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社交不安障害/社会不安障害の簡易診断,治療法

社交不安障害/社会不安障を簡易診断,治療法①

はじめまして!公認心理師の川島です。今回のテーマは
「社交不安障害/社会不安障害」
です。


改善するお悩み
・人と話すのが怖い
・社交場面から逃げる癖がある
・人と話すと異常に緊張する

全体の目次
入門①社交不安障害とは何か
入門②他人の目を気にする
入門③回避癖がある
入門④青年期に好発
入門⑤改善策
発展編
助け合い掲示板

入門①~⑤を読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。是非入門編は最後までご一読ください。もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもぜひお待ちしています。

筆者はもともと社交不安障害でした

筆者自己紹介

まずは筆者の川島達史の自己紹介からさせて頂きます。私は15歳から22歳ぐらいまで社交不安障害を持っていました。ざっと経験したことは以下の通りです。

赤面症、視線恐怖症、表情恐怖、人間関係の徹底的な回避、ひきこもり、ニート、自殺企図…本当に様々な症状を体験してきました。

社交不安障害の精神症状

幸運にも様々な心理療法と巡り合い、少しづつ回復して、社会復帰をすることができました。

私は現在、公認心理師、精神保健福祉士として、対人恐怖の改善や、講演活動をしています。

心を込めて執筆します

人生とは不思議なものです。私をさんざん苦しめた社交不安障害が、私の仕事になってしまっているのですから!

社交不安障害についてのコラムは、精神科医の方が執筆されることが多いのですが、このコラムは、当事者としての体験談と、心理師として心理学的な対処法を中心に書いていきます。

皆さんの社交不安障害が少しでも軽くなるように心を込めて書いていきたいと思います。

社交不安障害(SAD)とは?

まずは社交障害について理解を深めていきましょう。

社交不安障害とは何か

社交不安障害(SAD)がどのような障害か解説します。WHOが発行している、国際疾病基準では以下のように定義されています。

比較的少人数の集団内で、他人の目を気にする心理を中核とし、社交場面を普通回避する。青年期に好発する(一部改変)。

この定義には重要なワードが3つ含まれています。それは

「他人の目を気にする」
「回避する」
「青年期に好発」

この3点です。この3つは社交不安障害の大きな特徴です。入門として必ず抑えておきましょう。なお症状の重さが気になる方はページ最下部に「社交不安障害傾向-簡易診断」を用意しています。最後にチェックしてみてください。

他人の目を気にする

さて!まずは他人の目を気にするについて考えていきましょう。私たちには、公的自己意識、私的自己意識という2つの意識があります。

「公的自己意識」
他人の目を気にする、人の目を気にする、顔色をうかがう心理、社会人としては必要だが、過剰になると不安が大きくなる

「私的自己意識」
自分がどうありたいかを大切にする、自分の気持ちを大事にする、自分に意識が向いている状況は社交場面での不安は少ない

社交不安障害の方は、公的自己意識に偏りすぎていると考えられます。これは心理学の研究でかなりはっきりとした傾向です。

周りの目を気にする,社交不安障害

堀井(2001)は、高校生256名、大学生271名、計527名の青年を対象に、公的自己意識・私的自己意識と、対人恐怖との関連を調査しました。その結果が以下の図になります。

視線恐怖症

まずは男子から見ていきましょう。特に「公的自己意識」に大きな影響を与えているのは、「自分や他人が気になる心性」であることが分かります。一方で、私的自己意識はほぼ影響がないと言えます。

人の目が気になる

次に女子はどうでしょうか。男子に比べて公的自己意識への影響が大きいことが分かります。女子の周囲からの評価を気にする傾向にあるのですね。しかし、私的自己意識では、若干の負の相関があるものの、ほぼ影響ない程度です。

人の目を気にする心理とうまく付き合うことが社交不安障害改善の鍵になることははっきりしています。

 

回避する

社交不安障害は人が怖いという感覚があればつくものではありません。仮に、人が怖いという感覚があっても、人と接することができる場合は社交不安障害という診断はつきにくいのです。

一方で人間関係を徹底的に回避する方は、診断がつきやすくなります。例えば、
 お昼休みはなるべく一人で過ごす
 飲み会などは断る
 喫茶店で雑談することを避ける

などが当てはまります。重症化すると、あらゆる人間関係を避け、引きこもりになることもあります。

私自身、引きこもりを体験しましたが、当時は人と目が合うだけで雷に打たれたように硬直してしまう症状がありました。

このような状態では人間関係は苦しいだけで、回避したくなるのも仕方がなかったと今では回想しています。

社交不安障害,回避傾向

青年期にはじまる

社交不安障害は、10代から発症することがほとんどです。社交不安症を発症する年齢の割合を示したグラフがあります。まずは下記をご覧ください。

視線恐怖症

約75%の人が15歳以下で発症していることがわかります。なぜ社交不安障害は10代から起こるのでしょうか…?

