境界性パーソナリティ障害の原因と症状

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のテーマは「境界性パーソナリティ障害」です。

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目次は以下の通りです。

①境界性パーソナリティ障害とは何か
②診断の流れ,基準
③心理的特徴
④治し方,心理療法

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

①境界性パーソナリティ障害とは何か

意味

境界性パーソナリティ障害とは以下の意味があります。

不安定な自己や 他者のイメージがあり、感情や思考のコントロールが苦手で、衝動的な自己破壊行為、他者に対する試し行為、などを特徴とする障害

英語では、 borderline personality disorderと表記し、 BPDと略されることもあります。一般用語としては、ボーダーラインと呼ぶこともあります。

歴史

境界性パーソナリティ障害は1950年代に精神科医であるカーンバーグが研究をはじめ、1980年代に精神疾患として明記されるようになりました。歴史的には40年前後しか経っておらず、精神疾患の中でも新しいと言えます

位置づけ

境界性人格障害は、パーソナリティ障害の中の1つです。パーソナリティ障害は3つに分類されます。

A群
奇異的な考え,理解しがたい行動が目立つ

B群
情緒不安定,激しい行動が目立つ

C群
不安が強い,内向的

境界性パーソナリティ障害はB群のうちの一つで、パーソナリティ障害の中でも代表的なものとなります。正式な統計はないのですが、おおよそパーソナリティ障害の50%程度が境界性と診断されると言われています。

パーソナリティ障害とは何か

男女比

男女比については諸説ありますが、1990年代の調査ですと、75%が女性と言う統計もあります。一方で男女比は同じぐらいという研究もあります。筆者の体感では、極端に女性が多いという印象はありません。

 

②診断の流れ,基準

診断の流れ

実際の診断は精神科や心療内科で行われます。ただし初診から境界性パーソナリティ障害という診断名がつくことは稀です。何度も面接を重ね、症状の変化などを把握する必要があるからです。また一度診断を受けたとしても、年齢を重ね、落ち着いてくると、障害ではないとされるケースもあります。

診断基準

境界性パーソナリティ障害は、DSM-5という診断基準によると、以下の基準で診断がなされます。

1.現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとする気違いじみた努力。

2.理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式。

3.同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像または自己感。

4.自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも二つの領域にわたるもの

(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、むちゃ食い)

5.自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰返し。

6.顕著な気分反応性による感情不安定性

7.慢性的な空虚感。

8.不適切で激しい怒り、または怒りの制御困難

(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いの喧嘩を繰り返す)

9.一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離性症状

以上の項目が5つまたはそれ以上が当てはまる。

 

③心理的特徴

境界性パーソナリティ障害は情緒的な不安定さが目立つ疾患です。特に以下のような特徴があります。

見捨てられ不安

見捨てられ不安とは身近な人がいなくなってしまうのではないか、本当は愛していないではないか、という不安を意味します。この不安から試し行為をしたり、自己犠牲的な行動に出てしまうことがあります。

空虚感

空虚感とは、漠然とした不安や無気力、無目的感などがあります。生きる意味を感じにくく、自暴自棄になる方もいます。

理想化とこき下ろし

今まで親しくしていた人に、ちょっとしたきっかけで暴言を吐いたりするような、両極端な対人関係のことをいいます。

その他、心理学の研究を以下に折りたたんで解説しました。症状の理解を深めたい方は参考にしてみてください。

秋山ら(2015)ではパーソナリティ障害に関して、青年期に多い特徴などの実態調査を行っています。その結果の一部が下図となります。

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上図のように「気分の変化」が50%あり一番多いです。同じように「気持ちの変化」も回答があり、情緒の不安定さが目立っています。次に、「自分がわからない」という項目があり、自己の曖昧さを示しています。

山口(2016)は、メンタライゼーションと境界性パーソナリティ障害との関連を調べています。メンタライゼーションとは自分と「相手の心の状態を理解すること」を意味します。研究の結果の一部が下図となります。

上図のように、境界性パーソナリティ障害の人は、自分に対しても、他人に対してもメンタライゼーションが苦手と言えます。いわゆる「我を失った状態になりやすい」と推測できます。

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④治し方,心理療法

境界性パーソナリティ障害は大きくわけて、心理療法と薬物療法の観点から治療をしていきます。当コラムでは、臨床心理学の視点から、よく使う対策を紹介します。

①心理教育
②弁証的行動療法
③メタ認知力をつける
④論理療法で現実的に考える
⑤見捨てられ不安への対処
⑥アンガーマネジメント
⑦STEPP法
⑧魅力として捉える

ご自身に役立ちそうなものを組み合わせてご活用ください。

①心理教育

境界性パーソナリティ障害において、自己理解を深めることは何より大事です。障害の特性を理解すると、混乱することが減る、人間関係の失敗が減る、自分を受け入れるきっかけになる、という効果があります。具体的には専門家から説明を受ける、書籍を読む、当事者の動画を見るなどが挙げられます。

