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いじめ撲滅

~ これまでのいじめ研究 ~ これまでの研究②対策は教職課程から始まる

いじめ対策において、教職課程での教育が重要な役割を果たすことをご存じでしょうか。はじめまして、いじめ撲滅委員会代表、公認心理師の栗本顕です。私の専門は「いじめ」です。心理学の大学院で研究もしてきました。現在はいじめの問題を撲滅するべく、研修やカウンセリング活動を行っています。

いじめ撲滅委員会代表栗本顕

今回のテーマは「教職課程におけるいじめ対策教育」です。いじめ問題を取り上げていく中で、現場の学校やその教職員、児童・生徒に焦点が当たってしまいがちです。しかし、学校でのいじめ対策の主軸となる教職員の教育にも目を向けなければなりません。本記事では、教職課程の学生に対するいじめ対策教育の重要性と具体的な研究成果について解説していきます。

目次は以下の通りです。

① 教職課程での対策教育
② いじめ経験が与える影響
③ 性別による対応の違い
④ 教職課程で学ぶべき内容
⑤ 教職課程の学生の意識
⑥ 教職課程こそいじめ対策教育

それでは、教職課程におけるいじめ対策教育について一つずつ見ていきましょう。ぜひ最後までご一読ください。

教職課程でのいじめ対策教育

いじめ対策を効果的に行うためには、現場の教職員だけでなく、将来教員を目指す学生への教育が不可欠です。ここでは、その重要性について説明します。

現場に出る前の準備の重要性

いじめ対策を考える際、どうしても現場で直接対応する教職員に注目が集まりがちです。しかし、現場の教職員も大学で教育の仕方を学んだからこそ、教職に就くことができています。大学での授業や実習などで経験を積み、教職員になってからも多くの経験を重ねることで、より効果的な教育が可能になります。

これは、いじめ対策においても同様です。一言で「いじめ対策」と言っても、その方法は多岐にわたり、独学だけでそれらをカバーすることは非常に困難です。

いじめ対策は即必要

また、いじめ対策は現場に出たらすぐに必要となるものです。そのため、十分な「現場経験」を積む前に実践しなければならないケースがあります。その場合、不完全な対策をしてしまう危険性や、先輩教員の指示に盲目的に従ってしまう可能性があります。これは良い結果につながる場合もあれば、悪い結果を招く場合もあります。

そのため、いじめ対策を十分に行うためには、教職課程の段階からいじめ対策教育を実施していく必要があるのです。また、現在すでに教職員として働いている人も、新しいタイプのいじめへの対策や最新の研究成果など、実践で役立つ知識を定期的に学ぶ必要があります。

いじめ経験が与える影響は?

教職課程の学生自身のいじめ経験は、将来の教員としての対応に影響を与える可能性があります。ここでは、研究結果に基づいてその影響について見ていきましょう。

いじめ経験の持続的影響

いじめの経験は、その後の人生に持続的な影響を及ぼします。これは将来教員を目指す教職課程の学生にとっても例外ではありません。学生自身のいじめ経験は、教員になった際の被害児童・生徒や加害児童・生徒への対応の仕方に、少なからず影響を与える可能性が考えられます。

山崎(2016)[1]は、教職課程の大学生を207名を対象にアンケート調査を行いました。調査の内容は、自身のいじめ被害・加害の経験が、中学・高校でのいじめ被害者・加害者への対応の認識にどのような影響を及ぼすかを調べました。

また、将来教員になった時にいじめ問題に対応するために、大学の教職課程で何を学ぶ必要があるかについても調査しました。

被害経験がある学生の傾向

研究の結果、以下のことが示されました。

学生自身のいじめ経験の有無は、将来教員になったときのいじめ対策についての認識に影響を及ぼす

具体的には、中学・高校でのいじめ被害生徒への対応について、被害経験がある学生ほど、「他の教員との連携による対応」や「関係機関との連携による対応」の必要性の認識が高まる傾向が見られました。

加害経験がある学生の傾向

一方、加害経験がある学生ほど、「他の教員との連携による対応」や「関係機関との連携による対応」、「被害生徒に対する具体的ケア」の必要性の認識が低下する傾向が見られました。

このことから、以下のことがわかりました。

加害経験は被害生徒支援に悪影響
被害・加害経験で共感度が異なる
経験でいじめ対応認識が変わる

つまり、いじめ被害者に対する道徳的・共感的な認知や感情が、いじめ停止に作用すると言えます。

性別による対応の違い

いじめ経験だけでなく、性別もいじめ対策への認識に影響を与えることが研究で明らかになっています。

男性の傾向

山崎(2016)[1]の研究では、性別もいじめ対策への認識に違いをもたらすことが示されました。中学生のいじめ加害生徒への対応については、男性の方が「厳罰的対処(げんばつてきたいしょ)」の必要性の認識が高まる傾向があることがわかったのです。

厳罰的対処とは、罪や違反行為に対し、非常に厳しい罰則や措置で臨むことを指します。一般的な対処よりもはるかに重い処分を科す姿勢や実行を意味します。

女性の傾向

また、高校生のいじめ加害生徒への対応については、女性の方が「養護教諭やスクールカウンセラーによる対応」の必要性の認識が高まる傾向があることがわかりました。

男女でいじめ対策への認識に偏りがあると、教員間で統一された対応ができません。その結果、「先生によって対応が違う」と現場で不信感を抱かれてしまう原因にもなりかねません。

