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あがり症克服入門-体の仕組み,診断を解説

あがり症克服-入門編 体の仕組み,診断を解説

はじめまして!作業療法士の石橋、監修の公認心理師の川島です。当コラムのテーマはあがり症の改善です。

    • 改善するお悩み
    • 人前に出ると緊張
    • 本番に弱い
    • 失敗が怖い
    • 全体の目次
  • 入門①あがり症の基礎知識,診断
  • 入門②私的自己意識を増やす
  • 入門③呼吸とリラックス法
  • 入門④段階的チャレンジ
  • 入門⑤森田療法を活用
  • 助け合い掲示板

入門①~⑤を読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。是非入門編は最後までご一読ください。もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもぜひお待ちしています。

はじめに

監修の川島は20歳の前後に社交不安障害になったことがあります。

・顔が真っ赤になる
・相手の視線がこわい
・なさけなくて自己嫌悪になる

ついに私はついには人と関わることができなくなってしまい、引きこもりになってしまいました。

あがり症は悪化すると私のように重症化してしまうリスクがあります。当コラムでは、専門家として、過去の当事者として、あがり症への対処法を気持ちを込めて紹介したいと思います。

あがり症の基礎知識

まずは、あがり症とは何か?について理解しておきましょう。

意味

まずはあがり症の意味から確認していきましょう。

血が頭に上る のぼせて普段の落ち着きを失う(見坊豪ら,1981)

演壇や講演、スポーツで試合に臨むときに体験される緊張状態(心理学辞典,1999)

あがり症のメカニズム

あがり症を理解する上でまずは、心と体の仕組みを理解しておきましょう。

①リラックス系心理
 副交感神経

私たちには、安心, 落ち着き, 楽観,などリラックス系の心があります。この心は、副交感神経という神経と結びついていて、呼吸を整えたり、筋肉を緩める効果があります。

②興奮系系心理
 交感神経

一方で、不安, 恐怖心, 集中,など緊張系の心は交感神経と結びついています。交感神経は、体を戦闘状態にします。呼吸があらくなり、頭に血液をのぼらせ、集中力を高めます。

多少のあがりはOK

あがりの語源としては、遊郭から来ていて、おちゃを挽いてお客さんがつかない遊女に、お客さんつくと、「あがり」と言っていたようです。日本料理は最後のお茶を「あがり」と言いますが、比較的ポジティブな意味になります。

トランプでいい手をあがる
地位があがる
テンションがあがる

など前向きな表現ですよね。あがり症も実は、ある意味で、あがっている↑のであり、これから頑張るぞ↑という意識の表れなのです。

そのため、少々緊張するぐらいであれば、むしろ集中力が高まると考えましょう。ちょっとしたあがりはあなたの味方なのです。

過剰に上がると注意

一方で、あがりが過剰になると大きく分けて2つの問題が出てきます。

・パフォーマンスの低下

交感神経は働きすると、逆に動きが悪くなり、

頭が真っ白になる
足ががくがく震える
声が震える
汗が噴き出す

などの症状が出てくるのです。過剰なあがりは、伝えるべきことができなかったり、スポーツ選手ではミスをしやすくなるなどの問題を起こします。

・自尊心の低下

あがり症で悩む方は、心が弱いを自分を責める傾向があり、自尊心が低下してしまいます。その結果、チャレンジすることに回避的になり、経験値が不足し、スキルが落ちて、さらにあがりやすくなるという悪循環に陥りやすくなるのです。

あがり症,自責

あがり症の生理的なメカニズム

脳⇒自律神経⇒体への反応

という流れがあります。特に脳の働きでは、偏桃体・視床下部といった部分が関係していることがわかっています。

偏桃体の働き

偏桃体は大脳辺縁系と呼ばれている中にある脳の一部の器官です。下の図で赤く記してある部分が扁桃体です。

偏桃体は、人の情動に大きく関わっていることがわかっています。どのような働きをしているかというと、人に加わる様々な刺激が、快をもたらすか不快をもたらすかの判断をしています。

例えば、

刺激が不快 → 不快の情報路へ
刺激が快  → 快の情報路へ

と情報を伝えて、人の情動を引き起こす中心的な脳の器官として考えられています。

そして、緊張することで身体的な反応が起こる場合は、視床下部などの器官へ情報が流れていきます。

視床下部の働き

視床下部とは間脳と呼ばれる脳の一部分です。下の図で赤く示されている部分が視床下部です。

視床下部の働きは、自律神経系の調節を行っています。この自律神経系のバランスが悪くなると、心臓がドキドキしたり、呼吸が早くなったりするのです。

 

診断とチェック

次のコーナーからはあがり症の改善策をお伝えします。成果を把握するために、定期的にこちらの簡易診断をおすすめします。

入門編②私的自己意識を増やす

克服する4つの基本対策

あがり症を改善する手法はたくさんあるのですが、まずは入門編として以下の4つを抑えておきましょう。

入門②私的自己意識
入門③呼吸とリラックス法
入門④段階的な不安階層表
入門⑤森田療法を活用

の方法をそれぞれ解説していきます。まずは①私的自己意識から解説していきます。

公的自己意識とは何か?

