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筆者の研究>いじめ被害者が加害者へと変化しないための周囲の対応:大学生への調査をもとに

いじめ撲滅

~ 代表講師の研究 ~ 代表講師の研究②いじめ被害者が加害者へと変化しないための周囲の対応:大学生への調査をもとに

筆者の研究その2

はじめまして!
いじめ撲滅委員会代表の栗本顕です。

私は学生時代、そうぜつないじめを体験してきました。
その後この問題を世界からなくすことを決意し、心理学の大学院でいじめの防止策を研究してきました。

現在では公認心理師として、いじめの解決策や、教育相談を行っています。

全国の小~高校生・保護者のかた、先生方へカウンセリングや教育相談行っています。

大学生の頃から、とりわけ「いじめ」をテーマに研究を続けており、もうすぐで10年になろうとしています。
私自身がいじめが原因で不登校になった経験を大いに活かし、今後のいじめ対策に貢献ができればと思います。

今回は、いじめを受けたときの被害者へのケアに着目して、どのようなケアをどのような人物から受ければ、いじめの連鎖に歯止めがかかるかについて筆者が研究したものをご紹介します(内容はHP用に編集し、短縮化したものです)。

いじめ撲滅委員会代表栗本顕

問題の背景

近年、いじめに関わる児童・生徒の自殺問題が注目を集め、教育の分野のみならず社会的にも深刻な問題として認識されるようになってきました。

文部科学省(2014)によると、2014年度のいじめ認知数は合計185,860件と、前年度よりも若干少ないものの、前々年度の約2.5倍となっており、
この他に認知されていないものもあることが推測されるため実際のいじめの件数はさらに多いことが考えられます。

代表講師の研究②いじめ被害者が加害者へと変化しないための周囲の対応:大学生への調査をもとに

これまでのいじめ研究

いじめを防止するための手掛かりを得るために、いじめの様態、いじめの発生機序、いじめ被害者および加害者の個人的特性等を明らかにすることを試みた研究が多く行われてきました。
(例えば,神村・向井,1998;Olweus,1995;Pellegrini,1998;鈴木,1995など)

最近は、いじめ被害を受けた人のその後に注目する研究が行われ始めています。
その中で森本(2004)は、
いじめ被害を受けた人が積極的自力克服の対処を選ぶ場合他者尊重や精神的強さなどにプラスの影響が見られ、
他方、無抵抗、従順の対処を選ぶ場合情緒的不安定や他者への過敏などのマイナスの影響があると報告しています。

そして八田(2007)は、
いじめ被害経験の原因帰属は、当時のいじめへの対処方法や、被害経験後の心的状況に少なからず影響を与えることが考えられると述べています。

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いじめ被害者と加害者についての研究

いじめを受けた被害者が、後にいじめを行う加害者へと変わるといったケースが起きています。
本間(2003)は、「いじめをしたことがある」層は「過去にいじめ体験あり(被害経験を含む)」が88.5%あることを報告しています。
また田中(2009)は、いじめ経験者は約9割に「過去いじめた、あるいはいじめられた経験あり」と報告しています。

Hazler&Carney(2000)は、暴力やいじめの被害にあった子どもが後に加害者になる問題を指摘しています。
また橋本(2008)は、加害行為に及んだ要因にはさまざまな要因が複合しているが、その要因の一つに被害者性があると述べています。
そして内藤(2009)によれば、いじめを受けた者がいじめを行うことは、一種の「癒しの作業」になると述べています。

いじめの連鎖を説明する理論としては、淡野(2010)の指摘する「置き換えられた攻撃理論」(TDA理論Triggered Displaced Aggression)があります。
一定の挑発事象を経験し、攻撃に関連する感情や認知が活性化したり事象に対する帰属の歪みが生みだされたりした結果、
その後別の誘発事象を経験すると、敵意的に解釈をして攻撃が置き換えて現れるといった考えです。

また、いじめの連鎖を説明するもう一つに、内藤(2009)の指摘する投影的同一視、つまりいじめを受けた時の「弱い自分」に代わって、
いじめをすることにより「強い自分」を取り入れることができるといった考え方があります。

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いじめ被害者のケアについて

いじめ被害を受けた時、攻撃に関連する感情や認知が軽減されたり、帰属や自己認知の歪みが是正されたりするようなケアが必要と考えられます。
生徒への対応やケアについて國分(1987)は、
生徒の悩みに対する教師の受容的態度のもとで、生徒がありのままの自分の気もちを出し、それによって鬱積した感情が浄化され、
いじめに対する自己内省と教師のアドバイスに耳を傾ける関係づくりが求められると述べています。

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研究の目的

いじめを受けたときの被害者へのケアに着目し、どのようなケアをどのような人物から受ければ、いじめの連鎖に歯止めがかかるかについて研究を行いました。

そこで、本研究は大学生を対象に小学生高学年・中学生の時のいじめを回想してもらい、いじめの連鎖を止める手掛かりを見つけたいと考えました。

いじめの発生件数、発生率とも中学が最も多い(内閣府,2002)ことや、いじめの経験を受けてから一定の年数を経てやや冷静に振り返ることのできる可能性を考慮して、
大学生を対象に小学生高学年・中学生の時を回想して回答してもらい、量的分析・質的分析を通していじめの連鎖の歯止めについての示唆を得ることを目的としました。

