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モラトリアムとは?期間・意味・特徴・過ごし方を心理学の専門家が解説

モラトリアム期間の意味とは?心理学の専門家が解説

はじめまして!臨床心理士竹元、公認心理師の川島です。私は現在、こちらの心理学講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回のテーマは
「モラトリアム」
です。

  • 改善するお悩み
  • やりたいことが見つからない
  • 日々が充実しない
  • 目標をみつけたい

全体の目次
モラトリアムの意味とは
診断-チェック
脱却する方法
お悩み相談掲示板

それでは早速、モラトリアムの基礎から解説させて頂きます。

モラトリアムとは何か

提唱者

モラトリアムは1959年に、発達心理学者のエリクソンが提唱した概念です。エリクソンは人間が人生を通してどのように心を成長させていくのかを考えた学者です。

エリクソンは1994年までご存命でした。生前の様子もあります。

モラトリアムとは何か?

エリクソンが使ったモラトリアムとは、元々経済学の用語でした。戦争等の緊急時に社会的な混乱を防ぐために法令として、債券の支払いを猶予する意味で用いられました。

エリクソンは
「Identity and The Life Cycle」
という書籍の中で、

比喩的に
「Psychosocial moratorium」
という言葉を使いました。それ以来、モラトリアムは心理学の世界で浸透していったのです。
モラトリアム,本,エリクソン

モラトリアムは現代では以下のように定義されています。

能力がまだ十分に発揮していない青年が、社会に対して一定の距離を置いている状況。この時期に青年は生きるために働くのではなく、自由な精神で修行や役割実験に取り組むことができる
(心理学辞典,1999,一部簡略化)

具体的には、
・やりたいことをじっくり探す
・社会的な立ち位置を模索する
・どう生きるべきかを模索する

これらの期間を意味します。モラトリアム期間はこのように、やりたいことが見つからない状態で、自分と向き合う期間として使われています。

皆さんも人生で一度は体験したことがあるのではないでしょうか。

モラトリアムの意味や期間について解説

モラトリアムの構成要素

モラトリアムは、さまざまな要素が複雑に絡み合って生じます。ここでは、モラトリアムの成り立ちについて考えていきましょう。

下山(1992)によると、モラトリアムは以下の5つの構成概念から成り立っていると報告されています。

1.回避
将来的な展望が全くなく、職業決定に対して無気力で回避しがちになります。職業選択を先延ばしにするモラトリアムの典型的な要素とも言えます。

モラトリアム 回避

2.拡散
職業決定の意思はあるものの、方向性がブレてしまい、心理的に不安定な状態です。「回避」のように、自ら仕事選びを先延ばししているのではなく、決めあぐねによって結果的にモラトリアムになっています。

3.安易
職業決定を先延ばしはしないものの、真剣に向き合っていない状態です。将来への意欲がなく、受動的で安易な選択に終結することが多いです。

モラトリアム 安易

4.延期
大学期を社会的な責任を免除された期間とみなし、職業選択を先延ばしする状態です。大学期間は、自由に遊び楽しむが、必要な時が訪れれば、社会的な活動にも参加することが特徴です。

モラトリアム とは

5.模索
自主的に職業選択に取り組み、社会的な責任を果たす努力をしている状態です。職業選択の重要性を考え、積極的に自分に適した仕事を模索するのが特徴です。

モラトリアムにも様々なパターンがあり、それぞれの強さによって行動も変わってきます。積極的に将来を模索する人もいれば、完全に放棄してしまう人もいるので、自分にあった傾向を考えておきましょう。

アイデンティティ確立

モラトリアム期間中に、私たちは人生と向き合い、試行錯誤していくなかで、次第に目標を定めていきます。

・福祉の分野で一人前になる!
・スポーツトレーナになる!
・母親としてこの子を立派に育てる!

