失敗が怖い…成功イメージを意識して克服する
皆さんこんにちは。
現役経営者,公認心理師の川島達史です。
私は現在こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。
今回の相談は
「失敗が怖い」
です。
相談者
32歳 男性
お悩みの内容
私は元々ビビりな性格で、逃げ癖があります。新しいプロジェクトに入るか?と上司に誘われても、失敗したときのリスクを考え、断ってしまうことも多いです。
恋愛もうまくいきません。2人でデートする関係になった女性がいて付き合いたいと思っても、告白して失敗するイメージが先行してしまい、結局気持ちを伝えられませんでした。
こんな自分をそろそろ変えたいと考えています。何かやり方はありますか?
何かに挑戦しようと考えると、どうしても恐怖心が出てきていまいますよね。当コラムでは、失敗が怖い時の対策を5つお伝えしていきます。
・失敗は成功のもと
・ワレンダ要因に注意
・目的本位で行動する
・メタ認知力をつける
・失敗した後は原因分析と省察法
ご自身の状況に役立ちそうなものがありましたら、是非実践してみてください。
①失敗は成功のもと
まずは失敗についての基本的な価値観を再検討していきましょう。
失敗は経験値
ビジネスにおいて失敗は経験値となります。例えば、私は現在YOUTUBEで配信活動をしていますが、数えきれないほどの失敗をしてきました。
効果音が大きすぎる
文字は小さくて読めない
え~という余計な言葉が多い
企画が面白くない
再生数が伸びない
様々な失敗をしてきました。ですが、ミスノートを作り、1つ1つ改善していくことで、動画のクオリティをあげていくことができました。
逆に言えば、これらの失敗がなければ、私は動画作成はいまだにできなかったでしょう。失敗をするという事は、行動できたという証拠です。そして、結果が悪くとも、経験値は必ずゲットできるのです。
繰返します。
失敗が怖くなったら、結果はさておき、経験値は必ずゲットできる!!と考えると行動する勇気が出てくるかもしれません。
行動すれば後悔しない
心理学の後悔に関する研究によると、結果のいかんを問わず、行動した人、チャレンジをした人は、後悔が少ないことが分かっています。
心理学者の上市ら(2004)は大学生70名に対して
「受験で第一志望に応募したか」
について後悔の程度を調査しました。その結果が以下の図です。
第一志望を受験しなかった人は、長期的に後悔が大きくなったのに対して、受験した人は結果に関わりなく、後悔の度合いが小さくなっていることがわかります。
人生は一度しかありません。
失敗が怖くて行動せず後悔をするか
失敗が怖くとも行動して後悔しないか
自分の心をしっかり相談してみましょう。
迷ったら行動!で大体正解
もちろん何かを行動するときは、リスクを考えることも大事です。7対3ぐらいでデメリットが大きい場合は回避するのも大事なことです。
一方で、5分5分で迷うぐらいのレベルであれば、行動していくことを基本とすることをオススメします。特にビジネスにおいては、考えているうちに様々な機会を逸してしまうケースが多いです。
迷ったら多少頭を馬鹿にして、とりあえず行動をして、失敗をしながら経験値を溜めていく方が、ビジネスの強者になれると思います。
②ワレンダ要因に注意
ワレンダ要因
心理学の研究では、失敗をイメージすると、実際に失敗しやすくなるという説があります。
この心理は、ワレンダ要因と呼ばれています。カール・ワレンダ(1905-1978)は天才的な綱渡り芸人でした。彼は、最期に綱渡りで転落死しますが、その時の彼の妻によると
「今までは綱を渡り切ることしか考えていなかったのに、その時に限って落ちないことに注意を向けていた」
とのことです。もちろん失敗を一切イメージしてはいけないということではないのですが、失敗よりも成功イメージを重視することの重要性が示唆されています。
失敗過敏と高目標設定
議論を進めていきましょう。心理学の世界では、高目標設定タイプ、失敗過敏タイプという分類があります。両者の違いを見てみましょう。
「高目標タイプ」
プレゼンのこの部分で笑いをとってみよう
商品の〇〇の魅力をしっかり伝える
大きな声であいさつをしよう
「失敗過敏タイプ」
得意先の機嫌を絶対に損ねてはならない
人前であがってはいけない
プレゼンでカンではいけない
前者は積極的でプラスに視点が向いていますね。後者はミスをなくす、という消極的で視点がマイナスに向いています。失敗過敏については、心理的に悪影響になりやすいことが分かっています。
〇〇しようモードに言い換える
失敗が怖い人は、悲観的な未来を予想して、〇〇してはならないモードになります。この〇〇してはならないモードが過剰になると消極的になってしまうので注意しましょう。
大事なことは、
〇〇してはならない
ではなく
〇〇しよう
と言い換えてみる事です。
これだけで随分、失敗が怖い感覚は軽減できるでしょう。
研究に興味がある方は下記の折り畳みを展開してみてください。
齋藤(2009)は、大学生474名に対して、完璧主義と心理的な影響について調査を行いました。その結果、
失敗過敏完璧主義
のある方は
「集団にとけこめない」
「人間関係の当惑」
があることがわかりました。
これに対して、
高目標完璧主義
の方は、これらの傾向はなく、特に顕著な差として「幸福感」が高いことがわかりました。
メンタルヘルス的には、高目標完全主義は過剰にならない程度であれば、プラスの側面が大きく、逆に消極的完全主義はマイナスになることが多く、注意が必要だと言えます。
③目的本位に行動する
