エゴグラム診断を公認心理師が解説しました,性格診断,交流分析の基礎から
皆さんこんにちは、心理カウンセラーの川島です。今回は「エゴグラム性格分析」について詳しく解説させていただきます。エゴグラムを理解することで、個人の心の問題や人間関係の悩みを改善しやすくなります。
将来カウンセラーとして活躍したいと考えている方にも、とても勉強になる内容だと思います。ぜひ最後までお読みください。
目次は以下の通りです。
エゴグラムとは?歴史・提唱者
5つの自我状態の詳しい解説
エゴグラムテストの種類
パターン分析でチェック
結果の読み方
エゴグラムの改善方法
エゴグラムの研究
まとめ
なかなか性格をしっかりと自分で分析して、長所・短所を把握し、「こういったところを改善した方がいいのではないか」「こういったところに問題があるのではないか」ということを自己分析する機会というのは少ないと思います。この記事を通じて、少しでも皆さんの心の健康や人間関係の豊かさに役立てていただけると嬉しいです。
エゴグラムとは?歴史・提唱者
エリック・バーンと交流分析の誕生
エゴグラムが生まれる前の時代から説明していきましょう。1950年代に、当時40歳前後だったエリック・バーンという精神科医がいました。バーンは最初、フロイトの流れを組む精神分析療法を深く学んでいました。

画像出典:https://mastercoachitalia.com/eric-berne/
精神分析療法は、過去にあったネガティブな問題を分析して心の問題を解決していく方法で、当時の心理療法の主流でした。多くの専門家が精神分析を勉強していたため、バーンも精神分析に深くのめり込んでいました。
精神分析は非常に奥が深く、人間の無意識の世界を探求する革新的な手法でした。しかし、実際に臨床現場で使っていくうちに、バーンはいくつかの課題を感じるようになっていきます。当時の心理療法界では、精神分析こそが最も優れた治療法だと考えられていましたが、バーンは違う視点を持ち始めました。
精神分析療法の2つの問題点
しかし、精神分析を勉強していくうちに、バーンは2つの大きな問題があることを感じるようになりました。
1つ目は「複雑すぎる」という点です。精神分析はあまりにも難しく、とても一般の人が使いこなせるものではありませんでした。専門用語が多く、理論も非常に複雑で、患者さん自身が自分の状態を理解することが困難でした。
2つ目の問題は「時間がかかりすぎる」ことでした。精神分析は数年かけて進めていくのが普通で、治療期間が非常に長くなってしまうという問題がありました。
バーンは、
もっと多くの人が、もっと簡単に、もっと短期間で心の問題を解決できる方法があるはずだ
と考えるようになりました。この発想が、後の交流分析、そしてエゴグラムの開発につながっていくのです。
1960年代 交流分析開発
そこで1960年代になると、バーンは「交流分析」という心理療法を開発しました。
交流分析の最大の特徴は、専門用語を極力使わず、日常的な言葉で心の仕組みを説明することでした。この理論は、個人の心の構造を以下の3つに分類して、心理的な問題を明らかにしていく手法です。
P(ペアレント:親の心)
A(アダルト:大人の心)
C(チャイルド:子供の心)
「親の心」「大人の心」「子供の心」という表現は、誰にでも直感的に理解できるものでした。この理論は、患者自身が理解を深め、主体的に心理的な成長を促すことを目指す「参加型の心理療法」として注目を集めました。
従来の精神分析では、治療者が患者を分析するという一方向的な関係でしたが、交流分析では患者自身が自分を理解し、変化させていく主体となります。
1970年代 エゴグラム開発
1970年代になると、バーンの弟子であるデュセイという医師が、交流分析の3つの自我状態をさらに発展させて、5つの自我状態で分析していく「エゴグラム」という手法を開発しました。

