全般性不安障害,症状,診断基準

皆さんこんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史です。私は現在心理学講座を開催しています。今回のテーマは「全般性不安障害」です。

全般性不安障害,症状,はるかむぎ様作成

当コラムでは不安障害の基礎から治療法まで一通り解説していきます。目次は以下の通りです。

①全般性不安障害とは
②診断,チェックリスト
③併存と治療リスク
④原因と治し方

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に、特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。是非最後までご一読ください。

 

全般性不安障害とは何か

GDAとは何か

皆さんは全般性不安障害という言葉を耳にしたことがありますか?日常的な用語ではないため、聞き馴染みがない人が多いと思います。全般性不安障害は

generalized(全体)
anxiety(心配)
disorder(障害)

のことで、頭文字をとってGADと略されます。新しい診断基準では、全般不安症と言います。

 

定義

ウィスコンシン州の精神科医、John(2016)は全般性不安障害を以下のように定義しています。

全般性不安障害では、いくつかの活動や出来事について過剰な緊張や不安が生じる。6カ月以上にわたって、不安が起きる日数が、不安のない日数を上回る

つまり、過剰な緊張や不安が、長期間続く心の病という解釈で良いでしょう。

例えば、
・重い病気にかかっているのでは…
・子どもが学校でいじめられてないか…
・災害が起きて家がつぶれてしまう…

など、根拠もなく、真剣に心配してしまいます。過剰な不安に晒され続け、日常生活がままならない状態になってしまうのです。

 

有病率

川上ら(2006)の疫学調査では、全般性不安障害の12か月有病率は0.86%であったと報告しています。これを日本の20歳以上人口にあてはめると、過去12か月に86万人が全般性不安障害を経験したことになります。このように、全般性不安障害は珍しいものではない疾患と言えます。

全般性不安障害,GAD,はるかむぎ様作成

 

診断基準,チェックリスト

全般性不安障害にはどのような診断基準があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

①DSM-Ⅳの診断基準

精神医学の診断基準である「DSM-Ⅳ 精神疾患の分類と診断の手引」では、以下のような症状が挙げられています。

身体症状
緊張症状 疲労感 めまい ふらつき 動悸

精神症状
不安と心配 不眠 集中困難 焦燥 過覚醒

このように、身体症状にまで影響するほどの強い不安・心配が起きるのが特徴です。不安で呼吸が早くなって苦しい、立っていられなくなるなどの症状が現れることがあります。

 

②ICD-10の診断基準

ICD-10精神および行動の障害(2018)によると、全般性不安障害は、以下のような診断ガイドラインに基づいて診断されます。

患者は少なくとも数週、通常は数か月、連続してほとんど毎日、不安の一次症状を示さなければならない、それらの症状は通常、以下の要素を含んでいなければならない。

(a)心配
将来の不幸に関する気がかり、「いらいら感」,集中困難など

(b)運動性緊張
そわそわした落着きのなさ、筋緊張性頭痛、振戦、身震い、くつろげないこと

(c)自律神経性過活動
頭のふらつき、発汗、頻脈あるいは呼吸促拍、心窩部不快、めまい、口渇など

つまり、心配性に加えて、過度に緊張したり、生理的な症状が表れる症状であると言えます。上記のような症状に当てはまる方は、精神科もしくは心療内科を受診するようにしましょう。

 

併存症と治療リスク

全般性不安障害は併存症が起こりやすく、治療する際の足かせになることがわかっています。Bruceら(2005)は、併存症を持つ不安障害患者を12年にわたって追跡調査しました。

①パニック障害との併存

まずは、全般性不安障害×広場恐怖をともなうパニック障害から見ていきましょう。

不安神経症 克服

このように、回復の可能性を見たリスク比は0.67と低い値です。リスク比とは「併存がある」グループと「併存がない」グループとの比率になります。少し専門的な数字をなりますが、パニック障害を併存していると、不安障害が治りにくいことが考えられます。

 

②大うつ病性障害との併存

続いて、大うつ病性障害の結果を見てみましょう。

心配を和らげよう

このように、回復の可能性を見たリスク比が0.57と低い値を示しています。やはり、全般性不安障害にパニック障害、大うつ病性障害の併存症があると、回復しにくいということが言えそうです。

 

全般性不安障害,併発リスク,はるかむぎ様作成

 

 

原因と治し方

全般性不安障害の原因は大きく分けて、脳の神経伝達物質の乱れ、心の問題の2つが挙げられます。前者は、薬物療法、後者は心理療法で改善していくことになります。当コラムでは、心の問題と心理療法を中心に6つのやり方を紹介します。

①非現実的な認知の偏り
②不安のコントロールができない
③未来を考えるすぎる
④回避癖が症状を悪化させる
⑤情報に過剰に触れる
⑥遺伝的な影響がある
*補足 薬物療法と心理療法

ご自身でも活かせそうなものを中心にご活用ください。

 

①非現実的な認知の偏り

全般性不安障害の方は、極めて低い可能性の危機を多く見積もり、不安を自分の中で大きくしてしまいます。例えば、「将来年金をもらえず、路頭にまよったらどうしよう」と考え、不安で仕方が無くなってしまいます。もちろんこのような可能性が全くないわけではないですが、少なくとも福祉が発展した日本では路頭に迷うことはないでしょう。

