PTSDの治療法,接し方

皆さんこんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史です。私は現在心理学講座を開催しています。今回のテーマは「PTSD」です。PTSDの治療法には様々な種類があります。具体的な心理療法を複数提案させて頂きました。目次は以下の通りです。

①PTSDとは何か?
②PTSDと発症率
③PTSDの治療法
④入院治療2つのメリット
⑤患者さんとの接し方

当サイトの特色は、臨床心理学、精神保健福祉の視点から心の病気を解説している点にあります。心の病気の解説サイトは多いですが、精神科医の先生が監修されていることが多く、心理師の専門サイトは多くはありません。

お薬以外での改善策を詳しく知りたい方に、特にお役に立てると思います。ご自身の状況にあてはまりそうなものがありましたら是非ご活用ください。

コラムの内容は、PTSDの症状が強い方には心の負担になる可能性があります。症状が落ちついてからご覧ください。

なお動画解説もあります!一度ご覧いただいてから読み進めていくと理解が深まると思います。

 

①PTSDとは何か

PTSDは、精神医学上の分類では不安障害のひとつになります。不安障害には、

PTSD
パニック障害
強迫性障害
社交不安障害
全般性不安障害

などさまざまな種類のものがあります。共通するのは、不安や恐怖です。互いに似ている部分があるため治療方法も共通する部分があります。

定義

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)は、厚生労働省によると以下のように定義されています。

死の危険に直面した後に記憶がフラッシュバックすることで苦しい思いをすること

PTSDが広がったのは、ベトナム戦争の後と言われています。帰還兵の多くが、戦場での悲惨な体験がフラッシュバックし、自殺してしまう事例が数多く起こりました。その後、戦争だけでなく、様々な悲惨な体験においてPTSDという概念が持ち込まれるようになりました。

症状

PTSDになると様々な症状が出てきます。代表的なものは、フラッシュバックです。過去の嫌な体験が突然記憶によみがえってくる状態です。強い不安や恐怖心に襲われて苦しい思いをします。眠りにつこうとする時に、過去の記憶が出てきて眠れなくなってしまう方もいます。

具体例

具体的な事例としては以下が挙げられます。地震の被害あった方が、わずかな揺れでもパニックになってしまう。いじめにあったことがある方が、似た人を見るとフラッシュバックしてしまう。性的被害にあった女性が、男性との性行為に抵抗を感じ、男性との恋愛に障害を抱える。

 

②PTSDと発症率

Kessler(1995)は、15~54歳の5,877人を対象にPTSDの発症率の調査を行いました。

戦争38%

戦争はPTSDの最も大きな原因となります。仲間の死がフラッシュバックしたり、誰かを殺してしまう瞬間が頭から離れないなど、かなりの確率でPTSDにつながります。戦争によるPTSDを抱える方は自殺率が非常に高いのが特徴です。

性的被害 20~55%

痴漢にあった、わいせつな行為をされた、など性的被害はPTSDに繋がります。性的被害も高確率でPTSDになりやすいので、社会全体として被害を減らしていくことが大切になります。

暴力 11%

幼少期に身体的虐待を受けた、いじめで暴力を受けた、恋人からDVを受けた、など暴力を受けるとPTSDを発症しやすくなります。虐待をする傾向は世帯間でも受け継がれていくことがあるので注意が必要です。

事故 7%

車に引かれた、高いところから落ちてけがをした、など事故にあった時にPTSDを発症する方もいます。車恐怖、高所恐怖などを併発し、生活に制限がかかることがあります。

天災 5%

阪神淡路大震災の被害にあった、東日本大震災の被害にあった、など天災被害でPTSDを発症することもあります。天災については一定数の方がPTSDを発症するため、近年、災害派遣精神医療チーム( DPAT ディーパット)が注目されています。

③PTSDの治療法

①急がない

PTSDの治療では辛い体験を思い出すことが多くなるの、心への負担が非常に大きいです。すぐに治そうと思わず、長い目で改善を目指すことが大切です。心に余裕がある時にじっくり行いましょう。

②専門家のサポート

体験が悲惨であればあるほど、自力で解決することは難しくなります。治療の前に、主治医、カウンセラー、自助グループ、など、相談しやすい環境を整ておくことが大事になります。

③認知慮法

心理療法には、たくさんの種類があります。様々な種類を試してみて自分にあった心理療法を見つけることが大切です。その中でも代表的なものが認知療法です。PTSDの方は、過去の体験を引きずり極端な認知をしてしまう傾向があります。偏った考え方を現実的に戻すようにします。