画像出典:https://www.legacy.com/us/obituaries/
sfgate/name/john-dusay-obituary?id=58466881
デュセイは、3つの自我状態だけでは十分に人間の複雑さを表現できないと考えました。
特に、P(ペアレント)には厳格な父性的側面と温かい母性的側面があり、C(チャイルド)には自由な側面と適応的な側面があることに注目しました。当初のエゴグラムは、直感的に5つの自我状態をグラフに表すような方法でした。治療者が患者との面談を通じて、それぞれの自我状態の強さを主観的に評価し、グラフ化していました。
この方法は画期的でしたが、客観性に欠けるという課題がありました。治療者によって評価が変わってしまう可能性があり、科学的な研究を行うには不十分でした。
1979年 質問紙法の開発
1979年になると、ロバート・ハイヤーという心理学者によって、客観的なデータに基づいてエゴグラムを作成するための質問手法が開発されました。これは「質問紙法」と呼ばれ、現在でも広く使われている方法の基礎となっています。
画像出典:wikipedia
ハイヤーは、各自我状態を測るための具体的な質問項目を作成しました。
例えば、
「時間を守ることは大切だと思う」(CP)
「困っている人を見ると放っておけない」(NP)
「物事を論理的に考える方だ」(A)
「楽しいことを考えるのが好きだ」(FC)
「人に合わせることが多い」(AC)
といった質問です。
これにより、直感的にグラフを書く方法から、質問に答えることで数値化する方法が可能になりました。質問手法によって5つの自我状態が数値化されることで、客観的で再現性の高いエゴグラムを作ることができるようになりました。これにより、エゴグラムは科学的な研究の対象としても扱えるようになったのです。
日本での発展
日本では1977年にエゴグラムが紹介されました。
日本版のTEG(東大式エゴグラム)
1980年代には東京大学の医学部診療内科の研究チームによって、日本版のTEG(東大式エゴグラム)という心理テストが開発されました。TEGは日本人の価値観を考慮して作られており、現在でも日本で最も信頼性の高いエゴグラムテストの一つとされています。
医療機関への発展
その後、エゴグラムは医療機関で使われることが多く、体の病気や心の病気と性格分析を組み合わせる形で研究が進められました。特に心身症や神経症、うつ病などの患者さんのエゴグラムを分析することで、性格特性と病気の関連性が明らかになってきました。
教育やビジネスへの活用
現在では医療の世界を超えて、教育現場やビジネス現場でも広く活用されるようになっています。学校では生徒指導や進路指導に、企業では人材育成や組織開発に活用されています。カウンセリングの現場でも、クライアントの理解を深めるツールとして重宝されています。
5つの自我状態の詳しい解説
基本的な3つの心の構造
エゴグラムでは、私たちの心の構造を基本的に3つに分けて考えます。

P(ペアレント:親の心)
A(アダルト:大人の心)
C(チャイルド:子供の心)
の3つです。
私たちの心には、親から受け継いだ価値観や道徳観を表す「親の心」、現実的で合理的に判断する「大人の心」、そして自由で感情的な「子供の心」が共存しています。
これらは年齢に関係なく、すべての人の心の中に存在しています。重要なのは、どれか一つが良くて他が悪いということではなく、状況に応じて適切な自我状態を使い分けることです。
これらがさらに細分化されて、全部で5つの自我状態になります。それぞれ詳しくみていきましょう。
CP(クリティカルペアレント)の特徴

CPは「厳格な親の心」を表します。真面目さ、完璧主義的傾向、頑固さなどが特徴で、
ルールをちゃんと守りましょう
道徳的でありましょう
誠実でありましょう
という感覚がこのCPに当たります。
CPが高い人の長所
責任感が非常に強く、目標意識が高いことが挙げられます。規則正しい生活を送り、約束を必ず守り、仕事でもきっちりとした成果を出すことができます。リーダーシップを発揮する場面でも、このCPの力が重要になります。特に、正確性や継続性が求められる仕事に就いている方は、このCPの高さを大いに活かすことができます。
注意点
自分や他人に厳しくなりやすく、完璧を求めるあまりストレスを溜めやすい傾向があります。また、柔軟性に欠けるため、頑固と見られやすく、他人を批判しやすくなってしまうこともあります。「〜すべきだ」「〜ねばならない」という思考パターンが強くなりすぎると、自分も周りも窮屈に感じてしまうことがあります。
CPが低すぎる場合
寛容で自由な発想ができる反面、規律が緩くなりがちで、責任感に欠けることがあります。約束を忘れやすかったり、時間にルーズになったりする傾向が見られることもあります。
NP(ナチュラルペアレント)の特徴

