双極性障害の原因,治療法

皆さんこんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史です。私は現在心理学講座を開催しています。今回のテーマは「双極性障害」です。

双極性障害, MIO様作成

双当コラムでは双極性障害の基礎から治療法まで一通り解説していきます。目次は以下の通りです。

①双極性障害とは
②Ⅰ型とⅡ型の違い
③治療方法
④使える制度

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に、特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

なお動画解説もあります!一度ご覧いただいてから読み進めていくと理解が深まると思います。

双極性障害の特徴

定義

双極性障害は厚生労働省によると以下のように定義されています。

双極性障害は、精神疾患の中でも気分障害と分類されている疾患のひとつで、うつ状態に加え、うつ状態とは対極の躁状態も現れ、これらをくりかえす、慢性の病気

双極性障害を理解するには、以下の4点を抑える必要があります。

①気分障害
②うつ状態
③躁状態
④くりかえす

それぞれ詳しく説明します。

①気分障害

気分障害とは1980年にアメリカ精神医学会の診断基準で用いられていた分類です。具体的には、気分障害はうつ病と双極性障害に分類されます。それぞれの特徴は以下の通りです。うつ病はうつ状態のみで、双極性障害は、うつ状態と躁状態があるのが特徴的です。

気分障害とは何か

 

②うつ状態

うつ状態とは生命感情が著しく低下した状態です。具体的には

落ち込んで悲しい気分 興味を失っている
食欲が減退する    体重が大きく変動
睡眠が持続しない  自分に価値を感じない

などが挙げられます。最悪の場合は自殺を考えてしまうケースもあります。このような気分や考えを持ち続けてしまうのがうつ状態です。

うつ病とは何か

③躁状態

躁状態とは、俗に言うテンションが高い状態です。陽気、多幸、過度にイライラした気分などが特徴的です。具体的には

異常に気分が高揚する 話し始まると止まらない
金銭感覚が狂う 衝動買いをする
喧嘩っぱやくなる 暴言を吐くようになる
夜寝れなくなる 身体の痛みに鈍感になる

などが挙げられます。このような状態が7日以上持続するのは躁状態です。

 

④繰り返す

双極性障害の特徴として、うつ状態と躁状態をいったりきたりするという特徴があります。うつ状態の時と躁状態の時は考え方や行動が全く変わってしまうため、周囲の人もわかりやすいと言えます。

*その他の用語として、混合状態,軽躁状態を解説しました。興味がある方は展開してみてください。

躁・うつ症状がタッグを組むように合わさって現れてくることを混合状態と言います。例えば、「感情」は落ち込んで抑うつ気分なのに対して、「行動」はじっとはしていられない躁の症状になっている。などのことを言います。

軽躁状態は躁状態より症状の軽いものをいいます。躁状態と軽躁状態の違いについて、以下の表で見ていきましょう。

軽躁状態と躁状態の特徴

躁状態に比べて診断基準が緩い分、様々な患者が軽躁状態と診断される可能性があります。

 

Ⅰ型とⅡ型の違い

双極性障害はⅠ型とⅡ型があります。

Ⅰ型

典型的な躁状態とうつ状態を交互に繰り返す病気です。最初は躁状態とうつ状態が長期的に入れ替わりますが、段々とその周期が早くなることもあります。個人差があり1年で数回入れ替わる方もいれば、数年単位で躁とうつが入れ替わる方もいます。

Ⅱ型

比較的軽い軽躁状態とうつ状態を交互に繰り返す病気です。軽躁状態の時は健常者と変わらないこともあり、社会生活を営む方もいます。ただうつになると、仕事を継続したり、日々の生活のタスクもこなせなくなるなどの影響があります。

Ⅱ型

双極性障害の生涯有病率は、4.130名を対象としたデータで、0.2%と低い値を示されたものがあります。その内訳は双極Ⅰ型障害が0.08%、双極Ⅱ型障害が0.13%でした。厚生労働省の報告書では0.4%となっています。発症年齢の平均は、日本では20~30歳代と考えられています。

 

