>
>
論理療法のやり方を初学者向けに解説,ABC理論,論駁

論理療法のやり方,ABC理論,論駁

みなさんこんにちは。公認心理師の川島です。私はこちらの心理学講座を開催しています。当コラムのテーマは「論理療法」です。

論理療法,イラストたあ子さん

当コラムでは以下の内容で進めていきます。

①提唱者アルバートエリス
②論理療法の基礎
③論駁とは何か
④練習問題
⑤発展コラム

論理療法の基礎からしっかり解説していきます。論理療法を学ぶと現実的な考えを元に、心を安定させることができるようになります。是非最後までご一読ください。

 

①提唱者アルバートエリス

論理療法の提唱者はアルバートエリスです。まずはエリスの人生について概観していきましょう。

母子家庭で育つ

エリスはペンシルバニア州で1913年に、3人兄弟の長男として生まれました。両親は離婚し母子家庭でした。

母親は双極性障害があり、家庭環境は不安定で、親から受けるべき暖かさをもらえなかったようです(Michael,2007)[1]。一方でエリスは「幼少期の不安定な環境は、逆境に立ち向かうためのきっかけになった」と述べています。

論理療法では、マイナスの考えを現実的に乗り越えていく手法がとられます。これは、エリスの子供時代における経験が影響していると言えそうです。

シャイな青春時代

エリスは青春時代とてもシャイな男性だったと言われています。しかし面白いところは、シャイだからと言ってあきらめないことでした。

エリスには有名な逸話があります。19歳になったエリスは「シャイ=女性にもてない」という考えに疑問を持ち、ブロンクス植物園で100人の女性に声をかけました。[2]

その結果、ナンパはうまくいかなかった(?!)のですが、穏やかに話をしてくれる女性も結構な割合でいたのです。

このように、エリスは青春時代に「思い込みは現実的ではないことがある!実際に確かめてみることが大事だ!」という原体験をすることになります。

臨床心理学の博士に

エリスはニューヨーク市立大学を卒業した後はノンフィクション作家としてデビューをします。この時、性的な側面を執筆するにつれ、人間心理への探求心が増し、コロンビア大学で臨床心理学の博士号を取得することになります。

博士号を取得した後は、当初主流であった精神分析を主体として活動しますが、だんだんと距離を置くようになっていきます。

論理療法の提唱

1950年代になるとエリスは独自の心理療法の開発に挑みます。そうして1955年になると、

Rational emotive behavior therapy 

を提唱することになります。これは日本語では論理療法と呼ばれています。

論理療法では、考え方を変えることが重要視されます。その根底には

人間の悩みは出来事に対する受け取り方に左右される

という理念があります。出来事を現実的に捉え、理性的に正しく考えることで、心は安定していくとされているのです。

世界中に広がる

論理療法はうつ病に効果があり、治療率は50~70%程度あると言われています。また、摂食障害、強迫神経症、パニック障害といった精神疾患にも有効であると考えられています。

そのため、エリスが提唱した論理療法は世界中に広がっていきました。アメリカとカナダの心理学者に対する1982年の専門家調査では、歴史上2番目に影響力のある心理療法士と見なされています。

現在日本では認知行動療法の中で活用されることが多く、精神疾患や、メンタルヘルスの向上のために広く使われています。

 

②論理療法の基本用語

ここからは論理療法を理解するための重要な用語を解説していきます。

外在化

外在化とは、自分の感情や考え方を、客観的な状態として把握できるようにする手法です。具体的には、紙に自分の感情や考え方を書き出して行います。

自分の考えを紙に書いて、外在化すると「自分はどんな考えを持っているのか?その考え方は現実的なのか?」と検証しやすくなります。

セルフヘルプ

セルフヘルプとは、自らが理論と技法を身につけ、それらを日常生活で実践することを意味します。悩みを抱えている人が自分自身で実践して悩みを減らすのがセルフヘルプの目的です。

自分自身で実践していくということは、つまり「自分のカウンセラーは自分」ということです。このセルフヘルプは、理論の中でも特に重要視されています。

ABC理論

ABC理論とは、人の悩みを生み出す過程を整理した理論です。具体的には以下に示す3つの要素を想定します。

Activating event:出来事
Belief      :考え方
Consequence   :結果

この3要素のアルファベットの頭文字がABCなので、ABC理論と言われています。具体例で考えてみましょう。

A:出来事
職場で上司に怒られた

B
:考え方
上司は私を期待外れと考えているに違いない

C
:結果
会社に行くことが辛い

このような流れになります。論理療法では、「Bの考え方」が悩みの根幹であると考え、このBを徹底的に考えていくのです。

イラショナル・ビリーフとは

論理療法では、考え方には「ラショナル・ビリーフ」と「イラショナル・ビリーフ」の2種類があると考えます。

「ラショナル・ビリーフ」
合理的な考え方
現実的な考え方
柔軟な考え方

「イラショナル・ビリーフ」
不合理な信念
非現実的
ねばらならない思考
過剰な悲観

ラショナル・ビリーフを多く持ち、合理的な考え方ができる人は、物事を現実的に把握し、メンタルヘルスは良好です。一方で、イラショナル・ビリーフを多く持ち、不合理な考え方をしてしまう人は、感情の振れ幅が強くなり、イライラしたり、落ち込みやすくなります。