NPは「母性的な親の心」を表します。お母さんが子供を温かく抱っこする感覚や、思いやりを持って接する気持ち、共感的に接する気持ちがNPに当たります。これは性別に関係なく、すべての人が持っている
世話をしたい
助けたい
励ましたい
という気持ちです。
NPが高い人の長所
いやりが深く、共感力が高いことです。困っている人を見ると放っておけず、自然と手を差し伸べることができます。人間関係では温かい雰囲気を作り出し、周りの人から信頼され、相談されることが多いでしょう。チームワークを重視する職場や、人と接する仕事では、このNPの力が大いに発揮されます。
注意点
しかし、NPが高すぎると、お節介になったり、過保護になりやすい傾向があります。相手のためを思ってやったことが、かえって相手の自立を妨げてしまうこともあります。また、他人のことを心配しすぎて、自分のことがおろそかになってしまうこともあります。
NPが低い場合
周りに流されにくく、人間関係の影響を受けづらいという特徴があります。客観的な判断ができる反面、冷たい印象を与えやすく、人との距離感を縮めるのが苦手な場合があります。
A(アダルト)の特徴

Aは「大人の心」を表し、論理性や理性、冷静さが特徴です。
まずは調べてみよう…
メリットデメリットは…
この主張に根拠はあるか…
など分析的に考え、理性的・合理的に判断していきます。感情に左右されることなく、客観的な事実に基づいて物事を判断する能力がAです。
Aが高い人の長所
論理的思考が得意で、問題解決能力に優れています。データを分析したり、複雑な状況を整理したりすることが得意で、冷静な判断ができます。研究職や技術職、管理職などでは、このAの力が非常に重要になります。また、ストレスの多い状況でも感情的にならず、建設的な解決策を見つけることができます。
注意点
ただし、Aが高すぎると、理屈っぽく見られがちで、人間味に欠けると思われることがあります。感情を軽視しがちになり、人の気持ちを理解することが苦手になる場合もあります。「正論だけど、なんだか冷たい人」という印象を与えてしまうことがあります。
Aが低い場合
感情が豊かで直感が鋭い反面、衝動的な行動を取りやすく、感情的になりやすい傾向があります。論理的な思考よりも、感覚や直感を重視するため、時として客観性に欠ける判断をしてしまうことがあります。
FC(フリーチャイルド)の特徴

FCは「自由な子供の心」を表します。想像力や発想の豊かさ、ユーモア、子供がドロンコになりながら遊んでいるような自由で素直な心がFCです。年齢に関係なく、私たちの心の中にある
楽しみたい
自由でいたい
やってみたい
という気持ちがFCです。
FCが高い人の長所
造性があり、新しいアイデアを生み出すことが得意です。楽しむことができ、周りの人も楽しい気持ちにさせることができます。ユーモアがあり、場の雰囲気を明るくすることができます。芸術的な分野や、企画・アイデアを重視する仕事では、このFCの力が大きな強みになります。また、FCが高い人は、ストレスを上手に発散することができ、精神的な健康を保ちやすい傾向があります。好奇心旺盛で、新しいことに挑戦することを恐れません。
注意点
しかし、FCが高すぎると、時として無責任になったり、自己中心的になりがちです。楽しいことばかりを追求して、義務や責任を忘れてしまうことがあります。また、TPO(時・場所・場面)をわきまえない行動を取ってしまうこともあります。
FCが低い場合
落ち着きがあって規律を守ることができますが、楽しむことが苦手で、人生に対する満足感や幸福感が低くなりがちです。新しいことへの挑戦を避けたり、自分の感情を表現することが苦手になったりすることがあります。
AC(アダプテッドチャイルド)の特徴

