燃え尽き症候群, バーンアウトからの回復

皆さんこんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史です。私は現在心理学講座を開催しています。今回のテーマは「燃え尽き症候群, バーンアウト」です。

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当コラムでは燃え尽き症候群の基礎から治療法まで一通り解説していきます。目次は以下の通りです。

①燃え尽き症候群とは何か
②バーンアウトと3つの基準
③学習性無力感型と回復法
④モラトリアム型と回復法

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に、特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

 

①燃え尽き症候群とはなにか

燃え尽き症候群は、英語のバーンアウトが翻訳された言葉で、以下のように定義されています。

長期にわたる対人援助の過程で、心的エネルギーが絶えず要求された結果、重篤な身体的疲労と感情の枯渇 を示す症候群(Maslach & Jackson, 1981)

それまで普通に仕事ができていた人が、燃え尽きたようにやる気を失うことや仕事のパフォーマンスが低下することを指しています。

歴史

burnoutはもともと、看護師や教師などの対人援助職の領域で、薬物依存症の方に見られる虚脱症状を表すスラングとして使われていました。その後、1970年代になると、フロイデンバーガーという心理学者が「burnout」を学術用語として使い始めました。

きっかけは、意欲的に支援をしていた対人援助者が、急に心身の不良を訴え、仕事を継続できなくなるということが多発したためです。

燃え尽き症候群,フロイデンバーガー

その後、1981年に心理学者のマスラッハがMBI(Maslach Burnout Inventory)という心理尺度を開発します。これは燃え尽き症候群の強さを測る尺度であり、その後研究が進んでいきました。アメリカより10年ほど遅れ、日本では1980年代後半から燃え尽き症候群の研究が始まりました。元々は援助職を中心とした研究が盛んでしたが、現在では、教師、スポーツ選手、学生などを対象とした、たくさんの研究が行われています。

精神疾患として認定

燃え尽き症候群は今のところ病気としては認定されていません。精神疾患としては「適応障害」や「うつ病」と診断されることが多いです。しかし、2022年発効予定のICD11では、明確に定義されることが予告されています。それほど社会的には問題となる症状なのです。

 

②バーンアウトと3つの基準

マスラックら心理学者を中心とした研究グループは、1981年にバーンアウトのチェックリストを作成しました。その際に、燃え尽き症候群の症状を大きく、①情緒的消耗感、②脱人格化、③個人的達成感の低下、に分類しています。

日本では、久保(2007)により、日本語版バーンアウト尺度が作成され、同じく3つの分類が確認されています。

以下、マスラック,久保らの文献を参考に、チェックリストを掲載しました。ご自身に当てはまるか検討しながらご覧ください。なお、質問は仕事を前提としていますが、勉強は子育てとして考えても大丈夫です。

 

①情緒的消耗感

1つ目の、情緒的消耗感は、簡単にいうと「気持ちの疲れ」です。例えば、対人援助職では、相手の立場に立った気遣いを絶えず求められます。このように気持ちのエネルギーを使う作業を、日々繰り返していくと、バーンアウトになるリスクを高めてしまいます。

もう仕事をしたくないと思う
1日がとても長く感じる
体も心も疲れ果てている

 

②脱人格化

脱人格化は、感情を失って人間らしさが無くなることを指します。例えば、職場や家庭環境が悪く、日々人格を否定されるような職場の場合、素直な感情表現ができなくなる方がいます。その結果、自分にも他人にも機械的な対応になってしまいます。

同僚やお客の顔を見たくない
感情を素直に表現できない
思いやりのない対応をしてしまう

③個人的達成感の低下

燃え尽き症候群になると、目標を見失っているために、何をしても虚しい気持ちになってしまいます。やり遂げた!成長できた!という感覚が乏しく、楽しく行動できなくなってしまいます。

