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来談者中心療法入門①カールロジャース,技法,わかりやすく

来談者中心療法入門①

みなさん、こんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。当コラムのテーマは「来談者中心法」です。

来談者中心法

目次は以下の通りです。

①カールロジャースとは
②来談者中心法の特徴
③具体的な技法
④一般の方でも活かせる

来談者中心法の基礎からしっかり解説していきます。援助職の方、福祉職の方、カウンセラーを将来的に目指している方は是非参考にしてみてください。

①カールロジャースとは

来談者中心法のカールロジャースは1982年のアメリカ心理学会の調査で、「最も影響力がある10人の心理療
法家」のうちの第1位に選ばれています。来談者中心法は、ロジャースの生涯を追っていくと基本的な価値観を理解しやすくなります。まずはロジャースの人生を追っていきましょう。

生まれ

ロジャースは1902年、イリノイ州に生まれました。両親はプロテスタント系で、熱心に信仰していました。両親の口癖は

人間は罪深い 人間が救われるのは労働である

というものでした。そもそも人間は罪深い…という哲学は、後に反抗する形で来談者中心法へ反映されていきます。

カールロジャース,キリスト

神学から心理学への転向

両親の影響もあり、ロジャースは牧師になるべく、ユニオン神学校大学院に進みました。しかし、実際に学んでみると、宗教には限界があると感じるようになります。

その1つの理由に学生結婚があるともいわれています。当時学生同士で結婚するのはタブーのようなところもあり、歓迎されなかったようです。

ただ私たちは人間です。好きであるという気持ちと宗教を秤にかけた時、ロジャースは宗教とは何か?人間とはなにか?と思い悩んだと思われます(これは私の推測です)

そうして、ロジャースは無神論者となり、学問としての心のあり方に興味を持ちます。その後は、神学校を辞め、コロンビア大学へ籍を移し、臨床心理学を学ぶことになるのです。

児童虐待防止協会での原体験

コロンビア大学を卒業すると、ロジャーズはニューヨーク州にある児童虐待防止協会に就職します。非行少年や保護者のカウンセリングにも携わります。

当初ロジャースは、伝統的な分析的な技法に基づき、カウンセリングを行っていました。ある日、非行少年の母親がカウンセリングに訪れます。ロジャースはいつものようにカウンセリングを繰返すのですが、どうもうまく行きません。

もうカウンセリングをやめようという時に、ロジャースはあれやこれやと指示することをやめます。そして母親自身の話をよく聞くようにしたのです。すると結果的にうまく問題が解決していったのです。

ロジャースはこの時期に、問題はクライエント自身が一番理解しているという事に気が付き、それを支えるようなカウンセリングのあり方が大事であることを理解していきました。

クライエント

来談者中心法の提唱

ロジャースは12年間、児童虐待防止協会で働き、その後は、 オハイオ州立大学、シカゴ大学、ウィスコンシン大学で指導者として活躍します。その傍らで、非指示的カウンセリングを提唱し、その後、来談者中心法と改名しました。

来談者中心法の哲学は、人は「成長・自律・独立等」に向かうという点です。カウンセラーは、それを共感的に理解することに重要であるとされています。晩年はさらに、パーソンセンタードアプローチと呼ぶようになっています。

パーソンセンタード・アプローチは、個人が抱える悩みや問題への支援に留まらず、人種問題や民族紛争の解決にも使われました。具体的には、エンカウンターグループと呼ばれる手法で、戦争の防止などに貢献をしました。

*ロジャースによるエンカウンターグループの様子

 

②来談者中心法の特徴

来談者中心法にはどのような哲学や特徴があるのでしょうか?以下ポイントをまとめました。

非支持の姿勢

「人間には本来、自然な成長の能力がある」という前提で、その人のパーソナリティを考えます。そして、人間のもつ成長潜在能力を引き出すことで、パーソナリティの受容と成長が達成されると考えます。そのため、非指示的な関与を特徴とします。

あれこれとアドバイスしたり、解決策を提示することはありません。悩みを抱えているひとが自らの態度や感情を自由に表現させるためのかかわりが重要視されます。

そして、非指示的なかかわりを継続した結果として、必然的に洞察や自己への気づきがもたらされるとしています。

クライエント

来談者中心法では、心理カウンセリングで悩みを抱えているひとを患者ではなくて「クライエント」と呼びます。医療現場では、医師と患者という関係があり、基本的には患者が、 その指示に従うことが多くなります。

来談者中心法では、患者ではなく、治療はあくまで自分自身で行うものであるので、クライエントという呼び方をしています。

自己概念と経験,自己不一致

ロジャースは自己概念と経験という重要な用語を使っていました。自己概念とは

理想とする自分,理想の自分の姿や状態

を意味します。私たちは多かれ少なかれ、こうありたい、こうなりたいというイメージを持っています。このイメージを自己概念と呼びます。一方で、経験とは

現実の自分,ありのままの自分

を意味します。今まさに存在している自分の姿そのものが経験となります。

自己一致,自己不一致

ロジャースはそして、差が小さい場合は「自己一致」と呼ばれました。「自己概念」と「経験」の違いが大きい状態を「自己不一致」と呼びました。以下の図は、自己一致と自己不一致を視覚化したものです。