ACは「従順な子供の心」を表します。協調性や自己犠牲的な気持ち、周りの顔色を伺う気持ちがACに当たります。周りに対して具体的にお手伝いをしたり、他の人の気持ちを考えすぎてしまう傾向があります。
みんなと仲良くしたい
嫌われたくない
仲間外れにされたくない
という気持ちがACです。
ACが高い人の長所
礼儀正しく、我慢強いことです。協調性があり、チームプレイが得意で、周りとの調和を大切にします。相手の立場に立って考えることができ、気配りができます。サービス業や、チームワークが重視される職場では、このACの力が重要になります。
注意点
しかし、ACが高すぎると、自己主張が苦手になり、自分の意見を言えなくなってしまいます。また、周りの期待に応えようとするあまり、ストレスを溜めやすく、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすことがあります。「いい人」と思われたいがために、自分を犠牲にしてしまうことが多くなります。研究でも、ACが高すぎると抑うつ感が高くなりやすいことが示されています。常に周りの目を気にして生活することで、精神的な疲労が蓄積しやすくなるのです。
ACが低い場合
自己表現が豊かで、しっかりと主張できる反面、協調性が少し不足しがちで、チームプレイが苦手になることがあります。自分の意見を通そうとするあまり、周りとの摩擦を生みやすくなることもあります。
エゴグラムテストの種類
現在、エゴグラムには主に3つの代表的なテストがあります。それぞれに特徴があり、目的に応じて選択することができます。
東大式のTEG(東大式エゴグラム)

1つ目は東大式のTEG(東大式エゴグラム)で、これは非常に伝統的で信頼性の高いものです。学術的な研究でも多く使用されており、医療現場でも標準的に使われています。公認心理師や臨床心理士に依頼して実施してもらうか、精神科などの医療機関で受けることができ、保険適用される場合もあります。
TEGの特徴は、長年の研究蓄積があり、データの信頼性が非常に高いことです。日本人の標準的なデータも豊富にあるため、自分の結果を客観的に評価することができます。ただし、専門家による実施が基本となるため、気軽に受けることは難しい面があります。
厚生労働省セルフチェック版

2つ目は、厚生労働省が作成したセルフチェック版で、手軽に試すことができます。インターネット上で無料で利用でき、簡単な質問に答えるだけで基本的なエゴグラムを知ることができます。ただし、詳細な解釈や改善方法については限定的です。
ダイコミュエゴグラム診断

3つ目は手前味噌ですが、ダイコミュで開発したエゴグラム診断です。くわしい診断結果だけでなく、具体的な改善方法についても解説しています。現状を知るだけでなく、「どのように改善していけばよいか」まで含めてサポートできるため、実用性が高いのが特徴です。
以下のリンクから各診断を受けることができます。自己理解にお役立てください。
結果の読み方
グラフから読み取ろう
エゴグラムを実施すると、CP、NP、A、FC、ACの5つの項目について、それぞれ高い・低い・中程度という結果が出てきます。

通常、グラフの形で表示され、自分の特徴が視覚的に分かりやすく表されます。オレンジの部分が自分の特徴、緑の部分が全国平均といった形で表示されることが多いです。
結果を3つに分類
これらを「高い・低い・中レベル」の3つに分類して、自分の特徴を把握していくのが基本です。

例えば、CPが高い場合は「責任感が強く、規則正しい」という長所がある一方で、「頑固で融通が利かない」という短所もある、といった具合に解釈していきます。
結果に優劣はない
重要なのは、どの自我状態が高いから良い、低いから悪いということではないということです。自分の生きている環境や、なりたい自分の理想と照らし合わせながら、必要に応じて調整していくツールとして活用することが大切です。
例えば、研究者であればAが高い方が適しているかもしれませんし、保育士であればNPが高い方が適しているかもしれません。営業職であればFCが高い方が良いかもしれませんし、経理職であればCPが高い方が良いかもしれません。つまり、職業や環境、個人の価値観によって「理想的なエゴグラム」は変わってくるのです
パターン分析でチェック
パターン分析とは
パターン分析は、5つの自我状態の個別の特徴を見るのではなく、全体としての形を見て評価していく方法です。エゴグラムのグラフの形から、その人の全体的な性格傾向を読み取ろうとするアプローチです。
ただし、学術的な根拠はまだ発展途上の部分もあるため、基本的には5つの自我状態の個別分析を重視し、パターン分析は補足として活用することをお勧めします。パターン分析はあくまでも参考程度に留め、詳細な自己理解は個別の自我状態分析を中心に行うことが大切です。
パターン分析では、主に以下のような形が注目されます。
・平坦型(高・中・低)
・N型
・逆N型
・W型
・V型
・C優位型
・P優位型
・逆U型
などです。それぞれに特徴的な性格傾向があると考えられています。
平坦高型の特徴

