パーソナリティ障害の基礎と接し方

皆さんこんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史です。私は現在心理学講座を開催しています。今回のテーマは「パーソナリティ障害」です。目次は以下の通りです。

①パーソナリティ障害と歴史
②診断の特徴
③パーソナリティ障害の原因
④治療方法
⑤ご家族、友人の方へ
⑥具体的な事例

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に、特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。なお、コラムだけでなく動画でも解説をしています。合わせてご活用ください。

 

①パーソナリティ障害とは何か

まずはじめにパーソナリティ障害の基本的な理解を深めていきましょう。

歴史

1900年初頭、ドイツの精神科医であるクレペリンが精神病を「早期痴呆症(統合失調症)」「躁うつ病」「精神病質人格」の3つに分類しました。精神病質人格は統合失調症や躁うつ病の予備軍として位置づけられていました。

1960年代にはアメリカの精神科医であるカンバーグが他の精神疾患の予備群としてではなく、独立した精神疾患として「人格障害」と分類すべきと主張するようになりました。そして1980年代になるとアメリカの精神医学会の診断基準ではじめて「人格障害」という分類ができました。

日本では2000年代、日本精神神経学会において「人格障害」が差別や偏見を生みやすいという考えから「パーソナリティ障害」と名付けられました。

定義

パーソナリティ障害は、厚生労働省によると以下のように定義されています。

大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんだり、周囲が困る結果を招く精神疾患

パーソナリティ障害と診断された人は、生きづらさを強く感じるため、うつ病、社交不安障害、依存症など他の精神疾患を合併している傾向があります。

 

3つの分類

パーソナリティ障害は大きくわけて3つの分類があり、いくつかのタイプに分かれています。それぞれ特徴を以下にまとめました。

*妄想型パーソナリティ障害
不信感や被害妄想が強い。人の気持ちに対して想像力が豊か。

*シゾイド型パーソナリティ障害
人に対して無関心。自分の世界を大事にする。

*統合失調型パーソナリティ障害
風変わりな思考や行動、突拍子もない発言で愛される。

境界性パーソナリティ障害
見捨てられ不安があり人間関係が衝動的になる。ドラマティックな一面もある。

自己愛性パーソナリティ障害
自尊心が低く、賞賛されたいと必死。注目されることが好き。芸能活動で成功する方もいる。

*演技性パーソナリティ障害
他人からの注目を集める外見や演技的行動がある。キャラクターがあり魅力的な方が多い。

*反社会性パーソナリティ障害
無責任、他人を軽視、小さい時から窃盗や暴力が見られます。勇敢な一面もある。

回避性パーソナリティ障害
自己にまつわる不安や緊張が生じやすい、拒絶されることを恐れる。一度仲良くなると一途な一面もある

*依存性パーソナリティ障害
他者に対して過度に依存、孤独に耐えられない。人懐っこい一面もある

*強迫性パーソナリティ障害
完全主義で頑固、融通が利かない。職人気質なところがあり、仕事で大きな功績を残す方もいる

パーソナリティ障害には複数の種類があるため、どの分類に当てはまるかで症状が異なります。

 

②診断の特徴

パーソナリティ障害の診断にはいくつかの特徴があります。

時間がかかる

パーソナリティ障害の診断は、非常に難しいため診断されるまでに時間がかかることが多いです。精神科や心療内科に行ったからと言って、すぐに診断されるものではありません。何度か通院を重ねドクターとじっくり話を進める中で診断がされます。

バラつきがある

パーソナリティ障害には、複数の種類があるため、よく診断されるものと診断されないものがあります。また複数診断をされることも多いです。林(2008)が精神科病院に入院した患者7131人を対象にした調査によると、7131人のうち531人がパーソナリティ障害を持っていたことがわかりました。そして種類、タイプは以下の通りでした。

・境界性パーソナリティ障害
302人 診断率56.9% 女性78%
・特定不能(自己愛)パーソナリティ障害
116人 診断率21.9% 女性58%
・反社会性パーソナリティ障害
45人 診断率8.5% 男性89%

パーソナリティ障害の中では、境界性が最も多く、自己愛、反社会性が次いで多くなります。この3つが多くなることを抑えておきましょう。

診断率が下がる

パーソナリティ障害は年齢を重ねるごとに、診断されにくくなる傾向があります。例えば、20代では境界性と診断されていたにも関わらず、高齢になり診断がなくなるケースがあります。これは年齢を重ねるにつれて感情のコントールや社会的スキルを獲得したからと言えます。

 

③パーソナリティ障害の原因

パーソナリティ障害の研究はまだ未発展の状況ですが、遺伝と環境が大きくかかわっているとされています。

遺伝の問題

行動遺伝学の研究によると、性格の遺伝率は約3~5割と言われています。この点、パーソナリティ障害は性格の偏りとも言い換えることができるので、遺伝の影響を受ける精神疾患と言えます。

環境の問題

幼少期に身体的虐待を受けたり、ネグレクトにあったりすると、健康的な脳の発達、心理的な発達が阻害され、パーソナリティに長期的な問題を抱える方もいます。例えば幼少期に両親が不仲で精神的に不安定な仮定で育った子供が、成人してから境界性パーソナリティ障害と診断されるケースがあります。

心理的,社会的スキルの問題

パーソナリティ障害の原因には、心理的、社会的スキルが不足していることが挙げられます。例えば、人格に偏りがあったときに、感情を制御するスキルがないと、偏った人間関係になります。この点、パーソナリティ障害を持つ方でも、心理的なコントロール法や、技術的な学習を重ねると随分改善し、診断がおりなくなるケースもあります。

 