このように、可能性が低いことに悩んでしまう方は、認知療法を学ぶことをおすすめします。認知療法では、非現実的な認知の偏りを、現実的にしていく練習をしていきます。全般性不安障害で最もよく使われる心理療法です。参考にしてみてください。

認知療法の基礎とやり方

②不安のコントロールができない

不安をうまくコントロールできる人は、不安になったとしても自分を客観視し、落ち着くことができます。一方で、不安のコントロールが苦手な方は、不安が不安を呼び、余計に混乱してしまいます。

改善をするには、マインドフルネス療法を学ぶことをおすすめします。マインドフルネスとは、不安を客観的に眺め、冷静に対処する力を高める心理療法です。

マインドフルネスの特徴としては、不安を無理に無くそうとしない点にあります。あくまで不安を自然な感情として受け入れ、ただ冷静に眺めることで、うまく付き合っていこうとするのです。東洋的な考え方が土台にある心理療法で、日本人にもしっくりきやすいという特徴があります。

以下のコラムではマインドフルネスの様々なエクササイズを紹介しています。参考にしてみてください。

マインドフルネス療法

 

③未来を考えすぎる

不安は未来のことを考える時に起こりやすくなります。天災が起こったらどうしよう、健康を害したらどうしよう、お金がなくなったらどうしよう…これらは全て未来に起こることです。

このように、未来のことを考えすぎている人に対しては、心理療法では「今ここ」に意識を向ける練習をすることがあります。大概の方にとって「今この瞬間」はそこまで問題を抱えていることは少なく、むしろ幸せな状態なことが多いです。

もし未来のことを考えすぎていたら、「今この瞬間」に目を向けてみましょう。例えば、ご飯を充分味わう、お散歩をしている時に、道に生えている野花の美しさに目を向ける、などが挙げられます。今この瞬間を生きる練習は以下のコラムで解説しています。参考にしてみてください。

今ここを生きる方法

今ここ,不安障害,はるかむぎ様作成

 

④回避癖が症状を悪化させる

心理学の研究では、苦手なものを避けるほど、症状が悪化することがわかっています。全般性不安障害の方は、不安があるとその状況を避け、余計に症状を悪化させてしまうことがあります。

対策としては、行動療法を学ぶことをおすすめします。行動療法は不安の小さなものから取り組み、行動範囲を広げていく手法です。自分が苦手とする場面に少しずつ慣れていくような手法で、実践的に練習をしていきます。行動療法はざっと10種類程度あり、症状に合わせて適切な療法が適用されていきます。

回避癖、逃げ癖がある方は以下のコラムを参照ください。

行動療法のやり方

 

⑤情報へ過剰に触れてしまう

不安がある方は、不安に感じる情報を集めすぎて、余計に大きくしてしまうことがあります。例えば、2020年はコロナショックがあり、毎日のようにニュースが流れています。もちろん情報を入手することは大事なのですが、長時間ネガティブな情報に触れ続けると不安が増進されています。

例えば、テレビは1日30分までなど制限して、不安を促進させる情報に触れすぎないようにしましょう。

 

⑥遺伝の影響

最近の遺伝学の研究では、性格はある程度遺伝することがわかっています。この点、不安の感じやすさも遺伝することが分かっています。研究によって幅がありますが、30~50%程度は遺伝すると言われています。

そのように考えると不安の感じやすさは、ある程度先天的に決まってしまっている部分もあるので、無理に変えようとせず、受け入れていく姿勢が大事になります。

おすすめなのは、不安の感じやすさをむしろ自分の強みにしてしまことです。例えば、不安を感じやすい方は、危険物を取り扱う仕事、医療機関、整備の仕事などで有利に働きます。また不安を感じやすい人は、深みのある創作物を作れるという面もあります。

全てを変えるのではなく、自分の尊重すべき傾向として、受け入れる姿勢も持つようにしましょう。性格と遺伝について理解を深めたい方は以下の動画を参照ください。

性格と遺伝の関係

 

不安を受け入れる,はるかむぎ様作成

 

まとめ

これまで「全般性不安障害」コラムにお付き合いしていただき、本当にありがとうございました!症状への理解を深められたと感じていただけたら幸いです。皆さんが不安とうまく付き合い、健康的な日常を送られることをせつに願っています。

 

心理療法の講座のお知らせ

最後にお知らせがあります。専門家から心理療法をしっかり学びたい!という方は良かったら私たち公認心理師が開催している、心理学講座への参加をおすすめしています。講座では

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などを学習していきます。参加のタイミングとしては、回復傾向にある時期、再発を予防したい時期におすすめです。皆さんのご来場をお待ちしています。↓興味がある方は以下の看板をクリック♪↓

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出典・参考文献
John H. Greist (2016)MSDマニュアル家庭版 全般不安症(GAD)
監訳 融道男・小見山実・大久保善朗・中根允文・岡崎祐士(2018)ICD-10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 新訂版 医学書院

Bruce, S. E. et al. (2005) Influence of psychiatric comorbidity on recovery and recurrence in generalized anxiety disorder, social phobia, and panic disorder: A 12-year prospective study. American Journal of Psychiatry, 162, 1179-1187.