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対人恐怖症の治し方,治療方法を知りたい,簡易診断

対人恐怖症の治し方,治療方法,簡易診断

皆さんこんにちは。
公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。

今回のお悩み相談
「対人恐怖症の治し方」

人前に立つと緊張する

相談者
28歳女性 会社員

お悩みの内容
私は中学生の後半ぐらいから、対人恐怖が出てきました。人と接するとき、人前に立つとき、異性と話すとき、ものすごく緊張します。

頭が真っ白になってしまうので、なるべく人と接する場面を避けてきました。もう15年近く悩んでいます。

こんな自分をそろそろ変えたいと思っています。治し方を教えてください。

対人恐怖症になると、人と接するたびに強い緊張が走ってとても苦労しますよね。

当コラムでは治し方の基本的な手順をしっかり解説していきます。是非最後までご一読ください。

はじめに

対人恐怖症は筆者の川島にとって極めて思い入れがあります。なぜなら私自身がこの症状に悩まされてきたからです。

私の対人恐怖は14歳からはじまり、22歳まで続きました。ピーク時は、視線恐怖、吃音症、自殺企図も起こり、生きることに疲れていたこともありました。

そんな私もアラフォーとなり、当時の私が陥っていた心理状態を、冷静に分析できる年齢になってきました。当コラムでは、学術的な話と私の体験談などを盛り込みながらお話できればと思います。

対人恐怖症で生活に困る

対人恐怖症とは何か?

研究の始まりは日本

昔から「人に迷惑をかけてはいけない」といった日本人の感覚は対人不安を招きやすいと考えられてきました。森田正馬という心理療法家は最初の対人恐怖の治療者と言われています。

森田が対人恐怖の概念を発見した時期は100年も近く前のことです。森田は対人恐怖を改善する世界で初めての心理療法を開発し、現在では森田療法として世界中で親しまれています。

世界でも認知される

対人恐怖症の治療は日本独自に発展をしてきましたが、だんだんと世界中で似たような症状があることが分かってきました。

1980年代になると、アメリカの精神医学会で「社会恐怖」という診断基準が用いられるようになってきました。

最近の精神医学の世界では「社交不安障害」と呼ぶようになっています。

12~15歳からはじまる

社交不安障害は、約80%の方が10代で発症します。もし皆さんが対人恐怖症傾向があるとしたら、おそらく12~15歳ぐらいからはじまったのではないでしょうか?

しかし、この時期に対人恐怖症の勉強をすることはほとんどありません。その結果、対人恐怖をこじらせてしまい、不登校や引きこもりに発展することもあるのです。

図1. 社交不安障害の発症年齢(DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアルより、一部改変)

 

対人恐怖と公的自己意識

ここで皆さんに考えて頂きたいことがあります。病気というと、普通は子どもか高齢者がかかりやすいものです。一方で、対人恐怖は健康的であるはずの12~15歳に起こるのです。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

公的自己意識とは何か?

結論から言うと、12~15歳は「公的自己意識」という心理が急速に発達していく時期だからです。公的自己意識とは「人の目を気にする心理」です。

 馬鹿にされたくない
 失敗して恥をかいてはいけない
 不細工と思われてはいけない

など他人の目を気にする心理を意味します。

対人恐怖症,人の目を気にする

私たちは10歳ぐらいまでは、私的自己意識を主体として生きています。

おやつが食べたい!
ゲームがしたい!
遊びにいきたい!

など自分の感情を優先し、人の目は気にしない!楽しければいい!そんな痛快な時間を生きているのです。

身体の変化

しかし、中学生になってきたころから、私たちの体や考えは変化をしてきます。

男性であれば、精通を迎え
女性であれば、初潮を迎えます。

これはなんだ!!とびっくりするわけです。自分だけがおかしいのではないか?と周りの目を気にし始めます。周りと自分と比較しはじめるのです。

異性の目を気にする

さらには、思春期は強烈な異性への興味も膨らんできます。初恋で頭がいっぱいになります。

相手が自分のことをどう考えているのか?
私は異性からモテるのか?
綺麗に見られているか?
カッコよくみられているか?

と気になりはじめます。

競争のはじまり

勉強では内申点を良くするために先生の目を気にします。部活では、レギュラーを取れるように、周りとうまくやっていかなくてはなりません。

周りとどう折り合いをつけていくか?
どうすれば評価されるか?

