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来談者中心療法入門①カールロジャーズ,技法,わかりやすく

来談者中心療法入門①

みなさん、こんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。当コラムのテーマは「来談者中心療法」です。

来談者中心法

目次は以下の通りです。

①カール・ロジャーズとは
②来談者中心療法の特徴
③3つの条件
④具体的な技法
⑤一般の方でも活かせる

来談者中心療法の基礎からしっかり解説していきます。援助職の方、福祉職の方、カウンセラーを将来的に目指している方は是非参考にしてみてください。

①カール・ロジャーズとは

来談者中心療法は、カール・ロジャーズ(Rogers, C.R.) の生涯を追っていくと基本的な価値観を理解しやすくなります。まずはロジャーズの人生を追っていきましょう。

生まれ

ロジャーズは1902年、イリノイ州に生まれました。両親はプロテスタント系で、熱心に信仰していました[1]。両親の口癖は

人間は罪深い 人間が救われるのは労働である

というものでした。この「人間は罪深い…」という哲学は、後に反抗する形で来談者中心療法へ反映されていきます。

カールロジャース,キリスト

神学から心理学への転向

両親の影響もあり、ロジャーズは牧師になるべく、ユニオン神学校大学院に進みました。しかし、実際に学んでみると、宗教には限界があると感じるようになります。

その1つの理由に「学生結婚」があるともいわれています。当時、学生同士で結婚するのはタブーのようなところもあり、歓迎されなかったようです。

ただ、私たちは人間です。好きであるという気持ちと宗教を秤にかけた時、ロジャーズは「宗教とは何か?」「人間とはなにか?」と思い悩んだと思われます(これは私の推測です)。

そうして、ロジャーズは無神論者となり、学問としての心のあり方に興味を持ちます。その後は、神学校を辞め、コロンビア大学へ籍を移し、臨床心理学を学ぶことになるのです。

児童虐待防止協会での原体験

コロンビア大学を卒業すると、ロジャーズはニューヨーク州にある児童虐待防止協会に就職します。非行少年や保護者のカウンセリングにも携わります。ある日、非行少年の母親がカウンセリングに訪れました。

当初ロジャーズは、非行少年向けのマニュアルに基づき、指導を行っていました。しかし、結果的にうまく行きませんでした。カウンセリングをやめようという時に、母親は「大人のカウンセリングはありますか」と質問されます。

ロジャーズは困惑しつつも、あれやこれやと指示することをやめ、母親自身の話をよく聞くようにしたのです。すると結果的にうまく問題が解決しました。

ロジャーズはこの時期に、問題はクライエント自身が一番理解しているという事に気が付き、それを支えるようなカウンセリングのあり方が大事であることを理解していきました。

クライエント

来談者中心療法の提唱

ロジャーズは児童虐待防止協会で12年間働き、その後、 オハイオ州立大学・シカゴ大学・ウィスコンシン大学で指導者として活躍します。その傍らで、1940年代に「非指示的カウンセリング」を提唱し、その後1950年には「来談者中心療法」と改名しました。[2]

来談者中心法,原著

来談者中心療法の哲学として大切にしていることは「人は成長・自律・独立等に向かう」という点です。カウンセラーは、それを共感的に理解することが重要であるとされています。近年では、「パーソンセンタードアプローチ」とも呼ばれています。

ロジャーズは晩年、エンカウンターグループと呼ばれる手法で、戦争の防止などに貢献をしました。また、1982年のアメリカ心理学会の調査で、「最も影響力がある10人の心理療法家」の第1位に選ばれ、心理療法に大きな成果をもたらしました。

*ロジャーズによるエンカウンターグループの様子

 

②来談者中心療法の特徴

来談者中心療法にはどのような哲学や特徴があるのでしょうか?以下ポイントをまとめました。

非指示の姿勢

来談者中心療法では、「人はみんな、自らを成長させるための力を持っている」という考えを前提としています。来談者自身が自分の生き方について主体的に語り、真剣に向き合う中で、来談者は自らを成長させることができると考えます。

