~ いじめ防止対策推進法 ~ いじめは犯罪になる? 傷害罪・名誉毀損などの適用例と法的対応
はじめまして!いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

今回のテーマは「いじめは犯罪になる? 傷害罪・名誉毀損などの適用例と法的対応」です。いじめを受けている方、そのご家族の方は、「これって犯罪じゃないの?」と感じることがあるかもしれません。
実は、いじめの多くは刑法上の犯罪に該当する可能性があります。本記事では、どのようないじめが犯罪になるのか、警察への相談方法、損害賠償の請求など、法的な対応について解説していきます。
目次は以下の通りです。
①いじめは犯罪か
②犯罪になるいじめ
③逮捕される可能性
④警察への相談方法
⑤損害賠償の請求
⑥いじめ被害の対処法
いじめは決して許される行為ではありません。法的な知識を持つことで、適切な対応ができるようになります。ぜひ最後までご一読ください。
いじめは犯罪か
いじめの中には、刑法で定められた犯罪に該当するものがあります。ここでは、犯罪になる行為と犯罪にならない行為について説明します。
犯罪になる行為
いじめの中でも、暴力をふるう、お金を脅し取る、物を壊すなどの行為は、刑法上の犯罪に該当します。たとえふざけているつもりでも、相手がケガをしたり心に深い傷を負ったりすれば、傷害罪などの犯罪として扱われる可能性があります。
また、悪口やうわさを広める行為も、侮辱罪や名誉毀損罪になることがあります。犯罪に該当する場合、加害者は警察に逮捕されたり、損害賠償を請求されたりする可能性があります。令和4年度の文部科学省の調査では、いじめの認知件数は約68万件にのぼり[1]、その中には犯罪に該当する行為も多く含まれています。

犯罪に該当しない行為
一方で、すべてのいじめが犯罪になるわけではありません。たとえば、無視をする、仲間はずれにする、陰口を言うなどの行為は、精神的な苦痛を与えますが、刑法上の犯罪には該当しないことが多いです。
ただし、これらの行為も「いじめ防止対策推進法」で定義されるいじめに該当します。犯罪にならない場合でも、被害者は民事上の損害賠償を請求できる可能性があります。
また、学校には生徒の安全を守る義務があるため、学校に対して適切な対応を求めることができます。犯罪にならないからといって、いじめが許されるわけでは決してありません。
犯罪になるいじめ
いじめの中には、さまざまな犯罪に該当する行為があります。ここでは、具体的にどのような行為がどの罪に当たるのかを説明します。
殴る蹴るは暴行罪
相手を殴ったり蹴ったりする行為は、暴行罪に該当します。暴行罪は、相手にケガをさせなくても成立する犯罪です。ふざけているつもりでも、相手が嫌がっていれば暴行罪になる可能性があります。
暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料です。たとえ軽く叩いただけでも、相手が暴力を受けたと感じれば、法律上は暴行罪として扱われます。
学校では「じゃれ合い」として見過ごされることもありますが、れっきとした犯罪行為です。暴力は絶対に許されません。
ケガさせたら傷害罪
暴行の結果、相手がケガをした場合は、傷害罪になります。傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と、暴行罪よりもずっと重い刑罰が定められています。
ケガには、あざや切り傷だけでなく、PTSDなどの精神的な病気も含まれます。つまり、暴力によって相手が精神的な病気になった場合も、傷害罪が成立する可能性があります。
また、複数の人で一人を殴った場合、全員が傷害罪に問われる可能性があります。傷害罪は非常に重い犯罪であり、将来に大きな影響を与えます。
お金を脅し取る恐喝罪
相手を脅してお金や物を奪った場合は、恐喝罪に該当します。いわゆる「カツアゲ」と呼ばれる行為です。恐喝罪の法定刑は、10年以下の懲役です。たとえ少額でも、脅してお金を渡させれば恐喝罪になります。
また、「お金を貸して」と言って返す気がないのに借りた場合も、恐喝罪や詐欺罪に該当する可能性があります。恐喝罪には罰金刑がないため、有罪になれば懲役刑を科される可能性が高い、非常に重い犯罪です。お金を要求する行為は、絶対にやめましょう。
悪口は侮辱罪
「死ね」「バカ」「ブス」などの悪口を言う行為は、侮辱罪に該当する可能性があります。侮辱罪は、公然と人を侮辱した場合に成立します。「公然と」とは、不特定または多数の人が認識できる状態を指します。
つまり、クラスメイトの前で悪口を言ったり、SNSで悪口を書いたりすれば、侮辱罪になる可能性があります。侮辱罪の法定刑は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料です。言葉の暴力も、れっきとした犯罪行為です。
うわさで名誉毀損罪
「あいつは万引きをした」「○○さんの親は犯罪者だ」など、具体的な事実を示して相手の評判を傷つける行為は、名誉毀損罪に該当します。名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。
重要なのは、その内容が本当かどうかは関係ないということです。たとえ真実であっても、公表することで相手の名誉が傷つけられれば、名誉毀損罪が成立します。SNSでうわさを広める行為も、名誉毀損罪になる可能性があります。人の評判を傷つける行為は、絶対にやめましょう。
物を壊す器物損壊罪
相手の持ち物を隠したり、壊したり、落書きをしたりする行為は、器物損壊罪に該当します。器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料です。
物を壊すだけでなく、物を使えなくする行為も器物損壊罪になります。たとえば、教科書に落書きをする、上履きを隠す、かばんに泥を付けるなどの行為も、器物損壊罪に該当する可能性があります。他人の物を大切に扱わない行為は、犯罪です。相手の持ち物は、絶対に傷つけてはいけません。
脅すと脅迫罪
「殴るぞ」「恥ずかしい秘密をばらすぞ」など、相手を脅す行為は、脅迫罪に該当します。脅迫罪の法定刑は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。脅迫罪は、相手の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加えることを告知した場合に成立します。
「クラス全員から無視されるようにする」という発言も、脅迫罪に該当する可能性があります。脅す行為は、相手に大きな恐怖を与えます。言葉であっても、脅す行為は犯罪です。
無理やりさせる強要罪
相手が嫌がっていることを、脅したり暴力をふるったりして無理やりさせる行為は、強要罪に該当します。たとえば、土下座をさせる、万引きをさせる、汚物を食べさせるなどの行為です。強要罪の法定刑は、3年以下の懲役です。相手が「やりたくない」と言っているのに、無理やりやらせれば、それは強要罪になります。
ふざけているつもりでも、相手にとっては深刻な被害です。人に嫌なことを強制する行為は、絶対に許されません。相手の気持ちを尊重することが大切です。

