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「今ここを生きる力」をつける方法

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「今ここを生きる力」をつける方法

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。今回は「今ここを生きる」についてご相談を頂きました。

相談者
38歳 女性

お悩みの内容
私は昔から何かと悩むタイプでした。将来の年金の心配をしたり、配偶者とうまくやっているかと不安になったりします。このような悩みやすい性格を直そうと思っていたら「今ここ」という心理学の用語があることを知りました。

ただ勉強をしても、「今ここ」について、いまいち理解ができず、もったいない気持ちです。良かったら教えてもらえると嬉しいです。

将来のことを悩みやすいタイプなのですね。「今ここ」というワードは確かに抽象的でわかりにくいですよね。当コラムではできるだけかみ砕いで解説していきます。

最後まで読み進めていくと、「今ここ」の活かし方を抑えることができると思います。是非最後までご一読ください。

目次
・原始仏教と今ここ
・ゲシュタルト療法との関係
・マインドフルネス療法との関係
・悩みの99%は過去と未来
・今ここエクササイズ
・実戦での活用例

 

原始仏教と今ここ

まずはじめに今ここの意味を解説していきます。「今ここを生きる」という概念は、原始仏教の「サティ」という概念がもとになっていると言われています。サティとは今まさに自分の状態に

・気が付く
・眺める
・観察する

ことを意味します。サティは悟りを開くための基本であり、2500年に渡って仏教の世界で脈々と受け継がれてきました。

サティの実践は主に「ヴィパッサナー瞑想(気づきの瞑想)」と呼ばれます。実践者は世界各国におり、近年日本でもヴィパッサナー瞑想を学べる施設が発展しています。

ゲシュタルト療法と今ここ

心理療法への広がり

サティの考え方は、主に仏教徒の中で大事にされてきたのですが、1950年代から、心理学の世界でも注目されるようになりました。

心理学の世界で最初に「今ここを生きる」を重視したのがアメリカのパールズ夫妻、P.グッドマンらです。パールズは京都での禅の修行経験もあり、東洋的な思想の影響を受けた心理学者です。

パールズは今ここを生きる思想を大事にする「ゲシュタルト療法」という手法を生み出しました。ゲシュタルトとは、ドイツ語で「統合された全体像」という意味です。

ゲシュタルト療法では、「今ここ」を土台として「知能・感覚・身体・過去・未来」を統合していくことが大事にされています。

アウエアネスとは

ゲシュタルト療法ではアウエアネスを重視します。アウエアネスとは、気づきという意味であり、自分自身の体や感情の状態に気が付き、そしてコントロールできる状態にすることを目指していきます。身体感覚や感情とは以下が挙げられます。

*身体感覚
痛み、空腹、だるさ、呼吸、凝り

*感情
嬉しい、楽しい、悲しい、辛い

これらの身体感覚や感情は「今ここ」怒っているものです。これらの感情に気が付くことで、主体的な行動が可能となり、日々をイキイキと過ごすことができるのです。

今ここに気がつく重要性

例えば「怒り」があったときに、気がついていないのと、それに気がついているのとでは、行動の結果が異なります。

もし怒りに気が付いていないとすれば、感情の赴くままに行動してしまいます。暴言や暴力をふるってしまう方は、自分が今ここでどんな状況にあるのか?、気がついていないのです。

しかし、気が付いていれば、その感情をどう扱おうか?と冷静に対処することができようになります。

ゲシュタルト療法を詳しく解説

 

マインドフルネスへの展開

マインドフルネスとは?

ゲシュタルト療法から20年ほど経つと、1970年代にマインドフルネスセンターの創設所長、ジョン・カバット・ジン(Kabat-Zinn, J.)がマインドフルネス療法を提唱しました。

マインドフルネスには以下の意味があります

*Kabat-Zinn, J.
「今ここ」での経験に、評価や判断を加えることなく、能動的に注意を向けること

今ここを重視する、ゲシュタルト療法の哲学とよく似ていますね。

 

マインドフルネスの目標

マインドフルネスでは、様々なエクササイズを通して「今ここ」という瞬間に集中する練習をしていきます。練習を通して悩みに感じていた不安や緊張などが一つの体験に過ぎないことに気づきます。

そして不安は1つの自然な感情として、客観できるようになることを目標とします。そしてその感情をただただ眺め、受け入れることを目標とします。

マインドフルネスを応用した心理療法は、世界的に不安障害やうつ病に対して効果があることが示されています。

 

効果研究

「今ここ」についての実証研究を1つ紹介したいと思います。今ここを実践するための方法として、「行動活性化」という手法があります。行動活性化(behavioral activation)とは、抑制してしまう行動パターンを把握して、新しい行動に置き換えることを意味します。

Ekersら(2014)は1524人のうつ病患者を対象に、行動活性化を行った群と別の精神療法を行った群および薬物療法のみの群とのメタ分析を使った比較を行っています。その結果の一部が下図となります。

 

こちらは、行動活性化を行った群の方が、他の精神療法よりも抑うつ症状に大きな効果があったことを示しています。また、薬物療法のみの場合と比較しても、ある程度の効果があることを示しています。

つまり、行動活性化によって活動的になることで、症状を改善し心の元気を取り戻すことができます。楽しみや達成感を得る活動を通して「今ここ」の実践につながっていくことが示されています。

 

悩みの多くは過去か未来

さて!今ここという概念、わかったようで、わからないやや複雑な概念ですね。そこで、今回は講師の川島が、自分なりにアレンジをして皆さんに解説したいと思います。

悩みの性質

皆さんは今どんな悩みをお持ちでしょうか?箇条書きにして、以下のように「過去」「未来」「現在」のいずれかを記入してみてください。

あの時、告白ておけばよかった(過去)
もっと良い大学に入りたかった(過去)
あがってしまったらどうしよう(未来)
収入が下がったらどうしよう(未来)
将来、年金どうしよう(未来)

