うつ病の症状と治療法

皆さんこんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史です。私は現在心理学講座を開催しています。今回のテーマは「うつ病」です。目次は以下の通りです。

①うつ病とは何か
②うつになる原因
③医者か自力かの判断
④治療法
⑤支援、接し方

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。心理的な視点からうつ病の知識を身に付けてもらえたらうれしいです。

なお動画解説もあります!一度ご覧いただいてから読み進めていくと理解が深まると思います。

 

①うつ病とは何か

定義

うつ病は、厚生労働省によると以下のように定義されています。

興味や喜びの消失など精神的な問題を抱え、日常生活に支障をきたすレベルの不眠や倦怠感などが起こる病気

厚生労働省(2014)の患者調査によると、精神疾患を有する人は全部で420万人で、うつ病は95万7千人いるとされています。

生涯有病率

樋口(2012)はうつ病の生涯有病率について調査を行いました。その結果、男性は4.2%、女性は8.3%であることがわかりました。女性は2倍から3倍なりやすく、これは世界的に見ても共通した傾向です。

 

精神的な症状

うつ病の症状は、精神面と身体面、2つの側面に現れます。精神的な症状としては以下が挙げられます。

日内変動
朝きつく夕方には楽になりやすいといった特徴があります。日内変動はうつ病の典型的な症状です。

興味が減退
興味や楽しさが喪失します。これまで好きだった趣味や熱心にやっていたことに関心が無くなります。

罪の意識 

うつ病になるとできないことが増えるので「自分はダメだ」と感じ罪悪感を持ちやすくなります。

貧困妄想
経済的に問題がないにも関わらず「お金がない」「破産した」など極端にお金の心配をしてしまいます。

 

体的な症状

川上(1997)はうつ病で認められる身体症状の出現率を調査しました。その結果の一部が下記となります。

易疲労感 86%
非常に疲れやすくなります。少し歩くだけで疲れたり、普段の仕事を続けるのが困難になったりします。

不眠 79%
不眠症状が頻繁に出ます。寝つきが悪い、寝むりが浅い、何度も起きる等、眠た感じが得られなくなります。

吐き気:51%
食欲が減退し、好物ですら美味しさを感じなくなり、無理をして食べると吐き気が伴うことがあります。

体重減少:58~74%
食欲不振から、体重が減ってしまいます。体力が低下するため、他の病気を併発する場合もあります。

うつ病の方は、疲れやすく、寝つきが悪くなります。身体の調子を崩すので、余計に精神的に負担に感じるようになります。

 

深刻な影響

WHO(2020年)は健康な生活を阻害する疾患を調査し、その結果をランキングにしています。具体的には、うつ病は第2位、エイズは10位です。うつ病は、日常生活に大きなダメージを与える疾患であることがわかります。

うつ病の症状

 

②うつになる原因

うつ病の原因は多岐にわたります。今回は代表的な5つの原因を紹介します。

神経伝達物質欠乏仮説

神経伝達物質欠乏仮説は、別名(モノアミン仮説)とも言われています。神経伝達物質は、体や心を活発にしたり抑制する物質で100種類近くあります。その中の一つに心のバランスを整える「セロトニン」という物質があります。

セロトニンは脳のほうせんかくで作られ脳内に行きわたります。しかしうつ病になると、セルトニンが不足し脳内に上手く回らなくなるのです。

病前性格 

性格がうつ病の原因になる場合もあります。例えば、うつ病になりやすい性格傾向を「メランコリックな性格」と言ったりします。メランコリックな方は生まれつき心配性で落ち込みやすいと言われていており、うつ病のリスクが高いことがわかっています。

病前性格は、ある程度は遺伝的に決まっているため根本的には変えられません。無理に陽気にしても上手くいかないことが多いので、メランコリックな性格を受け入れつつ、むしろ活かしていくような視点が大事になります。

