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対人恐怖症の原因,診断,克服法を専門解説

対人恐怖症の簡易診断,原因・克服法

はじめまして。公認心理師の川島です。今回のテーマは「対人恐怖症」です。

  • 改善するお悩み
  • 人が怖い
  • 会話をすると過度に緊張する
  • 誰にも会いたくない

全体の目次
対人恐怖の歴史
2つの大きな原因
簡易診断‐チェック
克服する3つの方法
お悩み相談掲示板

読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。是非入門編は最後までご一読ください。もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもぜひお待ちしています。

はじめに

みなさんは以下のような悩みを持っていませんか?

「緊張で言葉が出なくなる」
「人の目がとても怖い」
「顔が赤くなることを恐れる」
「会話が怖くて雑談を避ける」

このような人間関係への恐怖心が長く続き、社会生活に問題が出てくると、対人恐怖症の可能性が出てきます。

対人恐怖症は筆者の川島にとって極めて思い入れがあります。なぜなら私自身が対人恐怖症になった経験があるからです。

私の対人恐怖は14歳からはじまり、22歳まで続きました。青春時代の大事な時期にこの病にかかり、大変苦労してきました。

対人恐怖症

ピーク時は、視線恐怖、吃音症、自殺企図も起こり、生きることに疲れていたこともありました。

現在はその原体験を活かし、公認心理師、精神保健福祉士として、活動しています。私もアラフォーとなり、当時の私が陥っていた心理状態を、冷静に分析できる年齢になってきました。

当コラムでは、学術的な話と私の体験談などを盛り込みながらお話できればと思います。

対人恐怖症と歴史

対人恐怖の始まりは日本

昔から「人に迷惑をかけてはいけない」といった日本人の感覚は対人不安を招きやすいと考えられてきました。森田正馬という心理療法家は最初の対人恐怖の治療家と言われています。

森田が対人恐怖の概念を発見した時期は100年も近く前のことです。世界的に見ても、このような対人恐怖研究はありませんでした。

森田はこのような対人恐怖の心性を改善する治療体系として、世界で初めての心理療法を開発し、現在では森田療法として世界中で親しまれています。

世界でも認知される

このように対人恐怖症は日本独自に発展をしてきましたが、だんだんと世界中で似たような症状があることが分かってきました。

1980年代になるとやっとこさアメリカの精神医学会で「社会恐怖(social phobia)」という診断基準が用いられるようになってきました。

最近の精神医学の世界では「社交不安障害」と呼ぶようになっています。

対人恐怖症で生活に困る

なぜ対人恐怖になるのか?

12~15歳からはじまる

対人恐怖症はなぜ起こるのでしょうか?ここでヒントになるのが、社交不安症の特徴として、発症した人の約80%近くがが10代で発症している点が挙げられます。

図1. 社交不安障害の発症年齢(DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアルより、一部改変)

もし皆さんが対人恐怖症傾向があるとしたら、おそらく12~15歳ぐらいからはじまったのではないでしょうか?ここで皆さんに考えて頂きたいことがあります。

病気というと普通は、子どもか高齢者です。ですが、対人恐怖は健康的でエネルギッシュであるはずの12~15歳に起こるのです。なぜでしょうか?

大きく分けて2つの理由があります。

対人恐怖と2つの理由

結論から言うと、12~15歳は「公的自己意識」という心理が急速に発達していく時期だからです。

・私的自己意識
私的自己意識は、自分がどうしたいか?どう感じているか?が主体となる意識です。例えば、うどんがたべたい、ゲームをしたい、おもちゃ買って!これらは私的自己意識です。

私的自己意識は周りの目を気にしないので、下記のように誠にすがすがしいほど自己主張ができます。この図の子供は対人恐怖のかけらもありません。

私的自己意識
・公的自己意識
公的自己意識とは「人の目を気にする心理」です。馬鹿にされたくない、失敗してはじをかいてはいけない、不細工と思われてはいけない、など他人が存在してその他人の目を気にする心理です。

対人恐怖症,人の目を気にする

私たちは10歳ぐらいまでは、私的自己意識を主体として生きています。おやつが食べたい!ゲームがしたい!遊びにいきたい!子供の頃は、自分勝手に生きていてもかわいいもので、そこまで問題は起こりません。

子どもは、見た目も同じようなものですし、頭が多少悪くても、どうってことありません。楽しければいい!そんな痛快な生き方ができているのです。

・体の変化

しかし、中学生になってきたころから、私たちの体や考えは変化をしてきます。例えば男性であれば、13歳ぐらいから精子が出るようになってきます。

これはなんだ!!とびっくりするわけです。自分だけがおかしいのではないか?と周りの目を気にし始めます。周りと自分と比較しはじめるのです。

女性は初潮を迎えたり、胸が膨らんできて、これまた周りとの比較を始めます。

・異性への興味

さらには、思春期は強烈な異性への興味も膨らんできます。好きなアイドルや好きな異性で頭がいっぱいになる時間も起こるようになり、必然的にその人がどう自分のことを考えいているのか?と気になりはじめます。