平坦高型は、全体的に数値が高い状態で、エネルギッシュで目立つタイプの方が多く、能力が高く、ちょっとのことではへこたれない特徴があります。基本的には数字が高ければ高いほど元気いっぱいの方が多く、治療者の立場から見ると「この方は大丈夫だろう」という第一印象を持ちやすいタイプです。
しかし、自我状態が色々と反応しすぎてしまうため、調子に乗りやすくなったり、気分屋になりやすいという面もあります。エネルギーが高い分、感情の起伏も激しくなりがちで、周りの人がついていけないと感じることもあるかもしれません。
平坦中型の特徴

平坦中型は、バランスが非常に取れていて柔軟で、何事も中庸に考えていきます。ある意味、お坊さんのような感覚で、静かに穏やかに、ほどほどがしっかりとできるというイメージです。安定していて予測しやすい行動を取るため、周りからは信頼されやすいタイプです。
一方で中庸すぎて、何事からもちょっと埋もれやすいという特徴もあり、目立ちにくく、時として曖昧な印象を与えることがあります。「どちらでもない」「どちらでもない」という形になりやすく、議論から逃げているような印象を持たれることもあります。リーダーシップを発揮する場面では、もう少し強い個性が求められることもあるでしょう。
平坦低型の特徴

平坦低型は、謙虚で控えめな方が多く、どちらかというと穏やかな印象を持たれる方が多いです。目立つことを好まず、縁の下の力持ち的な役割を果たすことが多いタイプです。
しかし、注意点として、気力が低下している傾向がある方が多いです。基本的に上の方の数値が高いと元気な方が多いのですが、全体的に数値が低い方は、気力が低下していたり、抑うつ感が出やすいという特徴があります。専門家の視点では、例えば5点以下が続いてしまうと、精神的な不調の可能性も考慮する必要があります。
C優位型の特徴

C優位型(FCとACが高い)は、自由奔放で純粋、裏表がない特徴があり、分かりやすく、他人を警戒させないという特徴があります。周りから結構可愛がられやすく、人気者になる特徴があります。子供のような無邪気さがあり、一緒にいると楽しい気持ちになれるタイプです。
しかし、ちょっと子供っぽいところがあるため、公的な場所に行くとTPOをわきまえないという印象を与えることがあります。フォーマルな場面や重要な会議などでは、もう少し大人らしい振る舞いが求められることもあるでしょう。そのため、しっかりした場所になかなか呼ばれないということもあるかもしれません。
P優位型の特徴

P優位型は、大人の自我状態(CPとNP)が非常に強い状態で、大人な対応ができたり、良い上司になれたり、親としても結構成熟していたりします。面倒見がよく、親方肌で、周りから頼りにされることが多いタイプです。責任感が強く、チームをまとめる能力に長けています。
ただ、ちょっと大人ぶって、何事も大人として対応してしまうため、壁を感じさせてしまったり、素直に遊ぶのが苦手だったりします。常に「大人らしく」振る舞おうとするあまり、自分自身も楽しめなくなってしまうことがあります。
N型の特徴
N型(NPとACが高い)は、「大和撫子タイプ」とも呼ばれ、協調性と思いやりがあって、人間関係がかなり良好にできるタイプです。パートナーにするには非常に癒してくれる存在で、家庭的で温かい雰囲気を作り出すことができます。相手の気持ちを理解し、支えることが得意です。
一方で、ACが結構高くなりがちで、FCがやや低くなりがちになるため、ストレスを溜めやすかったり、理性や冷静さを欠くケースが多く、直感的になりすぎて感情的に少し落ち込みやすいという特徴があります。相手のことを思いやるあまり、自分のことを後回しにしてしまい、精神的に疲れてしまうことがあります。
逆N型の特徴

逆N型(CPとAが高い)は、ルールに厳格で職人肌、仕事を真面目にするタイプです。伝統を守ったり、今までの歴史を大切にしたりします。技術職や研究職、職人的な仕事に向いており、高い専門性を発揮することができます。
しかし、CPとAが高いため、ちょっと気難しい面があったり、合理的に考えすぎてしまって情を軽視してしまうため、世界観が殺伐としやすいという特徴があります。神経質で、精神的に少し病みやすい傾向もあります。人間関係では、論理を重視するあまり、相手の感情を軽視してしまうことがあります。
台形型の特徴