教職課程で学ぶべき内容

教員自身の経験や性別に関わらず、有効な対応ができるようにするには何を学ぶ必要があるのでしょうか。ここでは、研究で明らかになった内容を紹介します。

学生が求める学習内容

山崎(2016)[1]は、教員自身のいじめ経験の有無や性別によって対応が異なることなく、有効な対応ができるようにするためには、教職課程で何を学ぶ必要があるのかという調査を行いました。

その結果、回答は多岐にわたりましたが、中でも60%が「対策」、48%が「実態やケーススタディ」を挙げていました。

効果的な学習方法

山崎(2016)[1]は、教育現場においていじめ問題を教員1人で対応することは困難であることから、以下が有効であると示しています。

問題に対して多様なアプローチを学ぶ
連携により問題を解決する有効性を認識する
被害者・加害者の経験を聞く機会を持つ
小中高の教員から対応の失敗・成功例を学ぶ

教職課程でこれからを学んでおくと、将来教員になった時にいじめ問題に積極的に取り組めるようになります。他の先生やスクールカウンセラーなどと連携することで、性別による認識の偏りも起きにくくなると考えられます。

教職課程の学生の意識

教職課程の学生は、いじめ問題についてどのような認識を持っているのでしょうか。ここでは、学生の意識調査の結果について見ていきましょう。

いじめの現状と今後への認識

森住(2004)[2]の研究では、大学生159人を対象に、教職課程の学生のいじめの現状認識について調べました。その結果が以下のグラフです。

これまでの研究,いじめ

 

このように、70%弱の学生がいじめが多いと感じていることがわかりました。それでは「少ない」と回答した人はどのくらいいたのでしょうか。以下のグラフをご覧ください。

教職課程,いじめの現状,研究

このように男性1.9%、女性0.9%とほとんど回答した人がいない結果となりました。

また、いじめの今後の推移についても調査されています。「減る」と考えている学生は10%弱にとどまり、「増える」と考えている学生は40%弱でした。変化なしと答えた学生を加えると、男子学生の70%・女子学生の80%が、いじめについて楽観視していないことがわかりました。

いじめ報道への関心

次に、いじめ報道への関心では、以下の結果となりました。

これまでの研究,いじめ報道への関心

このようにたまにはと回答した人がもっとも多く、次いで極力得る、関心が向かないと答えた人が最も少ない結果となりました。教職課程の学生は、多かれ少なかれいじめ報道に関心があると言えそうです。

いじめ報道・情報への対応

さらに報道・情報への対応では、以下の結果となりました。

これまでの研究,いじめの報道・情報への対応

グラフのようにそのままと回答した学生が71.1%、話し合う学生23%、図書を読むと回答した人が3.8%という結果になりました。(結果の一部を抜粋)多くの学生はいじめ報道を受け取った後、特に行動を起こすことはないようです。それでも、約2割の方は話し合い、ごく少数の人は図書読むといった行動まで結びついています。

これには、男女差や被害・加害経験で差があり、それぞれ以下の結果になりました。まずは「話し合う」と回答した結果については男女差が見られました。

これまでの研究,いじめ報道への対応 男女差

上記のように男子は2割程度、女子は3割が話し合うと回答しました。女子学生のほうがいじめ報道について周りと話し合うことが多いと言えるでしょう。

次に図書を読むについては、被害・加害経験によって差が見られました。

これまでの研究,いじめ報道への対応 被害者加害者の差

このように全体の回答者は少ないものの、加害学生は7.7%、被害学生は72.7%と大きな差が生まれることがわかりました。被害学生はいじめの原体験があるからこそ、より深くいじめ報道を学ぼうとするのかもしれません。

経験による情報収集の違い

森住(2004)[2]は研究の中で、以下のように考察しています。

教職を志す学生として、かつ、被害経験をもったことから、いじめ問題に関心をもち図書類を読むのであるが、その経験を克服しているかによって友人たちと話し合うかどうかに違いが出ると考えられる

つまり、いじめ被害を克服していれば話し合いがしやすくなるが、傷が癒えていない場合は自分の中でふさぎ込んでしまう可能性があるということです。

また、加害経験の場合、いじめが深刻なものでないケースが多いためか、率直に友人たちと話し合うことが多くなると考えられました。しかし、話し合う程度にとどまってしまい、図書類を読んで深く学ぶという段階には進まない点が問題視されています。

まとめ

教職課程におけるいじめ対策教育は、将来の効果的ないじめ対策に不可欠です。学生自身のいじめ経験や性別によって、いじめへの対応認識が異なることが研究で明らかになっています。被害経験がある学生は連携の必要性を高く認識する一方、加害経験がある学生は被害者へのケアの必要性を低く認識する傾向があります。

教職課程では、対策の具体例やケーススタディ、多様なアプローチの存在、連携の重要性などを学ぶ必要があります。また、被害者・加害者の経験を聞き、現場の教員から成功例・失敗例を学ぶことも重要です。

教職課程の段階から体系的にいじめ対策を学ぶことで、経験や性別に関わらず適切な対応ができる教員を育成できます。

相談をご希望の方へ

いじめ撲滅委員会では、全国の小~高校生・保護者のかた、先生方にカウンセリングや教育相談を行っています。カウンセラーの栗本は、「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。

・いじめにあって苦しい
・いじめの記憶が辛い
・学校が動いてくれない
・子供がいじめにあっている

など、いじめについてお困りのことがありましたらご相談ください。詳しくは以下の看板からお待ちしています。

いじめ,カウンセリング


・参考文献

 
[2] 森住, 宜司. (2004). 教職課程履修学生のいじめ問題経験と現在のいじめ状況認識. 総合福祉, 1, 93-101.

 

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