仕事に熱中できない
感情を素直に表現できない
個性を発揮できない

バーンアウト,女性,ふりっくす様作成

③学習性無力感型と回復法

燃え尽き症候群は大きくわけて、学習性無力感型とモラトリアム型の2つがあります。まずは学習性無力感について解説していきます。

学習性無力感型

学習性無力感は課題が困難で結果がでないとき、失敗や挫折が続く場合の燃え尽き症候群です。下記はフロー心理学という分野で使う図です。

モラトリアム型

右側のゾーンは「難易度」が自分の「スキル」の範囲を大きく超えている状況に該当します。つまり、目標が高すぎ、結果が出ない状態が長期的に続いている状態です。

長期的にパワハラを受けている
残業時間が月に60時間を超えている
DVが続いて抵抗できない

このような状態の方は学習性無力感型の燃え尽き症候群と考えられます。学習性無力感型の燃え尽き症候群は、深刻度が高く、適応障害、うつ病に結びつくこともあるので注意が必要です。

回復方法

学習性無力感型のバーンアウトから回復するためのやり方として以下の5つを紹介します。ご自身でも活用できそうな項目を組み合わせてご活用ください。

学習性無力感は深刻化すると、洗脳されているような状態になってしまい、自分の状況を客観的に振り返る余裕がなくなっていることがあります。1日10分でも良いので、自分がいる環境が、健康的なのか、冷静に把握する時間を取りましょう。

この点、メタ認知という手法を学んでおくと振り返りやすくなります。自分のことを考える余裕がない…と感じる方は参考にしてみてください。

メタ認知力をつける

 


学習性無力感の方は、まじめな性格でタスクを抱え込みすぎている傾向にあります。いっぱいいっぱいになっている時は、抱え込みすぎたタスクを軽くして、休む時間を確保することが大事です。

ここで大事になるのが「限界設定」です。限界設定とは「自分には、ここまではできるけど、ここから先はできない」という基準の部分になります。例えば、

ビジネスマン → 残業は月30時間まで
子育て    → 夕食手作りは週5まで
学生     → 勉強は10日に1回は休む

このように、自分ができる限界を考えて、その範囲内で作業を行っていきます。限界を超えて頑張ってしまう…という方は下記のコラムを参考にしてください。

限界設定でタスクを制限しよう

 


限界設定ができるようになっても、断るのが苦手な方もいると思います。そこで相手との人間関係を大事にしながらうまく断る力をつけることをオススメします。詳しくは以下のコラムを参考にしてみてください。

断り方コラム

頑張りすぎてしまう方は、悩みを一人で抱えすぎて、パンクしてしまっていることがあります。困った時はお互い様です。本当に困った時は、なるべく周りの人に伝えるようにしましょう。

特に孤立化している、相談できる人がいない、誰も助けてくれない…と感じる方はこちらのコラムを参考にしてみてください。

ソーシャルサポートコラム


パワハラ、DV、仕事の相性が悪いなど、自分ではどうしようもない環境にある場合は、限界を見極め、環境を変えるのも1つの手段です。

例えば、仕事や結婚はあくまで、幸せになるためにするものです。もし仕事や結婚が自分自身を苦しめているのなら、なんのために働いているのか、本末転倒になってしまいます。本当に努力をして、それでもダメな場合は、自分の中で環境を変える線引きも考えておきましょう。

 

 

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④モラトリアム型と回復法

モラトリアム型

モラトリアム型は、高い目標を達成してしまったり、目標を喪失してしまったりした時に起こる燃え尽き症候群です。以下の図をご覧ください。

モラトリアム

左側のゾーンは「難易度」が自分の「スキル」の範囲を大きく下回っている状況に該当します。このエリアは自分が力の注ぎ所がぶつけ所がわからず、味気ない毎日が続く…という状態になりやすくなります。

大学受験が終わった
スポーツで引退した
大変だった子育てがひと段落した

これらの状態で起こりやすいのが、モラトリアム型の燃え尽き症候群です。モラトリアム型の方は、もともと努力されてきたが多く、時間が経てば、再び活動的に動かれる方が多い印象です。

 

回復方法

モラトリアム型のバーンアウトから回復するためのやり方として以下の4つを紹介します。ご自身でも活用できそうな項目を組み合わせてご活用ください。


モラトリアム型の燃え尽き症候群の方は、目標の再設定が必要となります。どんな人生を歩みたいのか、どうすれば幸せになれるか、哲学的なところからじっくり考えてみましょう。