台形型は穏やかな気質で、ルールに囚われず、家族を大切にするという特徴があります。型にはまらない自由な発想ができ、創造性があります。家庭的で、身近な人との関係を大切にするタイプです。
一方で、CPがちょっと低めなので、ダラダラしやすく、ルールに厳格な場面では適応が難しいところがあります。ACが低い分、社会のいろんなところで適応するのが難しい面があるため、身内ぐらいでしたら穏やかにできるのですが、社会的な適応が若干難しいと言われています。とにかく優しくて穏やかなのですが、社会では荒波に揉まれるのがちょっと苦手という特徴があります。
U型の特徴

U型(CPとACが非常に高い)は、従順で義理人情を重んじるところがあります。武士のような感じで、昔のお殿様に仕える武士のような精神性があり、非常にストイックです。忠実で、与えられた役割を確実に果たすことができます。
一方で、CPが非常に高いという特徴があるため、固くなりやすく、Aが低い分、自分で考えるのが苦手という面があります。人から言われたことはしっかり守る一方で、自分で何かやるのが苦手だという特徴があります。指示待ちになりやすく、自主性に欠ける面があるかもしれません。
W型の特徴

W型(CPとACが高く、FCが低い)は、究極の真面目タイプと言われます。何事も哲学的に深く洞察をして、すごく自分の考えをしっかりと持ち、分析的で、研究者や哲学者になる方も一部います。深く考える能力に長けており、独創的な発想ができることもあります。
一方で、ちょっと考えすぎてしまい、迷路に迷い込んでしまって、悩み苦しむ型とも言われています。後で紹介する研究でも、精神疾患の方がこのW型は比較的多いと言われています。天才である一方で、ちょっと考えすぎてしまって辛くなってしまうというのがW型の特徴です。
エゴグラムの改善方法
今の状態で幸せなら問題なし
エゴグラムを取った後は、まず自分の現在の状況を振り返ってみましょう。現時点で十分幸せで、人間関係もうまくいっていて、穏やかに生活できているなら、特に変化させる必要はありません。それがあなたのエゴグラムの「正解」の可能性が高いです。
一方で、心が疲れ気味だったり、人間関係がいつもうまくいかないなどの問題がある場合は、どこかの自我状態を調整することで改善できるかもしれません。
項目ごとの改善方法
以下の表はそれぞれの項目を上げる・下げるという目的ごとに改善方法をまとめたものです。

例えば、CPを上げたい場合は、目標を紙に書く、やることリストを作る、タスク管理アプリを使う、毎日決まった時間に起きる、約束の時間を必ず守るなどが有効です。小さなことから始めて、習慣化していくことが大切です。
逆にCPを下げたい場合は、「〜すべき」という思考を控え、「なるべく〜しよう」「できれば〜したい」といった緩やかな言葉を使うことが大切です。完璧主義的な考え方を和らげ、曖昧さに対する耐性を高めることで、ストレスを軽減できます。
上記の表にもとづいて、それぞれの項目に合った改善方法を実施していきましょう。
目標設定のコツ
例えば、逆N型で人間関係が苦しい場合は、「もう少しNPを増やしてみよう」と目標立てていくとよいでしょう。目標を立てる際は、3〜4ヶ月の長期目標ではなく、1ヶ月程度の短期で、3つ程度の点数を増やしていく、あるいは減らしていくのが現実的です。
以下の図のNPのように変化していくのが理想です。

人間は長期目標だと途中で諦めてしまいがちですが、短期目標なら継続しやすく、成果も実感しやすいからです。まずは1か月ほどで改善策を実行して、再度診断してみましょう。
エゴグラムの研究
エゴグラムとビッグファイブ
まず1つ目が、エゴグラムとビッグファイブの関係について解説していきたいと思います。
ビッグファイブとは 人間の性格を以下の5つの基本的な次元で測定する手法です。
外向性(Extraversion)
社交性、積極性、エネルギッシュさの度合い。高いと人付き合いが好きで活発、低いと内向的で静か
・
協調性(Agreeableness)
他者への思いやりや協力的態度。高いと親切で信頼しやすく、低いと競争的で疑い深い
・
勤勉性(Conscientiousness)
責任感や自己統制力。高いと計画的で責任感が強く、低いと衝動的でだらしない
・
情緒安定性(Emotional Stability)
感情の安定度やストレス耐性。高いと冷静で動じにくく、低いと不安になりやすく感情的
・
開放性(Openness)
新しい経験への開放度や創造性。高いと好奇心旺盛で芸術的、低いと伝統的で実用的
水野(2009)が行った研究で、看護学生233名に対して実施されました。以下は5つの自我状態と、ビッグファイブと言われる性格の指標の因果関係について表した図です。