あがり症と深い関係にあるのが、「人の目を気にする」という心理です。これは心理学的に「公的自己意識」と言います。

・嫌われるのではないか
・はじをかいてはいけない
・馬鹿にされてはいけない

これらの心理には他人の目があります。公的自己意識はあがり症に必ず伴うもので、強くなればなるほど、あがりは強くなっていきます。

私的自己意識とは何か?

この点を改善するには、私的自己意識を増やしていくことが大事です。私的自己意識とは、自分に意識が向いている状態です。

・旅行に行った話がしたい!
・良いアイデアがあるので伝えたい
・はあ~愚痴を聞いてほしい

これらの心理には相手の目はほとんどありません。あくまで自分主体なのです。私たちは幼いころは私的自己意識の塊です。

周りの目など気にしないので、先生から「わかるひと~?」と言われると一斉に手を挙げて壮大に間違えまくります。

あがり症を改善するには、強すぎる公的自己意識を減らして私的自己意識の比重をあげていくことが極めて重要になってくるのです。

詳しくは入門②で解説しました。入門編を読み切った後に、私的自己意識であがり症を改善を参考にしてみてください。

入門編③呼吸とリラックス法

副交感神経を改善しよう

2つ目は呼吸法を学びましょう。冒頭でもお伝えした通り、あがり症は、

緊張系,興奮系の交感神経を緩める
リラックス系の副交感神経を働かせる

この2点が大事になります。副交感神経をはたらかせるには、ざっくりと体の力を抜く感覚が大事になります。

具体的には、呼吸法、自律訓練法、筋弛緩法…など様々な種類がありますが、入門としてはすぐにできて安全な「呼吸の仕方」を紹介したいと思います。

以下やり方を折りたたんで記載してあります。参考にしてみてください。

腹式呼吸

シンプルに行うとすれば、腹式呼吸がおススメです。

・鼻から息を吸う
おなかを膨らませながら鼻から4秒吸いましょう。落ち着いた良い空気が入ってくるイメージがおススメです。

・息を吐き出す

口からゆっくり8秒近くかけて吐き出します。悪い空気が出ていくイメージがおススメです。

これだけです!1分程度で緊張は少しほぐれると思います。呼吸法は簡単かつ、効果的で、緊張がほぐすことに有効です。体がほぐれると心にもリラックス効果があります。

丹田呼吸法

もう1つの呼吸法として丹田呼吸法をお伝えします。

臍(へそ)の下、握りこぶし一つ分のところに手を当てる
 →この部分が丹田です

鼻からゆっくりと最後まで息を吸う
 →丹田が凹むようにする

息を止めゆっくりとおなかの膨らみを感じながら息を吐く
 →吐く時間はなるべく長く

吐ききったら再度息を止める

①~④の動作を20サイクル行います。

ただし最初は難しいと思いますので、まずは5サイクルをめどに取り組んでみましょう!慣れてきたら、10サイクル、20サイクルと増やしていってください。

 