治療法

双極性障害は様々な原因が関連しています。そこで治療するには様々な手法を組み合わせていく必要があります。当コラムでは、以下の7つを紹介します。

①薬物療法
②心理教育
③認知行動療法
④社会リズム療法
⑤入院治療
⑥電気痙攣療法
⑦制度の利用

情緒不安定の改善方法

 

①薬物療法

双極性障害は脳内物質の乱れによって起こることがわかっています。脳内物質の乱れを自力で治すのは非常に難しいです。そのため、双極性障害では、お医者様と二人三脚で、個人にあったお薬の種類や量を探していくことが基本になります。双極性障害では様々なお薬がありますが、以下の2つはおさえておきましょう。

日本うつ病学会の双極性障害治療ガイドラインでは「最も推奨される治療」としてリチウムがあげられています。リチウムは、躁病エピソードと抑うつエピソードの両方に対する予防効果が期待できるとされています。

副作用としては、口渇、多飲、多尿、細かい震え、吐き気、胃部不快感、食欲不振、下痢などがみられることもあります。

双極性障害の抑うつエピソードに効果が期待できるのは、クエチアピンです。その次に効果が期待できるのはオランザピンであると言われています。効果としては、不安感、緊張感、意欲の低下を改善が挙げられます。副作用としては、不眠、頻脈、不安、頭痛、めまい、易刺激性などがあります。

 

②心理教育

双極性障害は、基礎知識をおさえ、自分自身の症状の傾向を理解していくことがとても大事です。心理教育は、公認心理師とのカウンセリング、精神科のデイケア、書籍などで行われることが多いです。具体的には以下のような形で行われます。

疾患と治療法について知識を学ぶ
ストレスを予測し対策を立てる
気分状態を自覚できるようになる
再発の初期兆候を知り家族等と共有

また、専門家から学ぶだけでなく、自分自身で積極的に学ぶことも大事です。本を読んだり、当事者の動画を見ることが大事になってきます。

 

③認知行動療法

認知行動療法は様々な心理学のエッセンスが盛り込まれた心理療法です。認知行動療法は大きく分けると3つの分野があります。

・認知療法
思考の歪みを発見し、柔軟にしていく手法です。考え方が偏りやすく、極論してしまう方におススメです。認知療法を学ぶと気分の波を緩やかにすることができます。

・行動療法
行動療法は行き過ぎた行動を修正する練習をする手法です。例えば、うつ状態のときは引きこもりがちになってしまう方がいますが、とりあえず散歩だけはしてみるなど、実生活の改善のノウハウがつまった手法です。

・マインドフルネス
マインドフルネスは気分に流される状態を客観的に冷静に観察する手法です。感情の赴くまま行動してしまう方におススメの療法です。

詳しく学習したい方はこちらの認知行動療法コラムを参考にしてみてください。私がしっかり解説させて頂きました。

 

④社会リズム療法

社会リズム療法は、良好な人間関係を築く手法を学ぶことで、双極性障害から派生する対人関係の問題を緩和していく手法です。対人関係療法とも言われます。特徴は以下の通りです。

過去ではなく現在の人間関係を扱う
精神内界ではなく対人関係を扱う
パーソナリティは治療の焦点にはしない

社会リズム療法を学ぶと、人間関係のストレスが改善され、感情の揺れ動きを安定させる効果があります。書籍もたくさん販売されているので参考にしてみてください。なお弊社の講座でも対人関係療法に近いワークを実施しています。社会復帰の時期や、予防をしたい場合にご活用ください。

人間関係講座

Miklowitz(2007)は双極性障害のうつ状態の患者に対して、

対人関係療法を受けた群
心理教育

を受けた群の1年後の状態を確認しました。その結果、対人関係療法などの心理社会的治療を受けた群では、163名中、105名が回復しました(64.4%)。心理教育を受けた群(130名中、67名が回復(51.5%))よりも統計学的に有意に回復した人が多かったと言えます。

このように、対人関係療法といった周囲の対人関係に焦点を当てた治療は、双極性障害のうつ状態の回復に役立つと考えられます。

 