図の見方としては、例えばNP→外向性.361と書いてありますが、これはNPが高いほど外向性が高くなっていくという解釈になります。
実はこのビッグファイブとの関連の研究は多くあります。例えば、柏木(1999)の大学生250名に対して行われた研究、藤島ら(2005)の1100名前後の学生に行われた大規模な研究もあります。この2つの研究いずれも相関関係を表したものです。

実はこれ結構解釈が難しくて、意見が割れています。
例えばCPと外向性の関係を見ていきますと、
水野(2009)
⇒外向性に影響なし
・
柏木(1999)
⇒.24
CPが高いほど外向性が低くなる
・
藤島ら(2005)
⇒.43
CPが高いほど外向性が高まる
という結構矛盾した結果になっています。
一方で、数字が大体同じような傾向を示している部分もあります。
例えば、CP、ACと情緒安定性の関係を見ていきますと、
水野(2009)
CP⇒-.329
AC⇒-.495
CP・ACが高いほど情緒安定性が低くなる
・
柏木(1999)
CP⇒-.63
AC⇒-.62
CP・ACが高いほど情緒安定性が低くなる
・
藤島ら(2005)
CP⇒影響なし
AC⇒-.54
ACが高いほど情緒安定性が低くなる
上記のように全般的にCP、ACが高くなると情緒不安定性が低くなる傾向が見て取れます。
また、Aと開放性についての解釈は少し複雑で、それぞれ以下の結果となっています。
水野(2009)
⇒.467
Aが高いほど開放性が高まる
・
柏木(1999)
⇒.95
Aが高いほど開放性が高まる
・
藤島ら(2005)
⇒影響なし
開放性との関係でプラス0.467という結果が出ていますが、2つ目の研究では0.95という数値になっています。この0.95という数値はあまり見かけない高い相関値なので、ここまで相関が強いと逆に信頼性に疑問を感じる部分もあります。最後の研究では、開放性に対する影響は見られませんでした。
このように、研究間での一貫性がやや低いというのが現在の課題となっています。それでも、ある程度の傾向は判断できると考えられるため、これらの数値に加えて、CPやNPの臨床的な評価も含めてを以下の表に関係性をまとめてみました。

上図の詳しい解説を知りたい方は、以下を展開してみてください。
疾患別のエゴグラムパターン
岩井ら(1978)の健常者108名と患者121名を比較した研究では、基本的にはN型の形になっており、日本人らしい特徴が見られました。しかし、患者群ではACが高く、健常者群ではFCとACを比較するとACの方が低いという違いが見られました。

患者の方がACが高く、メンタルヘルスが悪くなりがちで、FCとACの角度が急であればあるほど精神的な不調になりやすいことが示されています。
・抑うつ状態
抑うつ状態の患者では、FCが非常に低くACが高いという特徴的なパターンが見られました。この患者の場合、初診時にはFCがある程度高かったものの、約1ヶ月後にはFCがより低くなってしまい、病状の悪化と連動してエゴグラムの変化が確認されています。

特に興味深いのは、身体疾患とエゴグラムの関係です。十二指腸潰瘍の患者さんでは、典型的なW型(CPとAが高い)のパターンが見られました。これは、自分に対する厳しさや完璧主義的な傾向が、ストレスとなって身体症状に現れている可能性を示唆しています。
抑うつ状態で摂食障害の患者さんでもW型が多く見られました。自分への厳しさが「もっと痩せなければならない」という強迫的な思考につながり、食事を摂ることができなくなるという悪循環を生んでいると推測されます。
十河ら(1986)の研究でも、疾患別にエゴグラムの得点が調べられています。
・全般性不安障害
全般性不安障害の患者では、共通してFCが低くACが高いという結果が出ています。