逮捕される可能性
いじめで犯罪に該当する行為をした場合、逮捕される可能性があります。ここでは、年齢による扱いの違いと、逮捕後の流れについて説明します。
14歳未満の扱い
14歳未満の子どもは、刑法上、刑事責任を問われません。刑法41条に「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定められています。しかし刑罰を受けないからといって、何をしても良いわけではありません。14歳未満で犯罪に該当する行為をした子どもは、「触法少年」として扱われます。
触法少年の場合、児童相談所が介入し、必要に応じて一時保護されたり、児童自立支援施設に送致されたりします。重大な事件の場合は、家庭裁判所に送致され、少年審判を受けることもあります。14歳未満でも、責任を取らされることがあります。
14歳以上の扱い
14歳以上の少年は、刑事責任能力があるとされ、逮捕される可能性があります。逮捕されると、警察署の留置場に入れられ、取り調べを受けます。逮捕後、最大72時間は身柄を拘束され、その後、勾留が認められれば、さらに最大20日間拘束されます。この間、学校にも家にも帰れません。
ただし、未成年の場合は、成人と同じ刑事裁判ではなく、家庭裁判所の少年審判を受けるのが原則です。少年審判では、更生を目的とした処分が下されます。18歳・19歳の「特定少年」の場合は、一定の重大事件では成人と同じ刑罰を受ける可能性があります。
少年審判の流れ
14歳以上の少年が犯罪を犯した場合、通常は家庭裁判所に送致され、少年審判を受けます。少年審判では、裁判官が少年の更生に必要な処分を決定します。処分の内容は以下になります。
不処分
保護観察
少年院送致
児童自立支援施設送致
保護観察は、社会で生活しながら、保護観察官の指導を受ける処分です。少年院送致は、少年院という施設に入って、矯正教育を受ける処分です。少年院に入ると、通常1年から2年程度は施設で生活することになります。これは、学校にも行けず、友達とも会えないという大きな制限です。いじめは、自分の将来を大きく狂わせる行為です。

警察への相談方法
いじめが犯罪に該当する場合、警察に相談することができます。ここでは、警察への相談方法と、警察が動く基準について説明します。
被害届と告訴状
警察に相談する方法には、被害届と告訴状があります。被害届は、犯罪被害に遭った事実を警察に知らせる届出です。一方、告訴状は、加害者を処罰してほしいという意思を伝える届出です。
被害届でも警察が捜査を開始することはありますが、積極的な捜査を求める場合は告訴状を提出しましょう。告訴状が受理されると、警察は捜査を開始する義務が生じます。被害届や告訴状には、いじめが起きた時期、被害の内容、加害者の名前などを記載します。警察署に行けば、警察官が書き方を教えてくれます。
警察が動く基準
警察は、すべてのいじめに対して動くわけではありません。警察が介入するのは、いじめが刑法上の犯罪に該当する場合です。たとえば、暴行、傷害、恐喝、器物損壊などの明確な犯罪行為があった場合に、警察は捜査を開始します。
一方、無視や仲間はずれなどは、刑法上の犯罪に該当しないため、警察は介入しにくい状況です。また、警察は、事件の緊急性や証拠の有無も考慮します。生命や身体に危険が迫っている場合や、明確な証拠がある場合は、警察も積極的に動きます。警察に相談する際は、できるだけ具体的な情報と証拠を用意しましょう。
証拠の集め方
警察に相談する際は、いじめの証拠を集めることが重要です。証拠があれば、警察も動きやすくなります。証拠として有効なものは以下になります。
いじめの写真や動画
録音した音声
SNSの画面
ケガの写真
診断書
日記やメモ
スマートフォンで録音や撮影ができる場合は、積極的に記録しましょう。SNSでのいじめは、スクリーンショットを撮って保存しておきます。暴力を受けてケガをした場合は、病院に行って診断書をもらいましょう。また、いつ、どこで、誰に、何をされたかを日記やメモに記録しておくことも有効です。証拠は、いじめを証明する大切な材料です。

