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自己愛性パーソナリティ障害とは?特徴,診断基準

自己愛性パーソナリティ障害とは?特徴,診断基準

はじめまして!公認心理師の川島です。今回のテーマは「自己愛」です。

  • 目標
  • 自己愛について理解する
  • パーソナリティ障害について理解
  • 接し方のコツを学ぶ

全体の目次
入門①自己愛とは何か
入門②歴史,健康な自己愛とは
入門③パーソナリティ障害とは
入門④研究,支配性
入門⑤付き合い方
助け合い掲示板

入門①~⑤を読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。是非入門編は最後までご一読ください。もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもぜひお待ちしています。

しっかりその問題、これまでの研究結果や解決策についてお伝えしたいので少しお時間を頂きます(^^;)ちょっと大変かもしれませんが、是非お付き合いください。

入門①自己愛とは何か?

自己愛の由来

まず初めに言葉の理解から始めていきましょう。自己愛は英語表記でナルシシズム(narcissisom)と訳されています。由来としてはギリシャ神話から来ています。

若く美しいナルキッソスは、山の湖で自分の姿を見ます。その姿があまりにも美しかったために、彼は自分に恋をします。そうして、その水面から離れることができなくなり、ついには死んでしまう。

というお話です。なんとも示唆に富んだ話ですね。心理学の世界では、古くから自己を愛する対象とすることを自己愛と呼び、研究され続けてきました。

ナルシズム,自己愛

入門②自己愛と研究の歴史

自己愛について、研究した3人の研究者を簡単に紹介します。

フロイトと自己愛

ナルシシズムを本格的に心理学の世界で使い始めたのはフロイトと言われています(松並,2013)。フロイトは1914年に「ナルシシズム入門」という本を出版しました。

①自体愛(1次的自己愛)
フロイトは、人間にはリビドーという欲望の塊があると考えました。幼児期にはその欲望の塊が自分に向いてると考え、これを「自体愛」と呼びました。「自己愛」ではなく、自体愛です。似ているので間違えやすいですね。

②自己愛(2次的自己愛)
フロイトは自体愛は青年期になると、自己愛に至ると考えました。自己愛は先程のナルキッソスの自己愛のイメージと近いです。自分自身を愛することを意味します。

③対象愛
そうして正常に発達していき、大人になると、徐々に、自分だけではなく、周りも愛せるようになります。フロイトはこれを対象愛と呼んだのです。

フロイトは、健全な発達のためには自己愛を卒業し、対象愛に進まなくてはならないと主張したのです。

ハインツ・コフート

これに対して、精神科医・精神分析学者のハインツ・コフート(Heinz Kohut)は別の考えを持っていました。フロイトが、自己愛は対象愛に変わるべきと考えたのに対して、コフートは自己愛は持っていてよいと考えたのです。

ただし、コフートは自己愛には2種類あると主張しました。

未熟な自己愛
自分だけしか愛さないこと

成熟な自己愛
自分も他人も愛すること

コフートは愛は相手に向けられるだけでなく、自分にも相手にも向けることが成熟した自己愛と考えたのです。皆さんはちらがしっくりきますでしょうか。

パルバーと自己愛

さてさて…自己愛の研究はまだまだあるのですが入門編としてはあと1つぐらいにしておきましょう。心理学者のパルバーは、自己愛を以下の2つに分けて説明しています。

健康的な自己愛
防衛的でない人間本来の自尊感情、自分をありのままを愛する、大切にする状態

不健康な自己愛

ネガティブな自己評価から自分自身を防衛する防衛的自尊感情、マイナスの自己評価を感じないよう防衛する状態

この定義は比較的わかりやすいですね。自分をありのままに愛するのはOKだけど、自己否定を覆い隠すような虚勢を張った自己愛は不健康であるとパルバーは考えたのです。

2種類の自己愛を解説

問題となる自己愛

歴史の偉人たちの話から入門としては以下のポイントを抑えておきましょう。

・ありのままの自分を愛するする  →OK
・自分だけしか愛さない      →NG
・自己否定的な自分を覆い隠す歪んだ自己愛は →NG

入門②自己愛性パーソナリティ障害とは?

