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アイデンティティの意味とは?

アイデンティティ,意味,とは


アイデンティティの意味とは?①

当コラムは「アイデンティティ」をテーマに専門家が解説をしています。

全部で5コラムあります。しっかりとお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。是非お付き合いください。筆者は臨床心理士の竹元です。私は臨床心理学の大学院を卒業し、引きこもりの方の支援や、臨床心理学の研究を行っています。

みなさんはこんなことを感じることはありませんか?

・これからどう生きるか?がわからない
・自分が何をしたいか分からない
・毎日の生活にハリがない
・他の人と関わっていて息苦しい

これらの悩みにはアイデンティティの問題が関わっている可能性があります。みなさんにお役にたてるよう「アイデンティティ」について、丁寧に説明していきます。

アイデンティティの歴史

アイデンティティという言葉が初めて使われたのは1950年代です。E.H.エリクソンという心理学者でした。エリクソン自身は元々デンマークに生まれまれたユダヤ系デンマーク人でした。エリクソンの父親は誰なのか?母であるカーラは秘密にしていたようです。

エリクソンは戦火の影響もあり、最終的にはアメリカに生活の拠点を移しています。そのような激動の時代を生きる中で、「自分が何者か?」という問いを探し続ける人生でした。

エリクソンは、人生を8つの段階に分類しました。そしてその中で5番目の段階を青年期と呼んでいます。そして青年期に乗り越えなければならない課題として、アイデンティティという言葉をはじめて創ったのです。

アイデンティティとは?

エリクソンはアイデンティティの定義として、「内的な不変性と連続性を維持する各個人の能力が他者に対する自己の意味の不変性と連続性に合致する経験から生まれた自信」としています。

わけがわからないですよね(^^;

要約すると

「私は他の誰でもない、たった1人の自分」

「今までの私もこれからの私もずっと私」

「私の本当の姿と、相手がイメージする私の姿が一致している」

という感覚を意味します。

 

アイデンティティ拡散とは

アイデンティティの確立の対立概念として「アイデンティティ拡散」という言葉があります。アイデンティティ拡散とは、アイデンティティ確立と真逆の状態です。すなわち、

・自分はどこにでもいる人間で、存在意義がない

・過去の自分を捨てたい

・偽りの自分を演じている

こんな感覚が強い方はアイデンティティが拡散している可能性が高いと言えます。

アイデンティティクライシスとは

特にアイデンティティが拡散しやすい状態として「アイデンティティ・クライシス」という言葉を使うことおがありいます。アイデンティティ拡散するきっかけとなる出来事を意味します。例えば、転校したとき、好きな人が出来た時、受検などに失敗した時、就職活動をするときなどに起こりやすいと言えます。

アイデンティティクライシスにおいては、自分自身の置かれている環境が変化し、これまでのアイデンティティの持ち方ではいられなくなることや、自分の中で今まで意識しなかったことを考えるようになり、自身のこれまでのアイデンティティに疑問を持つなど、自分自身の中で揺らぎが起こるのです。

アイデンティティ拡散による起こる問題

ここまでアイデンティティの拡散は、アイデンティティクライシスによって起こりやすいことを解説しました。ではアイデンティティを確立できないとどんな問題が起こるのでしょうか?大まかに3点ご紹介します。

1 毎日が何となく充実しない
大野(1984)は「充実感」とEriksonのアイデンティティは関連があることを実証しました。アイデンティティを確立している人は「充実感」を持っているという研究結果があります。アイデンティティが確立できている時は「毎日を健康的に主体的に生きている」感覚を得やすくなるのですね。

逆に拡散しているときは「毎日が楽しくない・・」「何となくむなしい・・」といった感覚になりやすくなります。例えば、同じ仕事をしていても、「これが私のやるべき仕事だ!」と考えている場合と、「これは本当は私のやるべき仕事ではない」と感じている場合は、充実感に大きな違いが出てくるでしょう。

いま生活に充実感がない場合は、アイデンティティが拡散している可能性が高いと言えます。

2 他者と親密になれない
アイデンティティが確立できない場合は、自分に自信を持つことができず他者との親密な関係から尻込みしてしまうといわれます。それは自分以外の他者と関わると、自分が飲み込まれてしまうような感覚を抱くからです。

谷ら(1997)の研究では、対人恐怖に似た性格傾向である「対人恐怖性心性」とアイデンティティとの関連について大学生279名を対象にした質問紙調査を行っています。そこでは、アイデンティティの確立と対人恐怖傾向が、-.506の負の相関があるという結果が出ています。簡単に言えば、対人恐怖の傾向がある方は、同時にアイデンティティ確立できていないと言えます。

3 ひきこもりにつながることも

アイデンティティの拡散状態が長く続くと「学校や仕事に行きたくない」「社会に出て働きたくない」
「誰ともしゃべらずひきこもっていたい」などのかなり大変な状態になることもあります。アイデンティティの拡散は誰でも起こることですが、病的になってしまうこともあるので、正しく対処する必要があるのです。