・競争のはじまり

さらには、勉強では、「成績」で他者と自分との違いを比較できるようになり、部活では、レギュラー、補欠といったヒエラルキーの生じ、私たちは痛快な生き方ができなくなり、だんだんと周りとどう折り合いをつけていくか?を考えなくてはならないのです。

大人になると、この辺の匙加減はできるものですが、思春期の青年は、心も未熟です。コントロールの仕方がまだわからないので、公的自己意識が暴走してしまい、対人恐怖がはじまっていくのです。

堀井(2001)は高校生(256名)と大学生(271名)の男女に対して、対人恐怖傾向と公的自己意識に関する調査を行っています。

このように、対人恐怖傾向が高いと公的自己意識も高いという結果が出ています。人の目を気にする心理と、人が怖いという悩みはかなり関連しているのです。

会話の内容がおかしくないか不安

自己嫌悪が対人恐怖を強くさせる

対人恐怖を強くする心理としてもう1つ重要なのが、「自己嫌悪」です。

思春期の頃に公的自己意識が強くなると、周りと比べた自分の価値を考えるようになっていきます。この時、心理的に躓くと、自分の嫌いな部分が増えてきます。

自分が嫌いな状況は、コミュニケーションにおいて大変な負担となります。なにせコミュニケーションは、嫌いな自分を周りにさらし続けないからです。

私の場合は、「赤面」という症状がありました。赤面する自分が大嫌いだったので、人と接することがいやで仕方がありませんでした。

このように、思春期においては、公的自己意識が増え、さらに自己嫌悪が加わると、対人恐怖症に発展していくのです。

対人恐怖症の深刻なリスク

対人恐怖症は、実際どのような影響があるのでしょうか?

徹底回避

対人恐怖症になると、人間関係が苦痛になるので、会話場面を徹底的に避けるようになります。特に目的のない、雑談場面、飲み会などが非常に苦手になります。

会話力の低下

人と接することが少なくなると、さらに会話力が低下するという悪循環に陥ります。例えば1日1時間会話をする人と、しない人を10年で比較すると、3500時間ほどの差がつくことになります。

3500時間と言うと、大型資格を取れるレベルの時間的な差になってきます。大人になってから、トレーニングをしてもかなり大変なのです。

確信型,妄想型に発展する

対人恐怖症は、悪化すると、赤面恐怖症、視線恐怖症、自己臭恐怖症に発展することがあります。これらの症状を放置しておくと、人間関係が妄想的になり、非現実的な思考で埋め尽くされてしまいます。

私のように引きこもりになり、自殺企図が出てくることもあります。

堀井(2014)は大学生4461人を対象として対人恐怖心性について調査を行いました。その結果、対人恐怖心性は、様々な恐怖感情と結び付いていることがわかります。


例えば上記の図では「醜形恐怖」が(.82**)と書いてあります。醜形恐怖とは、必要以上に自分の容姿をマイナス評価してしまう心の状態を意味します。

対人恐怖と醜形恐怖は結びつきが強く、例えば、鼻の形が気になる、スタイルが気になるなどを過剰に意識してしまいます。

カウンセリングなどを行うと、びっくりするほど美人な方も多く、現実以上に自分をマイナス評価してしまう状態だと言えます。

対人恐怖傾向はこのように様々な恐怖症と結びつきやすく、社会性を維持できなくなるリスクがあるため対応が必要です。

自分の見た目に自信がない

診断とチェック

ここからは対人恐怖症を克服する方法を紹介します。成果を把握するために、定期的にこちらの対人恐怖傾向簡易診断で自己チェックしておくことをお勧めしています。

対人恐怖症を克服する方法

ここからは対人恐怖症の解決策を紹介していきます。解決策はかなりたくさんあるので、本コラムでは入門編として、比較的取り組みやすい3つのやり方をお伝えします。

・私的自己意識を増やす
・失敗過敏を修正
・スモールステップでチャレンジ

対策① 私的自己意識を増やす

復習になりますが、対人恐怖症の方は、公的自己意識が肥大し、私的自己意識がないがしろにされている傾向があります。

対人恐怖症を改善するには、人の目を気にする心理を減らし、自分自身がどうしたいか?を基準に人間関係を築くと改善しやすいです。トレーニングについてはこちらの動画を参考にしてみてください。

*もっと練習したい方は下記のコラムの後半に練習問題があります。

人の目を気にする意識の改善-私的自己意識を増やす

対策② 失敗過敏を改善する

対人恐怖傾向があるかたは、自己嫌悪傾向があり失敗を恐れやすいことがわかっています。自分が嫌いな状態は、余裕がなくなり、これ以上傷つきたくないないと考え、失敗過敏になるのです。

 嫌われてはならない
 人前で緊張してはいけない
 絶対にミスをしてはいけない

このような感覚がある方は要注意です。失敗過敏を改善するには、考え方を積極的に修正していく必要があります。例えば、


 会話を弾ませよう!  
 友人と仲良くありたい
 相手を褒めるぞ!