パーソナリティ障害とは

パーソナリティ障害とは、性格傾向の著しい偏りによって日常生活に障害をもたらしている状態を指します。アメリカ心理学会の基準では、ABC、3つのクラスターが分類され、そのうちクラスターBに「自己愛性パーソナリティ障害」が存在します。

診断とチェック

具体的にアメリカ精神医学会DMS-5の診断基準を概観していきます。

①3つの症状
誇大性
 自分の能力や業績を過大評価する/自分は特別であると考えているなど
称賛への欲求
 大きな業績な他者からの称賛、名声、影響力を求める/有名な人や権威のある人との付き合いを求めるなど
共感性の欠如
 自分の価値や業績の過大評価し、他者の価値や業績を過小評価するなど

②以下の症状が5つ以上認められる
 精神疾患の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)の診断基準は以下の図の通りです。

自己愛性パーソナリティ障害の診断とチェック

③時期
成人早期に始まっていることが条件になります。

 

性格特性・問題

自己愛性パーソナリティ障害の有病者は一般人口の0.5%と言われており、女性よりも男性に多い傾向があります。また、以下のような特徴があるとされています。

・病気を併存する
自己愛性パーソナリティ障害の人は、複数の病気を発症する傾向があります。特に、うつ病や物質障害(アルコール依存、薬物依存など)の併存が多いことが分かっています。

・自尊心の調節が困難
自己愛性パーソナリティ障害の人は、自尊心が歪んでいるといわれています。そのため他者からの批判に非常に敏感で、失敗すると他者に悪意を持って反撃することもあります。

このように不健康な自己愛が著しく偏ってしまうと日常生活が困難になるほど、深刻な問題に発展するのです。

イメージ,風船と桃

少しわかりにくいので、もう少しイメージしやすくしましょう。自己愛が歪んでいるひとは、一見自己肯定感がすごくあるように見えることがあります。ちょうど膨らんだ風船のようです。

風船は大きく見えますが、ふらふらとしていて不安定で、ちょっと傷がつくと割れてしまいます。そのためいつも傷つけられないか?不安で仕方がないのです。

自己愛,不安定

対して自己愛が安定している人は、桃のようなイメージです。モモは手ごろな大きさで、重さもあり、とても中身があまく、充実しています。皮もあるので、少々の傷では味が落ちることはありません

自己愛が安定している人

入門④研究-対人関係に及ぼす影響

自己愛の問題は、日常生活でどう困難となってくるのか?これまでたくさん研究されてきました。ここで自己愛についての研究から以下の4つの特徴を紹介します。気になるタイトルについて展開してみてください。

根岸・山口(2017)は、青年期にある18歳から25歳までの420名を対象にしています。研究では自己愛の種類が分析され、その中の1つに「過敏型自己愛」があることがわかりました。

過敏型自己愛とは、他者の言動や反応、批判や軽視に傷付きやすいことを意味します。

研究では過敏性自己愛の男性は、他人を支配しやすいこともわかりました。他者の言動や反応に敏感だからこそ、自分が傷つかないように人を支配する傾向が強いと読み取ることができます。

過敏型自己愛男性の結果

つづいて、過敏型自己愛の女性は「結合・相互妥協」との相関があることが分かりました。結合・相関妥協とは、他人との衝突を避けるために他人の意見を優先させる行動などです。

 

過敏型自己愛女性の結果

根岸・山口の研究ではもう1つ、「誇大型自己愛」があることが示唆されています。誇大型自己愛とは、自分には特別な才能があると思い込む自己愛です。

研究の結果誇大型自己愛については、男女とも支配的であることがわかりました。

過敏型自己愛 研究結果

 

以上の結果から、各自己愛タイプに予想される対人関係や巻き込まれやすいトラブルは、以下などが考えられます。

自己愛によるトラブルの例

自己愛タイプの違いで対人関係にも大きな影響が起こることがわかりました。対人関係の良し悪しは、自分の精神的健康にも関わってくる大切な要因です。自分の自己愛タイプと起こりがちな問題を振り返ってみることもおすすめです。

下司・小塩(2019)の研究では、大学生 210 名を対象に、Dark Triadと他者操作方略との関連が検討されています。Dark Triadとは、他者に苦痛を与える行動傾向を特徴とするもので、以下の3つの性格特性があると言われています。

マキャベリズム
合理的な道徳観をもち、冷笑的に世界を捉えて他者操作的に行動する傾向性を表す特性
自己愛傾向
過大評価して主導的にふるまい、誇大感を維持しようとする自己中心的な傾向性を示した特性
サイコパシー傾向
罪悪感や共感性に乏しく、利己的かつ半社会的な行動をする傾向性を表した特性であり、この特性も他者操作性をその重要な特徴とした

Dark Triadの性格特性の一つ「自己愛傾向」の結果を中心に、他者操作方略との関連を見ていきたいと思います。

自己愛傾向にいての研究

研究では、自己愛傾向と他者操作方略の項目「自己優越感感情操作」との間に正の相関が認められました。自己優越感感情操作とは、「ことわりにくくさせ、都合が良いことを確認した後に頼み事をする」などが問われる項目です。

自己愛傾向と自己優越感感情操作の関係

つまり自己愛傾向が強いほど、自分の都合が良いように相手の感情を操作する方法を使う傾向にあるということです。

自己優越感感情操作が高い人は、
・自己中心的に話を進める
・相手の話を聞かない
・自分の要求を断らない人に仕事を任せる
などの傾向があります。そのため、「周囲から浮いた存在になる」「自分のいないところで悪口を言われる」などの対人関係トラブルを起こしやすくなります。

