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交流分析入門,ストローク理論,脚本分析について

交流分析入門,ストローク理論,脚本分析について

みなさん、こんにちは。公認心理師川島です。私達は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。当コラムのテーマは「交流分析入門」です。目次は以下の通りです。

①提唱者
②構造分析
③相補交流・交差交流
④ストローク理論
⑤ゲーム分析とは
➅人生脚本とは

交流分析は非常にわかりやすく、実践的な心理療法でおススメです。是非、最後までお付き合いください。

①提唱者

エリック・バーン

交流分析 (transactional analysis) はカナダの精神科医であるエリック・バーン (Berne, E.) が提唱しました。

1910年、カナダのモントリオールで生まれ、ユダヤ系の家系で育ちました。[1]

バーンが11歳の頃、医師をしていたお父様が結核で亡くなりました。頑張り屋さんのお母様は、編集者をしたり作家として活動したりして、バーンが医師を目指せるように奮闘したと言われています。

精神分析から交流分析へ

母の助けもあり、バーンはカナダのマギル大学を卒業し、医師免許を取得しました。31歳の時、精神分析医の訓練を開始し、補佐として活動しました。

しかし順風満帆とはいかず、サンフランシスコ精神分析協会への精神分析医の資格申請は却下されてしまいます。この出来事から、47歳の時、バーンは精神分析と距離をおきはじめ、独自の研究を進めながら交流分析という手法を生み出します。

②構造分析

交流分析の中には、「構造分析」というものがあります。これは、5つの自我状態を前提に心の状態や人間関係のあり方を考えていく手法です。自我状態とは「自分の心の状態」のことで、以下の5つに分けられます。

CP=厳しい父親

CP(Critical parent)は「厳しい父親」のような心を表します。CPが高い人は、正義感が強い、ルールや秩序を重んじる、支配的、完璧主義という特徴があります。

NP=優しい母親

NP(Nurturing parent)は「優しい母親」のような心を表します。NPが高い人は、思いやりがある、面倒見がいい、共感力がある、愛情深いという特徴があります。

A=成人の自我状態

A(Adult)は「大人」の自我状態を表します。Aが高い人は、合理性を重んじる、論理的、現実主義、知的な活動を好むという特徴があります。

FC=活発な子どものような心

FC(Free Child)は「自由な子ども」のような心を表します。FCが高い人は、無邪気、好奇心旺盛、感情表現が豊か、ユーモアがあるという特徴があります。

AC=従順な子どものような心

AC(Adapted Child)は「従順な子ども」のような心を意味します。ACが高い人は、協調性を重んじる、責任感が強い、気遣いができる、謙虚という特徴があります。

研究紹介

水野(2009)は看護学生233名を対象に5つの自我状態と性格の関連について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

交流分析,統計,自我状態

こちらの図は数字がプラスは正の相関関係、マイナスは負の相関になります。例えばCPは‐329*となっていますがこれはCPが人ほど情緒の安定性が低くなりがちと読み取ることができます。その他の数字についても是非考えてみてください。

5つの自我状態については、以下の診断で測ることができます。興味がある方は、ぜひ自分の自我状態について確認してみてください。

エゴグラム自我状態分析

 

③相補交流・交差交流

バーンは、この5つの自我状態を前提に、人間関係がうまくいく時とうまくいかない時の原因を考えました。

相補交流とは

バーンは「お互いの自我状態が同じ場合は、人間関係が上手くいきやすい」と主張しました。これは「相補交流」と言います。以下の図はわかりやすくするため自我状態を3つにしています。[2]

例えば、大人(P)同士のビジネス場面であれば、名刺を交換し合うといったやり取りが起きます。また、子ども同士(C)の会話であれば、「はなちゃーん」「たろうくーん」といったやや砕けたコミュニケーションが生まれます。

交差交流とは

一方で、お互いの自我状態が異なる場合は、人間関係にトラブルが起きやすいとバーンは主張しました。これを「交差交流」と言います。

例えば、初対面のビジネス場面で、女性が「〇〇会社 大塚花子と申します(P)」と挨拶をしたとします。これに対して男性が「もっとフランクにいこうよ~♪はなちゃんってよんでいいっすか(C)」と返したら、女性は馴れ馴れしく感じるでしょう。このように、自我状態に不一致が生じると、コミュニケーションも上手く行きにくくなるのです。