私自身大学院で、呼吸と脳波を測る授業があったのですが、深い呼吸をすると如実にリラックス系の波形がでていたことを思い出します。

緊張改善,呼吸法

入門④段階的チャレンジ

解説が長くなっているので改めて目次を復習しましょう。

入門②私的自己意識
入門③呼吸とリラックス法
入門④段階的な不安階層表
入門⑤森田療法を活用

今回は段階的な改善を目指す不安階層表をお伝えします。

急な解決はNG

あがり症を抱える方は、悩みを改善するために、過度の目標を立てることがあります。

・あがり症をゼロにしたい
・100人の前で緊張しないで話せるようにしたい
・どんな時でも平常心になる

これらの目標は大概の場合うまく行かず、失敗に終わります。

スモールステップが大事

心理学の研究では、モチベーションを持続させるにはスモールステップが有効であることがわかっています。具体的には、不安階層表を作成して、段階的に練習していくのです。

不安階層表の練習問題

こちらがスモールステップ、不安階層表の例です。こちらはかなりレベルの低いスモールステップですが、私が社交不安障害の頃に実際に行っていた訓練です。

あがり症を改善したい場合は、このように、いきなり高い目標を掲げるのではなく、自分ができる範囲で、少しずつチャレンジできる幅を広げていくことが大事になります。

詳しくはこちらの行動療法コラムを参考にしてみてください。ワークシートの作り方など詳しく解説しています。

入門編⑤ 森田療法を活用

入門の最後として森田療法を紹介します。森田療法とは主に神経症の治療法として開発された、日本の心理療法です。森田療法はあがり症の改善にも有効です。

その森田療法の中では、2つのキーワードが重視されています。

あるがまま

“あるがまま”とは、気分に関係なく行動するということを意味します。決して、気分のままに行動するということではありません。あがり症では、あがってしまう症状はそのままにして、無理に打ち消そうとしない態度を重視します。

目的本位

目的本位とは気分にとらわれないで、やるべきことをやることを言います。例えば、スピーチであがってしまっても

・目の前の発言に集中する
・伝える気持ちに集中する

といった態度をとるようにします。

あがり症を改善しようとする方は、とにかくあがりに固執しすぎて症状を悪化させてしまいます。森田療法はあるいみで、あきらめと受け入れの心理療法です。

長年あがり症の苦しみ続けてきた…という方は特におすすめの心理療法です。是非入門の仕上げとして、森田療法コラムを活用してみてくださいね。

発展編

ここから先はあがり症をより深く理解したい方向けの内容となります。様々な研究や知識をお伝えします。

あがり症について基礎的なことは理解したけど、もっと深く知識を得たい方、医療関係者や福祉関係の学生様は参考にして頂けると幸いです。

赤面症,視線恐怖症

あがり症の方は、赤面症、視線恐怖症という症状を持っていることがあります。顔が赤くなることが怖い、人の視線が怖いという方は下記のコラムを参考にしてみてください。

赤面症コラム  視線恐怖症コラム

社交不安障害

会話をすると緊張で汗が止まらない、人と接する場面を徹底的に避ける、引きこもりがちである、これらに当てはまる方は社交不安障害の可能性があります。

症状が重たい方は社交不安障害コラムを参考にしてみてください。

まとめ+助け合い掲示板の活用

入門①まとめ

あがり症入門1の解説は以上となります。あがり症はだれでも経験する、緊張や不安などが高まってしまった状態であると言えます。

もともと、あがり症の研究はスポーツ選手が本番であがって、良いパフォーマンスができないという問題から出発しています。日頃の成果を本番で発揮できないと残念ですよね。

スポーツに限らず、面接や発表、スピーチなど、あがりやすい場面で自身の能力がしっかりと発揮できれば良いと思います。

助け合い掲示板の活用

ページ下部には助け合い掲示板があります。当コラムはあがり症について考えている方が多く集います。お互いの悩みや経験談など相談してみましょう。*お互いを思いやったご投稿をよろしくお願いします。

講座のお知らせ

もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では

・心理療法の基礎
・対人不安の改善
・暖かい人間関係を築くコツ
・無条件の肯定のコツ

など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。お知らせ失礼いたしました。それでは入門②に進みましょう!

 

助け合い掲示板

1件のコメント

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    • べり
    • 2019年3月4日 11:10 PM

    「あがり症診断」では「かなりあがる」と出ました。

    特に人前にでると、頭が真っ白になるので、予測の見立てを立てて対処━事前準備をしっかりすることで対応できる様です。確かに友人の結婚式のスピーチでは、練習不足でしどろもどろになり当たって砕けました。今でも黒歴史です。

    次の機会があれば、恐怖突入→目的本位→事前準備で乗り切りたいです。

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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出典・参考文献
菅原健介(1992 )対人不安の類型に関する研究  社会心理学研究 7(1), 19-28
有光興記,今田寛(1999) 状況と状況認知から見た“あがり”経験 -情動経験の特徴による分析- 心理学研究 70(1),30-37
有光興記(2001) 「あがり」のしろうと理論 : 「あがり」喚起状況と原因帰属の関係
徳永幹雄(2001) スポーツ選手に対する心理的競技能力の評価尺度の開発とシステム化
樋口匡貴,南谷のどか,藏永瞳,深田博己(2007) スピーチ状況における”あがり” の対処法とその効果  広島大学心理学研究 (7), 93-101

・Sen S, et al.’s (2004) Meta-analysis of the association between a serotonin transporter promotor polymorphism (5-HTTLPR) and anxiety-related personality traits. Am J Med Genest