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アイデンティティを確立できない,拡散する意味とは?

アイデンティティを確立できない,拡散する意味とは?

皆さんこんにちは。
公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。私達は現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。

今回の相談は
「アイデンティティが確立できない」
です。

アイデンティティ 研究

相談者
28歳 女性
就職したが仕事が面白くない
人生で打ち込めるものがない

お悩みの内容
私は小さいころから流されやすく、なんとなく大学に行き、なんとなく就職してしまいました。ですが仕事にやりがいを持てず、一度しかない人生でこれでいいのかと悩んでいます。

昔から自分と向き合うのが苦手でそんな自分を変えたいと考えています。検索していたところ「アイデンティティの確立」という用語が自分にぴったりな気がしました。詳しく教えてください。

仕事や結婚は人生に大きくかかわるもので、もやもやしているのはやるせないですね。当コラムを読み進めていくと、アイデンティティを確立するコツを抑えることができると思います。

是非最後までご一読ください。

アイデンティティとは?

アイデンティティという用語はなんとなく耳にすることがありますよね。アイデンティティをはじめに提唱したのは発達心理学者のエリクソンです。

心理学を勉強している学生がほぼ100%勉強するとっても有名な精神分析家です。エリクソンはアイデンティティを次のように定義しました。

エリクソンの定義

内的な不変性と連続性を維持する各個人の能力が、他者に対する自己の意味の不変性と連続性に合致する経験から生まれた自信

エリクソン,アイデンティティ

いかがでしょうか?…かなり難しいですね。

「内的な普遍性と連続性…」のあたりでもうパニックです(汗)

わかりにくいので、もう少し簡単な定義を紹介します。

心理学辞典(1999)の定義

「自分は何者か」「自分の目指す道な何か」「自分の人生の目的は何か」「自分の存在意義は何か」など、自己を社会のなかに位置づける問いかけに対して、肯定的かつ確信的に回答できること

いかがでしょうか。このように「自分とは何者なのか?」を問い、その答えを前向きに出していくことをアイデンティティ確立と呼ぶのです。

皆さんは上記の質問にしっくりくる感覚はありますでしょうか。

アイデンティティ確立

エリクソンと歴史

アイデンティティという言葉が初めて使われたのは1950年代です。提唱者は先程紹介した発達心理学者のE.Hエリクソンです。

彼は元々ドイツで生まれたのですが、見た目は完全な北欧系ではなく、半分はユダヤ系でした。しかし、エリクソンの父親は誰なのか?母であるカーラは秘密にしていたようです。

エリクソンは戦火の影響もあり、最終的にはアメリカに生活の拠点を移しています。

出生が分からない・・・
人種的な迫害を受ける・・・

そのような激動の時代を生きる中で、エリクソン自身、

「自分が何者か?」

という問いを探し続ける人生だったのかもしれません。

エリクソンは1994年までご存命でした。生前の様子もあります。

人生を8つの段階に分ける

エリクソンは、アメリカに渡った後、様々な悩みを持つ方の援助を行いました。その援助のなかから人生を8つの段階に分類しました。

その中で5番目の段階を青年期と呼んでいます。そして青年期に乗り越えなければならない課題として、アイデンティティという言葉をはじめて創ったのです。

アイデンティティ 研究

青年期の課題

私たちは小学生時代までは、自分とは何か?という気持ちをそこまで考えずに、一瞬一瞬を生きていきます。

今日のおやつは何かな?
今日はゲームできるかな?
宿題やんなきゃ!

せいぜいこれぐらいの思考です。

それが青年期になると、目の前のだけではなく、様々な事を考えはじめます。

将来どんな大学に行こうか?
理系・文系どちらが向いているのか?
僕のやりたいことって何だろう?