 

④ストローク理論

定義

ストロークとは、以下のような定義があります。

他者の存在を認識する全ての行為

ストロークには、まずは肯定的/否定的に関わるの2種類があります。下図をご覧ください[3][4]。皆さんは普段、肯定・否定どちらのストロークを使うことが多いでしょうか。

交流分析とストロークの種類

5つの分類

ストロークはさらに細かくわけると、以下の5つに分類されます。肯定・否定×無条件・条件で、4種類に分類され、さらに左側に薄字で「ノンストローク」と書かれています。

交流分析,ストローク,種類

無条件の肯定的ストロークは、「あいさつをしたり、目が合ったら笑う」などが挙げられます。無条件の否定的ストロークは、「意見をいったら頭ごなしに否定、人格批判をする」などが挙げられます。

条件付きの肯定は、「うまく書けたら褒める、テストで良い点を取ったら褒める」などです。条件付きの否定は、「遅刻をしたら叱る、悪口を言ったら怒る」などが挙げられます。

ノンストロークは、そもそもストロークをしないことを意味します。「挨拶をしない、ライン未読無視」などが挙げられます。

交流分析では、人間関係の土台は無条件の肯定にあり、逆に無条件の否定やノンストロークが最も人間関係を悪化させると考えます。ストローク理論については以下のコラムで詳しく解説をしました。

ストローク理論の意味と活用法

家族療法

⑤ゲーム分析とは

ゲーム分析とは何か

バーンは、1964年に人生ゲーム入門(Games People Play)という本を出版し、その中で「ゲーム分析」という用語を使いました。[5]

ゲーム分析とは、トラブルの発生しやすい交流パターンを整理し、それらを解消することで健康的な人間関係を築く手法を意味します。

では、「ゲーム」とはどのようなものを指すのでしょうか。エリック・バーンによれば、ゲームとは以下のように説明されています。

繰り返し行われる一連の交流で、最後には両者が不快な感情を残して破壊的に終わるもの

このゲームの交流を続けてしまうと、毎回同じようなパターンで人間関係でトラブルを起こしてしまいます。「なぜいつもこうなってしまうのか」「どうしても○○がやめられない」などの感覚がある方は、ゲームにハマってしまっているかもしれません。

ゲームには30数種類あるとされています。今回は、その中でも日常生活で見られやすいものをいくつかご紹介します。

具体例1 はい、でも…

やり取りの中で、何に対しても「はい、でも…」と返してしまう交流です。例えば、以下のようなコミュニケーションが挙げられます。

太郎くん
「アクション映画を見に行こうよ~」
次郎くん
「アクション映画か…なんだか疲れそうだね…」

花子さん
「ねえねえ今度、ハイキングに行かない?」
次郎くん
「え…ハイキング…遠出は嫌だな…」

このように、「はい、でも…」という返答を繰り返していると、相談相手がだんだんと呆れてしまい、空返事になったり、怒ったりする可能性があります。最終的にお互いとって、マイナスな交流となってしまいます。

具体例2 大騒ぎ

大げさに伝えることで、周りの同情を得ようとするゲームです。例えば、以下のようなコミュニケーションが挙げられます。

太郎くん
「あの人にそっけない態度取られて…僕はいつも人に嫌われてばかりだ…」

花子さん
「そっけない態度取られると辛いよね」

太郎くん
「なんで僕だけこんな嫌われるんだ…もう誰も信用できない!」

花子さん
「…。」

このように、最初は周りが同情してくれることもありますが、次第に「大げさだな」「言い過ぎじゃない?」と思うようになります。最終的には、周りから取り合ってもらえなくなり、孤立してしまうケースがあります。

 

⑤人生脚本とは

脚本分析とは

脚本分析とは、以下の意味があります。

無意識に繰り返す人生のパターンを見つけ、健康的な生き方を見つけること

エリック・バーンは「人間関係にトラブルを抱えがちな人は、幼少期に親や周りの影響を受けて、ネガティブな人生の筋書きを作ってしまっている」と主張しました。

バーンはその筋書きを「脚本」と呼び、もしその脚本が間違っている場合は、修正してかなくてはならないと考えました。例えば、人生の中で何度も同じような否定的な考えがよぎるという方は、幼少期に不健康な脚本を作ってしまった可能性があると考えていきます。

