断り方の例文,メールをシーン別に解説,友人,告白,ビジネス
皆さんこんにちは!公認心理師の川島です。
今回のテーマは
「断り方」
です。
・断るとすごく罪悪感がある
・セールスを断れない
・どうしても引き受けてしまう
上記にあてはまる方は要注意です。断る力がない方は相手の顔色を窺うばかりで、強いストレスを抱えてしまいます。
そこで本コラムでは健康的な断り方をしっかり解説します。具体的には、以下の3つの基本的なスキルと、シチュエーションごとの具体例をお伝えします。
基礎スキル
・感謝とセットで断る法
・代替案を提示法
・Iメッセージで断る
シチュエーション別練習
・デートや告白の断り方
・ビジネスシーンの断り方
・友人の誘いの断り方
ご自身の状況に合いそうなものをぜひ取り入れてくださいね。
基礎スキル①「感謝+断る」法
「感謝の気持ち+断る」法
1つ目に紹介するのは「感謝とセットで断る法」です。断る前に感謝の言葉を入れることで相手の気持ちを尊重しながら自分の気持ちを伝えることができます。
頼りにしてもらってうれしいです!(感謝)
○○さんが大変なのはわかるので、
お手伝いしたいのは山々ですが…
実は家族の用事があり難しいです。。
申し訳ありません(断り)
え!!私なんかでいいんですか?
ありがとうございます。(感謝)
ただ・・・○○さんのお役に立ちたい
気持ちはあるのですが…(断り)
自問自答してみて、確かにこの部分は感謝できそうだな・・・という部分を大事にして相手に伝えてみてください。
事例
それでは、ここで感謝とセットで断る法の具体例を見ていきましょう。登場人物は太郎くんと花子さんです。
・2人はデザインが会社の同僚
・会社の行事で沖縄旅行がある
・2人とも都合が合わずいけない
ここで2人の対応を比較してみましょう。
①太郎くん
→行けません!
→無理です!
→その日程はダメです。
太郎さんのように、相手の気持ちを無視して一方的に断ってしまうと相手とあつれきが生じやすくなります。「行けません!」だけでは、相手は拒絶されたように感じる可能性があります。
②花子さん
→誘って頂きありがとうございます。
でも、その日は予定があって……。
→ありがとうございます!
ごめんなさい、その日は都合が悪くて行けないんです。
花子さんは、「感謝できる部分をセットで伝える」ことがとてもうまいです。ただ単に断るのではなく、まずは「ありがとう」「誘ってくれるんだ!」と前向きに伝えてから、うまく断っています。
相手の要求が飲めなくても、誘ってくれたこと自体には感謝はできると思います。その部分を伝えながら断ると、とてもスマートに断ることができます。
以下に練習問題を用意しました!後程展開してトライしてみてください。
練習問題1
状況
・会社の同僚に仕事を頼まれた
・同僚は忙しく大変そうだった
・しかしあなたも手一杯な状況
あなたならどのように、この仕事を断りますか?
⇒
解答例
⇒「頼りにしてくれてありがとう!!○○さんの仕事が大変なことは知っているので、手伝いたい気持ちはあるんだけど・・・。
実は私も仕事が手一杯で手伝うことができないんだ。少しでも手が空いたら声をかけるね。」
この場合は、まずは、頼りにしてもらっている部分に感謝をします。そのうえで、最初に仕事が手伝えないことを謝ってしまいます。
そして、相手の仕事の大変さへの理解を示してから、自分が手伝えない理由を述べています。
練習問題2
状況
・上司から飲み会に誘われた
・その日はどうしても外せない用事があって参加できない
あなたならどのように、この飲み会を断りますか?