 

アイデンティティ確立のための3つの解決策

アイデンティティを持てない原因と解決策には、大きく分けて3つあります。

① 自分へのメンタライゼ―ションを行う
アイデンティティの確立には、自分自身の気持ちや価値観を発見しなくてはなりません。皆さんは朝起きて身だしなみを整えるときにはどうしていますか?ほとんどの人が鏡の前に立って身だしなみを整えると思います。鏡をみると自分自身がどんな人間かわかり、対処しやすくなりますね。しかし、私たちは自分の価値観や考え方はなかなか認識できません。

例えば、人と関わりを持ち始めると、何となく「疲れるな・・」「自分がないな・・・」と感じたことはありませんか?実はこれは自分のことをあまり知らないからなのです。

自分について知らないと、人との関わりの中であなた自身が無理をしてしまいます。そこで大事になってくるのは、あなた自身についてもう1度見つめ直しバランスを戻すことです。自分自身の価値観や考え方を洞察する作業をメンタライゼーションと言います。

コラム②では、自分への関心を高める自分へのメンタライゼーションの考え方をご紹介します。

② 自分の人生を振り返る
アイデンティティが持てていない状態とは、あなたの頭の中が「モヤモヤ」している状態人生のできごとを自分なりに整理できていない状態です。モヤモヤを解消してくれる方法として、マスターナラティブと言われるものがあります。

マスターナラティブとは、「モヤモヤ」がなくなっている状態を表す言葉です。自分自身の人生の経験それぞれに対して、自分なりの意味付けができた各個人の物語のことです。このマスターナラティブが持てていると、人生に自分なりの生きがいを見出し、充実感をもつことができます。

自分を知っていくプロセスの中で、「モヤモヤ」を整理するという作業がアイデンティティ確立に近づいていくのです。このアイデンティティコラムを使って、あなた自身のこれまでの人生の体験を整理していきましょう。

ライフチャートを使った整理方法コラム③でお話していきます。

③ 相手へのメンタライゼーションを行う
アイデンティティというと自分自身のことについて想像する人が多いのではないでしょうか?しかし意外かもしれませんが、相手のことをあまり見ていないことが多いのです。

アイデンティティの要素には周りとの「関係性」が第1に重要であるというお話をしてきました。前回鏡の話にもありましたが、私たちはいろんな相手と関わっていくことにより、自分の姿というものが浮かび上がってきます。ということは、相手のことに関心を向けて、相手と積極的に「関係性」を持たない以上は自分のことを知ることができないのです。

さらに言うと、相手のことを知っていくと、「こういう人になりたいなぁ・・」と、私たち自身にとってのモデルとなることがあります。この体験がアイデンティティを作っていくのに大きな助けとなることがあります。つまり相手に視点を向け、よく見てみることが大切なのです。

相手へのメンタライゼーションについてコラム④でお話します。

アイデンティティの確立を目指そう

アイデンティティとはどのような事か?アイデンティティの意味とは?などを交えながら、アイデンティティが確立しないことでの問題と原因についてご説明しました。原因は「①自分のことをあまり知らない」「②人生のできごとを自分なりに整理できていない」「③相手のことをあまり見ていない」の3つでしたね。

次回からアイデンティティが確立できない原因の解決策について、具体的にお話していきます。

コラム2 アイデンティティ・クライシスに対処する
コラム3 アイデンティティ確立。その方法とは?
コラム4 アイデンティティ確立に欠かせない要素とは
コラム5 アイデンティティ・クライシスの対処法を知ろう

次回のアイデンティティコラムは、「自分のことをあまり知らない」の解決策をご紹介します。次回もお楽しみに!

★アイデンティティの意味や要素とは?確認しよう
★2つのデメリットとは?アイデンティティを知ろう
★アイデンティティとは「関係性」と「主体性」

*参考文献
・Erikson.E,H(1950) Childhood and Society. Norton
・鑪幹八郎(1990) アイデンティティの心理学 講談社現代新書
・大野久 現代青年の充実感に関する一研究(5)日本教育心理学会総会発表論文集 26(0), 478-479, 1984
・大野久1984 現代青年の充実感に関する一研究 

・谷冬彦(1997)青年期における自我同一性と対人恐怖的心性 教育心理学研究 45,245-262
・一現代青年の心情モデルにっいての検討 教育心理学研究32,100− 109.
・伊藤亮・村瀬聡美・吉住隆弘・村上隆(2008)
・現代青年における“ふれ合い恐怖的心性” と抑うつおよび自我同一性との関連
・パーソナリティ研究 第16 巻第3 号396−405
・杉村和美(2003)  関係性の観点から見た女子青年のアイデンティティ探求 : 2年間の縦断研究   名古屋大学博士論文



悩みを持っている方は一緒に考えていきましょう。