心理療法の中に森田療法があります。森田療法は森田正馬という精神科医が発案した心理療法です。森田昌磨は、気分本位、目的本位という2つの有名な言葉を作りました。
気分本位
気分本位とは「気分の赴くまま行動する姿勢」を意味します。例えば、失敗が怖い…という気分になったら、気分の赴くまま、逃げ出してしまうのです。
人と会うのが怖い
恥をかくのが怖い
失敗が怖い
私たちの心にはチャレンジをする際に必ず恐怖や不安が沸き起こります。気分本位で生きる人はそのたびに、回避をしてしまうことになるのです。
目的本位
森田は、気分本位ではなく、目的本位で生きよ!ということを主張しています。目的本位とは、そのままですが、目的を大事に生きていく姿勢を意味します。
例えば、私であれば、講演を依頼された時に、すごく不安になります。
「うまく話せるかな」
「あがってしまったらどうしよう」
こんな気分が沸き起こってきます。しかし、私には目的があるのです。
「少しでもメンタルヘルスの重要性を伝えたい」
「みんなを勇気づけたい」
こんな目的があります。この時に、気分本位ではなく、目的本位で行こう!と決心を固め、不安や恐怖をそのまま持ちながら、講演するのです。
失敗は怖いものですが、目的本位の考え方を身に着けると、挑戦する心は折れずに、チャレンジし続けることができると思います。動画でも解説したのでよかったらみてみてくださいね♪
もっと森田療法を理解したい!という方は下記のコラムも参照ください。私は森田療法を学習し、人生が変わったと思っています。
④メタ認知力をつける
失敗が怖い気持ちを克服するコツとして、メタ認知力をつけることもオススメです。メタ認知とは、
・自分自身を観察する力
・自分の感情を観察する
・自分の思考を観察する
・やるべきことを再確認する
こんな力を意味します。具体的には、恐怖心に駆られたら、まずは自分の感情を眺め、客観視する練習を行っていきます。
失敗が怖い方は、恐怖に巻き込まれると我を失って、回避してしまう傾向があります。この点、メタ認知力をつけて、自分自身を客観的に観察できるようになると、感情の赴くまま逃げてしまう癖を改善することができます。
失敗が怖くなると気が付くと逃げてしまう…という方は下記のコラムを参考にしてみてください。
⑤失敗した後は省察
私たちはチャレンジすると必ず失敗します。これは宿命であります。失敗は進んですべきものではないですが、避けては通れないのです。
省察とは何か?
この時思い出してほしい言葉があります。それは「省察(せいさつ)」という言葉です。省察とは、自分の体験を冷静に考えていく姿勢を意味します。
似た概念で「反省」がありますが、反省よりもより精緻に原因を分析していくイメージになります。
具体的には、
・なぜその出来事が起こったのか?
・その時の自分の感情は?
・どうすれば失敗しないですんだのか?
など全体から冷静に分析をしていきます。
中村(2016)の研究では、省察が劣等感に与える影響について調査が行われています。大学生338名を対象に、質問紙をもちいて調べました。その結果が以下の図です。
このように、省察によって劣等感が下がることが示されています。自分のことを振り返ることで、周りよりも劣っているという感覚が薄れていくのですね。
失敗は経験の1つに過ぎず、これをしっかりと省察することで、大事な経験として活かせるようにしていきましょう。
省察のコツ
省察のコツは以下の3点です。
・メタ認知をする
失敗をしたときは、混乱してしまうものですが、まずは冷静に自分の感情や考えを見つめなおします。先程紹介したメタ認知コラムを参考にしてみてください。
・因果関係を書き出す
次にできれば白紙の紙を出して、因果関係を分析していきましょう。頭の中で考えるよりも、紙に書きだした方が冷静に分析しやすいです。紙に書くと記録として残り、思考か前に進みやすくなります。
・次にどうするか?考える
因が関係を冷静に分析できたら、最後に次にどうするか?考えていきましょう。失敗過敏型の目標ではなく、前向きな目標がいいですね。
まとめとお知らせ
まとめ
私たちの人生は失敗の連続と言ってもいいかもしれません。筆者の川島も自慢ではないですが、失敗続きの人生です。
・対人恐怖症になった
・会計士受験の失敗
・ひきこもりになった
・自殺企図
・会社をつぶしかけた
・結婚まで考えた女性にふられる
・コロナウイルスで大ピンチ。。
失敗をすると、その瞬間は極めて、落ち込むものです。
しかし、不思議なことに長期的なスパンで見ると、人生に大きな気づきを与えてくれることがわかります。
例えば私は、ひきこもりになったことで、心理学にすごく興味を持つようになりました。今では、精神保健福祉士、公認心理師という2つの国家資格を取り、心理系大学院卒業という人生の大きな転機に繋がりました。
私にとってまさに失敗は成功の元となりました。
無責任かもしれないですが、皆さんの失敗もきっと後で振り返ると成長につながると私は信じています。是非迷ったら行動!でチャレンジを重ねてみてくださいね。
講座のお知らせ
公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では
・恐怖心との付き合い方
・対人不安の改善
・人前で話す練習
・ビジネスで役立つ問題解決思考
など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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出典・参考文献
中村(2016)理想自己と現実自己の差異と自己注目が劣等感に与える影響 2016 年 2016 巻 26 号 p. 168-172