私たちは社会に出るために、人の目を気にしなくてはならないのです。そうして徐々に私たちは痛快な生き方ができなくなります。

思春期は心をコントロールできない

思春期の青年は、心も未熟です。コントロールの仕方がまだわからないので、公的自己意識が暴走してしまい、対人恐怖がはじまっていくのです。

堀井(2001)は高校生(256名)と大学生(271名)の男女に対して、対人恐怖傾向と公的自己意識に関する調査を行っています。

このように、対人恐怖傾向が高いと公的自己意識も高いという結果が出ています。人の目を気にする心理と、人が怖いという悩みはかなり関連しているのです。

 

会話の内容がおかしくないか不安

対人恐怖症の深刻なリスク

対人恐怖症には、実際どのような悪影響があるのでしょうか?

徹底回避

対人恐怖症になると、人間関係が苦痛になるので、会話場面を徹底的に避けるようになります。特に目的のない、雑談場面が非常に苦手になります。

会話力の低下

人と接することが少なくなると、会話力が低下していきます。例えば1日1時間会話をする人と、しない人を10年で比較すると、3500時間ほどの差がつくことになります。

3500時間と言うと、大型資格を取れるレベルの時間的な差になってきます。大人になってから、トレーニングをしてもかなり大変なのです。

特定の恐怖症に発展

対人恐怖症は、悪化すると、

赤面恐怖症
視線恐怖症
醜形恐怖症
自己臭恐怖症

に発展することがあります。これらの症状を放置しておくと、人間関係が妄想的になり、非現実的な思考で埋め尽くされてしまいます。

私のように引きこもりになり、自殺企図が出てくることもあります。

堀井(2014)は大学生4461人を対象として対人恐怖心性について調査を行いました。その結果、対人恐怖心性は、様々な恐怖感情と結び付いていることがわかります。


例えば上記の図では「醜形恐怖」が(.82**)と書いてあります。醜形恐怖とは、必要以上に自分の容姿をマイナス評価してしまう心の状態を意味します。

対人恐怖と醜形恐怖は結びつきが強く、例えば、鼻の形が気になる、スタイルが気になるなどを過剰に意識してしまいます。

カウンセリングなどを行うと、びっくりするほど美人な方も多く、現実以上に自分をマイナス評価してしまう状態だと言えます。

対人恐怖傾向はこのように様々な恐怖症と結びつきやすく、社会性を維持できなくなるリスクがあるため対応が必要です。

 

簡易診断,チェック

対人恐怖の深刻度については、定期的にこちらでチェックしておくことをお勧めしています。

 

対人恐怖症を治す方法,治療の方針

ここからは対人恐怖症の解決策を紹介していきます。これまで社交不安障害については様々な改善法が開発されてきています。

今回は当事者としての私の経験も踏まえて、以下の8つのやり方を提案させて頂きます。

・私的自己意識を増やす
・失敗過敏を修正
・論理療法の学習
・会話の自主練習を継続
・徐々に行動範囲を広げる
・森田療法の学習
・漸進的筋弛緩法で体をほぐす
・薬物療法

複数の選択肢があるので、この中からご自身の生活に合いそうなものを組み合わせて取り入れてみてください。

自分の見た目に自信がない

対策① 私的自己意識を増やす

対人恐怖の中核的な心理は人の目を気にする公的自己意識の過剰にあります。必ず抑えておきたいのが、

公的自己意識を減らす
私的自己意識を増やす

この2点です。周りの目を気にする傾向がある方は、下記のコラムをぜひ参考にしてみてください。後半に練習問題があるので取り組んでみてくださいね。

人の目を気にする意識の改善

 

対策② 失敗過敏を改善する

対人恐怖傾向があるか方は、失敗を恐れやすいことがわかっています。

 嫌われてはならない
 人前で緊張してはいけない
 絶対にミスをしてはいけない

このような感覚がある方は要注意です。失敗過敏を改善するには、考え方を積極的に修正していく必要があります。例えば、

 会話を弾ませよう!  
 友人と仲良くありたい
 相手を褒めるぞ!

とイメージするのです。前者はミスをなくす、とネガティブな方向に向いています。逆に後者はプラスに目が向いていますね。

人と接するときに失敗するイメージをしてしまう方は下記の失敗は成功のもとコラムを参考にしてみてください。前向きなイメージをする練習ができます。

失敗怖い…を前向きにする練習

 

対策③ 論理療法の学習

対人恐怖症がある方は、非現実的な考え方に支配されていることがあります。例えば、

 あがり症は恥ずかしいことだ
 緊張している自分は笑われる
 顔が赤くなると評価が下がる

このような強い思い込みが見られます。この点については、現実的に考える練習をすると、緊張がほぐれ現実的な行動をしやすくなります。

考え方が極端になっているかも…と感じる方は下記のコラムを参照ください。

論理療法の基礎

 

