みなさんこんにちは。公認心理師の川島達史です。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。今回のテーマは「森田療法」です。

森田療法とは、不安や緊張を無理になくそうとせず「あるがまま」に受け入れ、やるべきことに取り組む「目的本位」の行動を通して、症状へのとらわれから抜け出すことを目指す、日本生まれの心理療法です。
森田療法は、20世紀初頭に日本で生まれた心理療法で、筆者の川島にとって思い入れの深い療法です。なぜなら、引きこもりを脱するときに、すごく助けになったからです。当時私が衝撃を受けた森田の考えが
不安や緊張は自然な感情である。あるがまま生きよ
という考えでした。それまで緊張する自分を責め続けていた自分を認めてくれたような気がして、前向きに行動する勇気をもらいました。私は今でも森田療法の哲学を人生の岐路で活かしています。
今回はそんな森田療法の基礎を一通り解説させて頂きます。目次は以下の通りです。
心を込めてコラムを書きたいと思います。是非最後までご一読ください。
①森田療法とは
森田療法は、日本の精神科医・森田正馬が1920年ころに創始した心理療法です。ここでは、概要、提唱者、治療の形、効果と限界を紹介します。
森田療法の概要
森田療法は、日本で生まれた心理療法で、不安や症状を無理に抑えず「あるがまま」に受け入れることを重視します。不安や恐怖心をなくそうとするのではなく、不安を抱えたまま「目的本位」に行動することで、症状にとらわれない生き方を目指します。
森田療法の提唱者
森田療法の提唱者は、精神科医の森田正馬(もりた まさたけ)です。森田は1874年、現在の高知県香南市に生まれました。幼い頃から体が弱く、若い頃は激しい動悸を伴う不安発作にも悩まされました。
森田は、自身の体験と、精神科医としての臨床をもとに、1920年ごろに独自の治療法を確立しました。これが後に「森田療法」と呼ばれるようになります。生い立ちや経歴の詳細は、以下に折りたたんでまとめました。
下記は、森田正馬の肉声とされる貴重な録音です。
入院森田療法と外来森田療法
森田療法は、もともと入院して行う治療法として始まりました。北西[5]によると、現在、入院療法を受けられる施設はわずかで、通院しながら面接や日記を通して対話を重ねる「外来森田療法」が中心になっています。入院森田療法の流れは、以下に折りたたんでまとめました。
効果と限界
森田療法が生まれた当初は、心の病気の分類もまだ大まかなものでした。そのため森田療法は、特定の病気というよりも、対人恐怖症、赤面恐怖、視線恐怖、パニック症、不安症、うつ病など、幅広い悩みに活用されてきました。
中でも、不安を抱えやすい「神経質」な性格の方の悩みに向いているとされ、本人がもともと持っている回復する力を引き出す点が特徴です。必要に応じて、薬物療法と組み合わせて行われることもあります。
一方で、重いうつ状態や統合失調症など、まずは医療による治療が必要な状態には、そのままでは適さない場合があります。また、「治そうとしない」という姿勢を、かえってプレッシャーに感じる方もいます。つらさが強いときは、自己流で取り組まず、医療機関や専門家に相談してください。
②生の欲望,死の恐怖
森田療法では、「よりよく生きたい」という欲望と、「失敗したくない」という不安は表裏一体で、どちらも自然なものと考えます。
生の欲望
森田療法における「生の欲望」とは、人間が本来持っている「よりよく生きたい」「成長したい」という自然な欲求を指します。成功したい、人間関係を良くしたいといった願いがその例です。
この欲望は本来健康的なものですが、強すぎると失敗への不安や結果への執着を生み、心の負担になります。森田療法では、この欲望を否定せず、目の前の行動に生かしていくことを大切にします。
死の恐怖
「死の恐怖」は、死や病気、失敗など、自分の生を脅かすものに対して人が抱く不安を指します。病気や失敗への過剰な心配も、この恐怖とつながっていると考えます。
森田療法では、死の恐怖を無理に克服しようとするのではなく、「あるがまま」に受け入れることを重視します。不安は完全には消えませんが、それにとらわれず、目の前の行動に集中する姿勢を育てていきます。
両面観
「生の欲望」と「死の恐怖」は、コインの表と裏のような関係です。私たちは「よりよく生きたい」からこそ、「失敗したくない」「死にたくない」と思い、不安になるのです。
そう考えると、不安になることは自然なことであり、不安だけを取り除くことはできないと言えます。森田療法では、この両方を否定せずに認めることで、心の葛藤を減らし、行動に集中する力を養います。心の中で相反する気持ちが綱引きをする仕組みは、精神拮抗作用とはで詳しく解説しています。

