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対人恐怖症を克服法を専門解説

対人恐怖症の原因・克服法-臨床心理士が解説①

はじめまして!臨床心理士の竹元、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「対人恐怖症」についてお話していきます。目次は以下の通りです。

  • 定義と歴史
  • 発症年齢の統計
  • なぜ人が怖いのか
  • 対人恐怖症リスク
  • 診断とチェック
  • 克服するための方法

各コーナーにはもっと深く知りたい!という方のためのリンクがあります。まずは全体を読んでみて、気になる場合はリンク先をクリックしてみてください(^^)それでは早速、対人恐怖症の基礎から解説させて頂きます。

*監修の川島(精神保健福祉士)が動画でも解説しています。
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対人恐怖症とは?定義と歴史

みなさんは以下のような悩みを持っていませんか?

「緊張で言葉が出なくなる」
「人の目がとても怖い」
「顔が真っ赤になる」
「会話が怖くて雑談を避ける」

このような人間関係への恐怖心が長く続き、社会生活に問題が出てくると、対人恐怖症の可能性が出てきます。

 

対人恐怖症で生活に困る昔から「人に迷惑をかけてはいけない」といった日本人の感覚は対人不安を招きやすいと考えられてきました。森田正馬という心理療法家は最初の対人恐怖の治療家と言われています。森田が研究をした時期は100年近く前のことで、世界的に見ても、このような対人恐怖研究はありませんでした。

森田は人が怖い感じる方に共通する原理として、「精神交互作用」があることを発見しました。精神交互作用とは、簡単に解説すると、人が怖いという感覚に目を向けることで、余計に人が怖くなるという心のメカニズムです。森田はこのような対人恐怖の心性を改善する治療体系として、森田療法を開発しました。*森田療法については後程解説します。

発症年齢の統計

このように対人恐怖症は日本独自に発展をしてきましたが、だんだんと世界中で似たような症状があることが分かってきました。最近の精神医学の世界では、対人恐怖症という日本独自の言い方ではなく、「社交不安症」と呼ぶようになっています。

社交不安症の特徴として、発症した人の約75%が15歳以下で発症している点が挙げられます(図1)。

図1. 社交不安障害の発症年齢(DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアルより、一部改変)

対人恐怖症の特徴の1つに、発症年齢と専門機関に相談に訪れた年齢が異なる点が挙げられます。10代に発症しているにも関わらず30代半ばで医療機関を訪れることもあるようです。このような相談の遅れが対人恐怖症を悪化させる要因にもなると言えます。

対人恐怖症の深刻なリスク

対人恐怖症は、実際どのような心理的な影響があるのでしょうか?堀井(2014)は大学生4461人を対象として対人恐怖心性について調査を行いました。その結果、対人恐怖心性は、様々な恐怖感情と結び付いていることがわかります。

例えば上記の図では「醜形恐怖」が(.82**)と書いてあります。醜形恐怖とは、必要以上に自分の容姿をマイナス評価してしまう心の状態を意味します。対人恐怖と醜形恐怖は結びつきが強く、例えば、鼻の形が気になる、スタイルが気になるなどを過剰に意識してしまいます。カウンセリングなどを行うと、びっくりするほど美人な方も多く、現実以上に自分をマイナス評価してしまう状態だと言えます。

自分の見た目に自信がない

対人恐怖傾向はこのように様々な恐怖症と結びつきやすく、社会性を維持できなくなるリスクがあるため対応が必要です。

なぜ人が怖いのか?要因,研究

私たちはなぜ対人恐怖症になってしまうのでしょうか?生物学的な見地や心理学的な研究をいくつか紹介します。

原因① 生物学的要因 グリーンバーグの3つの行動パターン

そもそもこのやっかいな「恐怖」はなぜ起こるのでしょうか?実は恐怖はある意味でご先祖様が創り上げてきた生き延びるためのシステムなのです。グリーンバーグは恐怖心を頂いた時の動物の行動パターンを分けています。

・戦う
例)相手を倒そうと戦闘態勢に入る
・固まる
例)身を固くして守る 死んだふり
・逃げる
例)早い逃げ足を駆使して逃げる

という、3つに分けています。特に、「固まる」「逃げる」も恐怖を覚えるとよく選択しますよね。このように恐怖心とは、人間としてある種生き延びるために自然な反応と言えます。

恐怖心を感じるからこそ、私たちは危険を予測し、それに基づいた行動を立てることができます。

私たちが人間関係に恐怖を頂き、逃げたくなったり、固まってしまうのは動物としての防衛反応なのですね。恐怖心とは今までの経験やできごとに基づいて学習をしていくもので、ある程度の「恐怖心」はとても大切なのです。