⇒
解答例
⇒「お誘いありがとうございます!!最近飲みに行けてないので、うれしさ倍増です。
でも・・その日はどうしても外せない用事がありまして…申し訳ないですが、行けそうもありません。すごく参加したい気持ちはあるのですが…」
この場合は、最初にお誘いに関して感謝を表しています。その上で参加できない理由を述べて、最後に自分の気持ちを表しています。
基礎スキル②代替案提示法
次に代替案提示法を練習していきましょう。
代替案でフォローしよう
代替案提示法は、断るときに、次の代替案をしっかり伝える手法です。具体的には次の3つのポイントがあります。
①理由を伝える
②残念な気持ち
③代替案を提案
「理由+残念な気持ち+代替案」で伝えると、断った後に悪い印象を抱かれる可能性はかなり低く、相手との関係性も維持できるでしょう。
事例
それでは、ここで感謝とセットで断る法の具体例を見ていきましょう。登場人物は太郎くんと花子さんです。
・2人は大学の将棋サークル仲間
・サークルの友人から飲み会に誘われた
・2人とも予定が合わずいけない
ここで2人の対応を比較してみましょう。
①太郎くん
→その日は予定があって…。
→すいません。いけません。
太郎くんのように、残念な気持ちを伝えないと相手にマイナスな印象を与えることがあります。理由は伝えてますが、やはりそれだけでは、「参加したくないのかな…」と思われる可能性があります。
②花子さん
→理由:その日は外せない予定があって
→残念な気持ち:すごく残念です…
→代替案:来月の金曜日か土曜日なら行けそう
このように別の日を提案すると、相手は「本当に参加したかったんだな」と思いますよね。代替案のフォローがあると、断った後にマイナスの印象を抱かれる可能性はグッと低くなります。
以下に練習問題を用意しました!後程展開してトライしてみてください。
それではここから「残念な気持ちと理由+代替案法」の練習問題をやってみましょう。
練習問題1:ビジネス編
状況
・会社の上司から大量の事務処理を頼まれた
・今日は他の案件があり余裕がない
①理由
⇒
②残念な気持ち
⇒
③代替案
⇒
解答例
①理由
⇒今は他の案件で余裕がありません。
②残念な気持ち
⇒とても残念です…。
③代替案
⇒来月なら対応できそう。
⇒木曜日の午後からなら取り組めそうです。
この解答では、謝罪の気持ち、今の量だと難しいということ、手伝いたいという気持ち、代替案を提示しています。上司からの依頼なので、きっぱりと断ることは難しいですよね。
解答例のように、「木曜の午後」と明確に範囲を指定して、無理のない状況での代替案を提示することは非常に有効です。
練習問題2:プライベート編
状況
・友人に誘われて大人数の飲み会に参加した。
・一次会が終わり、二次会がありそうな雰囲気。
・友人に「二次会に一緒に行こう」と誘われた。
・しかし、翌日朝が早いので、できればもう帰りたい。
代替案を入れた断り方を考えてみましょう。
①理由
⇒
②残念な気持ち
⇒
③代替案
⇒
解答例
①理由
⇒すいません。明日が早くて…。
②残念な気持ち
⇒ぜひ行きたいから残念です。
③代替案
⇒日を改めて、来月くらいに!
この解答では、残念な気持ちと断る理由、範囲指定をしたフォローを入れています。フォローを入れることで、比較的ポジティブな印象で終えることに成功しています。
基礎スキル③Iメッセージ法
IメッセージとYOUメッセージの違い
アサーションでは、断り方には2つのやり方があるとしています。
Iメッセージ
Iメッセージのポイントは、自分の気持ちを相手に伝える時に「私は…」を主語にした文章を考えるということです。
「私は…」を主語にすることで、相手の権利を守りながら、自分の感情を伝える丁寧な印象になります。
YOUメッセージ
主語を相手にして主張するやり方です。強く断りたい場合に有効です。ただし人間関係が壊れやすいので原則としてはあまり使いません。
それでは、IメッセージとYOUメッセージの具体例を見ていきましょう。
事例
それでは、アイメッセージ法の具体例を見ていきましょう。登場人物は太郎くんと花子さんです。
・職場の異性に好意を持たれている
・デートにしつこく誘われている
・2人はその相手に好意がなく断りたい
ここで2人の対応の仕方を比較してみましょう。
①太郎くん
→(あなたは)しつこすぎます。行きません。
→(あなたは)何でそんな誘い方しかできないんですか。
→(あなたは)こちらの気持ちも考えてください。
太郎くんは、最初からYOUメッセージで強い口調で断ってしまっています。場合によっては、相手との関係性に亀裂が生じてしまい仕事のチームワークに支障が出てしまうかもしれません。
②花子さん
→(私は)仕事では恋愛感情を持てなくて…
→(私は)今好きな方がいるので…困ってしまいます…
→(私は)都合が合わなくて行けません。すみません。
Iメッセージは、やややんわりとした言い方で、相手に悟ってもらうような言い方になります。またYOUメッセージはやや強い表現で、相手の行動をやめさせようとするため強制力があります。
基本的にはIメッセージからはじめて、相手が配慮をしてくれない場合は、YOUメッセージを使うと覚えておくといいでしょう。
以下に練習問題を用意しました!後程展開してトライしてみてください。
それでは早速、練習問題をやってみましょう。ポイントは、主語を「あなたは」「私は」を意識して作成します。以下の問題を読んで、文章を考えてみてください。
練習問題1
状況
・会社の上司から飲み会に誘われた。
・まだ仕事が終わっておらず残業しようと思っていた。
・Iメッセージで断る場合
⇒
・YOUメッセージで断る場合
⇒
解答例
・Iメッセージ
⇒(私は)誘っていただいて嬉しいのですが、あいにく仕事が終わっていないので・・・(私は)残念ですが行くことができません。
・YOUメッセージ
⇒まだ仕事終わっていない状態ので(あなたは)誘わないでほしいです。
この解答では、Iメッセージを使って、誘ってもらって嬉しかったこと、仕事があって行けないのが残念という気持ちを伝えています。
主語の「私は…」は、言葉にするとより丁寧な印象になります。YOUメッセージは上記のように強い表現になりやすいので、いざというときに使うイメージですね。
練習問題2
状況
・街で声をかけられて簡単なアンケートに答えた。
・しかし、その人はどんどん怪しげな勧誘をしてきた。
・最後には高額な商品の購入を勧めてきた。
・Iメッセージで断る場合
⇒
・YOUメッセージで断る場合
⇒
解答例
・Iメッセージ
⇒申し訳ありませんが、私はそんな高い物を必要としていません・・・(私は)困ってしまいます。
・YOUメッセージ
⇒アンケートとか苦手なので(あなたは)やめてください!