こんなことを考え始めますね。

このように自分とは何者なのか?生きる目的とは何か?と考え、その芯を定めていくことをアイデンティティ確立と呼ぶのです。

アイデンティティは拡散しやすい

しかし、アイデンティティは簡単に確立できるものではなく、拡散する時期があるのです。

これをアイデンティティクラシスと言ったり、拡散と言ったりします。

定義,意味

「クライシス」とは英語の「Crisis」から来ています。そのまま「危機」という意味があり、日本語でアイデンティティ危機と表記されたりもします。

心理学辞典(1999)によると、アイデンティティ拡散(クライシス)は以下のように定義されています

自己探求を続ける青年が、多くは一過性的に経験する自己喪失の状態を指す。

これから社会生活を送っていく上で、自分らしさをどのように発揮していけばいいか?分からなくなってしまう状態を指します。

アイデンティティ拡散による問題

大野(1984)は「充実感」と「アイデンティティ確立」について調査を行いました。

その結果、以下のことが分かったのです。
・達成グループは充実感が高い
・毎日を健康的に主体的に生きている
毎日充実しない

逆に拡散型グループは
・毎日が楽しくない・・
・何となくむなしい・・

といった感覚になりやすいようです。

例えば、同じ仕事をしていても、
「これが私のやるべき仕事だ!」
と考えている場合と

「これは本当は私のやるべき仕事ではない」
と感じている場合は、充実感に大きな違いが出てくるでしょう。

いま生活に充実感がない場合は、アイデンティティが拡散している可能性が高いと言えます。

起こりやすい場面

アイデンティティクライシスが起こりやすい場面はいくつかあります。

・学校などで進路を考えるとき
・転職など働き方について考えるとき
・失恋、離婚、死別
・外国などに行き異文化に接したとき

アイデンティティクライシスは人生で1回だけではありません。何度も何度も形を変えて起こることがあります。

このことからEriksonも最初はアイデンティティ形成を青年期の課題であると言っていたのですが、のちに考えが変わり、生涯をかけた課題であると言うようになりました。

らせん式発達モデル

岡本(1994)も、自身の研究の中でアイデンティティクライシスは人生を通して何度も訪れ、何度も乗り越えていくことでアイデンティティが確立されていくと述べています。

モデルにすると下記のようになります。

アイデンティティ 拡散この図は、アイデンティティのらせん式発達モデルといいます。上に行くほどアイデンティティが確立できている状態を示しています。

つまり一生のうちでアイデンティティを形成できたかと思いきや、環境の変化や年齢を重ねるなどの要因でクライシスがやってくるのですね。

私たちはぐるぐるとらせんを描きながら絶えず、自分とは何か?を考え、理解していくのです。

3つの確立法紹介

ここからはアイデンティティを確立する方法を提案させて頂きます。ポイントは以下の3点です。
・過去の自分を受け入れる
・自分の価値観を探す
・周りの価値観と融合させる

取り入れられそうなものがありましたら参考にしてみてください。1つ1つマイペースで進んでくださいね♪

①過去の自分を受け入れる

過去の自分を消し去りたい!
昔の自分は大嫌い!
生まれ変わりたい!

もしあなたがこのように感じているとしたらアイデンティティは確立しにくいです。

なぜならアイデンティティを確立する上では「過去との連続性」が大事であることが分かっているからです。連続性とは、過去の自分があったからこそ、今の自分があるという感覚です。

アイデンティティを確立するには、人生を整理整頓し、

挫折をどう乗り越えてきたのか?
自分がどんなことの喜びを感じるのか?
充実していた時期はいつか?

などを俯瞰してみることをオススメします。具体的にはライフチャートを使った自分との対話の方法をご紹介します。人生を大局的に見ると、自分の大事にすべき価値観のヒントになると思います。

ライフチャートで人生の整理を

アイデンティティ 確立

②自分の価値観を探す

アイデンティティの確立には、価値観を洞察する力がとても大事です。自分の感情や価値観など自分の心の声に耳を傾けられるようになると、アイデンティティ形成につながります。

具体的にはメンタライゼーションという技術があります。自分と向き合うのが苦手…という方はぜひ参考にしてみてください。

価値観を洞察する

自分の軸の見つけ方

 

③周りの価値観と融合させる

アイデンティティは、自分を確立することが大事ですが、その際に独りよがりにならないよう、自分以外の人の考えも参考にしながら確立していくことが大切です。

社会に受けいられれるような健康的なアイデンティティの形成について解説します。

周りの価値観と融合させる

発展編,お知らせ

ここまではアイデンティティの基礎について解説をしてきました。ここからは発展編と講座のお知らせになります。

具体例

アイデンティティの拡散から確立まで、イメージをしやすくするために1つの具体例を解説しました。物語として理解したい方は以下の折り畳みを展開してみてください。

22歳男性のAさんは以下のような状況でした。

・とりあえず大学進学
・やりたいことがない
・就職活動に身が入らない

そんな中、アイデンティティ確立に大きく影響する出来事が起こります。それは大きな病気でした。

アイデンティティ 例

指の違和感

Aさんは夕食でいつも通りごはんを食べようとしたところ、指に異変を感じます。普段通りに箸を持つことができないのです。なんど箸を持とうとしても、歪な持ち方になってしまいます。