メランコリーとは何か

心の問題

心の問題を抱えている場合にうつ病になるケースもあります。例えば「幼少期に虐待を受け心の傷になっている」「将来を悲観的に考えすぎて落ち込む」「ネットで悪口を言われひどく傷つく」などが挙げられます。心理的に問題を抱えていると発症リスクが上がるので注意が必要です。

環境

大きなストレスは、うつ病の発症リスクを向上させます。例えば、「育児を一人で行う」「残業が多すぎる」「極度に狭い職場空間に一日中いる」「経済的に不安定で貯蓄を切り崩している」など、生活のさまざまなストレスがうつ病を招きます。

病気

体の病気がうつ病を招くケースが多くあります。例えば、癌になると30%前後、糖尿病になると25%、甲状腺に関する病気「バセドウ病」や「橋本病」になると30%くらいの割合でうつ症状が出やすいことがわかっています。

大きな病気が発見された時は、身体の状態や病気が悪化する、職場に戻れるか、子どもの将来、など不安を感じやすくなります。身近にいる方が大きな病気になった時には、うつ病になるリスクが高いことを頭に入れて見守るようにしましょう。

うつ病になる原因

 

③医者か自力かの判断

うつ病の疑いがある場合、多くの方は病院に行くレベルか判断に迷うとお思います。この場合は以下の2点を意識してみてください。

症状の確認

先ほど紹介した、うつ病に特徴的な精神症状・身体症状について当てはまる項目が多いと感じた場合には、医療機関を利用しましょう。

特に、貧困妄想や自殺企図がある方は特に注意です。「死にたい」と口にしてしまう、自殺の方法を調べたり、必要な道具を準備する状況は非常に危険です。自力で治そうとは考えず、すぐに医療機関に行くようにして下さい。

簡易診断

さほどうつ症状が強い状況ではない場合には簡易診断も参考になります。厚生労働省が公開している「簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS -J)」では、16 項目の合計点からうつ病の重症度を5段階で確認できます。

0-5  :正常
6-10:軽度
11-15:中等度
16-20:重度
21-27:きわめて重度

中等度くらいを目安に、医療機関に行くようにして下さい。簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)は、以下のリンクより確認できます。

簡易抑うつ症状尺度

うつ病診断

 

④治療法

以下、うつ病の発症から職場復帰までの治療法を網羅しました。

医療機関が基本
休息と薬物療法
地域活動支援センター
精神障がい者手帳
リワークデイケア
就労継続支援
認知行動療法

ご自身の状況に合わせてご活用ください。

医療機関が基本

うつ病は、体にも症状も出るため多くの人は内科を受診します。症状が軽ければ内科で改善が図れますが、精神科や心療内科でしっかり治していくことが基本になります。精神科では薬物治療が行われます。症状や体調に合わせ、身体への負担が少ない薬から処方されます。医師の指導に基づき飲むようにしましょう。

休息を取る

うつ病の治療方法の基本は「休息」です。休息期間は、軽度であれば1か月くらいですが、平均的には3か月~6か月ほど必要です。場合によっては、数年単位かかる場合もあります。お医者様の指示に従い、心を休めるようにしましょう。

認知行動療法

認知行動療法は、考え方や行動のあり方を楽にする心理療法で、うつ病の予防や治療に効果があることが実証されています。うつ病になると悲観的な思考が増え、起きてもいない問題に不安を膨らませ、自分を追い詰めてしまいます。認知行動療法は、患者の頭に浮かぶ考え方のクセに目を向け、認知の偏りを修正し思考のバランスをとっていきます。動画でも解説しています。よかったらご覧ください。

認知行動療法のやり方

地域活動支援センター

地域活動支援センターは、精神障害者の日中の活動を支援してくれる全国規模の施設です。うつ病発症後の社会復帰プランの立案、さまざまな制度の紹介など、専門の相談員によるサポートが受けられます。施設内には、交流スーペースがあり、まったり過ごすこともできます。一人で自宅にいると暗くなりがちです。気分転換に利用するのもいいでしょう。