この解答では、Iメッセージを使ってネガティブな気持ちを伝えています。自分には必要ないということと、「困ってしまう」という気持ちで、やんわりと「迷惑である」と言っていますね。
一方、YOUメッセージでは相手の行動を批判しているので強い表現になっています。
断り方-発展コラム
断り方の基礎編はいかがでしたか?基本を抑えられたら次に発展編に進みます。以下の内容で気になる項目がありましたら是非展開してみてください。
シチュエーション別の断り方
断り方は実際どのように実践していけばいいのでしょうか?以下よくある事例をシチュエーションごとに分類しました。ご自身にあてはまるリンクをクリックしてみてください。
・デートや告白の断り方
・ビジネスシーンの断り方
・友人の誘いの断り方
アサーションを学ぶ
本格的に断り方を学習されたい方はアサーティブコミュニケーションをがおススメです。自分を大事にする権利、他人を大事にする権利を学び、様々な手法を元に、断る力を高めて行きます。
長い期間断るのが苦手だった…という方は下記のコラムを参照ください。
研究紹介
断り方について関連する研究を紹介しています。以下に折りたたんで掲載したので、興味がある項目を展開してみてください。
高濱・沢崎(2014)は大学生306名に対して、意見表明が苦手な人と自己肯定感の関係について調査を行いました。その結果、以下のような結果になりました。
図を見ると分かるように、率直な意見を言うのが苦手な方は、自己肯定感が低いという結果が出ています。
心理学的には、0.4~0.7の相関は関連がやや強いと考えます。断るのが苦手な方はメンタルヘルス的にマイナスであることがわかります。
自己肯定感を高める方法を深く知りたい方は下記をご覧ください。
高濱・沢崎(2014)は大学生306名に対して、意見表明が苦手な人と対人不安の関係について調査を行いました。その結果、以下のような結果になりました。
図を見ると分かるように、率直な意見を言うのが苦手な方は、対人不安が強いという結果が出ています。
心理学的には、0.4~0.7の相関は関連がやや強いと考えます。断るのが苦手な方はメンタルヘルス的にマイナスであることがわかります。
対人不安を和らげる方法を深く知りたい方は下記をご覧ください。
心理学の世界ではアサーション理論が発展してきています。アサーションでは自他尊重のコミュニケーションを目指すことを目的としています。アサーションでは人間のタイプを3つに分類しています。
・アサーション
自他尊重のコミュニケーションできる
・非主張的
自分の意見は言わない 断るのが苦手
・攻撃的主張
相手の意見を聞かない 自分の意見を優先する
伊藤等(2016)は中学生156名に対して、アサーションタイプを調査しました。
その結果、非主張的は女子が35%と多く、男性は比較的少ない傾向にあります。
あくまで中学生への調査となりますが、断るのが苦手な方はどちらかというと女性が多いと推測できます。
逆に攻撃的主張は男子が23%と多いです。相手の気持ちを考えずに攻撃的に物事を言うので、断るのは男子の方が得意そうですね。
ただ、言葉づかいによって人間関係のトラブルにも発展してしまうため、諸刃の剣ではあります。
お知らせ
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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*出典・参考書籍
・目白大学 心理学研究 第10号 2014年 1−10 大学生の非主張性とその規定因との関連 髙濵 怜美 沢崎 達夫
・広島大学 学部・附属学校共同研究機構研究紀要 第44号 2016.3 同調しやすい生徒のコミュニケーション傾向の検証 伊藤 友美子 後藤 美由紀 中條 和光 森田 愛子