モラトリアム型の方は、元々頑張ってこれた方が多く、努力家な傾向があります。やりたいことが見つかると、一気に元気になる方もいます。以下のコラムではモラトリアムの時期の過ごし方を解説しています。参考にしてみてください。

モラトリアムコラム

 


田尾(1989)は、介護士・理学療法士・作業療法士・看護師の4つの対人援助職の441名を対象に、どのような状況が燃え尽き症候群に影響しやすいかについて調査を行っています。その結果が下記となります。

 

燃え尽き症候群 原因

このように仕事が曖昧だと、情緒的な消耗も大きくなりやすいという結果になりました。曖昧な状況は、何をやっていいのか?わからず心理的な疲労も蓄積していくと考えられます。

将来どんな自分になりたいか、どうすれば達成できるか、そのためには今日何をすべきか、を明確にしていくと再びやる気がみなぎってくるでしょう。


新しい目標や生きがいを見つけるためには、好奇心を増やす必要があります。今まさに目標を達成したばかり、引退したばかりという方は急ぐ必要はないですが、落ち着いてきたら様々なことに再び興味を向けていくといいでしょう。以下のコラムも参考にしてみてください。

好奇心を高める方法


心理学の研究では、対象への愛着を持つほど燃え尽きが少ないことが分かっています。澤田(2009)は、地方の大規模病院の常勤の看護師407名を対象に、組織への愛着と燃え尽き症候群との関連性を調査しました。

まずは、情緒的消耗感から見ていきましょう。情緒的消耗感とは、気持ちがつかれていると感じることという意味でしたね。

燃え尽き症候群

このように、組織への愛着と、情緒的消耗感には負の相関があるという結果になりました。所属している集団を好きになると、精神的な疲労が少なくなっていくのですね。

次に脱人格化を見てみましょう。脱人格化とは、気持ちが疲れ、情緒的に応対するなどの人間らしさが失われることです。

こちらも、組織への愛着が高いほど、脱人格化が低いという相関が見られました。

最後に達成感ついてみてみましょう。仕事の個人的な到達度合い・パフォーマンスの高さという意味になります。

こちらは、組織への愛着が高いと、達成感も高いという結果になりました。所属している集団が好きであるほど、達成感も上がっていき、燃え尽き症候群が発症しにくくなるのです。

もし今の仕事や勉強に愛着を持てない場合は、改めて社会的意義や、作業の価値観を考えてみるのもいいかもしれません。


一度目標が見つかったら持続させる力も大事になってきます。充実感を長く持続させるには、フロー心理学を学習することをおすすめします。毎日を活気のあるものにしたい!と感じる方におすすめです。

フロー心理学の基礎

 

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まとめ

当コラムで解説したように、同じ燃え尽き症候群でもその原因は大きくわけて2つに分けられます。特に無力感型の燃え尽きは深刻になりやすいので充分注意してください。当コラムが皆さんの生活のヒントになり、充実した日々を過ごされることを切に願っています。

 

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*出典・参考文献
・Maslach, C., & Jackson, S. E. (1982) The Maslach Inventory, Palo Alto, CA: Consulting Psychologists Press.
中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
・伊藤美奈子(2000)教師のバーンアウト傾向を規定する諸要因に関する探索的研究 教育心理学研究, 48, 12-20
・久世浩司(2015)マンガでやさしくわかるレジリエンス 日本能率協会マネジメントセンター
・久保真人(2007)バーンアウト(燃え尽き症候群) ヒューマンサービス職のストレス 日本労働研究雑誌 49(1)54-64
・澤田忠幸(2009)看護師の職業・組織コミットメントと専門職者行動,バーンアウトとの関連性 心理学研究 80(2) 131-137
・田尾雅夫(1989)特集「ストレスの社会心理学」バーンアウト -ヒューマンサービス従事者における組織ストレスー 社会心理学研究 4(2) 81-89
・田村尚子(2018)感情労働マネジメント –対人サービスで働く人々の組織的支援- 生産性出版

・ミハイ・チクセントミハイ著,今村浩明訳:フロー体験 喜びの現象学,新思索社,2000