このような悩みは、多くの人が感じているのではないでしょうか。改めて見ると、悩みは、過去、未来にあることがわかります。

過去と未来に悩む

繰り返しになりますが悩みの多くは過去と未来にあります。過去やどうなるかわからない未来の出来事に縛られてしまうと、悩みの種が増えてしまいますよね。

これに対して、「今ここを生きる人」は、悩みがとても少ないのです。例えば私は3歳の子供がいますが、たぶん10分後の未来も考えていません。今この瞬間を全力で、楽しんで生きています。見習いたいものです。

もちろん将来のことを考えたり、過去を反省することは大事です。しかし、もしそれが今のあなたを不幸にしているなら、それは少々もったいない一面もあるのではないでしょうか。

過去,未来,今ここを生きる

 

今ここエクササイズ

当コラムでは、今ここ力を具体的に向上させるために4つのやり方を提案します。

「今」に集中する

まず意識することは、目の前のことに集中することが大事です。例えば、ご飯を食べている時は、今まさに食べているご飯の味を充分感じ取るようにします。会話をいている時は、今目の前にいる人との会話の時間を大事にします。

作業をしながら、昨日の事、明日のことを考えるのではなく、今目の前の出来事に集中することを意識しましょう。

 

「今」~だな法

自分の感情や考え方を観察する方法があります。具体的には「今」というフレーズを使って観察していきます。

例えば「今」嬉しい気持ちだな、「今」焦っているな、「今」過去のことを考えすぎているな、と自分を見つめ直していきます。そして今湧き上がっている感情はあれこれ操作せず、自然なものとして、受け入れていきます。

 

呼吸に意識を向ける

呼吸は今ここ力をつける上で代表的なものです。呼吸は過去や未来にするものではなく、今この瞬間にしているものです。過去や未来のことを考え過ぎたら一度呼吸を意識することが効果的です。

呼吸についてはその他にも様々なやり方があります。ご自身にあった手法を以下のコラムから探してみてください。

様々な呼吸エクササイズ

 

身体に意識を向ける

身体の感覚も「今」まさに起こっているものです。例えば、お散歩をしている時に、足の感覚に目を向ける、お風呂に入っている時に温かい感覚をじっくり味わうなどが挙げられます。その他にも今ここ力をつけるエクササイズはたくさんあります。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

マインドフルネス,エクササイズ紹介

 

今ここ-2つの実践例

最後に、コミュニケーションの場面で実践的に考えてみましょう。

あがり症で悩む太郎さん

太郎さんは、1週間後に重要なプレゼンを控えています。あがったらどうしよう…と頭がいっぱいです。

・頭が真っ白になったら評価が下がる
・社長が来るから失敗はできない
・突拍子もない質問が来たらどうしよう

プレゼンでの不安や焦り

太郎さんは、緊張からか睡眠不足になっています。そこで太郎さんは「今ここ」を意識することにしました。

・未来を悩んでも仕方がない
・今できる資料の調整をしよう
・今調べられる調査に集中しよう
・今目の前にあるご飯を味わおう

このように1週間後のことを考えるのではなく、今ここに集中することで、悩みが軽くなりました。

 

飲み会に悩む花子さん

花子さんは、会社の忘年会に出席しました。忘年会は2時間ありますが、残念?なことに、普段口うるさい、苦手な上司の隣の席になってしまいました。

花子さんは、出席してしまったことを悔やみます。そして、早く帰りたい…と2時間後の未来を想像してしまっています。

でも飲み会は一度参加してしまったら、離席はできません。そこで花子さんはどうせなら…と今ここに集中することにしました。

飲み会や婚活パーティの悩み

・過去を悔やんでも解決しない
・早く終わらないかなと未来を考えても仕方ない
・今ここに出た話題を楽しもう
・今この瞬間に出てきた料理を頼もう

このように今に集中することで、早く帰りたいという気持ちが薄れたようです。結果的に飲み会を楽しむことができ、あっという間に時間が経ち、楽しめたようです。

 

まとめ

筆者の川島が、「今ここ」という概念と巡り合ったのは、22歳の頃でした。当時は、未来と過去のことばかりを考え、悩みの渦にいました。

ですが、未来と過去を考えても、しょせん私たちは今この瞬間がまさに目の当たりにしている人生なのです。今この瞬間を充実させずして、実りある人生にはなりません。

皆さんも是非、「今この瞬間」を大事に生活をしてみてください♪

 

講座のお知らせ

「今ここ」に関するワークを公認心理師の元で練習したい方場合は、私たちが開催している心理学講座をオススメしています。講座では

・「今ここ」に集中するワーク
・マインドフルネス療法
・集中力を高める呼吸法

など練習していきます。興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです。たくさんの仲間もできますよ♪是非お待ちしています。

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助け合い掲示板

1件のコメント

コメントを残す

    • なおみ
    • 2019年5月13日 9:42 PM

    レーズンエクササイズをやってみました。
    五感を意識しながらやってみますが、「時間が長いなぁ」と雑念が頭に浮かんできてなかなか集中できませんでした。
    これは慣れればうまくいくものでしょうか?

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

Ekers, D., Webster, L., Van Straten, A., Cuijpers, P., Richards, D., & Gilbody, S. (2014). Behavioural Activation for Depression; An Update of Meta-Analysis of Effectiveness and Sub Group Analysis. PLoS ONE, 9: e100100.