原因② 心理学的要因 他人からの評価が気になる

次の心理学的原因を概観しましょう。結論から言うと、対人恐怖心性の根源には、「公的自己意識(他人の目を気にすること)」が絡んでいます。

心理学の研究では、対人恐怖と「公的自己意識」の関係を調べた論文があります。堀井(2001)は高校生(256名)と大学生(271名)の男女に対して、対人恐怖傾向と公的自己意識に関する調査を行っています。

この論文では、「対人恐怖心性」と「公的自己意識」の関係について、男子と女子の群に分けて相関分析を行っています。その結果が下図となります。

このように、対人恐怖傾向が高いと公的自己意識も高いという結果が出ています。図の中にある数字は、相関係数と言われて、関連の強さを表します。.500以上の項目は心理学的に影響は比較的強いと考えます。(※相関関係をより深く知りたい方はコチラをご覧ください。)

対人恐怖傾向と「他人の評価が気になる」という心性は関連があることがわかります。対人恐怖心性にはそのほか、不安のコントロール間の欠如などの原因も挙げられます。

さらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
・他人の評価が気になる
・不安をコントロールできない
対人恐怖症の原因「逃げる・気にする・不安になる」②

診断とチェック

定期的にこちらの対人恐怖傾向簡易診断で自己チェックしておくことをお勧めしています。客観的な状況を知りたい方はご活用ください。
対人恐怖症傾向簡易診断でチェック③

対人恐怖症傾向の原因と対処法

ここからは対人恐怖症傾向が膨らんでしまう原因と解決策について考えていきましょう。対人恐怖症傾向が膨らんでしまう原因と解決策は、大きく分けると4つあります。全部読むのは大変なので、当てはまる項目についてリンク先をチェックしてみてくださいね♪

①公的自己意識を和らげる

・周りの評価を気にするのは注意
周りからから見られていることを意識する状態を公的自己意識と言います。公的自己意識が強いことは、対人恐怖症とも関係が深いことが示されています。周りの評価を気にしたり、他人の目を気にしてしまう人は対人恐怖症が強くなってしまいます。

・背伸びをしない
このような傾向にある人は、意識して「自分がどうしたいか」に比重を置く必要があります。人の意見に大きく左右されないため、公的自己意識よりもメンタル的に安定していると考えられています。

公的自己意識を和らげる方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・必要以上に自分をよく見せない
・公的自己意識から私的自己意識へ
対人恐怖症を改善する-公的自己意識との付き合い方④

②失敗過敏を見直す

・認知の歪みを直そう
完璧主義には以下の2つあることが分かっています。

「消極的‐完璧主義」
 絶対に嫌われてはならない
 人前で緊張してはいけない
 絶対にミスをしてはいけない

「積極的‐完璧主義」
 会話を弾ませよう!  
 友人と仲良くありたい
 相手を褒めるぞ!

というイメージになります。前者はミスをなくす、という消極的な完全主義でネガティブな方向に向いています。逆に積極的な完全主義はプラスに目が向いていますね。

対人恐怖が強い方は消極的な完璧主義である「ミスをしてはならない」「悪いイメージを与えてはならない」とべき思考になるあまり、対人恐怖が増幅されているのかもしれません。

失敗過敏をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・ポジティブに捉える
・練習問題で習得
対人恐怖症と失敗過敏の改善-認知の歪みを修正しよう⑤

③ほっとする思考を身に付ける

対人恐怖症の方は、相手の怖い部分をたくさん見つけ、恐怖心を育ててしまっていることがよくあります。例えば、ドラえもんのジャイアンを見たときに、以下のどちらに目を向けると安心できるでしょうか。

「恐怖」ポイント
・暴力的
・怒りっぽい
・腕力がある

「ほっとできる」ポイント
・意外と情に厚い
・物事の筋を通す
・いざと言う時に頼りになる

おそらく後者だと思います。このようにプラス面を付け足すと、恐怖心が少し和らいでいきます。パッと見だけでなく、長期的にプラス面を見つける意識をもって自分の中で恐怖心を育てないように気を付けましょう。

練習問題で恐怖心を消す方法を確認

ほっとする思考をより深く知りたい方は下記ご覧ください。
・ほっとできる部分を探すには
・悪いところばかりではない
対人恐怖症の恐怖心を和らげるコツ「ほっとする思考」⑥

④スモールステップで行動

対人恐怖症克服するには、「不安階層表」という基準を設定することが大切です。不安階層表は簡単に言うと、不安の強度をシチュエーションごとに低いものから高いものへと順に表したものです。