③精神交互作用とは
精神交互作用とは、症状に注意を向けるほど症状が強く感じられ、さらに注意が向く悪循環のことで、森田療法では悩みが深まる中心的な仕組みと考えます。
精神交互作用の意味
精神交互作用とは、以下のような意味があります。
ある感覚に注意を向けることで、その感覚が敏感になり、さらに注意が向いてしまう悪循環
私たちは、心身の不快な症状にばかり注意を向けると、症状をかえって強く感じてしまうことがあります。図にすると以下の通りです。

赤面症で悩んだ私の体験
例えば、私の場合は、中学3年から3年間ぐらい「赤面症」で悩みました。私はどちらかというと色白なので、緊張すると顔が真っ赤になってしまいます。
思春期の頃はそんな自分が嫌でしょうがなく、わざわざ薄着をしたり、クーラーで顔を冷やしたりと、不毛な努力をしていました。そうした「赤面症」へのこだわりが、余計に赤面症を悪化させてしまっていたのです。
森田療法では、こうした「こだわり」を手放し、「あるがまま」の姿勢を大事にすることで、症状へのとらわれが和らぐと考えます。

精神交互作用の事例
以下に、精神交互作用の具体例を折りたたんで記載しました。なお、眠れない、お腹が痛いといった体の症状が続く場合は、まず医療機関で体の検査を受けることが前提です。
④気分本位とは
気分本位とは、その時の気分で行動を決めてしまう姿勢のことで、森田療法では見直すべき態度とされます。
気分本位の意味
気分本位には、以下のような意味があります。
その時の気分や感情で、物事を判断し行動してしまうこと
心理的に不安定になると、私たちは次のようなマイナスの感情の渦に巻き込まれます。
あがったらどうしよう…
緊張したらどうしよう…
不安になったらどうしよう…
マイナスの感情に支配されて、そのまま行動に移してしまう姿勢を「気分本位」と言います。例えば、「あがったらどうしよう…」と感じたら、多くの方はその場から逃げ出したくなります。
教室の前で引き返した体験
私の例で言えば、23歳の頃、自分を変えようとゴスペルサークルに通っていたのですが、教室の直前で緊張に支配されて逃げ出したくなり、教室の手前で引き返すという経験が5回ぐらいありました。
森田は、このような気分本位の姿勢を見直すことが、回復には必要と考えました。気分のまま行動してしまうことが多い…という方は、少し意識してみてください。

⑤目的本位とは
目的本位とは、気分がどうであれ、目的のためにやるべきことに取り組む姿勢のことで、森田療法の実践の中心となる考え方です。
目的本位の意味
目的本位には、以下のような意味があります。
気分や症状がどうであっても、目的を大切にして、やるべきことに取り組む姿勢
たとえば、「気分が憂うつでも、必要な仕事にまずは取り組み、少しでもできたらOK!」という考え方です。不安や恐怖などの不快な感情はそのままに、とにかく行動することを重視します。
ここまでの内容を整理すると、森田療法の重要なキーワードは次の5つです。今は3つ目の「目的本位」まで来ました。
・精神交互作用
・気分本位
・目的本位
・あるがまま
・恐怖突入
目的本位の事例
気分本位から目的本位へ、考え方を切り替えた事例を以下で解説しました。
⑥あるがままとは
あるがままとは、不安や緊張を消そうとせず、自然な感情としてそのまま受け入れる姿勢で、森田療法の中心思想です。
あるがままの意味
あるがままには、以下のような意味があります。
気分や感情を無理やり排除しようとするのではなく、自然なものとして受け入れる姿勢
私たちは、怖い、不安、緊張といった感情があると、どうにか心の中から追い出そうともがきます。しかし森田は、そういったマイナスの感情を自然なことと受け止め、無理に打ち消さずに受け入れることが大事だと主張しました。
そうして自然に受け止める姿勢があると、精神交互作用にとらわれず、目的本位に行動しやすくなるのです。あるがままには、不安を受け入れることに加えて、「こうしたい」という願いに従って行動することも含まれます。日常で実践するコツは、あるがままとは|実践のコツで紹介しています。