そうして、今までの霧が嘘のようにエネルギッシュに活動をはじめる時期を迎え、力いっぱい生きていくのです。これをアイデンティティの確立と呼びます。

大野(1984)は「充実感」と「アイデンティティ確立」の関連を研究しました。モラトリアム期間を脱して、アイデンティティが確立できている達成グループは充実感が高いことがわかります。

アイデンティティ拡散

一方で、せっかく確立されたアイデンティティも、いつかは終わりを迎えます。それは会社の倒産かもしれないですし、定年退職かもしれないですし、子育てが終わる時期かもしれません。

モラトリアム期間 

そうして私たちは再びモラトリアム期間(アイデンティティ拡散時期)を過ごすことになります。岡本(1995)はアイデンティティ形成のプロセスは、拡散と達成を繰り返すことを指摘しています。

モラトリアムをらせん式発達モデルを参考に解説

私たちは人生を通して、アイデンティティ確立とモラトリアムを繰り返し、最後は自分の人生を統合していくと考えられています。

診断とチェツク

ここからはモラトリアム期間の過ごし方について解説していきます。ご自身の状況を把握する意味で定期的な診断をオススメします。

モラトリアム脱却法

ここまで解説した通り、モラトリアム期間は人生の充電期間ととして大切な時期となります。そこで当コラムではモラトリアム期間を、貴重な時間として活かすアイデアを5つお伝えします。

①自分と向き合う時間を創る
②とりあえずやってみる
③人生の責任を負う・他人事にしない
④期限を決める
⑤今の自分を大切にする

 

モラトリアム期間の過ごし方

①自分と向き合う

モラトリアム期間は、答えのない答えを見つける期間です。自分が何をしたい人間なのか?これは誰かが教えてくれるわけではありません。

そのためには自分と向き合い、考える時間が必要です。

1つオススメなのが、日記やブログを書くことです。文字のいいところは、思考が可視化され、積み重なっていく点にあります。

モラトリアム,日記

話し言葉やボーと考え事をするだけでは思考が拡散してしまいます。ブログは書いたことが可視化されるのでとてもオススメです。

筆者の川島自身。モラトリアム期間はとても長かったと考えています。16歳ごろから、結局8年間ぐらい、悩み続けました。自分が本当に何をしたいのかわからず、

・会計士受験に手を出して失敗
・引きこもりになる
・フリータ生活をする

を体験してきました。モラトリアム期間は長く続きました。その後、自問自答を繰り返し、社会のコミュニケーションの問題を解決する会社を作ることを決意して、今の仕事にたどり着きました。

青春時代悩みに悩むモラトリアム期間は今とても大事な時期だったことを実感しています。

②メタ認知力をつける

モラトリアムを脱するには、メタ認知力をつけることがとても大事です。メタ認知には「メタ」「認知」という言葉があります。分解して考えてみましょう。

「メタ(meta)」には

 高次の
 超えた
 背景

という意味があります。

「認知(cognition)」には

 考える
 評価

という意味があります。これらをまとめるとメタ認知は

考えることを超える
高次の考え

と言い換えることができます。より簡単に定義すると、

考えることを考える

これがメタ認知になるのです。モラトリアムを脱するには、

・自分が何を考えているのか?
・何に喜びを感じるのか?
・どう生きたいのか?

について自分自身を考えなくてはなりません。

モラトリアム期間,自分と向き合うこれは結構大変です(^^; ですが、この作業抜きに自分の深い部分の理解はできないと言えます。メタ認知力の鍛え方については、下記のコラムで解説しました。後程ごらんください。

メタ認知力-トレーニング法

 

③体験を増やす

長期化するのが当たり前

モラトリアム期間は、年単位で訪れることもしばしばです。とても長い期間ですので、考えるだけでなく、様々な体験をすることもとても大事です。そもそも情報が少ない中でやりたいことを見つけようというのは土台無理な話です。

例えば、赤ちゃんはそもそも世の中のことを知らないので、やりたいことなどありません。少女も自分が知っている情報の中で判断するので、せいぜいケーキ屋さんとかそれぐらいの発想しかできないのです。

とりあえず…でOK!