この時、Aさんは「ちょっと手がしびれているだけだ」と思い、病院には行きませんでした。

難病を発症

しかし、その後も箸の持ちにくさは改善されません。右手の握力が30%程度を落ちている実感がありました。

さすがにまずいと思ったAさんは病院に行くことにします。そこで告げられた内容は・・・

ALS(筋萎縮性側索硬化症)  

という病です。ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、だんだんと筋力が弱ってしまい、最後には寝たきりの状態になってしまう病です。

現在では有効な治療法は見つかっておらず難病指定されている病気の1つでした。

担当の医師からは「将来寝たきりの状態になるかもしれない…」と告げられ、Aさんは絶望感に苛まれることになります。

絶望とアイデンティティ拡散

診断を受けたAさんは現実を受け止めきれませんでした。

そんなはずはない・・・そう自分に言い聞かせる気持ちとは裏腹に、体はどんどん動かなくなっていきます。

なんで自分だけがこんな目に…
神様は不平等にもほどがある…
笑うことすらできないなんて…

Aさんは絶望に淵に立たせされ、今後の進路のことなんてもはや頭にありませんでした。ついには、Aさんは寝たきりの状態になってしまいます。

訪れた転機

「こんな自分に生きる道なんてあるのだろうか…」
「もう消えてなくなりたい…」

Aさんは、とても辛い日々を過ごしていました。

そんなある日なんとなく眺めていたTVから目を疑う情報が流れてきます

そこには、目の動きだけでPCを操作しプログラミング開発をしている人の姿が映っていたのです。

その方は同じALS患者で、プログラマーとして、活躍していたのです。TVで特集されていたのです。

アイデンティティの確立へ

Aさんは衝撃を受けました。

動けなくても人の役に立てるなんて…
ALSでも社会貢献ができるのか…
まだ自分にも希望があるのでは…

Aさんは希望を見出し「僕にもまだ仕事ができる!社会とつながって人の役に立ちたい!」と感じるようになりました。

そうして、Aさんは、トレーニングに時間を要したものの、なんとかプログラミングの技術を習得し、患者向けのソフトウェア開発を行うまで至ったのです。

今ではアイデンティティが確立され、自分らしさを軸に社会とのつがながりを感じられているそうです。

講師の視点 アイデンティティの確立は病気、倒産、死別などがきっかけで確立されることもたくさんあります。人生のピンチは深く自分の向き合う大事な時期と言えます。

 

アイデンティティ診断

現在の自分の状況を把握したい方はこちらの診断をご利用ください。アイデンティティ確立度を診断することができますよ(^^)

アイデンティティ診断

お知らせ

公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では

・アイデンティティ確立ワーク
・心理療法の基礎
・性格診断で自己理解を深める

など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。是非お待ちしています。

助け合い掲示板

2件のコメント

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    • ひかり
    • 2019年5月17日 4:37 PM

    私はどれが無理をしていない自分の人格なのか判らない状態です。
    私は人見知りで対人恐怖心があります。
    人と会話をするのが苦手です。
    でも人と会話をするのは好きです。特に直接会って会話するのが好きです。
    自分の意見を言うのは遠慮してしまいます。
    しかし、攻撃的な発言をしてしまう時もあります。
    私は人と接するのが、好きなのか?嫌いなのか?
    私は自分の意見を主張できる人なのか?主張できない人なのか?
    自分でも判りません。
    私は今アイデンティティクライシスが起こっている状態です。
    乗り越えるための方法を参考にしたりして
    日記を付けて自分と向き合ってみたいと思います。

    返信する
    • べり
    • 2019年3月4日 10:30 PM

    私は他者と親密になれないという悩みがあります。
    原因はいつくもありますが、私が「アイデンティティの拡散」していることにもありそうと思いました。

    コラムで説明されているメンタライゼーション(自分と向き合う、他人と向き合うこと)は特に重要だと思うのですが、正直億劫です。できる自信がありません。でも少しづつ自分と向き合うことが必要だと強く思いました。

    返信する

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・Erikson.E,H(1950) Childhood and Society. Norton
・中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
・大野久 現代青年の充実感に関する一研究(5)日本教育心理学会総会発表論文集 26(0), 478-479, 1984
・大野久1984 現代青年の充実感に関する一研究 
・谷冬彦(2001)青年期における同一性の感覚の構造 -多次元自我同一性尺度MEISの作成- 教育心理学研究 49 265-273