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燃え尽き症候群の症状と回復プロセスを解説

燃え尽き症候群とは?症状や回復方法①

はじめまして!臨床心理士の竹元、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

本コラムでは「燃え尽き症候群」について詳しく解説をしていきます。しっかりと対策をお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。ぜひお付き合いください。

  • 燃え尽き症候群とは?
  • 情緒的消耗感とは
  • 目標を見失うことが原因
  • アイデンティティを確立
  • 限界設定で適度に努力
  • ソーシャルサポート
  • 運動不足を解消しよう
  • 医療の力を借りる

それでは早速、燃え尽き症候群の意味や歴史など、基礎から解説させて頂きます。

燃え尽き症候群の会社員

燃え尽き症候群とは?

定義

みなさんは、燃え尽き症候群という言葉は聞いたことがありますか?心理学辞典(1999)によれば、燃え尽き症候群は以下のように定義されています。

「極度の身体疲労と感情の枯渇を示す症候群」

つまり、簡単に言うと、それまで普通に仕事などができていた人が、燃え尽きたようにやる気を失うことや仕事のパフォーマンスが低下することを指しています。

歴史

・1970年代
バーンアウト(burnout)という言葉は、元来はロケットエンジンが焼き切れたり、電球が切れる状態を示す技術用語でした。その後、1970年代アメリカで注目され、看護師や教師などの対人援助職(ヒューマンサービス)の領域で使われ始めました。きっかけは、意欲的に支援をしていた対人援助者が、急に心身の不良を訴え、仕事を継続できなくなるということが多発したためです。

心理学の世界では、フロイデンバーガーという学者が「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を学術用語として使い始めました。

・1980年代
日本ではアメリカよりも10年ほど研究が遅れており、1980年代後半から燃え尽き症候群の研究が始まりました。看護職や教師、スポーツ選手などを対象とした研究が行われています。日本では、「燃え尽き症候群」と「バーンアウト」、両方の単語がほぼ同じ意味で用いられています。

燃え尽き症候群とは?歴史や背景

燃え尽き症候群の症状

燃え尽きは、介護や看護の仕事をしている人に発症しやすいと言われていましたが、接客業や教師などの職にもバーンアウトが生じることがあります。燃え尽き症候群の症状にはどんなものがあるでしょうか?

マスラックという学者を中心とした研究グループが、バーンアウトのチェックリストを作成しました。その際に、燃え尽き症候群の症状を大きく、1:情緒的消耗感、2:脱人格化、3:個人的達成感の低下、に分類しています。それぞれを説明していきます。

症状①情緒的消耗感

1つ目の、情緒的消耗感は、簡単にいうと「気持ちの疲れ」です。

たとえば、
・思いやりのある対応ができなくなる
・仕事がおっくうになる
・自分の感情を感じにくくなる
などがあげられます。

燃え尽き症候群では、肉体的な消耗はもちろん、気持ちの面で消耗してしまうことが大きな要因となります。特に対人援助職では、相手の立場に立った思いやりがプライベートな場面まで必要とされる場面も少なくありません。このような気持ちのエネルギーを使う作業を、日々繰り返していくと、バーンアウトになるリスクを高めてしまいます。

バーンアウトの症状

症状②脱人格化

2つ目の脱人格化は、感情を失って人間らしさが無くなることを指します。

たとえば
・マニュアル的な対応を終始する
・人が嫌になり実際に避ける
・支援する相手、患者などを
 名前で呼ばなくなる
・非人間的な対応をする

などがあげられます。対人援助職などでは、「クライエントに対する非人間的な対応」が特徴と言われています。介護職員や学校の先生が、虐待や体罰など不適切とされる対応によるニュースを時々耳にします。このことは、脱人格化の影響が少なくないかもしれません。

症状③個人的達成感の低下

私たちの行動のエネルギーは何かを達成しよう!と考える時ほど大きなものになります。しかし。燃え尽き症候群になると、目標を見失っているために、何をしても虚しい気持ちになってしまいます。やり遂げた!成長できた!という感覚が乏しく、能動的に行動できなくなってしまいます。

またこれ以外にも、燃え尽き症候群はうつ病に近いような症状ともいわれています。これまで仕事を頑張っていた人は、ある日急に仕事の意欲がなくなったり、取り組んでいることに対して虚しさを感じたり、急に仕事を休んでしまうことや休職されてしまうなどの行動がみられる点が似ている点でしょうか。

