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アドラー心理学入門,わかりやすく解説,目的論,劣等感

アドラー心理学入門,目的論,劣等感

みなさんこんにちは。
臨床心理士の井ノ口です。当コラムのテーマは

「初学者向けアドラー心理学」

です。はじめてアドラー心理学を学ぶ方のために、心をこめてみなさんに伝えたいと思います。是非最後までお付き合いください。

アドラーの生涯

病弱な幼少期

アドラー心理学とは20世紀初めにアルフレッド・アドラーによって確立された心理学です。アドラーは、1870年ウィーンの郊外ルドルフスハイムで、6人兄弟の次男として生まれました。

下記はアドラーの生前の様子です。

幼い頃のアドラーは、とても病弱だったことが知られています。

・声帯の異常
・骨格異常
・身長が低い
これら身体に強いコンプレックスを抱いていました。一方でアドラーは幼少期の身体の弱さをバネに、医師を志しました。

弱さがあるからこそ勉学に励んだこの原体験は、後のアドラー心理学の哲学に繋がっていきます。

劣等感への注目

ウイーン大学の医学部を卒業したアドラーは、遊園地で診療所を開きます。遊園地には曲芸師たちがたくさんいて、日々アクロバティックな演技を披露しています。

アドラーはある事実に気が付きます。それは曲芸師たちは、身体的に弱かった人達が多かったのです。

その姿を見て、アドラーは「劣等感」が能力を飛躍させるエネルギー源になるのではないか?と考えたのです。

劣等感とアドラー

フロイトとの出会いと決別

その後、アドラーはフロイトに招かれ研究グループに参加するようになります。アドラーはフロイトから信頼され、精神分析学会の会長も任されるようになります。

一方でアドラーはフロイトの考え方には懐疑的でした。フロイト‐は性的欲求であるリビドーを重視した理論を展開していたのですが、アドラーは劣等感が人間の根源のエネルギーと考えたのです。

そのため、アドラーはだんだんとフロイトと距離を置くようになり、独自の理論を展開することになります。

個人心理学会の設立

その後アドラーは自由精神学会を設立し、個人心理学会へと名前を変え、活動の幅を広げていきます。往年はアメリカで講演活動など行うことが多くなります。

最終的にはアメリカに移住をすることになり、67歳の死ぬ直前まで精力的に活動を行いました

アドラーの死後、戦争の影響などもあり、一時期は心理学の中でも陰に埋もれていた時期もあるのですが、ここ数十年ふたたび脚光を浴びています。

アドラー心理学の重要概念

アドラー心理学には以下の重要な概念があります。

・個人を全体的に考えるべき
・劣等感はエネルギー源
・人間関係を重視
・変わるのは自分
・不安との付き合い方
・目的を大事にする
・勇気の心理学

入門として1つずつ抑えていきましょう。

個人を全体的に考えるべき

アドラー自身は自分の唱えた理論を「個人心理学(individual psychology)」と名付けました。

アドラー以前の心理学では、心を要素ごとに分解することが主流となっていました。例えば意識、無意識、感情、脳…このようにどんどん細かくして分析していく流れがあったのです。

しかし、アドラーは要素に分解することには、固執しませんでした、むしろ個人の全体性を重視したのです。

個人という単語は
individual
です。これは

in     =not 否定
dividuus  =分ける

という単語が組み合わさったものです。つまり、人は、何ごとにも分割できない存在という考えに辿り着いたのです。

私たちは、一人の人間として、全体が統合されながら目的に向かって生きている!という哲学がアドラー心理学の根底にあるのです。

器官劣等性,心理的補償

アドラーは身体的なコンプレックスを「器官劣等性」と名付けました。そして、器官劣等性をエネルギー源とし、活き活きと活かして活躍していている状態を「心理的補償」と呼びました。

劣等感を感じること自体は、誰しもが経験することです。例えば「あの人は自分よりも異性に人気がある」など、他者と比較して自分が劣っていると感じたときに劣等感は生まれます。