森田自身の体験
森田自身、若い頃から神経症の症状に苦しみ、大学時代には神経衰弱と言われて服薬を続けていました。ところが、試験前に薬をやめて勉強に打ち込んだところ、症状が気にならなくなったという経験をします。症状と闘うのをやめ、目の前のことに取り組んだこの体験が、森田療法につながったと考えられています。
あるがままの事例
あるがままの具体例については、以下を参考にしてみてください。
⑦恐怖突入とは
恐怖突入とは、不安を感じながらも、避けていた場面に思い切って飛び込んでみる姿勢のことです。
恐怖突入の意味
最後に、恐怖突入について解説します。恐怖突入には、以下の意味があります。
不安や恐怖を感じながらも、思い切ってその場面に飛び込んでみる姿勢
私たちの心は、悲観的な未来を予想し、「ああなったらどうしよう…」「万が一〇〇になったらどうしよう…」と考え、不安や恐怖を心の中で大きくしていきます。
これは仕方のないことですが、気分本位に生きると、不安や恐怖に支配されて、結局何も行動できないまま終わってしまいます。恐怖突入は、思い切って、その不安や恐怖を確かめに行く姿勢を指します。
幽霊の正体見たり枯れ尾花
実際に行動してみると、恐れていた対象が思ったほどではなかった、ということはよくあります。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ということわざがあります。遠くから見ると幽霊のように見えたものが、実は枯れたススキだった。つまり、「恐ろしいと思っていたものの正体を確かめてみると、取るに足らないものだった」という例えです。
「恐怖の対象は、本当に恐れるべきものなのか?」そんな恐怖の対象に突入する行動力も、大事になってくるのです。森田療法はなかなかストイックですね!

取り組むときの注意
恐怖突入は、危険な場所に飛び込むことではありません。日常生活で避けてしまっている、本来は安全な場面に向き合うことです。
強い恐怖で体調を崩してしまう場合や、パニック発作が起きている場合は、いきなり大きな場面に挑戦せず、医療機関やカウンセラーなどの専門家と相談しながら、小さな場面から段階的に進めてください。具体的な進め方は、恐怖突入の具体的な実践法で解説しています。
⑧練習してみよう
ここからは発展編です。森田療法をより深く理解したい方向けに、練習問題を用意しました。まずは自分で考えてから、回答例を開いてみてください。
練習問題1:就活で緊張する田中くん
・田中くんは就活中の大学生
・あがり症で悩んでいる
・今日は第一希望の会社の面接
田中くんは、第一希望の面接を前に、不安な気持ちが強くなってきました。「不安な気持ちをもたないように…」と思うほど、不安な気持ちが増している状態です。森田療法的には、どのように考えるといいでしょうか?

練習問題2:初デートで緊張する鈴木さん
・鈴木さんは恋愛経験が少ない
・アプリで知り合った男性と初めて会う
・今日がその当日
恋愛経験が少なく、ちゃんと話せるか不安…、逃げ出したい。森田療法的には、どのように考えるといいでしょうか?

⑨動画で理解を深める
ここまでの内容を、動画でも解説しています。気になるテーマから視聴してみてください。
動画:森田療法の全体像
森田療法の全体像をまとめた動画です。仕上げとしてご活用ください。
動画:生の欲望と死の恐怖
森田療法の根本的な哲学である、「生の欲望」「死の恐怖」について解説しました。私たちは、よりよく生きたいと思うからこそ不安になります。その意味で、不安を感じることは自然なことと受け止めるのが大切です。
動画:精神交互作用とあるがまま
前述した精神交互作用とあるがままについて、動画でも詳しく解説しました。症状への注目が、かえって症状を強めてしまう仕組みについて理解を深めたい方はご視聴ください。
動画:目的本位で生きる
前述した、目的本位で生きる意義について、動画でも詳しく解説しました。不安や緊張にとらわれがちで、行動できない方におすすめです。
動画:恐怖突入
森田療法の中でも、特に強い意志が必要になる恐怖突入について解説しました。思い切って行動したい!と感じるときに参考になります。
対人恐怖症への活用
森田療法は、対人恐怖症の改善に使われることが多いです。人と話すのがすごく苦手…という方は、下記のコラムで気になるリンクをクリックしてみてください。
⑩よくある質問Q&A
私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。
・森田療法の基礎理解,あるがまま
・精神交互作用,目的本位,気分本位
・マインドフルネス練習
・恐怖心,不安と自然に付き合うコツ
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
※ご自身の悩みについて個別に相談したい方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連