それは先程お伝えした「他人の目を気にする」心理が爆発的に増加するからです。

10代は、勉強、恋愛、友人関係、様々な場面で大人への階段を進んでいきます。社会に出るためには、周りからどう思われているか?を考える必要が出てきます。

この気持ちは大事なのですが、10代は心のコントロールが難しく、他人の目を気にする心理が過剰になってしまうのです。

*重症化に注意

一方で、社交不安障害は、発症年齢から10年後以上の30代半ばで専門機関を訪れる傾向があることが報告されています。相談の遅れると、視線恐怖症の克服に時間がかかってしまうケースもあるため注意が必要です。

30代後半から落ち着く

社交不安障害は30代後半から落ち着くことも分かっています。日本医療開発機構の川上(2016)の調査では、以下の図のように若い方ほど有病率が高いことがわかりました。

35歳以降ですとガクンと減少するのがわかります。もし、若い方で社交不安障害で悩んでいるとしても、年齢とともに減少していくと考えると希望が持てますね。

・女性の有病率が高くなる傾向
同じく、川上(2016)の調査では、男性に比べ、女性の方が有病率は高いという結果が出ています。弊社でのWEB調査でも、2020年時点で、以下のように女性の方が多く診断を実施されています。

社交不安男女比

社交不安に近い対人恐怖症研究では、男性の方が多かったのですが、女性の社会進出とともに傾向が変化してきているのかもしれません。

・講座の裏話

一方で私はコミュニケーション講座を運営しているのですが、受講生が6対4で男性が多い状況です。このギャップは不思議なところです。

心理学講座   男女比率は5対5
傾聴トレーニング講座は 6対4
発話トレーニング講座は 3対7

という感じで特に発話の講座で顕著に差が出る傾向があります。心理学の研究では、話す力と対人不安は関連していることがわかっています。その意味で、「話すことに不安」を感じ、女性は実際のトレーニングまで進めないのかもしれません

社交不安障害に対処する方法を解説

簡易診断・チェック

ここから先は改善策をお伝えします。成果を把握するため定期的なチェックをオススメします。

社交不安障害の改善策

このように社交不安障害は「人の目を気にする」「回避癖」「青年期からはじまる」という共通する特徴があります。入門としてはこの3点をしっかり改善する作戦を立てていきます。具体的には

・私的自己意識を増やす
・逃げ癖の改善
・サポートを受ける
の3点を提案させて頂きます。

私的自己意識を増やそう

復習をすると、社交不安障害は公的自己意識が過剰になりやすいという特徴がありました。

まず1つ目に大事なことは、私的自己意識を増やすということです。

例えば、会話をする時に、

「相手に嫌われないように話をしよう(公的自己意識)」

と考えながら話をしたとします。もちろんこう言った気持ちをゼロにする必要はないですが、過剰になると、疲れ果ててしまいます。

この場合は、
「相手に嫌われないように話をしよう(公的自己意識)」
「でもそれだけじゃ疲れちゃう!自分が話したい話もしよう。そういえば先月、鳥取に旅行に行ったなあ~この話をしたいなあ~(私的自己意識)」

こんな感じで公的自己意識に、私的自己意識を追加していくのです。このワークは本当によく効きますので是非練習してみてください。

下記にもっと練習をしたい方向けに練習問題や動画を用意しました。人の目が気になる方は参考にしてみてくださいね。

動画で学習

私的自己意識を増やす練習について動画解説しました。2つありますのでよかったら参考にしてみてください。

コラムで学習

人の目を気にする心理を深く学習したい方はこちらの人の目を気にするコラムを参考にしてみてください。

 

逃げ癖を改善する

社交不安障害の特徴には、「回避する癖」がありました。社交不安障害があるときは、とにかく人が怖い状態なので、簡単に動けるものではないと思います。

そこで、大事なことが、小さな目標を立てる習慣をつけることです。

・犬におはよう練習
私の例ですと、引きこもりを改善する際に、まずは飼い犬に、挨拶をする練習からはじめました。「おはよう」「今日はあったかいね」とかそんなレベルでOKです。