損害賠償の請求
いじめによって被害を受けた場合、加害者や学校に対して損害賠償を請求できます。ここでは、損害賠償の請求方法について説明します。
加害者への請求
いじめによって精神的な苦痛を受けたり、ケガをしたり、物を壊されたりした場合、加害者に対して損害賠償を請求できます。損害賠償には、治療費、壊された物の代金、精神的苦痛に対する慰謝料などが含まれます。
加害者が未成年で、自分で行為の責任を理解できない場合(通常は10歳から12歳くらいまで)は、加害者本人ではなく、親に対して損害賠償を請求します。加害者が責任能力のある未成年の場合は、本人に請求しますが、実際には親が支払うことが多いです。損害賠償の請求は、弁護士に相談するとスムーズに進みます。
学校への請求
学校にも、生徒の安全を守る義務があります。これを「安全配慮義務」といいます。学校がいじめを知っていたのに適切な対応をしなかった場合、学校に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
公立学校の場合は、国家賠償法に基づいて、国や自治体に請求します。私立学校の場合は、民法に基づいて、学校や教師個人に請求することができます。
学校への請求が認められるには、学校がいじめを予見できたこと、適切な対応をしなかったことを証明する必要があります。学校の責任を追及する際も、弁護士に相談することをおすすめします。
親の責任
加害者の親も、監督義務違反として責任を問われる可能性があります。未成年者が自分の行為の責任を理解できない場合、親が監督義務者として損害賠償責任を負います。また、責任能力のある未成年の場合でも、親に監督義務違反があれば、親の責任を追及できることがあります。
たとえば、学校から子どもの問題行動について連絡を受けていたのに、適切な指導をしなかった場合などです。親の責任が認められるには、親の監督義務違反と、いじめによる被害との間に因果関係があることを証明する必要があります。親としても、子どもの行動には責任があります。
いじめ被害の対処法
いじめを受けた場合、適切な対処をすることが大切です。ここでは、いじめ被害に遭ったときの対処法について説明します。
学校への相談
いじめを受けたら、まずは学校に相談しましょう。担任の先生、学年主任、校長先生など、信頼できる先生に話してください。学校には、いじめを防止し、対応する義務があります。「いじめ防止対策推進法」では、学校はいじめを認知したら、速やかに調査し、適切な対応をしなければならないと定められています。
学校に相談する際は、いつ、どこで、誰に、何をされたかを具体的に伝えましょう。また、学校がどのような対応をしたかも記録しておくことが大切です。学校が適切に対応してくれない場合は、教育委員会に相談することもできます。
弁護士への相談
いじめが深刻な場合や、学校が適切に対応してくれない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、法律の専門家として、あなたの権利を守ってくれます。弁護士に依頼すると、加害者や学校との交渉を代わりに行ってくれます。
また、損害賠償請求や刑事告訴の手続きもサポートしてくれます。弁護士が介入することで、学校や加害者も真剣に対応するようになることが多いです。弁護士費用が心配な方は、法テラスなどの公的機関を利用することもできます。一人で悩まず、専門家に相談することが大切です。
証拠の保管方法
いじめの証拠は、適切に保管しておくことが重要です。証拠があれば、学校や警察、裁判所でいじめの事実を証明しやすくなります。証拠の保管方法は以下になります。
写真や動画を保存
SNSを保存
メモを作成
診断書を保管
物的証拠を保管
写真や動画は、複数の場所にバックアップを取っておきましょう。SNSのメッセージは、スクリーンショットを撮って保存します。投稿が削除される可能性があるため、早めに保存することが大切です。
日記やメモには、日付、時間、場所、加害者の名前、何をされたか、目撃者の有無などを記録します。病院に行った場合は、診断書を必ずもらいましょう。壊された物や、いじめの手紙なども、捨てずに保管しておきます。
まとめ
いじめの多くは、刑法上の犯罪に該当する可能性があります。暴力をふるえば暴行罪や傷害罪、お金を脅し取れば恐喝罪、悪口を言えば侮辱罪や名誉毀損罪になります。犯罪に該当する場合、加害者は逮捕されたり、損害賠償を請求されたりする可能性があります。いじめを受けた場合は、まず学校に相談し、必要に応じて警察や弁護士にも相談しましょう。
いじめは、あなたが悪いわけではありません。いじめは加害者の責任です。一人で抱え込まず、信頼できる大人に相談してください。証拠を集め、適切な対応をすることで、いじめを止めることができます。あなたには、安全に学校生活を送る権利があります。勇気を出して、一歩踏み出しましょう。あなたは一人ではありません。
相談をご希望の方へ
いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている
など、いじめについてお困りのことがありましたらご相談ください。詳しくは以下の看板からお待ちしています。
参考文献
[1] 文部科学省. (2023). 令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について.