そのため、この療法は「非指示的な関与」を特徴とします。カウンセラーがクライエントに対してあれこれとアドバイスしたり、解決策を提示することはありません。カウンセラーは、悩みを抱える人の話を受容的に傾聴していきます。

そうして非指示的なかかわりを継続した結果として、必然的に、クライエント自身に洞察や気づきがもたらされるとしています。

クライエント

来談者中心療法では、悩みを抱えている人を「患者」ではなく「クライエント」と呼びます。

医療現場では「医師」と「患者」という関係があり、患者が医師の指示に従うことが多くなります。しかし、来談者中心療法では「治療はあくまで本人が主体となって行うもの」と考えるため、「患者」ではなく「クライエント」という呼び方をしています。

自己概念と経験,自己不一致

ロジャーズは「自己概念」と「経験」という重要な用語を使っていました。「自己概念」とは

理想とする自分:理想の自分の姿や状態

を意味します。私たちは多かれ少なかれ、こうありたい、こうなりたいというイメージを持っています。このイメージを自己概念と呼びます。一方で、「経験」とは

現実の自分:ありのままの自分

を意味します。今まさに存在している自分の姿そのもののことです。

自己一致,自己不一致

ロジャーズは、この「自己概念」と「経験」が、どの程度一致しているのかという点に着目し、この差が小さい場合を「自己一致」、乖離している場合を「自己不一致」と呼びました。

自己一致

例えば、皆さんは自分の容姿にコンプレックスがあるでしょうか?

人間だれしも完璧な容姿にはなれないものです。身長が低い、肌が汚い・・・など、少なからずあるでしょう。このとき、自分の容姿が気に食わず「とても受け入れられない。鏡を見るのが耐えられない!」と感じる場合は自己不一致状態となります。

一方で、自分の容姿について完璧に満足しているわけではなくても「まあまあ受け入れている。これもまた人生、自分の愛嬌かな」と考えられている場合は自己一致状態となります。

受け入れる姿勢を重視

来談者中心療法では「あるがままの自分を受け入れること」を重視しています。したがって、過去にさかのぼって原因を探したり、無理な努力を求めることがありません。

また、社会的によいと判断される考え方や客観的な基準でも、自己一致の状態を目指す上では障害になり得ると考えます。

もっとも大事な点は、「こんな自分が嫌いだ、もっとこうなりたい、もっと完璧になりたい…」という終わらない理想像に区切りをつけることです。ただし、充実感のある目標や生活のハリになるレベルなら理想を持っておくことも大事とされています。

下記はロジャーズの生前のカウンセリングの様子です。暖かい雰囲気が伝わってきますね。

 

③3つの条件

ロジャーズはカウンセラーの態度として、3つの大切な条件があると考えました。[3]

自己一致

カウンセラーがありのままの自分を受け入れている状態が重視されます。自己一致ができていない状態だと、態度に裏表がある状態になり、相談する人が不信感を抱きやすくなります。

共感的理解

相手の考えや感情を「あたかも」自分のことのように感じる姿勢も大事にされます。悩みを想像し、理解する姿勢を十分に示すことで、相談者は安心して悩みを話し、考えられるようになります。

ただし、ここで大切なのは「あたかも」という点です。相談者の考えや感情に同調するのではなく、共感的に理解していくことが重要です。

無条件の肯定的配慮

相手がどんな考えや行動をしていても、まずは肯定的に受け止める姿勢を大事にします。例えそれが非倫理的な価値観であっても、本人なりにその考えに至った理由を肯定的に傾聴していきます。

 

これらの条件を備えた人に語っていく中で、クライエントは自らの自己一致に向かうことができると考えられています。この3つの条件は、流派を問わず多くの心理療法家が大事にしています。

 

④具体的な技法

来談者中心療法でよく使われる技法としては、以下が挙げられます。

あいづち

傾聴の基本は、あいづちを打ちながら相手の話を聴くことです。

来談者中心療法で用いられるあいづちは、私たちが日常生活で使っているものとほぼ同じです。クライエントの話の速度や強さに応じて、うなづきながら相手に合わせていきます。

