~ これまでのいじめ研究 ~ これまでの研究➀教員の指導態度がいじめを変える
はじめまして、いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

今回のテーマは「教員の指導態度がいじめを変える」です。学校の中で、いじめが比較的少ないクラスもあれば、いじめが絶えないクラスも存在します。教員の指導態度によってこのような違いが起こるのであれば、そのメカニズムを知ることで、いじめを未然に防ぐことも可能となります。本記事では、教員の指導態度がいじめに与える影響と具体的な対策について解説していきます。
目次は以下の通りです。
① クラスによるいじめの違い
② 集団の特性といじめの関係
③ 教員に求められる態度
④ クラスに求められること
⑤ 教員がクラスにできること
それでは、教員の指導態度がいじめに与える影響を一つずつ見ていきましょう。ぜひ最後までご一読ください。
クラスによるいじめの違い
いじめ問題に対応する中で、クラスによっていじめの深刻度に違いがあることに気づきます。ここでは、そのメカニズムについて説明します。
いじめの深刻度の違い
いじめ問題に対応していると、「このクラスは比較的いじめが深刻ではないな」とか「このクラスはいじめが深刻だな」と感じることがあります。もし教職員が深刻ではないと判断した場合、いじめ対策も緩くなってしまうでしょう。
しかし、その緩さが逆にいじめを助長するとしたらどうでしょうか?
集団の雰囲気の重要性
いじめの加害者の行動の背景に、周囲の児童・生徒が影響を及ぼすことが明らかにされています。例えば、森田(1985)は、いじめが起きる原因として、いじめをはやしたてる観衆層の児童・生徒と、見て見ぬふりをする傍観層の児童・生徒が相互に影響しあうことで生起することを明らかにしています。
簡単に言えば、いじめが起きる原因として集団の中で、
いじめを止める雰囲気なのか
いじめを促す雰囲気なのか
この2点が大きく関わってきます。クラスの中で「いじめをさせない」という雰囲気を作ることが学級運営をしていく上で大切な視点です。
いじめに受容的な学級では、特に傍観層の児童・生徒がいじめを活性化させる可能性があることを指摘しています。
教員に求められる態度
前述の通り、教職員の裁量1つでクラス内のいじめに対する雰囲気は変わってしまいます。一方で、いじめが起きていないのも関わらず過剰に粗探しをするのもストレスフルです。
研究結果によれば、児童・生徒と接するうえでの効果的な態度が報告されています。
研究で明らかになった効果的な態度
大西ら(2009)[1]では、547名(小学生240名, 中学生307名)の児童・生徒を対象にアンケート調査を用いて、教師のことをどう認識しているか?を意味する「教師認知」といじめ加害行動の関係性を調べました。
その結果、研究では以下のように報告されています。
児童・生徒の教師認知については、受容・親近・自信・客観の教師認知が高い生徒ほどいじめ否定学級規範を高く意識していることが示された
つまり、教師に受け入れてもらえている感覚、親しみやすさ、自信、客観性を感じている生徒ほどいじめをしない傾向にあったということです。
また、西本(1998)[2]は、276名の中学生を対象にアンケート調査を用いて、教師の資源(思いやり、正当性、専門性など)と学級文化(規律遵守、アカデミック志向、エンジョイ志向など)の関連を統計的に検討しました。
その結果、以下のことがわかりました。
思いやりが学級文化の相違にかかわらず、児童・生徒へ影響を与える教師の資源として有効である
さらに、三島・宇野(2004)[3]でも、同じような結果が示されており、
児童は、教師の受容的で親近感のある態度や、自信のある客観的な態度をモデルに、相手を尊重し認め合う学級雰囲気を醸成することを示している
と報告しています。
教師が変わると児童・生徒も変わる
これらの態度を身につけることで、その教員のもとにいる児童・生徒は、教員を見習って以下のことを学習することができます。
他者の喜びに共感する方法
攻撃的な児童・生徒との関わり方
児童・生徒と公平に接する方法
主張を納得してもらう方法
苦手なことや失敗に対する対処方法
つまり、教職員の態度1つで、クラスの雰囲気も変わり、いじめが少なくなっていくと考えられます。
クラスに求められること
いじめを防ぐためには、クラス全体の雰囲気づくりが重要です。ここでは、クラスに必要な要素について見ていきましょう。
いじめに否定的な評価の重要性
いじめはクラスの傾向により、発生することもあれば抑止力になることもあります。特にクラスの傾向を「いじめを許さない」という否定的な評価に持っていくことが求められます。
大西ら(2008)[4]の研究では、中学生361名を対象に、アンケート調査を用いて「いじめ否定仲間規範」(仲間集団がいじめを否定的に評価する意識)と加害傾向の関連を調べました。その結果、いじめ否定仲間規範が高いほど、加害傾向が低下することがわかりました。
いじめの利害構造を変える
内藤(2001)[5]によれば、「いじめは加害者の利害構造に支えられて蔓延・エスカレートする」と言われています。クラスに求められるものは、いじめを行うことによってメリットとなるものがなくなる環境を作ることが求められます。
いじめを行うことのデメリットを高めることで、いじめが起こることを少しでも減らしていくことが効果的です。
教員がクラスにできること
これまでに説明してきた内容をまとめ、教員が実践できる具体的な対策を紹介します。
教員が実践すべきこと
これまでに、「教員に求められる態度」と「クラスに求められること」をご紹介してきました。ここで、教員がクラスにできることをまとめると、以下のようになります。教員は児童・生徒に対して、以下のことが求められます。
・受容的に接する
・親近感を持てるように接する
・自信をもっている
・客観性の高いコミュニケーション
・他者の喜びに共感する方法を示す
・攻撃的な児童・生徒との関わり方を示す
・児童・生徒と公平に接する
・主張を納得してもらう方法を示す
・苦手なことや失敗に対する対処を示す
クラスの目標設定
そして、クラスの目標として、以下のことが必要です。
・いじめ以外の解決策があることを全員が知っている
・全員がいじめに否定的な評価を持つ
・友人は学校生活の適応感を左右すると自覚する
まとめ
教員の日常的な指導態度は、いじめ問題に大きな影響を与えます。受容的で親近感のある態度、自信を持った客観的なコミュニケーションが、児童・生徒のモデルとなり、いじめを許さないクラスの雰囲気を作ります。クラス運営では、複数の教員と連携し、偏った見方にならないよう注意が必要です。
また、「このクラスはいじめはない」と油断せず、常にいじめの可能性を意識することが不可欠です。いじめの利害構造を変え、いじめを行うメリットをなくし、デメリットを高める環境を作ることで、いじめの発生を防ぐことができます。教員一人ひとりが意識的に指導態度を見直し、児童・生徒と向き合うことが、いじめのない学校づくりの第一歩となります。
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いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている
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・参考文献