④治療方法

パーソナリティ障害の治療は、大きくわけて2つあります。

薬物療法

体調や症状にあったお薬が処方されます。元気がない時には「抗うつ薬」、不安が強い時、寝れない、汗が止まらない時には「抗不安薬」などが処方されます。

心理療法

精神分析
過去視点にたち、心を整理していきます。例えば、過去になんらかの嫌な体験がある場合、ここ頃が整理され、パーソナリティが安定することがあります。過去のわだかまりと向き合う必要があるため、比較的負担が多い療法になります。

認知行動
考え方の歪みを発見し、現実的にしていきます。問題のある思考プロセスを修正することで、認知による気分の波を緩やかにできるようになります。認知行動療法で、極端な行動を避けられるようになります

来談者中心
自分のペースで話をしながら心の整理をしていきます。カウンセラーはアドバイスや解決策を提示することはありません。患者が抱えている悩みや感情を自由に表現することで、あるがままの自分を受け入れていきます。比較的穏やかなやり方です。

アサーティブコミュニケーション
アサーティブコミュニケーションは自他を尊重し、柔らかく建設的な人間関係を築くための理論です。しっかり学習すると、トラブルが起こった時に解決しやすくなります。

⑤接し方・関わり方

今回はパーソナリティ障害のご家族、友人向けについて、接し方や関わり方を重点的に解説しました。過剰適応、限界設定、宣言をするというポイントがあります。

近すぎず、遠すぎず

パーソナリティ障害の方は、非常に魅力的な方が多いです。そのため、互いつの間にか、非常に深い関係になってしまうことがあります。必要以上に深い関係になると、互いにとってとても苦しい状態になってしまうこともあります。お互いのためにも、適度な距離を保つことを心がけてください。

過剰適応しない

パーソナリティ障害の方は、すごく魅力的で感情を揺さぶられることが多くなります。気が付けば一日中その人のことを考えてしまう状態になることもあります。このように人生を相手に捧げているような状態は、過剰適応状態といいます。例えば、LINEが毎日届きすべてを即レスしているようなら「もしかしたら過剰適応しているかも…」と気づくようにしましょう。

限界設定を宣言

限界設定とは、ここまでOKこ以上はNGと線引きしルールを相手に伝えます。最初は困惑するかもしれませんが、ルールを明確に守ると長く付き合えることが相手も納得できます。要求が激しくなってきているときは 自分が対応できる範囲を曖昧にせずルールを明確にして相手に宣言しましょう。

魅力を大事に

パーソナリティ障害の方は、魅力的で会話をしていると楽しい方が多いです。特徴として1対1の関係でどっぷりつかると、しんどくなることが多いため、集団で少しずつ支えるような感じにするとよい関係が続きます。パーソナリティ障害だから煙たがるのではなく、ルールを守ってもらいながらその魅力を発揮してもらえるようなコミュニティを作ることが大切になります。

動画でも解説しています。是非参考にしてみてください。

 

⑥具体的な事例

川島の事例

<患者>
Aさん
35歳の男性
容姿端麗
境界性パーソナリティ障害と診断済み

<悩み>
人間関係がうまくいかない、気が付くと喧嘩になってしまう。異性とつきあってもすぐに別れてしまう。

Aさんのカウンセリングを進めていくと、「先生と話すと気が楽になります。続けます!」とお話するようになっていました。気がかりだったのが「川島先生にあえてよかった!!」と発言し、私川島を理想化している状況でした。あまり良い傾向ではないな…と感じていましたが、カウンセリングを継続していきました。

Aさんは2か月ぐらいしてから、カウンセリングの時間外に頻繁に電話をかけてくるようになりました。電話での相談はしない事を、最初にしていましたが、それでもかけてきてしまう状態です。「カウンセリングのときに聞くよ」となだめて電話を切ると1時間後にはまたかかってくる…、さらにエスカレートし夜も電話がかかってくるようになってしまいました。最後には夜電話に出ないと、留守電に悩みを一方的に入れるようになっていきました。私はここで「これ以上電話をかけるとカウンセリングを止める」と限界設定を明確にしました。


限界設定を宣言すると「死にたい」という留守番電話が入るようになりました。ここでさらに私は「自殺企図が有る場合は、警察を呼ばざるを得ない」とさらに強めの限界設定を宣言をしました。いったんは納得してくれたようだったのですが、その夜にはまた留守電に入る状態でした。私は実際に警察を呼びました。限界設定を越えるとちゃんと行動に起こすことを示しました。


カウンセリングは、しばらくおやすみをしてクリニックでしっかり治療をされました。症状が落ち着いた時期にカウンセリングを再開し、感情のコントロール法を重点的に練習しました。その結果、1年くらいはかかりましたが、見捨てられ不安が出たときにすぐ行動しないようにできるようになりました。その後結婚をして、健康的な家庭を築いてらっしゃいます。そして今でもたまに連絡をくれます。

 

心理療法の講座のお知らせ

最後に、これまで「パーソナリティ障害」コラムにお付き合いしていただき、ありがとうございました。最近の心理学の研究では、パーソナリティ障害は、心理療法である程度は改善できることがわかっています。専門家から心理療法や人間関係を学びたい!という方は良かったら私たち公認心理師が開催している、心理学講座への参加をおすすめしています。講座では

・認知行動療法の学習
・認知の歪みの改善
・感情のコントロール法
・傾聴方法

などを学習していきます。参加のタイミングとしては、社会復帰の準備をしている時期、復帰後に再発を予防したい時期におすすめです。皆さんのご来場をお待ちしています。↓興味がある方は以下の看板をクリック♪↓

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*出典、参考文献
林直樹(2008),パーソナリティ障害診断の現状と問題点:都立松沢病院病歴統計から,精神経誌,110,9,p805-p812