燃え尽き症候群になりやすい人の共通点

燃え尽き症候群の2タイプ

心理学の研究では、には大きく分けて以下の2つのタイプがあります。

iモラトリアム型
ii学習性無力感型

それぞれ詳しく解説していきます。

iモラトリアム型

目標がない、どう生きたらいいのかわからない、成長を実感できない・・・こんな感覚がある方は、モラトリアム型の燃え尽き症候群になっているかもしれません。

モラトリアムとは、簡単に言えば目標を失っていて、どこに力を注いだらいいのかわからないような状況でミハイ・チクセントミハイ(2000)は自分のスキルや作業の難易度によって、無気力になってしまうことを示唆します。縦軸が「難易度」、横軸が「スキルの高さ」になります。

 

右下のピンク色のゾーンは、「スキルが高く」「難易度が低い」状態です。このエリアは自分が力の注ぎ所がぶつけ所がわからず、味気ない毎日が続く…という状態になりやすくなります。

ii学習性無力感型

逆に目標が高すぎる場合は、燃え尽き症候群と似た「学習性無力感」と呼ばれる状態になってしまう可能性があります。もう一度、ミハイ・チクセントミハイの図を見てみましょう。

左上のゾーンは「難易度」が自分の「スキル」の範囲を大きく超えている状況に該当します。つまり、目標が高すぎると、結果が出ない状態が長期的に続き、燃え尽き症候群のリスクが高まるのです。

燃え尽き証拠群の研究事例

伊藤(2000)は、小中学校の教員208名を対象に、バーンアウトの要因についてアンケート調査を行っています。伊藤は教師自身の仕事の取組み方である仕事観に着目しました。この調査では、教員の仕事の取組み方を以下の2種類に分類しています。

①授業志向タイプ
クラス運営や授業の進め方をより大事にするタイプ
②関わり志向タイプ
生徒との関係性をより大事にしているタイプ

2つのタイプ別に、バーンアウト状態の1つである「達成感の後退」とバーンアウトの各要因について検討しています。その結果は・・以下のようになりました。

まずは、①授業志向タイプから見ていきましょう。

このように、「授業指導の感覚」と「生徒との関わり」の負の相関があることが分かります。つまり、授業の指導の仕方に自信がなくなると、バーンアウトにつながりやすいことが考えられます。(※相関について詳しく知りたい方はコチラをご覧ください)

燃え尽き症候群の研究事例をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・情緒的消耗感と燃え尽き
・達成感とメンタルへルス
燃え尽き症候群の研究事例「所属意識」「職業観」との関係など②

燃え尽き症候群を予防するコツ

それでは燃え尽き症候群にならないために、どうしたらよいのでしょうか。先ほどご紹介した研究結果をもとに、具体的な予防法を5つご紹介します。各項目にリンクが貼ってありますので、当てはまる部分からクリックしてみてくださいね。

①モラトリアムから抜け出す

燃え尽き症候群を克服するにはアイデンティティの確立が必須となります。アイデンティティとは「自分らしさ、自分なりの価値観」を意味します。

下山(1992)はアイデンティティ拡散傾向とモラトリアムのタイプとの関連を調査しました。アンケート調査を行い、対象は当時の大学2年生369名でした。

その結果、職業決定などの人生に関する重要な決定を徹底的に避ける「回避型」のモラトリアム得点と、アイデンティティ拡散傾向は正の相関を示しました。以下の図をご覧ください。

燃え尽き症候群 原因

そしてここでいう正の相関とは、簡単にいうと、燃え尽き症候群傾向が強いほど、アイデンティティ拡散傾向が強いということです。

やりたいことが見つからない…という方はアイデンティティ確立を学ぶことで、燃え尽き症候群の予防・改善につながります。

アイデンティティをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・質問法で確立
・好奇心ツリーを育成
燃え尽き症候群の克服法「新たな目標を探そう」③

②限界設定をする

限界設定とは「自分には、ここまではできるけど、ここから先はできない」という基準の部分になります。この部分を明確にすると、適度な目標を立てることができるため、燃え尽き症候群になりにくくなります。

