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フロー心理学,フロー状態の意味

フロー心理学、フロー状態の意味

みなさん、こんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。当コラムのテーマは「フロー心理学,フロー状態」です。

フロー状態とは?

フロー心理学を学ぶと人生を充実させる大きなヒントが得られます。そこで今回は、入門編として以下の目次で解説していきます。

①フロー状態とは何か
②モデル図と4つの領域
③フロー心理学,効果研究
④フロー状態9の条件
⑤注意事項,悪用例

読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。せひ最後までご一読ください。

 

①フロー状態とは?

意味

フロー状態とは、心理学辞典(2013)で以下のように説明されています。

スポーツをする、芸術に向き合う、面白い本を読むといった楽しむことのできる活動に没頭することで生じる最適状態の体験のこと

つまりフロー状態とは、活動している人が、楽しむ感覚で心底没頭している精神状態を指します。

例えば、遊び、仕事、勉強に関わらず、1日があっという間に終わってしまった!という体験は誰でもしたことがあるでしょう。このあっという間に終わる、という感覚はフロー状態に入っている証拠です。

提唱者

フロー状態の概念は、1980年代と1990年代に流行しました。提唱者は、ハンガリー系アメリカ人の心理学者ミハイ・チクセントミハイです。

 

ミハイは、芸術家が夢中すると食べ物や水、睡眠でさえ必要としないことに気が気付きました。ミハイはこの芸術家の精神状態に着目し、フロー心理学を提唱したのです。

種類

ミハイは、フロー状態には2種類あるとしています。

・マイクロフロー
短時間に起こるフロー状態です。例えば、鼻歌を歌っている時、楽しくメールを打っている時、半額セールに遭遇した時など、とても短い時間に起こるフローです。

・ディープフロー
長時間没頭する状態です。例えば、勉強や仕事、映画などに集中する時のフローです。

 

②モデル図

ミハイが提唱した、フロー状態のモデル図を見ていきましょう。縦軸は難易度を、横軸はスキルレベルを示しています。

フロー状態のモデル図

リラックス状態

高度なスキルがあるにも関わらず、低レベルの課題をこなしている状態です。例えば、高校生と中学生のサッカーの試合で考えてみましょう。リラックス状態は、高校生が中学生に対して全力で戦っているような状態です。高校生の高い技術で、中学生と対戦するため余裕をもって戦えます。

退屈状態

スキルが低く、かつ低レベルのことをやっている状態です。先ほどのサッカーの試合で考えると、ルールがわからない小学生同士が戦い、お互い混沌としてしまい、試合にならずやる気を失う状態になります。

不安状態

スキルが低いにも関わらず、高レベルの課題をこなしている状態です。例えば、自分の能力では到底わからない仕事を任された時などが挙げられます。成果が出ないことが多く、挫折しやすく、不安や自信喪失につながりやすくなります。

フロー状態

自分の高い技術を使って高い難易度にチャレンジしている状態です。フロー状態としては以下の例が挙げられます。

強豪チームVS強豪チームの戦い
ロスタイムで0対0 点が入ったら勝負が決まる
当落線上の試験を受けている
納期になんとか間に合う仕事をしている
頑張れば付き合えそうな異性とのデート

このような、どちらに転ぶかわからない状況は、フロー状態になりやすいと言えます。

本気で取り組める状況

 

③フロー心理学,効果研究

フロー状態は、最大のパフォーマンスを発揮できるといわれています。ではフロー状態にはどのような効果があるのでしょうか。研究を交えながら解説していきます。

集中力が上がる

木村(2011)は、高校の先生10名を対象に、先生の授業中の心理について研究しました。この調査では、4つの心理状態について調べています。下記は「集中力」に関する結果の一部です。

フロー状態と集中力

先生の集中力が最も高いのは、高い技術で難易度の高い授業をした時だとわかります。

集中力を上げるには、精一杯の努力と、ふさわしい課題が大事であることがわかります。

孤独感が減る

木村(2011)は、同研究で授業時の「孤独感」についても調査を行いました。結果の一部が下図です。

フロー状態と孤独感

フロー状態は孤独感が最も低いことがわかります。フロー状態にある先生は、すごく熱中している状態です。そのため、生徒をうまく巻き込みながら授業を進めていると推測できます。これは、生徒と先生が互いに絡み合っている状態なので孤独を感じにくいと考える事ができます。

一方で先生が熱中していない時は、生徒からのリアクションが少ない可能性が高くなります。そのため、孤独を感じやすくなるのかもしれません。

人間関係が良好になる

カリフォルニア州立大学の心理学者であるNatalie Fariaは、フロー状態と様々な心理について調査を行いました。

以下はフロー状態と「人間関係」の結果です。人間関係とフロー状態には正の相関関係がありました。

フロー状態と人間関係

何かに熱中して取り組んでいる人は、周りの人間関係も良好になると言えそうです。確かに何かにチャレンジしている人の周りには人が集まってくるイメージがあります。

希望を持ちやすい

Natalieの研究によるとフロー状態と「希望」も相関関係にありました。

フロー状態と希望

フロー状態になると「きっと私の人生はうまくいく!」「夢はかなる!」「素敵な人生がまっている!」このような希望を持ちやすくなるのです。

 