・コンビニお出かけ練習
次に、コンビニにお出かけをして帰ってくる。という目標を立てました。最初はコンビニに行くだけでとても疲れました。

・コンビニありがとう練習
何度も繰り返していくと、だんだんとなれてきます。これに慣れてきたら、店員さんにありがとうと言ってみました。店員さんはニコッと笑顔で返してくれました。私もうれしくなったことをよく覚えています。

こんな感じで、本当に少しずつ少しずつできることを増やしていきました。

チャレンジしよう!と意気込む必要はなく、長期的にみて、1つ1つコツコツ積み重ねていくイメージですね。具体的なやり方は下記のコラムで解説しました。練習してみてください。

社交不安障害/社会不安障害の原因「回避行動」を改善

サポートを受ける

社交不安障害は青年期に好発します。大きな問題なのが、障害を抱えながら孤立してしまうという点です。青年期は社交不安障害という病名があることを学ぶことはまずありません。

いつの間にかそうなってしまい、人と話せない自分にコンプレックスを抱え、助けを求められず、重症化してしまうのです。何を隠そう私自身そうでした。。社交不安障害はその性質上、極めて孤立しやすいので要注意です。

改善するには、サポートを受ける環境を整えることです。サポートを受ける上では以下の選択肢があります。

・身近な専門家
もしあなたが学生ならば、スクールカウンセラーに相談されることをオススメします。スクールカウンセラーは、小学校から大学まで必ずいます。お金もかからないですし、秘密も守ってくれます。是非相談に行ってみてください。

・重度の場合
消えてなくなりたい…もう半年近く人と会話をしていない…という方は心療内科か精神科を受診しましょう。詳しくはこちらの薬物療法,精神科での治療コラムを参考にしてみてください。

・SNS
これは私の体験談となりますが、社交不安障害の方はSNSを活用するのもありだと思います。私自身は、ひきこもり時代、ブログを書いていました。

暗い内容だったので、読者は3人しかいなかったのですが、勇気づけられたことを覚えています。ブログは自分の考えを整理することもできたのでとても効果的でした。

社交不安障害-改善策発展

入門編では最も大事な3つの方法をお伝えしました。ただしこれはほんの一部です。社交不安障害に有効な手法は様々なものがこれまで開発されてきています。

気になる項目がある場合は是非実践してみてください。

認知療法の活用

社交不安障害の人は、対人場面で否定的な予測や解釈をして、非現実的な考えにとらわれて居ることがよくあります。

例えば、「僕はみんなから嫌われる」「きっとあの人は僕を馬鹿にしている」というような予測を立てる方は認知療法をぜひ練習してみてください。

社交不安障害/社会不安障害の対処法「認知療法」とは

森田療法の活用

森田療法は私のひきこもり改善のきっかけともなった心理療法です。森田療法の哲学は「あるがまま」です。社交不安障害は「不安」とうまく付き合っていく必要があるのですが、この不安を森田は「消さなくてもよい!あるがまま」あれ!と主張するのです。

発想が180度変わるとても前向きな療法です。是非皆さんにも学んでほしいと感じます。

森田療法とあるがまま

会話力をつけよう

会話力はより現実的で具体的な解決策になります。会話力と社交不安は密接なかかわりがあります。余裕ができたら、現実的な会話スキルもトレーニングしていきましょう。

会話トレーニングについては下記の動画にスキルをまとめてあります。かなり量があるので1月に1スキルぐらいのペースでマスターしてみてください。

傾聴スキル動画まとめ
発話スキル動画まとめ

体の面からリラックス

緊張した身体を緩める方法としてリラクゼーションは効果があります。自分にあった方法を身に付けることで、予期不安と上手く付き合えるようになります。

不安が強くなると身体に変化が出る…という方は、リラックス法を学ぶことで社交不安を和らげることができます。詳しくはこちらの心と体コラムを参考にしてみてください。

赤面症・視線恐怖症

社交不安障害は、赤面症視線恐怖症に結びつきやすいと言われています。顔が赤くなることを極度に恐れる、人の視線が異常に気になる方はリンク先をクリックしてみてください。

私の体験談

最後に私の社交不安障害の克服プロセスも掲載させて頂きます。引きこもりからどのように自分の心を整えていったのか?詳しく解説しています。

社交不安障害-知恵袋

様々な研究

社交不安障害については様々な研究があります。気になるタイトルがある場合は参考にしてみてください。

堀井・小川(1996)の研究によると対人恐怖心性とは以下の6つの特徴があることが分かっています。

・自分や他人が気になる
・集団に溶け込めない
・社会的場面で当惑する
・人の目が気になる
・自分を統制できない
・生きることへ疲れている

これらの対人恐怖心性について、実際にメンタルへルスにどのような悪影響があるのでしょうか?堀井(2014)は大学生4461人を対象として、対人恐怖心性について調べました。その結果、下図のような結果となりました。対人恐怖心性は、いくつもの恐怖の感情と関連していることがわかります。