認知療法のやり方

 

④持続エクスポージャー法

持続エクスポージャー法は別名、PE(Prolonged Exposure Therap)療法とも呼ばれます。PE療法ではトラウマ体験を繰り返し思い出し、解釈を見直していきます。最初に思い出す際は、大きな心の負担になりますが、繰り返し見直していくことで少しずつ混乱しないようになっていきます。

例えば、男性から暴力を受けてPTSDになっている女性が。男性がいる場所にいけないとします。その際は、まずは高齢者の男性と話す練習をするなど、心への負担が軽いものからチャレンジをしていきます。PE療法は自力での解決は難しいため、必ず専門家と一緒に取り組むようにしてください。

PR療法は行動療法という心理療法の1つです。理解を深めたい方は、以下のコラムを参照ください。

行動療法のやり方

 

③心理劇

演劇を用いた集団心理療法で、別名サイコドラマとも呼ばれます。過去の記憶が蘇るような劇を通して、患者自身が問題を解決していきます。辛い思いをする療法ですが、患者自身が気づくことで今の自分を受け入れられるようになります。

④来談者中心法

ロジャーズ,C.R. により提唱された心理療法で、別名クライエント中心療法とも呼ばれています。クライエント中心療法は、自分のペースで自分の過去と向合っていく手法です。カウンセリングでは、自分のペースで語り、聴いてもらうことで、自分自身の過去と向合っていきます。カウンセラーから意見やアドバイスを押し付けられることはありません。自分のペースを守りながら過去と向合いたい方におすすめです。

来談者中心法のやり方

⑤FMDR

トラウマを頭に思い浮かべながら、目を左右にリズミカルに動かすことでPTSDを改善いていく手法です。EMDRは心理療法の中でも新しい手法で、現在研究が進んでおり最近効果が出てくるようになってきました。詳しく知りたい場合は、以下のURLからご覧ください。

EMDRのやり方

 

④入院治療2つのメリット

PTSDの治療法に、病院に入院をして治療していく方法があります。入院治療のメリットは2つです。

身の安全の確保 

PTSDの治療は、非常に苦しいものです。時には、自殺願望が出てくる方もいらっしゃるため、もしもの時、医療関係の方に助けてもらえる環境があれば、安心して治療が行えます。

専門性が高い

PTSDの入院治療が行える病院は、専門性が非常に高いです。実績を積み重ねたPTSD専門のドクターや公認心理士や臨床心理士がいらっしゃいます。入院治療では、より専門性の高い治療が行えます。

過去の体験と本気でしっかり向き合いたいと感じる方は入院治療も視野に入れると良いでしょう

⑤PTSDを抱えている方との接し方

家族や友人の方向けに、PTSDの方との接し方について解説します。

十分に安定した関係

周囲にいる方が、PTSDを治そうと考える必要はありません。普段通り、屈託のない関係を築いておくと患者さん本人にとってもうれしいものです。いつも通りの、安定した関係を築くことを大切にしてください。

ふれない配慮も大切

患者さんが傷ついた体験について、周囲から積極的に話すのは避けたほうがいいです。本人が語りたいタイミングまでは声をかけないようにしましょう。

患者さんが話してくれる状況なら、患者さんが本人が語りたいペースに合わせて傾聴をするようにします。ムリに悩みを聴きだしたりする必要はありません。オウム変えしをするなど、ありのままを傾聴するようにしましょう。

落ち葉拾い

PTSDを抱えている方は、心の中にたくさんの枯葉があると思ってください。患者さんの言葉は、たくさんある心の枯葉を1枚づつ語りながら拾っているような感覚です。大切な人が落ち葉拾いをしていく様子を、優しく傾聴してみてください。

 

心理療法の講座のお知らせ

最後に、これまで「PTSD」コラムにお付き合いしていただき、ありがとうございました。皆さんの症状が少しでも軽くなるヒントになれたならとてもうれしいです。

専門家から心理療法や人間関係を学びたい!という方は良かったら私たち公認心理師が開催している、心理学講座への参加をおすすめしています。講座では

・認知行動療法の学習
・認知の歪みの改善
・感情のコントロール法
・傾聴方法

などを学習していきます。参加のタイミングとしては、社会復帰の準備をしている時期、復帰後に再発を予防したい時期におすすめです。皆さんのご来場をお待ちしています。↓興味がある方は以下の看板をクリック♪↓

コミュニケーション講座,心理療法の学習

 

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

*出典・参考文献
d.Kessler,1995,Posttraumatic stress disorder in the National Comorbidity Survey