とイメージするのです。前者はミスをなくす、とネガティブな方向に向いています。逆に後者はプラスに目が向いていますね。

人と接するときに失敗するイメージをしてしまう方は下記の失敗は成功のもとコラムを参考にしてみてください。前向きなイメージをする練習ができます。

失敗は成功のもとコラム

対策③ スモールステップで「回避を避ける」

3つ目の対策としては「回避を避ける」ということです。あえて変わった日本語を使いました。対人恐怖傾向がある方の特徴として、回避癖があります。

心理学的に回避は、特定の不安を強くしてしまうことが分かっています。対人恐怖は、人が怖いから、人を避けることでさらに不安を強くしてしまっているのです。

その意味で、克服するには最終的には、大変ですが行動することで改善していかなくてはなりません。しかし。突然行動しよう!と言われてもそれができないから困ってしまうと思います。

この点については、スモールステップを作って少しづつ行動範囲を広げていくことが大事です。具体的には下記の行動療法をぜひ学習していきましょう。

スモールステップー行動療法

具体的な改善イメージについては私が体験談を動画でお伝えしています。興味がある方は参考にしてみてください。

対人恐怖症克服‐発展編

ここからは発展編です。対人恐怖症を改善する、手法を学術的なものからユニークなやり方までいくつか紹介します。試してみたい!感じたら相性がいいかもしれません。

引き出しは多い方がいいと思います。是非たくさんの手法を練習してみてくださいね。

森田療法

対人恐怖症の伝統的な改善法としては森田療法がとてもおすすめです。入門トレーニングに乗せるか迷ったぐらいとても示唆に富んだ心理療法です。私は森田療法と出会い人生観が変わりました。是非一度学習してみてください。

森田療法,あるがまま,目的本位

赤面症,視線恐怖症改善

対人恐怖症は重篤化すると、赤面症、視線恐怖症、自己集恐怖、書痙に発展することがあります。特に赤面症と視線恐怖症はよくみられる症状です。当コラムと被る部分も多いですが、これらの症状が当てはまる方は下記のコラムを参考にしてみてください。

赤面症‐治療法コラム 
視線恐怖症‐治療法コラム

ほっとするイメージ法

最後に紹介するのはユニークな手法で、ほっとするイメージ法を紹介します。対人恐怖症の方は、相手の怖い部分をたくさん見つけ、恐怖心を育ててしまっていることがよくあります。

相手は怖い!というイメージをほぐしていく手法を紹介しています。人の怖い部分ばかり目についてしまうという方は下記のリンクを参考にしてみてください。


対人恐怖症の恐怖心を和らげる「ほっとする思考」

専門機関を利用する

 私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、心理的な問題を改善し、暖かい人間関係のある社会を創ることを目的として、コミュニケーション講座を開催しています。

心理療法やソーシャルスキルの練習を勉強したい方はぜひお待ちしています。1人で抱え込まずに、専門家やたくさんの仲間と相談しながら進めていくと、心強いと思います。

もしコラムを読んでみて、もっと心理学を学習したいと感じたら、こちらの初学者向けコミュニケーション心理学講座のページを参照ください。

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
Elkind(1967) Egocentrism in adokesence  Child Development 38 1025-1034 永井撤(1987)対人恐怖的心性に関する心理学的研究 東京都立大学人文科学研究科博士論文堀井俊章(2006)対人恐怖心性尺度Ⅱの開発 –対人関係におけるおびえの心性を測定する試み- 学生相談研究 第26巻 第3号, 221-232上地雄一郎・宮下一博(2009)対人恐怖傾向の要因としての自己愛的脆弱性,自己不一致,自尊感情の関連性 パーソナリティ研究2009 第17 巻 第3 号 280–291Greenberger&Christine(2001) うつと不安の認知療法練習帳 創元社岡田努(2002)現代大学生の「ふれ合い恐怖的心性」と友人関係の関連についての考察 性格心理学研究 第10巻 第2 号69−84
日本精神神経学会 監修 (2014) DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
城月 健太郎・児玉 芳夫・野村 忍・足立 總一郎 2013 不安のコントロール感に関する基礎的検討―社交不安障害の観点から― 心身医学, 53:408-415
堀井俊章(2001) 青年期における自己意識と対人恐怖心性との関係 山形大学紀要12,4