめ対策と学校が担う役割
日本のいじめ対策には1980年代からの長い歴史があります。日本の取り組みがどう変わってきたか説明します。
対策の始まりと初めの方向性
日本では1980年代以降、いじめによる報復殺人事件や生徒の自殺が相次いだことをきっかけに、学校でのいじめが大きな社会問題として受け止められるようになりました[13]。1986年から文部科学省は子どもの問題行動について全国調査を毎年行い、いじめがどれくらい起きているか、どんな形で起きているかを調べています[14]。日本の対策は30年以上続いており、いじめ対策の考え方や定義も何度も変わってきました。
1980年代までは、文部科学省の対策は主に生徒指導、特に「正しい友人関係の作り方」の指導に力を入れていました[14]。1990年代半ばになると、日本のいじめ対策の方針が大きく変わり、原因の捉え方も変化していきました。
心の豊かさを育てる方向へ
それまでの、子どもの行動やしつけの問題を指摘し、ルールを教えることで防ぐという方針から、子どもの「心の豊かさ」を大切にし、心の健康を育てる方針へと変わりました[15]。
1995年以降、全国の小中学校で学校心理士、いわゆる「スクールカウンセラー制度」が試験的に導入され、スクールカウンセラーには不登校やいじめ対策の専門家として大きな期待が集まりました[16]。なお、台湾の指導教員と違い、日本のスクールカウンセラーは学校の正式な職員ではなく、外部の教育機関や保健施設から雇われた非常勤スタッフでした。
2000年代の取り組み強化
2000年代になると、スクールカウンセラー制度は継続して拡大され、日本の対策で大きな役割を担うようになりました。しかし2005年に北海道滝川市で小学6年生の女子がいじめを苦に自殺した事件、2006年に福岡県筑前町で中学2年生の男子がいじめで自殺した事件など、関連する子どもの自死が続いて起こりました[13]。特にこの2つの事件では、加害者への対応が足りないという批判が強まりました。
このため、内閣府が中心となる教育再生会議が「いじめ問題への緊急提言」を出し、加害者への懲戒処分や、保護者・教員・学校など関係者の責任を追及しました。さらに2007年に出された第一次報告では、加害者への懲戒を強めるため「出席停止の措置」を使うことや、学校・児童相談所・警察などの機関が連携することを強調しました[17]。
まとめ
中国、台湾、日本のいじめ対策には、それぞれ特徴的なアプローチがあります。中国は「安全と責任」を重視し、責任範囲を明確に区分する方針を採用しています。いじめを「安全責任に関する事件」と見なし、学校と治安機関が場所によって責任を分担します。
台湾は「教育と指導」の機能を重視し、学校をいじめ防止教育および事後の矯正と救済の主要な実施者と位置づけています。専門的な教育を受けた生徒指導の専任教員を配置し、加害者が在籍する学校が一貫して対応します。
日本は機関連携を重視し、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを導入して、教育、行政、福祉、司法が連携するネットワーク型のシステムを構築しています。各国の対策を知ることで、より効果的ないじめ対策のヒントが得られます。
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いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
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など、いじめについてお困りのことがありましたらご相談ください。詳しくは以下の看板からお待ちしています。
※[2]は[1]を参考にして記載しました。
※[5]は[1]を参考にして記載しました。
※[6]は[1]を参考にして記載しました。
※[7]は[1]を参考にして記載しました。

1件の相談
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日本からいじめをなくそう




相談じゃないんだけど、、、
俺はいじめ防止対策推進法が出てくるの遅かったんじゃないかなって思う。
あとシカトとかって犯罪にはならないじゃん。でもクラス中から無視されて傷ついたりしてるコもいるわけだし。(俺とか?)そこ、なんとかならないのかな(´;ω;`)