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研究結果

研究は研究Ⅰ(量的分析)と研究Ⅱ(質的分析)の2種類を行い、それぞれの結果をまとめています。

<研究Ⅰ>

いじめられたことに対して実際に周囲からのケアを受けて回答した場合を「現実」とし、想像して回答した場合を「想像」と分けて結果を分析しました。各ケアの項目の満足点について分析を行いました。

①約4分の1の人がいじめられた後にいじめる側になったと回答

②現実及び想像場面において、先生のケアに対する得点が家族、友達、その他(専門家など)のケアよりも低い

③いじめられた後に、いじめる側になった人とならなかった人との間に、家族、先生、友達、その他のケアに対する満足点に違いは見られない

<研究Ⅱ>

いじめられたことに対して被害者へのケアについて自由記述調査で実施した回答を分類しました。

➀いじめ被害者が加害者へと変化する周囲のケアの仕方として、
周りからの不完全なケア
周りに受け入れられなかった
責任の帰属
パーソナリティでの違い
加害者になる動機
状況の変化
いじめによる影響
わからない・否定」の関わりが見られた

➁いじめ被害者が加害者へと変化しない周囲のケアの仕方として、
実際の対応
いじめ再発防止的関わり
加害者になることへの抵抗要因
いじめの適切な対応
受容・共感的ケア
周囲からのサポート
いじめから遠ざける
被害者の内省
ポジティブ的な対処
環境の変化」の関わりが見られた

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研究考察

研究Ⅰと研究Ⅱの結果をまとめた考察をしています。

<いじめにおける被害者が加害者へと変わる>

本研究では約4分の1の人がいじめられた後にいじめる側になったと回答がありました。
これは本間(2003)や田中(2009)のいじめ被害者の約9割の人がいじめられた経験があるとしている記述よりもずいぶん低い数値となっています。

<先生に求められるケア>

先生のケアに対する満足点が他の人の点数よりも低かったことについては、質的分析において先生のケアの内容と他の人のケアの内容とに違いが見受けられなかったことから、
先生への期待の高さゆえとも考えられます。
つまり、
いじめを受けた時に先生に対応してほしいと強く望むので、先生が他の人と同じ対応をした場合は、それは失望へと変わる可能性が大きいと思われます。

<いじめ被害者が加害者へと変化する周囲の対応>

いじめ被害者が加害者へと変化する周囲の対応の仕方を見ると、周りからの不完全なケアや周りに受け入れられなかったこと、
責任の帰属といった被害者の気もちを受け入れず、曖昧なケアや被害者に合わないケアがあること、やり返すことを促すといった言葉かけなどがみられました。
このように、周りからの不完全なケアや周りに受け入れられなかったことが加害者へと変わらせる対応であると示唆されました。

<いじめ被害者が加害者へと変化しない周囲の対応>

いじめ被害者が加害者へと変化しない周囲の対応の仕方では、話を聞いてもらう対応やいじめ再発防止的関わり、加害者になることへの抵抗要因、
被害者の気もちに共感し、周囲の人からのポジティブなサポートのケアがみられました。
実際にいじめに適切に対応し、なおかつ被害者の気もちに共感し加害者にいじめを再発させないように関わることがいじめ被害者が加害者へと変化しない対応と示唆されました。

代表講師の研究②いじめ被害者が加害者へと変化しないための周囲の対応:大学生への調査をもとに



橋本 和明 2008 加害者の被害者性 現代のエスプリ491,56-63.
八田 純子 2008 いじめ被害経験者の原因帰属および対処法 愛知学院大学論叢心身科学部紀要 3,89-94.
Hazler,R.J.,& Carney,J.V. 2000 When victims turn aggressors : Factors in the development of deadly school violence.Professional School Counseling4,105−112.
本間 友巳 2003 中学生におけるいじめの停止に関連する要因といじめ加害者への対応 教育心理学研究51(4),390-400.
神村 栄一・向井 隆代 1998 学校のいじめに関する最近の研究動向―国内の実証的研究から― カウンセリング研究 31,190-201.
栗本 顕・新井 邦二郎 2016 いじめ被害者が加害者へと変化しないための周囲の対応:大学生への調査をもとに 東京成徳大学大学院臨床心理学研究 16,1-9.
國分 康孝 1987 学校カウンセリングの基本問題 誠信書房
文部科学省 2013 いじめ防止対策推進法の公布について
文部科学省 2014 平成25 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について
森本 幸子 2004 過去のいじめ体験における対処法と心的影響に関する研究 心理臨床学研究 22(4),441-446.
内閣府 2002 青少年白書 平成14年度版
内藤 朝雄 2009 いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか 講談社現代新書
Olweus, D. (松井賚夫・角山剛・都築幸恵 訳) (1995).いじめ―こうすれば防げる― 川島書店
Pellegrini,A.D. (1998).Bullies and victims in school : A review and call for research. Journal of Applied Developmental Psychology19,165-176.
鈴木 康平 1995 学校におけるいじめ 教育心理学年報 34,132-142.
田中 美子 2009 いじめ発生及び深刻化のシステム論的考察  千葉商大論叢 47(1),31-63.
淡野 将太 2010 置き換えられた攻撃研究の変遷  教育心理学研究 58(1), 108-120.

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