そのような劣等感を感じたときに
「自分の容姿は生まれつきで変えることはできないから一生モテない・・・」
と考えると劣等感は力に変わりません。

一方で
「容姿はしかない!その変わり面白い話ができる人になろう」
と考えると、1歩先に進めるのです。

人間関係を重視

アドラー心理学では、悩みの根源には人間関係があると主張しています。

例えば、
「仕事が遅い」
という悩みを考えてみましょう。一見仕事が遅いことが悩みとなりそうですが、その根底には、

「職場の同僚と比べる」
「収入が減ると家族を養えない」
「上司に怒られる」

など、人間関係が必ず絡んでくるはずです。

そして、悩みと関連している「人間関係」が改善されると、人の悩みはほぼ消失していきます。この意味で、アドラー心理学では「人間関係が楽になれば大概の悩みは軽くなる」と考えます。

人間関係,アドラー心理学

変わるのは自分

アドラー心理学では
①自分、②他者、③関係、④環境
の4つの観点で人間関係を考えます。

例えば「学校で自分の悪口を言う友人がいる」という場合を考えてみましょう。4つの観点は以下のようになります。

①自分 悪口を言われている自分
②他者 悪口を言う友人
③関係 友だちの関係
④環境 通っている学校

さて、この4つの中で1番変えやすいものは何でしょうか?環境を変えることは自分自身が転校することなどを指すので、難しいでしょう。

また、関係や悪口を言う友人を変えることも、現実的な対処法とは言い切れない部分が多々あります。

このように考えると、自分自身を変えることが最も効果的な対処法となります。アドラー心理学では自分自身を変えることが重要なテーマです。

そして自分の変化こそ、人間関係を改善するために、最も確実で簡単な方法であると考えます。

劣等感,変化

目的を大事にする

アドラー心理学では目的論という概念が用いられます。目的論とは、何かしらの目的に向かってどのように行動したらよいのかを考えることです。

私たちは困難や悩みにぶつかったときに、つい過去を振り返って原因を探りたくなります。しかし、過去を振り返っても、過去の事実は変えられません。

アドラー心理学では、過去ではなくて現在と未来を重視します。何か困難や悩みにぶつかったときに、その問題の原因を探るのではなく、目的に向かって何をすればよいのかを考えるのです。

アドラー心理学,個人心理学

不安との付き合い方

目的に向かって何かしようとすると、当然不安が起こります。アドラー心理学では不安をネガティブなイメージでは捉えません。アドラーは「不安は人間らしいこころの動きである」と考えました。

不安を感じることは自然なことで、不安があるゆえに準備を行うことができるのです。裏を返せば、不安は準備が不十分な証拠であり、危険信号のようなもので、重要なサインなのです。

不安を感じたら、危険信号が出たと考え、準備の動機づけに変えることが大事になります。

不安は自然,アドラー心理学

勇気の心理学

アドラー心理学では「目的に向かうために行動を起こすことで人生は前に進む」と考えます。

この「1歩進むために行動する」ことをアドラー心理学では「勇気づけ」と言います。この意味で、アドラー心理学は別名で「勇気の心理学」と言われます。

勇気づけとは、困難に立ち向かい、乗り越えるための活力を自分に与えることです。勇気づけは

①目標断言
②イメージ
③行動

の3ステップで行います。3ステップの中で、最初のステップとなる目標断言が最も重要です。自分は性格を変えられるなど、自分自身に向かってポジティブな言葉をかけることがポイントです。

目標を断言した後、目標を達成している自分を頭の中でイメージします。そして、目標を達成するためにできることを、徐々に行動に移していきます。

例えば、
人と話すことが苦手で
人間関係を上手く築けない

という悩みがある方がいた場合、

①目標断言
他人と話すことへの苦手意識を失くす

②イメージ
自分が他人と笑顔で話していると、他の人も会話に加わってくる 

③行動
とりあえず、他人に笑顔で挨拶してみる

と具体化することができます。

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日本での広まり

このようにアドラー心理学は日々の生活に、たくさんのヒントを与えてくれるものでした。一方で、アドラー心理学の知名度は、日本では決して高くありませんでした。

しかし、近年になって「自己啓発の源流」「嫌われる勇気」といった書籍などが出版され、現在では、注目されている心理学の1つになっています。

アドラー自身も「自分の心理学は専門家だけのものではなく、すべての人のもの」と考えていました。分かりやすい理論、人間関係の悩みに効果がある技法なども、アドラー心理学が流行っている要因の1つなのです。

発展コラム

劣等感をもっと理解

アドラーが考えた劣等感について理解を深めたい方は、下記のコラムを参照ください。劣等感についてしっかりと解説しました。

劣等感の意味と克服方法

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