精神障がい者手帳

精神障がい者手帳は、うつ病の程度に応じて、精神障害の状態であることを認定する制度です。1級から3級まで等級があります。共通していることは医療費負担の軽減です。精神障がい者手帳があると医療費が1割負担になるため、経済的にとても助かります。うつ病が長期化しそうな場合は取得も視野に入れましょう。

リワークデイケア

リワークデイケアは、精神科や心療内科に通いながら生活リズムを整え、復職にむけた準備をするプログラムを意味します。例えば、オフィスワーク、社会生活技能訓練、ストレッチ、ストレスマネジメントなど、さまざまなプログラムを通して復帰の準備を整えていきます。社会復帰に不安がある場合には、利用してみてください。

就労継続支援

就労継続支援は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつです。一般企業への就職が不安、あるいは困難な場合に、うつ病の症状や体調に合わせて、就労訓練や仕事をおこなうことができます。就労継続支援には、雇用契約を結び利用するA型と、雇用契約を結ばないで利用するB型の2種類あり、お住いの市区町村の窓口やハローワークに相談すると、利用できる事業所を紹介してもらえます。

 

うつ病の治療法

 

⑤支援、接し方

うつ病は自分だけではなく周囲の方もなりやすい疾患です。支援の仕方、接し方を最低限確認しておきましょう。

重度の場合は医療機関へ

「死にたい」「お金がない」など貧困妄想が強くなっている場合は、迷わず医療機関へ行きましょう。本人に「病院へ行こうか」と優しく声をかけて通院を促しましょう。上手くいかない場合には、保健所に相談してみてください。状況によっては「医療保護入院」という制度を利用することもできます。また本人が暴れたり、自殺をしようとした場合は緊急事態です。警察や病院など行政の力を借りて対処しましょう。

長期戦を覚悟

うつ病の回復には期間が長くかかります。家族の方がうつ病になった場合には、長期戦を覚悟して取り組んでみてください。家族が焦ると、その焦りが余計に症状を悪化させてしまいます。温かくほっとできる環境を作ることが治療効果を高めることを意識しましょう。

安全な場所づくりを

うつ病の方に「○○した方がいい」「こうした方がいい」など言わないようにしましょう。普段通りに接しながら、安心できる場所づくりを心がけます。うつ病の方は、肩に5㎏のダンベルを載せて生活しているような状態です。心身共に疲れています。ゆっくりできる場所を用意しましょう。

肩の力を抜いて傾聴

傾聴姿勢を大切に、ゆったりとした気持ちでお話をしましょう。うつ病を治そうなどと思わず、普段通り、という姿勢を大切にしましょう。肩の力を抜いてゆったりとした気持ちで接するようにしてください。

共感的に聞く方法

限界設定

うつ病の方の支援はあなたができる範囲でOKです。一緒になってどんぞこまで悩む必要はありません。ここで大事なことは限界設定をすることです。限界設定とは、ここまでは助けるけどこれ以上は無理!というラインです。例えば、10分までは話を聴く、など自分なりのルールを決めておくといいでしょう。自分が無理をしない程度でかかわるようにしましょう。

限界設定のやり方

うつ病の方との接し方

 

心理療法の講座のお知らせ

最後に、これまで「うつ病」コラムにお付き合いしていただき、ありがとうございました。皆さんの症状が少しでも軽くなるヒントになれたならとてもうれしいです。

専門家から心理療法や人間関係を学びたい!という方は良かったら私たち公認心理師が開催している、心理学講座への参加をおすすめしています。講座では

・認知行動療法の学習
・認知の歪みの改善
・感情のコントロール法
・傾聴方法

などを学習していきます。参加のタイミングとしては、社会復帰の準備をしている時期、復帰後に再発を予防したい時期におすすめです。皆さんのご来場をお待ちしています。↓興味がある方は以下の看板をクリック♪↓

コミュニケーション講座,心理療法の学習

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

*出典・参考文献
・川上富美郎,Clin Neurosci15(9),1020, 1997より改変
・樋口輝彦,独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター,第4回未病社会の診断技術講演会「うつ病治療の最前線」,2012