対策④ 会話の自主練習をする

対人恐怖の時期は、人との会話量が減るため、会話の苦手意識が生まれます。会話の苦手意識が生まれると、さらに人が怖くなるという悪循環に陥りやすくなります。

ここで意識してほしいことが、会話の力が落ちないように、ひとまずは自主練習を継続することです。具体的には下記の動画に傾聴と発話の基礎練習リストを作成しました。

会話力が低下している…という方は1日10分程度でOkなので継続して練習してみてください。

傾聴トレーニング(動画)
発話トレーニング(動画)

 

対策⑤ 徐々に行動範囲を広げる

対人恐怖傾向がある方の特徴として、回避癖があります。

心理学的に回避は、特定の不安を強くしてしまうことが分かっています。対人恐怖は、人が怖いから、人を避けることでさらに不安を強くしてしまっているのです。

その意味で、克服するには最終的には、大変ですが行動することで改善していかなくてはなりません。しかし。突然行動しよう!と言われてもそれができないから困ってしまうと思います。

この点については、スモールステップを作って少しづつ行動範囲を広げていくことが大事です。具体的には下記の行動療法をぜひ学習していきましょう。

スモールステップー行動療法

 

対策⑥ 森田療法

対人恐怖症の伝統的な改善法としては森田療法がとてもおすすめです。

森田療法は、ざっくりとですが、対人恐怖の症状を無理やり治そうとするのではなく、自然なものとして受け入れながら、やるべきことをやりなさい。

という心理療法になります。自然なものとして受け入れる…と言う考え方にであり、私自身もすごく救われた記憶がありました。対人恐怖症の方に必須の心理療法です。

是非一度学習してみてください。

森田療法,あるがまま,目的本位

 

対策⑦ 漸進的筋弛緩法

私たちの心と体はつながっています。人と話すときに

体が緊張して固まる
心臓がどきどきする
呼吸が荒くなる
汗が止まらない

これらにあてはまる方は体ほぐすエクササイズがおススメです。具体的には、筋肉の緊張と弛緩の感覚が身につく、漸進的筋弛緩法を練習してみてください。

漸進的筋弛緩法を練習する

 

薬物療法

症状が強く、人と話すことがほどんどできないような状態の方は、医療の力を借りるようにしてください。社交不安障害は誰でもなる心の病気です。

恥ずかしいものではなく、世界中のお医者さんがあなたのために研究を重ね、改善するためのお薬を開発しています。以下対人恐怖とお薬について解説をしています。

特に症状が重たい方は参考にしてみてください。

薬物療法の基礎

まとめとお知らせ

まとめ

紹介させて頂いた手法については、いきなり全部試すのではなく、1年ぐらいかけて1つ1つ実践するぐらいで充分です。じっくり取り組んでみてください。

繰り返しになりますが、対人恐怖症の知識は、一般的には知られていないことが多いです。知らず知らずのうちに悪化してしまうこともあります。

もし当コラムにたどり着いた方がいたら、ご自身のため、そして親しい方のために、紹介した知識や手法を役立てて頂けるとすごくうれしいです。

皆さんが、過度に人を恐れることなく、健康的な人間関係を築かれることを切に願っています。

講座のお知らせ

公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では

・心理療法の基礎
・対人恐怖の改善
・赤面症,視線恐怖との付き合い方
・暖かい人間関係を築くコツ

など練習していきます。興味がある方は下記の看板をクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています。

 

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
Elkind(1967) Egocentrism in adokesence  Child Development 38 1025-1034 永井撤(1987)対人恐怖的心性に関する心理学的研究 東京都立大学人文科学研究科博士論文堀井俊章(2006)対人恐怖心性尺度Ⅱの開発 –対人関係におけるおびえの心性を測定する試み- 学生相談研究 第26巻 第3号, 221-232上地雄一郎・宮下一博(2009)対人恐怖傾向の要因としての自己愛的脆弱性,自己不一致,自尊感情の関連性 パーソナリティ研究2009 第17 巻 第3 号 280–291Greenberger&Christine(2001) うつと不安の認知療法練習帳 創元社岡田努(2002)現代大学生の「ふれ合い恐怖的心性」と友人関係の関連についての考察 性格心理学研究 第10巻 第2 号69−84
日本精神神経学会 監修 (2014) DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
城月 健太郎・児玉 芳夫・野村 忍・足立 總一郎 2013 不安のコントロール感に関する基礎的検討―社交不安障害の観点から― 心身医学, 53:408-415
堀井俊章(2001) 青年期における自己意識と対人恐怖心性との関係 山形大学紀要12,4