不安階層表を使った治療について心理学者の塚野(2001)はクライエント(患者)の不安を感じるシチュエーションと不安の強度を測定し、対人不安と緊張感がどのように和らぐか観察しました。

その結果、対人不安が原因で起きる「不登校」が改善されたと報告しています。対人恐怖症の克服に不安階層表をぜひ活用していきましょう。

対人恐怖症をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・スモールステップのやり方
・練習問題で実践しよう
対人恐怖症を克服するための「スモールステップ」⑦

赤面症 治す方法

⑤「あるがまま」に捉える

・気分本位とは
「感情のままに行動する。社会不安な症状が現れたら避ける。孤立するかもしれないから飲み会に参加しないなど」私たちは毎日の生活で恐怖、不安、面倒くさいといった感情が起こりますが、その沸き起こった感情どおり行動していくことを気分本位といいます。

・目的本位とは
「負の感情を受け入れた上で、やるべきことをやる」

目的本位は気分に関わらず目的に向かって行動することがポイントです。森田療法では、目的本位を重視して行動を変えていくことができます。

森田療法を詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
・あるがままと感情
・不安は抑えなくていい
・目的本位を身に付けよう
対人恐怖症と上手く付き合う「森田療法」とは⑧

⑥会話力を高める

会話力は、対人恐怖症を克服するうえでのキーポイントです。他人への不安が強い原因の1つとして対話能力のなさが挙げられます。唐突ですが、ここで皆さんに質問です。

1日にどれだけ会話をしていますか?

会議、雑談、SNS、電話、メール合わせてです。

国立国語研究所の統計によると、1日の会話量の平均は6時間という結果が報告されています。この数字を見て多いと感じますか?少ないと感じますか?

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特筆すべきはその内容です。なんと雑談が60%を占めています!

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国立研究所の研究では大体、3.5時間程度は雑談に費やしていることになるのです。推測となりますが、対人恐怖症を改善する上では、まず雑談スキルを身に付けていくことが必要だと考えられます。

会話力を高める方法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・自己紹介を克服
・会話が続くないを克服
・練習問題でマスター
対人恐怖症を会話力UPで改善する「SST」とは⑨

⑦専門機関を利用する

 私たち臨床心理士・精神保健福祉士は、心理的な問題を改善し、暖かい人間関係のある社会を創ることを目的として、コミュニケーション講座を開催しています。

心理療法やソーシャルスキルの練習を勉強したい方はぜひお待ちしています。1人で抱え込まずに、専門家やたくさんの仲間と相談しながら進めていくと、心強いと思います。もしコラムを読んでみて、もっと心理学を学習したいと感じたら、こちらの初学者向けコミュニケーション心理学講座のページを参照ください。

うまく付き合う方法

対人恐怖症は、対人関係でストレスが強くなったり、心身のバランスを崩すことにもなりかねません。これからご紹介する対人恐怖症を緩和する方法を知ることで、対人場面での恐怖心と上手に付き合うコツを身に付けてください。

次回は、対人恐怖症の原因についてご紹介します。お楽しみに!

★ 恐怖心をなくす方法で 対人恐怖症を緩和していこう

目次

①対人恐怖症-概観
②対人恐怖症の原因
③簡易診断でチェック
④公的自己意識を和らげる
⑤認知の歪みを修正しよう
⑥「ほっとする思考」
⑦「スモールステップ」
⑧「森田療法」とは
⑨会話力UP「SST」とは

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
Elkind(1967) Egocentrism in adokesence  Child Development 38 1025-1034 永井撤(1987)対人恐怖的心性に関する心理学的研究 東京都立大学人文科学研究科博士論文堀井俊章(2006)対人恐怖心性尺度Ⅱの開発 –対人関係におけるおびえの心性を測定する試み- 学生相談研究 第26巻 第3号, 221-232上地雄一郎・宮下一博(2009)対人恐怖傾向の要因としての自己愛的脆弱性,自己不一致,自尊感情の関連性 パーソナリティ研究2009 第17 巻 第3 号 280–291Greenberger&Christine(2001) うつと不安の認知療法練習帳 創元社岡田努(2002)現代大学生の「ふれ合い恐怖的心性」と友人関係の関連についての考察 性格心理学研究 第10巻 第2 号69−84
日本精神神経学会 監修 (2014) DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
城月 健太郎・児玉 芳夫・野村 忍・足立 總一郎 2013 不安のコントロール感に関する基礎的検討―社交不安障害の観点から― 心身医学, 53:408-415
堀井俊章(2001) 青年期における自己意識と対人恐怖心性との関係 山形大学紀要12,4