あいづちには「うんうん」といった言語的表現が含まれます。一方で、うなづきは非言語的表現に当たります。治療者が言語・非言語のあいづちを用いることで、クライエントは安心感をもって話ができます。

オウム返し

オウム返しは来談者中心療法で用いられることが多い傾聴技法の1つです。

オウム返しとは「相手の言葉を繰り返す」ことです。相手の言葉をそのまま返すため、相手の話をしっかり聞いている姿勢を伝えることができます。

治療者は、クライエントの気持ちを汲み取ったうえでオウム返しをするようにします。

また、連続で相手の言葉をそのまま返し続けると違和感が出るため、少し言い換えた言葉でオウム返しをすると和やかな会話が進められます。

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⑤一般の方でも活かせる

来談者中心療法における中心的な技法は「話を聞く人の態度」について説明したものです。心理学的知識や専門的な心理技法について述べているわけではないので、意識すれば誰でも使えるものです。

他人の悩みを傾聴する時

例えば、友人と喫茶店で話をしている場面を考えてみましょう。世間話から始まって、悩みを相談されることもあるでしょう。そのときに、以下のような答え方をしていませんか?

○○したほうが良いと思う
それはおかしいと思うよ
愚痴を言っているだけでは何も変わらない

これらのセリフは、「本音で話している」という意味では間違っているわけではありません。

しかし友人は、何よりあなたに共感的に理解をしてほしかったのかもしれません。また、安易にアドバイスをしてしまうのは、相手の考える力を奪っていることにもなるのです。

共感的理解を使って相手の立場を考えることを意識すると、アドバイスや非難とは異なったセリフが出てきます。例えば…

そうかあ…大変な思いをしてきたんだね
愚痴を言いたいときもあるよね
〇〇なところが嫌だったんだね…落ち込むよね 

といったものが考えられます。このように、共感的理解に基づいて傾聴をしていけば、あなたがわざわざアドバイスをせずとも、大概の人は問題を乗り越えていくことができるのです。

自分の悩みの改善する時

来談者中心療法は、他者関係だけでなく、自分との対話においても活用できます。例えば、

もっと良い大学に行きたかった
滑り止めで妥協した自分は弱虫だ

と思い悩んでいるとしましょう。

来談者中心療法を学習しておくと、悩みは理想(自己概念)と現実(経験)のギャップにより生まれていることに気がつきます。そして、自分との対話で以下のように励ますことができるかもしれません。

大学に行く目標は達成できた
滑り止めの大学でも好きな学部の勉強はできる

このように、自己概念と経験のギャップを埋めるためのヒントになるのです。

 

まとめ

来談者中心療法は、日本において最もベーシックな心理療法として重視されています。臨床心理カウンセリングではもちろん、福祉の現場、医療の現場、日常生活の人間関係でも活用することができます。大事な人の力になりたいとき、自分自身の悩みを改善するときに、ぜひ参考にしてみてください。

 

仕上の動画

来談者中心療法について動画も作成しました。仕上としてご活用ください。

 

心理学講座のお知らせ

心理療法の基礎を公認心理師の元でしっかり学びたい方は、私たちが主催する講座をおすすめします。講座では

・来談者中心療法の哲学
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を行っていきます。筆者も講師をしています。皆様のご来場を心からお待ちしています。↓興味がある方は以下の看板をクリック♪↓

コミュニケーション講座,心理療法の学習

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] 金原俊輔(2013). カール・ロジャーズの生涯 長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所紀要, 11, 21-52.
 
[2] WorthPoint (2016). WORTHOPEDIA. BOOKS, PAPER, & MAGAGINES. CLIENT-CENTERED THERAPY BY CARL ROGERS – HC, 1951, 1ST ED., ANTIQUE, PSYCHOLOGY. WorthPoint. Retrieved from https://worthpoint.com/
worthopedia/client-centered-therapy-carl-rogers-464690908 (July 11, 2016)
 
[3] Rogers, C.R. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. Journal of Consulting Psychology, 21, 95-103.