不健康な脚本と禁止令

交流分析では、不健康な脚本には「禁止令」があるとしています。禁止令とは、「〇〇してはならない」「〇〇すべきではない」といった、抑圧的な思い込みのことです。ここで例として、4つの不健康な脚本をご紹介していきます。

・存在してはならない
幼少期のころに「あんたなんか生まなきゃ良かった」と繰り返し言われると、「自分は存在してはいけない人間だ」という脚本を作り出し、何か発言をしたり行動をしたりする際に、自分で自分を抑制してしまう状態になります。

・遊んではならない
毎日「勉強しろ!」と言われ、漫画を読んだりゲームをしたりしたら怒られていた場合、「遊んではいけない」という脚本を作り出してしまう可能性があります。すると、遊んでいる時に不安になったり、純粋に遊びを楽しめなくなってしまいます。

・人を信用してはならない
親同士が離婚してしまったり、騙されて大きな借金を背負って苦しい生活を強いられてきた人は、「人を信用してはならない」という脚本を作り出してしまうことがあります。

・男らしく・女らしく
「女らしくしろ!つつましくしろ!」と育てられた場合、「女は慎ましくいなければならない」という脚本を持ち、社会で積極的に行動できなくなることが多いです。

禁止令を緩める方法

毎回同じパターンで人間関係が壊れている、人生がネガティブな方向に行きがちな人は、幼少期に作られた禁止令がもとになっているかもしれません。

このような不健康な脚本がある場合は、「アロワー (allower)」を用意して改善していきます。アロワーとは許可を与える言葉になります。

先ほどの脚本で言えば、以下のようなアロワーが挙げられます。

・存在してはならない
→積極的に自分の意見を発言してもOK

・遊んではならない
→何も考えず遊んでみる時間も必要だ

・人を信用してはならない
→信用する勇気も必要だ

・男らしく、女らしく
→自分らしく振舞ってOKだ

このように、アロワーを用意して、実際に行動を変えてみると、肯定的な出来事が増えていきます。すると、少しずつ脚本が変化し、健康的なものに変わっていくことがあります。

もし人生を不健康にする脚本があると感じたら、アロワーを用意してみてください。

まとめとお知らせ

まとめ

交流分析を学ぶことで、日常的な人との関わり方の良し悪しを理解することができます。もし交差交流になっていることに気づいたら、なるべく相手に合わせるように心がけると良いでしょう。

また、自分の脚本を振り返ることで、自分を支配する思い込みに気づき、改善していくことができます。皆さんが人間関係をより円滑にし、素敵な環境で過ごすことができるように心から願っています♪

お知らせ

私たち公認心理師は、交流分析をはじめとして、生活に役立つ心理療法を学ぶ講座を開催しています。講座では

・認知行動療法の学習
・劣等感を長所として活かす方法
・目標に向かう行動予定表
・エゴグラム性格分析

を行っていきます。筆者も講師をしています。皆様のご来場を心からお待ちしています。↓興味がある方は以下の看板をクリック♪↓

 

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 元専修大学人間科学部教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] About Ericberne.com. (2015). Biography of Eric Berne Retreived from https://ericberne-com.translate.goog/
eric_berne_biography/?_x_tr_sl=en&_x_tr-tl-ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=op,sc (April 7, 2022)
 
[2] 桂 戴作 (1987) 交流分析(総説シリーズ/心身症の最近の治療方法) 心身医学, 27, 303-310.
 
[3] 杉田 峰康 (1985). 交流分析 講座サイコセラピー 第8巻 (p.90) 日本文化科学社 
 
[4] 中島 美知子・白井 幸子 (1981). 死と闘う人々に学ぶ : 交流分析を用いての試み (p.38) 医学書院
交流分析の自我状態とBig Five尺度との関係 水野正憲 日本教育心理学会総会発表論文集 51 2009
 
[5] Berne, E. (1964). Games People Play – The Basic Hand Book of Transactional Analysis. New York: Ballantine Books.