対人関係の問題を振り返る

入門⑤自己愛が強い人との付合い方

自己愛が強い人は、自分の愛を満たすために他人を操作しようとしてきます。そのため付き合いが長くなると、自分を犠牲にしてまで尽くし続けてしまう事につながり、自分のためにも相手のためにもなりません。

そこでここでは、自己愛が強い人との上手な付き合い方を4つ提案させていただきます。

対策①限界設定をする

自己愛が強い人と付き合うときには「限界設定」が必要です。限界設定とは、勇気をもって「できること、できないことを明確にする」というものです。

相手の要求を何でも引き受けてしまい疲れてしまいがち…という人は要注意です。振り回されないように「できる」「できない」の線引きを明確にして、健康的な人間関係で付き合うようにしましょう。

またもしあなたが自己愛性パーソナリティ障害であっても同じく、自分の行動に限界設定を創ることがとても大事です。限界設定について、より詳しく理解したい方はこちらのコラムを参照ください。

自己愛性人格障害,限界設定

対策②アサーションで主張する

自己愛が強い人と上手に付合うときには「アサーション」が役立ちます。アサーションとは、「自他自尊のコミュニケーションを大切」にする考え方で、3つの自己表現があるとしています。

1:攻撃的自己表現
自分の主張を最優先に考えて行動します。そして時には他人を傷つけたり踏みにじるようなこともあります。自己愛が強い方は、このタイプに当てはまりやすいです。

2:非主導的自己表現
自分より他人の主張を優先して行動します。自分の気持ちを伝えないなかったり言い損ねたりします。もしあなたがこのタイプで、相手が攻撃的自己表現のタイプだと事態は最悪になります。

3:アサーティブな自己表現
自分の気持ちを正直に、その場にふさわしい方法で表現し行動します。 限界設定をしつつ、お互いを思いやりながらコミュニケーションすることができます。

相手の自己中心的な言動に振り回されがち…という人は、

・自分もOK、他人もOK
・折り合いをつける
・過剰な要求は断る

など、アサーティブな考え方を取り入れて気持ちを軽くしていきましょう。もっと詳しくアサーションの学びたい方は、こちらのアサーションコラムを参照ください。練習問題もありますよ。

自己愛が強い人の対処法

対策③共依存関係に注意

自己愛が強い方は、操作的で支配しようとしてきます。自信があるように見えるため、不思議な魅力がある方が多いです。ただ、この支配に盲目的に従っていると、共依存関係に発展することがあります。

共依存関係とは、特定の人間関係に過度に依存し、閉鎖的な関係の中でお互いの問題を大きくしてしまうような関係を意味します。

・2人だけの閉鎖的な関係
・理不尽な要求も受け入れてしまう
・拒否をして逆上されるのが怖い

こんな状態にある方は、共依存の疑いがあります。自己愛が強い方と、激しい関係が続き、お互い疲弊している感覚がある方は、下記の動画を参照ください。

対策④専門機関で練習する

独学で学ぶことに不安や限界を感じた場合は、専門家の元でしっかり学ぶこともおススメしています。 私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、メンタルヘルスの向上を目指し、心理学講座を開催しています。独学に限界を感じた方、体系的に勉強されたい方のご参加をぜひお待ちしています。

執筆者も講師をしています(^^)
 ・自己主張、アサーション練習
 ・人の目を気にする状態を改善‐認知療法
 ・リラックスした人間関係を築く会話練習
初学者向けコミュニケーション教室を開催しています

コミュニケーション講座の様子

健全な自己愛を目指そう

最後に、これまで「自己愛」コラムにお付き合いして頂き、ありがとうございました。新しいことを生活に取り入れ、これまでの習慣を変えるのはなかなか大変なことです。焦らず、できそうなことから根気強く取り組んでみて下さい。

まずは、ご紹介したワークを使って実践してみてくださいね♪

心理学講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
・ファンデンボス,G.R.(2013)APA 心理学大辞典 p343
・小此木啓吾. (1981). 自己愛人間. 現代ナルシシズム論.
・水島広子(2015). 困った感情のトリセツ,PHP新書.
・下司忠大, & 小塩真司. (2019). Dark Triad と他者操作方略との関連. パーソナリティ研究, 28-2.
・根岸優稀, & 山口一. (2017). 大学生の自己愛類型と対人葛藤方略の関連性について. 心理学研究: 健康心理学専攻・臨床心理学専攻, 7, 1-16.
・Pulver, S. E. (1970). Narcissism: The term and the concept. Journal of the American Psychoanalytic Association, 18(2), 319-341.

・四天王寺大学紀要 第 56 号(2013年 9 月) 自己愛に関する研究の概観 ―ナルシシズムとセルフラブ、および、質的な性差に焦点を当てて1 )松 並 知 子