罪業妄想の克服方法,治し方
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「罪業妄想」について解説していきます。目次は以下の通りです。
①罪業妄想とは何か
②罪業妄想の症状
③関連する診断
④罪業妄想の克服法
当コラムの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。
お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。
①罪業妄想とは何か
意味
まず、罪業妄想の意味について捉えていきましょう。罪業妄想とは、
自分が規律に違反したために、罰せられなければならないという病的な確信のこと。
というように定義されています。罪業妄想は些細な過失を過大評価し、それに対して処罰されなければならないと考えています。基本的にはうつ病の思考障害の一つと捉えられています。
種類
罪業妄想はうつ病の微小妄想の一つです。少しわかりにくいので、下の図を見てみましょう。
微小妄想には、3つの自己を過小評価した妄想が含まれます。罪業妄想、貧困妄想、心気妄想で「うつ病の三大妄想」としています。
②罪業妄想の症状
罪業妄想の症状としては以下のようなものがあります。
・過去の些細な失敗を重大な罪と考える
・周囲の悪い問題をすべて自分せいだと責める
・罪を犯したと思い警察に出頭する
などが挙げられます。罪業妄想の症状は、抑うつ気分から生じてくるものです。そのため、自分を責めることで抑うつが強くなり、さらに症状が悪化する悪循環も生じやすいです。
③罪業妄想の診断
罪業妄想は診断名ではないので、この名前で診断がつくことはありませんが、”うつ病”として診断がつくことが考えられます。うつ病の診断基準についてはこちらを開いてください。
A.以下の症状のうち5つが同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。この症状のうち、少なくとも1つは①抑うつ気分②興味または喜びの喪失がある。
①その人の言葉か他者の観察によって示されるほとんど一日中、ほとんど毎日の抑うつ気分
②ほとんど一日中、ほとんど毎日の活動における興味または喜びの著しい減退
③食事療法なしに有意の体重減少、増加(1か月で5%以上の変化)。ほとんど毎日の食欲の減退増加
④ほとんど毎日の不眠、過眠
➄ほとんど毎日の運動焦燥または動制止
➅ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退
⑦ほとんど毎日の無価値観、または過剰、不適切な罪責感
⑧思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる
⑨死についての反復思考
B.その症状は臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
C.そのエピソードは物質の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない
この中で、「⑦ほとんど毎日の無価値観、または過剰、不適切な罪責感」が罪業妄想に関連します。これが単に自分をとがめたり、病気に対する罪悪感ではなく、妄想的であることがポイントです。
④罪業妄想の克服方法
罪業妄想の克服方法としては以下が挙げられます。ご自身にあてはまる項目がある場合は参考にしてみてください。
うつ病の治療に準じる
罪業妄想の治療法に関しては、うつ病の治療に準じたものになります。うつ病の治療についてはこちらに詳しく解説をしてあります。
うつ病の症状と治療法
医療機関が
罪業妄想として症状がはっきりと表れている場合は、医療機関の受診が必要です。精神科や心療内科でしっかり治していくことが基本になります。精神科では薬物治療が行われます。症状や体調に合わせ、身体への負担が少ない薬から処方されます。医師の指導に基づき飲むようにしましょう。
認知療法
認知療法は、考え方をほぐす心理療法で、うつ病の予防や治療に効果があることが実証されています。患者の頭に浮かぶ考え方のクセに目を向け、認知の偏りを修正し思考のバランスをとっていきます。
罪業妄想では、些細なことを重大な事項として捉えて、罪責感を強く抱いてしまいます。こうした思考は、「拡大解釈」や「自己関連付け」と捉えることができます。こうした思考の癖を認知療法によって修正し、思考の偏りを軽減していきます。
罪悪感を改善する
筆者は罪悪感を改善する方法を提案させて頂いています。罪の意識を集中的に考え直したい方は以下のコラムを参照ください。
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*出典、引用文献
高橋三郎,大野裕(2014) DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き 医学書院