⑤入院治療

症状が深刻で生活がままならない場合は、入院をして集中的な治療をすることもあります。入院治療の必要なケースは

日常生活が成りたたない
暴力など他者を傷つける恐れがある
自傷、自殺など自身の生命の危険の恐れがある

などのケースが考えられます。場合によっては、本人が抵抗してスムーズな入院治療が難しいことがあります。その場合は、家族の同意が得られれば入院治療が進むことがあります。これは医療保護入院と呼ばれます。入院後は、薬物療法や心理療法を基本としながら、生活リズムを整え、社会復帰を目指していくことになります。

⑥電気けいれん療法

脳内に電気刺激を流して、脳の機能を改善する治療法です。脳内に直接電気刺激を与えるため、身体に大きな負担となります。そのため現在では、従来の電気療法より安全な治療法が開発されています。その1つが「無けいれん性電気療法」です。

無けいれん性電気療法は、筋弛緩剤などを用いて体の緊張を起こさせない電気療法で、双極性障害の治療での効果も分かっています。

秋本ら(1990)は、無けいれん性電気療法を用いた症例を報告しています。

【症例:50歳の女性】
・躁うつ病
・無気感や罪責感強い
・自殺企図がある

うつ病薬が効かず、うつ病や躁病を繰り返し、無動・無言、退行などヒステリー解離状態。日常生活も全面介助状態でした。

治療では、計6回の無けいれん性電気療法を実施しました。その結果、治療後にはヒステリー解離状態が改善し軽うつ状態で経過しました。

電気けいれん療法は、症状が重たい方に対して、比較的大きい病院で行われます。薬物療法でも効果がない場合に検討する治療法のため、治療法の存在をまずは押さえておくといいでしょう。詳しくは主治医の方とよく相談してみてください。

 

⑦制度の利用を考える

双極性障害は一発で全快するというより長い時間をかけて、うまく付き合いながらコントロールしていく心の病気です。長い時間かかりそうな場合は国の制度も利用してみましょう。

精神障害者保健福祉手帳
各種割引が受けられる手帳です。医療費が安くなる、交通機関を安く利用できるなどのメリットがあります。

精神障害者保健福祉手帳の手引き


相談支援事業
相談支援事業は生活全般についてのあらゆる相談に乗ってくれる支援事業です。専門の支援員がついてくれるので物理的にも精神的にも大きな心の支えになってくれます。是非利用してみてください。

相談支援事業


障害者就労支援
双極性障害が長引いたとしても、仕事を続けたい方はたくさんいます。この時、一般企業にいきなり就職すると負担が大きすぎたり、理解を得られず悪化してしまことがあります。障害者就労支援では、症状に理解する支援員のもと、仕事を続ける制度です。

障害者就労支援

気分障害,回復,MiMi様作成

 

心理療法の講座のお知らせ

最後に、これまで「双極性障害」コラムにお付き合いしていただき、ありがとうございました。皆さんの症状が少しでも軽くなるヒントになれたならとてもうれしいです。

専門家から心理療法や人間関係を学びたい!という方は良かったら私たち公認心理師が開催している、心理学講座への参加をおすすめしています。講座では

・認知行動療法の学習
・認知の歪みの改善
・感情のコントロール法
・ストレスを溜めない断り方

などを学習していきます。参加のタイミングとしては、社会復帰の準備をしている時期、復帰後に再発を予防したい時期におすすめです。皆さんのご来場をお待ちしています。↓興味がある方は以下の看板をクリック♪↓

心理学講座,心理慮法

 

 

*出典・参考文献
・Basco Monica Ramirez 野村総一郎(訳)(2016) バイポーラワークブック 星和書店

・Denise E. Wilfley他 水島 広子 (訳) (2006)グループ対人関係療法~うつ病と摂食障害を中心に~ 創元社

・加藤忠史(2011) 双極性障害~病態の理解から治療戦略まで~ 医学書院

・秋本 有美子・平澤 伸一 1990 無痙攣性電撃治療が著効を示したうつ病,ヒステリー状態の1例 東京女子医科大学雑誌 60(7), 600-600, 1990-07-25.

・Miklowitz, D. J., et al. (2007) Psychosocial Treatments for Bipolar Depression: A 1-Year Randomized Trial From the Systematic Treatment Enhancement Program. Arch Gen Psychiatry, 64(4), 419–426.