その意味で、モラトリアム期間だからと言って、まったく行動しないことはオススメできません。むしろ「とりあえず」の精神で行動していくことを意識してほしいのです。

とりあえずバイトをする、とりあえず気になった勉強をはじめる、とりあえず?恋愛してみる(お相手の方ごめんなさい!)、こんな精神でもOKです。

そうして行動して、またその行動の中で、自問自答していくと次第にやりたいことを見つけやすくなるのです。

やりたいことを探す

④モラトリアムの期限と覚悟

期限を設定しよう

最後に、モラトリアムの終わりの期限を設定しましょう。私たちの人生は答えがありません。
・本当にやりたいこと
・本当に自分にあった仕事
・本当に自分を愛してくれる人など
実際はよくわからないのです。

その意味で、私たちは現実と折り合いをつけて、モラトリアム期間をどこかで終わりにしなければなりません。

・あと半年は仕事を選びをして、その後はスパッと就職する!
・長年付き合った彼女と結婚を決める
・留学しようか長年迷っていたが、28歳までには必ず留学する

このように思い切った期限設定も大事です。

やりたいこと,期限

筆者の事例

筆者の川島は24歳の頃に会社員をやめ、独立しました。実は16歳の頃から自営業になろうと考えたいたのですが、気が付けば8年が過ぎてしまっていたのです。

これ以上、引き伸ばし続けるのは、一度しかない人生をずるずる過ごしてしまうと考え、私はついに、何をするかも決めないまま会社をやめてしまったのです。

そうして強制的に自分の環境を追い込み、自営業として生きていかざるを得ない環境を強制的に作っていきました。

それだけ人にとって区切りというのは非常に大切なものです。そのため、何かのイベントをきっかけにする、あるいはご自身でいつまでかという区切りを決めておくことが大切であるように思います。

私たちは一生モラトリアム?

現代では、自分の将来を1つに決めるということは、現実的になかなか難しい作業であることも多いのではないかと思います。

「この仕事で生きていく」と決めた仕事が、ある日突然とあるできごとで続けられなくなってしまうことは、少なくないのではないかと思います。

ある統計では現在の仕事の50%は将来なくなるともいわれています。

モラトリアムの影響

そうした意味で大倉(2011)は、現代のアイデンティティを確立した人間とは、いろんな可能性を残しながらも主体的に生きていける「成熟したモラトリアム人間」としての在り方を説いています。

具体的にいうと、今の仕事を熱心に取り組む。しかし、定年まで勤められる保証はない。万が一のために転職できるよう準備をしているとか、資格を取るための勉強をしているとか、そんなところでしょうか。

色々お話ししてきましたが、あなた自身が気持ちの面でバランスの取れた生活を送ることができ、充実感を感じられるような毎日を過ごせていればなんでもありというところなのではないでしょうか。

それが現代的なモラトリアムへの対処法と言えるかもしれません。

発展編

最後にモラトリアムをより深く理解するために関連コラムをお伝えします。

アイデンティティの確立

当コラムではたびたびアイデンティティという用語を使ってきました。エリクソンが提唱した非常に重要な概念です。

アイデンティティの確立を理解せずにモラトリアムはできないと言っていいぐらい重要な概念です。是非こちらのコラムも読んでみてください。

アイデンティティの確立と意味

燃え尽き,バーンアウト

何らかのチャレンジが終わるとモラトリアム期間に入ることがあります。モラトリアム期間は大概の方が乗り越えていくものですが、稀に重篤化し、健康を害するほどの無気力状態になる方がいます。

目標を見失って何をしていても虚しい…と感じる方は以下のコラムも参考にしてみてください。

燃え尽き症候群,バーンアウト


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1件のコメント

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    • 匿名
    • 2019年6月15日 6:32 PM

    > 身近に今できることに取り組んでいくと~
    このあたり大変興味深かったです。ありがとうございます。

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
Erikson(1950) childhood and society. New York: (仁科弥生(訳)1977,1980. 幼児期と社会 みすず書房
Erikson(1959) Identity and the Life Cycle. New York
下山(1992)大学生のモラトリアムの下位分類の研究 アイデンティティの発達との関連で Japanese Journal of Educational Psychology, 1992, 40, 121-129
中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
Marcia.J.E(1966) Development and validation of ego-identity status. Journal of Peesonality & Social Psychology 3 551-558
岡本祐子(1994)成人期における自我同一性の発達過程とその要因に関する研究 風間書房
鑪 幹八郎‎・宮下 一博・大倉 得史・谷 冬彦(2014)アイデンティティ研究ハンドブック ナカニシヤ出版
大倉得史(2011)「語り合い」のアイデンティティ心理学 京都大学学術出版会
宮下一博・杉村和美(2008) 大学生の自己分析―いまだ見えぬアイデンティティに突然気づくために ナカニシヤ出版