自己一致

例えば、皆さんは自分の容姿にコンプレックスがありますでしょうか?人間だれしも完璧な容姿にはなれないものです。

身長が低い、肌が汚い・・・など誰でも少なからずあるものです。この時、すごく自分の容姿が気に食わない!と感じる場合は自己不一致状態となります。

一方で、容姿について、満足しているわけではないが、まあまあ受け入れている。これもまた人生、自分の愛嬌と考えられている場合は自己一致状態となります。

受け入れる姿勢を重視

来談者中心療法では「あるがままの自分を受け入れることを目的とするアプローチ」を重視しています。したがって、過去にさかのぼって原因を探したり、無理な努力を求めることがありません。

また、社会的によいと判断される考えかたや客観的な基準も、自己一致の状態を目指すときに障害になり得ると考えます。

もっとも大事な点は、こんな自分が嫌いだ、もっとこうなりたい、もっと完璧になりたい…という終わらない理想像に区切りをつけることが重要視されます。ただし充実感のある目標や生活のハリになるレベルなら理想を持っておくことも大事とされています。

下記はロジャーズの生前のカウンセリングの様子です。暖かい雰囲気が伝わってきますね。

 

③具体的な技法

ロジャースはカウンセラーの態度としては、以下にあげることが大切であると考えました。

3つの条件

・自己一致
話を聞く人がありのままの自分を受け入れている状態

・共感的理解
相手の考えや感情を相手の立場にたって感じたり考えたりする姿勢

無条件の肯定的配慮
相手がどんな人であっても異なる価値観を有する人間として認めていること

これらの条件を備えた人がそこにいて、悩みの抱えている人のパーソナリティ変容が促されるとロジャースは考えました。この3つの条件は、現代において傾聴の3条件とも呼ばれており、流派を問わず多くの援助者に用いられています。

あいづち

傾聴の基本は、あいづちを打ちながら相手の話を聴くことです。

来談者中心療法で用いられるあいづちは、私たちが日常生活で使っているものとほぼ同じです。クライエントの話の速度や強さに応じて、うなづきながら相手に合わせていきます。

あいづちには「うんうん」といった言語的表現が含まれます。一方でうなづきは、非言語的表現に当たります。治療者が言語・非言語のあいづちを用いることで、クライエントは安心感をもって話ができます。

オウム返し

オウム返しは来談者中心療法で用いられることが多い傾聴技法の1つです。

オウム返しとは「相手の言葉を繰り返す」ことです。相手の言葉をそのまま返すため、相手の話をしっかり聞いている姿勢を伝えることができます。

治療者は、クライエントの気持ちを汲み取ったうえでオウム返しをするようにします。

また連続で相手の言葉をそのまま返し続けると違和感が出るため、少し言い換えた言葉でオウム返しをすると和やかな会話が進められます。

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④一般の方でも活かせる

ロジャースが提唱した傾聴の3条件は、話を聞く人の態度について説明したものです。心理学的知識や専門的な心理技法について述べているわけではないので、意識すれば誰でも使える技法です。

他人の悩みを傾聴する時

例えば、友人と喫茶店で話をしている場面を考えてみましょう。世間話から始まって悩みを相談されることもあるでしょう。そのときに、以下のような答え方をしていませんか?

○○したほうがよいと思う
それはおかしいと思うよ
愚痴を言っているだけでは何も変わらない

これらのセリフは友人として本音で話しているため間違っているわけではありません。

しかし、友人は何よりあなたに、共感的に理解をしてほしかったのかもしれません。そしてアドバイスを安易にしてしまうのは、相手の考える力を奪ってしまうことにもなるのです。

共感的理解を使って相手の立場を考えることを意識すると、アドバイスや非難とは異なったセリフが出てきます。例えば…

そうかあ…大変な思いをしてきたんだね
愚痴を言いたいときもあるよね
〇〇なところが嫌だったんだね…落ち込むよね 

といったものが考えられます。このように共感的理解に基づいて傾聴をしていけば、あなたがわざわざアドバイスをせずとも、大概の人は問題を乗り越えていくのです。

自分の悩みの改善する時

来談者中心法は、他者関係だけでなく、自分との対話においても活用できます。例えば、

もっと良い大学に行きたかった
滑り止めで妥協した自分は弱虫だ

と思い悩んでいるとしましょう。来談者中心法を学習しておくと、悩みの原因は自己概念(目標)と経験(現実)のギャップにより起こっていることに気がつきます。そして自分との対話で以下のように励ますことができるかもしれません。

大学に行く目標は達成できた
滑り止めの大学でも好きな学部の勉強はできる

このように自己概念と経験のギャップを埋めるためのヒントになるのです。

まとめ

来談者中心療法は日本において、最もベーシックな心理療法として重視されています。カウンセラーはもちろん、福祉の現場、医療の現場、日常生活の人間関係でも活用することができます。大事な人の援助をするとき、自分自身の悩みを改善するときに、ぜひ参考にしてみてください。

 

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金原俊輔 長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所紀要 2013 11巻1号