フロー状態9の条件

ミハイ・チクセントミハイの著書「フロー体験 喜びの現象学」(1996)によると、フローに入るための条件が9つ述べられています。

1.明確な目標

何をすべきかがハッキリと分かっていると、フロー状態に入りやすくなります。目標は熟考して考えたものほどフローになりやすくなります。

目標の持ち方については以下のコラムで詳しく解説しています。理解を深めたい方は参考にしてみてください。

アイデンティティを確立する方法

2.選択と集中

2004年のミハイのTEDによる話によると、私たちが情報処理できる量は「約110ビット/秒」だそうです。110ビットというと、大体12文字ぐらいです。速読できる人なら1秒で12文字ぐらい読めそうですね。逆に言うと、私たちの情報処理はそれぐらいが限界と言えそうです。

そう考えると、集中力を高めるには、他の情報処理に時間がとられないように、情報を遮断することも大事だと言えそうです。人生の時間は限られています。たくさんのやりたいことの中から、人生をかけるべき課題を選び、覚悟を決めることが大事になります。

3.自己意識の低下

完全にフロー状態に入ると、自分が集中していることに気づかないものです。たとえるなら、こちらの少年のような感じでしょうか。時にはこの少年のように、自意識が無くなるぐらい没頭するものいいでしょう。

フロー状態の作り方

4.時間の歪み

フロー状態では時間の流れが早く感じます。あっという間に2時間、3時間経ってしまいます。逆にフロー状態ではない時は、時間が長く感じます。

もし時間が長く感じたら、退屈、リラックス、不安のいずれかにある可能性が高いです。その場合は原因を分析し、フローに入る工夫をしましょう。

5.即座なフィードバック

チャレンジしたらすぐに結果が分かるとフロー状態に入りやすくなります。例えば、子どもがゲームに夢中になるのは、結果が出るまでの時間が早いからです。コマンドを入力すれば攻撃がヒットし、回避に失敗すれば1秒も立たずにダメージを受けます。

学習においても同じことが言えます。1問解いたらすぐに回答を見るなどフィードバックをした方がフロー状態に入りやすいです。課題や宿題は小刻みに進めた方が集中力がアップしやすくなります。

6.スキルと難易度が適切

自分のスキルに合わせた目標はフロー状態になりやすいと考えられています。改めて、フロー状態のモデル図を見てみましょう。フロー状態のモデル図

難易度とスキルがともに「高い」ときは、適度なプレッシャーを感じつつ、自分の能力を全開まで発揮することができます。

7.コントロール可能

自分の技術を使ってある程度チャレンジできる感覚があると、フロー状態に入りやすいといわれています。例えば勉強であれば、参考書を見た時にある程度チャレンジできる感覚がある方が、集中力を維持できます。自分が頑張ればクリアできるくらいの状態や環境を目指しましょう。

8.内的動機

自分自身がやりたい事に、チャレンジすることが大切です。言われた事をやる、他人が決めた事をやる、など外的要因によるフロー状態は続かないと言われています。まずは自問自答して、自分自身がやりた事を見つけることが大事です。

9.没頭環境

フロー状態を持続させるには、環境の設定も大事です。静かな部屋、まとまった時間、スマフォの電源を切る、デスク周りを整理する、などして気が散らないようにしましょう。

 

注意事項,悪用例

フロー状態は、仕事や勉強などではプラスに働きますが、マイナスに働くこともあるので注意が必要です。

フロー状態と問題行動

・ギャンブル依存
ギャンブル依存とフロー状態は深い関連があります。例えば、パチンコでは、当たるか当たらないかという状態が続き、フロー状態に入りやすくなります。公営ギャンブルなどは、制限を設けながら遊戯するようにしてください。

フロー状態とキャンブル

・犯罪
フロー状態は犯罪に結びつくこともあります。例えば、万引き(盗癖)クセになってしまうと、繰り返してしまいます。見つかるか見つからないか…という心理から、抜け出せなくなるのです。露出などの犯罪も同じ原理にあたります。

万引きクセとフロー状態

・ガチャ依存
ガチャはどちらに転ぶか分からないため、フロー状態に入りやすくなります。興奮してお金を使いすぎてしまわないように注意しましょう。


・恋愛依存
恋愛は、好きか嫌いかが揺れ動くので、フロー状態に入りやすくなります。恋愛の刺激は強いため、一部不安定な恋愛を求めてしまう人もいます。出会いと別れを繰り返す人は、注意が必要です。

フロー状態と問題行動

フロー状態から我に返るには、自分を客観視するマインドフルネス力が大事になります。マインドフルネス力がつくと、今自分がどのような状態にあるかを、把握しやすくなるため、フロー状態と健康的に付き合っていくことができます。

我を失い問題行動をしてしまう…と感じる方は、以下のコラムを参照ください。

マインドフルネスコラム

仕上げの動画

フロー心理学について動画でもしっかり解説しました!仕上げとしてご活用ください。

 

まとめとお知らせ

まとめ

フロー状態は、日常生活でかなり使える心理です。勉強、仕事、恋愛、さまざまな場面で集中力を高めてくれます。例えば、講師の川島の場合は、難しすぎず簡単すぎない授業づくりを大切にしています。

1問目2問目はなるべく簡単な問題にする。3~8問目は難易度をあげ、フロー状態に入りやすくする。最後の2問は難しくする。このような工夫で、フロー状態に入れるような授業を目指しています。

フロー心理学は日常生活のあらゆるケースで活用ができます。是非、充実した日々を過ごすために活かしてみてくださいね♪

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*出典・参考文献
・ファンデンボス,G.R.(2013)APA 心理学大辞典,793
・木村 優,授業における高校教師のフロー体験に内在する実践的意義,日本教育方法学会紀要,教育方法学研究,2011,36 ,25-37
・Natalie Faria,Positive Psychology and Student Success:How Flow, Mindfulness, and Hope are Related to Happiness, Relationships,and GPA