例えば、

ビジネスマン⇒残業は月30時間まで
子育て   ⇒夕食手作りは週5まで
学生    ⇒勉強は10日に1回は休む

このように、自分ができる限界を考えて、その範囲内で作業を行っていきます。

いつも限界を超えて頑張ってしまう…という方は、限界設定を学ぶことで自分のペースで作業を進めることができます。

限界設定をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・限界を推測する
・実際に行う
・限界設定を見直す
燃え尽き症候群の対処法「限界設定」で適度な働きを④

③ソーシャルサポート

ソーシャルサポートとは、簡単に言うと周囲の人たちから得られる援助のことを意味します。そのサポートは、物質的なものに限らず、たとえば、家族・友人・会社の同僚・専門家の援助、など自分の周囲にある環境の中でサポートしてくれる人やものを意味します。

相談できる人がいない…という方は、ソーシャルサポートを増やすことで、燃え尽き症候群を乗り越えることができます。

ソーシャルサポートをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・燃え尽き症候群との関係
・コミュニティの理想の数
燃え尽き症候群の克服法「ソーシャルサポート」を得る⑤

④運動不足を解消しよう

燃え尽き症候群の時は、体がだるいと感じることが多いです。仕事や勉強、運動することに気が向かないという方も多いでしょう。実は、気持ちと体の状態は深く関わっているのです。やる気がでない状態に対処するためには、感情と関係を理解しておくことも大切です。

体がなまっている…という方は、運動不足を解消することで、気分の落ち込みも和らいでいきます。

運動不足をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・動画で体と心の関係を解説
・運動不足は2倍のうつ病リスク
燃え尽き症候群を克服するには「運動不足」を解消しよう⑥

⑤医療の力を借りる

燃え尽き症候群の治療の1つに「心理療法」があります。これは、カウンセリングや教示を用いて認知、情緒、行動などを変化させ、精神障害や心身症の治療、心理的な問題、不適応な行動などの解決の図ろうとする治療法です。その他、薬物療法といった方法もあり、どちらにもメリットデメリットがあります。コラム⑦では、治療にはどんな方法があるのか、時間やお金などの疑問点を解消していきます。

症状が重い…という方は、精神科・心療内科への受診を検討するようにしましょう。

医療の力を借りるをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・心理療法の長所短所
・薬物療法とは
・精神科に行く基準
燃え尽き症候群が重い場合は「医療の力」を借りよう⑦

 

燃え尽き症候群から回復する方法

燃え尽き症候群を克服しよう

燃え尽き症候群の症状や予防法、克服のコツなどを、心理学の研究を交えながら解説してきました。いかがでしたか。燃え尽き症候群の症状が出やすい、対人支援職に就かれている方の中には、予防策をすでにとられている方もみえると思いますが、バーンアウトは人生の様々な場面で発症する可能性があります。これから詳しくご紹介する方法で、臨機応変に対処できるようにしていきましょう。

次回は、燃え尽き症候群の研究事例について解説していきます。

★燃え尽き症候群への理解を深めよう!
心理学講座

目次

①燃え尽き症候群‐概観
②バーンアウト研究事例
③「新たな目標を探そう」
④「限界設定」で適度な努力
⑤「ソーシャルサポート」
⑥「運動不足」を解消しよう
⑦「医療の力」を借りよう

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・Maslach, C., & Jackson, S. E. (1982) The Maslach Inventory, Palo Alto, CA: Consulting Psychologists Press.
中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
・伊藤美奈子(2000)教師のバーンアウト傾向を規定する諸要因に関する探索的研究 教育心理学研究, 48, 12-20
・久世浩司(2015)マンガでやさしくわかるレジリエンス 日本能率協会マネジメントセンター
・久保真人(2007)バーンアウト(燃え尽き症候群) ヒューマンサービス職のストレス 日本労働研究雑誌 49(1)54-64
・澤田忠幸(2009)看護師の職業・組織コミットメントと専門職者行動,バーンアウトとの関連性 心理学研究 80(2) 131-137
・田尾雅夫(1989)特集「ストレスの社会心理学」バーンアウト -ヒューマンサービス従事者における組織ストレスー 社会心理学研究 4(2) 81-89
・田村尚子(2018)感情労働マネジメント –対人サービスで働く人々の組織的支援- 生産性出版

・ミハイ・チクセントミハイ著,今村浩明訳:フロー体験 喜びの現象学,新思索社,2000