②弁証的行動療法

境界性人格障害の方には、アメリカの臨床心理学者であるリネハンが開発した、弁証法的行動療法という手法が有効とされています。

弁証的行動療法は、思考の歪みを改善する、衝動的な行動を和らげる、など総合的なトレーニングを行っていきます。具体的には以下のようなトレーニングで改善していきます。

弁証法的行動療法,見捨てられ不安

*画像出典 Wikipedelia

それぞれのトレーニングは3時間程度で2回転、1年程度行うと良いとされています。ただし弁証的行動療法を実施している専門機関はそこまで多くはありません。筆者が探した限りは下記となります。参考にしてみてください。

東京都-目白メンタルクリニック
千葉県-あしたの風クリニック
山形県-酒田駅前メンタルクリニック

 

③メタ認知力をつける

メタ認知とは自分自身の感情や考え方を洞察することを意味します。境界性パーソナリティ障害の方は我を失う状態になりやすいのですが、訓練でかなり改善できます。

具体的には、自分の考えを把握するエクササイズや日記を書くことで、冷静に自分と向き合う練習を行っていきます。詳しくは下記のコラムを参照ください。

メタ認知のトレーニング法

④論理療法

BPDの方は、いったん思い込むと現実的に物事を考えられなくなっていきます。その結果、ありもしない事実で思い悩むことになります。

対処法の1つに論理療法とい手法があります。論理療法とは、偏った考えを、柔軟で現実的な考え方に変化させることで、感情を安定させる手法を意味します。

一度思い込むとなかなか元に戻れない…という方は下記のコラムを参照ください。

論理療法の基礎とトレーニング

 

⑤見捨てられ不安に対処

BPDの方には、見捨てられ不安が典型的に見られます。見捨てられ不安にうまく対処できないと、人間関係が不安定になりやすく、余計に症状を悪化させてしまいます。

見捨てられ不安に対処するには、自分の気持ちに気がつき、労わりながらうまくつきあっていくことが大事です。見捨てられ不安への対処は下記のコラムで詳しく解説しています。仲良くなると逆に不安になる…と感じる方は参考にしてみてください。

見捨てられ不安への対処

 

⑥アンガーマネジメント

BPDを抱える方の中にはイライラしてしまい、周りとうまくいかなくなってしまう方がいます。あてはまる方は、アンガーマネジメントを学ぶことをおすすめします。アンガーマネジメントとは、怒りを予防・制御するための心理療法プログラムで、不適切な怒りの感情をうまくコントロールすることを目指す手法です。怒りをうまくコントロールできない方は以下のコラムを参照ください。

アンガーマネジメントのやり方

⑦STEPP法

BPDの治療で最近注目されている治療方法に、STEPPSというものがあります。これは、「感情予測と問題解決のためのシステムズトレーニング」と呼ばれています。アメリカで開発され、境界性パーソナリティ障害に効果があるものとして注目されています。

STEPPSの治療プログラムの中では、感情とうまく付き合うためのスキルを習得していきます。感情とうまく付き合うためのスキルには5つあります。

距離を取る
激しい感情から、ひとまず感情体験から距離を取ります。

言葉にする
思考や感情について正確に言葉にする

意義を唱える
自分が持っている不適応な思考パターンについて、どのようにして異議を唱えるか学ぶ

気晴らしをする
激しい感情を乗り切るための気晴らしについて、どのようなものがあるか学ぶ

問題に対処する
実際の問題に向き合って対処することについて学ぶ

こうした感情とうまく付き合うためのスキルを身につけることで、自己破壊的な行動や対人関係の改善が図れます。ただし、日本ではSTEPPSを実施している精神科やカウンセラーが少なく、今後の発展が望まれます。

 

⑧魅力として捉える

境界性パーソナリティ障害がある方は、「障害」として分類されていますが、あくまでそれは精神医学の世界の中の話です。芸術、役者、小説、漫画、音楽などの分野ではむしろ「才能」として開花することもあります。

過去の有名人としては、太宰治、尾崎豊、マリリンモンロー ゴッホ、などが挙げられています。ご自身の特性も、前向きに活かせば魅力の1つになるという視点も持つようにしましょう。

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引用・参考文献

山口正寛(2016) メンタライゼーションと境界性パーソナリティ傾向との関連 : メンタライゼーション質問紙作成の試みから 福山市立大学教育学部研究紀要4, 129-136

秋山孝正,井ノ口弘昭(2015) こころの健康づくりを目指したパーソナリティ障害に関する基礎分析 日本知能情報ファジィ学会 ファジィシステム シンポジウム 講演論文集 31(0), 135-138

寺島瞳,藤里紘子,大久保智紗,山田圭介,伊里綾子,宮前光宏(2019) 境界性パーソナリティ障害に対する感情予測と問題解決のためのシステムズトレーニング(STEPPS)和洋女子大学紀要(60), 73-82

境界性パーソナリティ障害(BPD)へのグループ療法
https://www.stepps.website/