0.85、0.82・・・という数字がありますが、これは統計的な関連の強さを表す数字なのです。心理学の世界では0.4未満以下は弱い影響、0.4~0.7はある程度影響、0.7以上でかなり影響すると考えます。対人恐怖心性は、孤立恐怖、自己視線恐怖、加害恐怖、登校回避に大きく影響を及ぼすることがわかります。

社交不安障害(SAD)をはじめとする不安障害の方は、否定的な感情や緊張などの身体の変化があると、感情をコントロールできず、混乱しやすいと考えられています。城月健太郎(2013)は、社交不安障害(SAD)患者14名と大学生251名に対し、不安のコントロール感に関する調査を行いました。結果が下図となります。

大学生の方が点数が高く、SAD患者のグラフが小さくなっていますね。これは健康的な大学生は不安をコントロールできる感覚があり、SAD患者は不安をコントロールできない感覚があることを示しています。このように不安をコントロールできない状態が続くと、社交不安障害が長期化する恐れがあるため注意が必要です。

 

研究の歴史

社交不安障害は100年近く前から名前や診断基準を変えながら研究されてきました。社交不安障害の歴史に興味がある方はこちらを参考にしてみてください。

社交不安障害は元々、森田正馬の対人恐怖症改善研究から始まったと言われています。興味がある方は下記を参考にしてみてください。

・歴史
社交不安障害は様々な変遷を経ていまの呼び名になっています。以下、菊池(2013)の論文を参考に歴史を概観しましょう。

1930年代
人間関係で恐怖を覚えるような症状は1930年代からはじまり、「対人恐怖症」という名称を使っていました。人が怖いという症状は日本人特有と考えられ、森田正馬という心理療法家を中心に治療法が開発されてきました。

当時は、人が怖いという症状は、文化的な側面が強いと考えられていて、「恥」を文化とする日本特有の症状であると考えられていました。


1980年代

その後、1980年代になると、アメリカ精神医学会により、「社会恐怖(social phobia)」という概念が導入され、国際的にもこのような症状があることが広がっていきました。

1990年代
1994年にはアメリカ精神医学会が、Social Anxiety Disorderと名称変更を行いました。日本では社会不安障害と呼ぶようになりました。

2000年代
社会不安障害という名称はわかりくい面もあったため、2008年に日本精神神経学会が、「社交不安障害」と名称変更を行いました。近年では、人が怖い、対人恐怖、会食恐怖などの症状がある場合は「社交不安障害」とされることが一般的になっています。

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・音羽健司・森田正哉(2015). 社会不安症の疫学――その概念の変遷と歴史―― 不安症研究, 7, 18-28.
国立研究開発法人日本医療研究開発機構 障害者対策総合研究開発事業(精神障害分野)
精神疾患の有病率等に関する 大規模疫学調査研究:世界精神保健日本調査セカンド
主任研究者 川上憲人 平成28(2016)年5月
城月 健太郎・児玉 芳夫・野村 忍・足立 總一郎 2013 不安のコントロール感に関する基礎的検討―社交不安障害の観点から― 心身医学, 53:408-415
社交不安障害(social anxiety disorder: SAD)を合併した発達性吃音症の1例
菊池 良和, 梅崎 俊郎, 山口 優実, 佐藤 伸宏, 安達 一雄, 清原 英之, 小宗 静男
音声言語医学/54 巻 (2013) 1 号/書誌
対人恐怖心性尺度の作成 上智大学心理学年報 (20), 55-65, 1996 堀井 俊章 小川 捷之
AWAKAMI, N., TAKESHIMA, T., Ono, Y., UDA, H., HATA, Y., NAKANE, Y., NAKANE, H., IWATA, N., FURUKAWA, T. A., & KIKKAWA, T. (2005). Twelve-month prevalence, severity, and treatment of common mental disorders in communities in Japan: preliminary finding from the World Mental Health Japan Survey 2002–2003. Psychiatry and Clinical Neurosciences, 59, 441-452.

Mayo-Wilson, E., Dias, S., Mavranezouli, I., Kew, K., Clark, D. M., Ades, A. E., & Pilling, S. (2014). Psychological and pharmacological interventions for social anxiety disorder in adults: a systematic review and network meta-analysis. The Lancet Psychiatry, 1, 368-376.