怒りの感情コントロールを解説

 

③論駁とは

論理療法では、非合理的なイラショナル・ビリーフを、合理的な考えであるラショナル・ビリーフに変えることで悩みが解消されるとしています。イラショナル・ビリーフを変化させて合理的な考えに変えていくことを論駁(ろんばく)と呼びます。

エリスは論駁をする上で以下の3点を強調しました。

事実に基づいているか?
根拠ない思考は不安や恐怖、怒りにつながることが多いため、まずは事実確認をしっかり行います。

論理的な考えか?
感情的な考えに巻き込まれてしまうと、悩んでも仕方のないことを繰り返し考えてしまいます。自分の考えは論理的か?を意識します。

人をハッピーにするか?
人を不幸にする考え方は非合理なものであることが多いです。
自分や他人が幸せになる考え方か?を意識します。

このようにラショナル・ビリーフで出来事を考え直すと、今までとは違った状況を想像することができます。合理的な考え方を身につけると、起こる可能性が少ない出来事で悩む機会が減ります。

また被害的・自虐的な思考で、自分自身を苦しめることも少なくなります。その結果、日常生活が楽しくなります。

 

④論理療法‐練習問題

ここからは練習問題に取り組んでいきましょう。以下の例を論理療法を練習問題に取り組んでみてください。

練習問題①

A 偏差値40の大学に入学した

B 世の中は所詮は学歴だ! 
  これから不幸な人生になる 
  皆に馬鹿にされる

C 劣等感が強くなる 
  学校に行かなくなる

という状況の人がいたとします。Bについて3つの視点で論駁してみましょう。

・事実に基づいているか?
・論理的な考えか?
・人をハッピーにするか?

 

解答例

・事実に基づいているか?
学歴が低くても幸福な人生を歩んでいる人はいくらでもいる。

・論理的な考えか?
「良い大学→幸せ」と言うのは極論すぎる。世の中の90%ぐらいの人は大した学歴ではない。それでも楽しく暮らしている。

・人をハッピーにするか?
この考えを持つと私は一生自分を苦しめることになる。人を学歴で判断する人間になってしまう。幸せにはなれないようだ。

 

練習問題②

A 人前で話す時に手が震える

B 人前であがってはいけない 
  手が震えると馬鹿にされる 

C 人前で話すことを避ける

という状況の人がいたとします。Bについて3つの視点で論駁してみましょう。

・事実に基づいているか?
・論理的な考えか?
・人をハッピーにするか?

 

 

解答例

・事実に基づいているか?
あがってはいけない!と誰かが言っているわけではない。実際に誰かが馬鹿にしているわけではない。

・論理的な考えか?
手が震える人を馬鹿にしている人はおそらく1%もいない

・人をハッピーにするか?
手が震えるとからといって主張する機会を逃すと私は逃げ続ける人生になってしまう。これは幸せとは言えない。

 

動画解説

論理療法については動画でも解説しました。仕上げとしてご活用ください。

 

まとめ

今回は論理療法について解説してきました。繰り返しになりますが、論理療法は私たちの感情や考え方を

A:出来事
B:考え方
C:結果

この3つに分類していきます。私たちの感情はBの考え方の影響を強く受けます。日々ネガティブに考える癖があり、落ち込むことが多い方は、是非論理療法をご自身でも試してみてください。きっと、前向きな考えが増え、心を安定させる力がついていくはずです。心から応援しています。

 

④発展コラム

以下は発展編です。論理療法をもっと理解したい方は参考にしてみてください。

認知療法

論理療法の親戚として、アーロンベックが提唱した認知療法が挙げられます。両者はとても似ている心理療法で、両方とも学習するとお互いの理論をより深く理解することができます。

認知療法

現実検討力

非合理な信念を打ち破るには、現実検討力を高めて行くと効果的です。現実検討力とは、確率計算をしてみたり、長所と短所を見比べてみたりする手法です。合理的な考え方を増やすために有効です。下記のコラムも参照ください。

現実検討力

リフレーミング力

論理療法は考え方をほぐし、多角的な視点から考えることを大事にしています。一方で考え方の引き出しが少ない方もいます。考え方の引き出しを増やしたい!と感じる方は下記のコラムを参照ください。

リフレーミング力をつける

 

心理学講座のお知らせ

論理療法は現在、認知行動療法の1つとして学習することが多いです。より体系的に心理療法を学びたい方は、公認心理師主催の心理学講座をおすすめします。講座では

・論理療法の学習
・認知行動療法の学習
・不安感,緊張の改善
・感情コントロール法

を学んでいきます。筆者も講師をしています。皆様のご来場をお待ちしています。↓興味がある方は下記のお知らせをクリックください♪↓

コミュニケーション講座,心理療法の学習

・出典
[1]Michael Nagle for The New York Times  Albert Ellis, Influential Psychotherapist, Dies at 93
 
[2]Ellis, Albert  2000  How To Control Your Anxiety Before It Controls You. Citadel. *2