・書痙患者
書痙(人前で文字を書くと手が震える症状)の患者でも、同様にFCが低くACが高いという結果が見られました。

・過敏性腸炎患者
過敏性腸炎の患者では、典型的なW型(CPとAが高い)のパターンが見られました。これは、自分に対する厳しさや完璧主義的な傾向が、ストレスとなって身体症状に現れている可能性を示唆しています。

・摂食障害患者
摂食障害の患者でもW型が多く見られ、自分への厳しさが「もっと痩せなければならない」という強迫的な思考につながり、食事を摂ることができなくなるという悪循環を生んでいると推測されます。

これらの研究結果は、心と体が密接に連動していることを示しており、性格特性が身体的な健康にも影響を与えることを明確に示しています。
メンタルヘルスとの関係
吉内ら(1995)の523名を対象とした研究では、Aが高い人ほど、身体的・精神的症状が出にくく、気分が安定しやすく、抑うつ感を予防する効果があることが分かっています。
この研究では、
CMI(身体的・精神的症状を測る尺度)
POMS(気分の悪さを測る指標)
SDS(抑うつ感尺度)
という3つの指標を使って分析が行われました。
その結果が以下のグラフです。
まずは身体的・精神的症状から見ていきましょう。

CPとACが高ければ高いほど、これらの症状が出やすくなる一方で、Aが高いとこれらの症状を予防する効果があることがわかりました。次に気分状態の悪さを見ていきましょう。

こちらも同じようにCP・ACが高いと、気分状態が悪くなっていることがわかります。一方でAやNPが高い方は気分状態の悪さが低くなっていることがわかります。最後に抑うつ感の指標を見ていきましょう。

先ほどの2つの結果と同じように、CP・ACが高い方は抑うつ感も高くなっています。また、AやNPが高い方は抑うつ感が少なくなっていることがわかります。
つまり、物事を合理的・理性的に考える能力は、心の健康にとって非常に重要だということです。感情に振り回されず、客観的に状況を分析し、建設的な解決策を見つける能力が、ストレス耐性やメンタルヘルスの維持に大きく貢献しているのです。
韓国でのアルコール依存症研究
韓国で行われた興味深い研究では、エゴグラムの全体的なエネルギーレベルとアルコール依存の関係が調べられました。この研究では、個別の自我状態ではなく、全体として高いか低いかという観点から分析が行われました。

結果として、エゴグラム全体の点数が低い人ほど、ストレスがあると飲酒動機が高まりやすくことがわかりました。一方で点数が高い人は増えるものの、それほど飲酒動機が分かりました。
さらに、この飲酒動機は抑うつ感の増加にもつながることが示されました。以下の図をご覧ください。

この結果から推測できることは、エゴグラムの全体的な点数が低い人ほど、メンタル的にレジリエンス(回復力)が低くなりがちであることです。そして、辛いことがあると歪んだ解消方法(飲酒、ギャンブルなど)に頼りやすくなり、結果的に抑うつ感が高まってしまうということです。
逆に、エゴグラム全体の数値が高い人は、ストレスがあっても健康的な方法で対処する能力が高く、精神的な安定を保ちやすいということが示されています。
エゴグラムは変化するのか
興味深いことに、エゴグラムは完全に固定されたものではなく、時期や努力によって変化することが研究で示されています。トヨタ先生らを中心とした研究では、大学生を対象に、3年生時と卒業時を比較する追跡調査が行われました。

その結果、約2年間でAが少し高くなったり、FCが高くなったりする変化が見られました。これは、就職活動や自己分析などの経験を通じて、より現実的な思考力や、自分を表現する力が身についたためだと推測されています。
また、藤原先生らの研究では、メンタルヘルスの状態によってもエゴグラムが変化することが示されています。以下の2つを比較すると、回復期には全体的にエナジーが増加する傾向があります。
・元気がない時期
・回復期
結果のグラフは以下の通りです。

具体的な数値を見ると、ディプレスステージでは12.22、11.12といった数字だったものが、インプルーブドステージでは13.44、11.61、14.75といった形で、エゴグラムの自我状態のエネルギーとして全般的に上がることが確認されています。
つまり、エゴグラムは性格分析ツールでありながら、努力や環境の変化によってある程度変えていくことができる実践的なツールだということです。これは、ビッグファイブなどの他の性格検査が主に遺伝的要因を重視するのに対し、エゴグラムがより実践的で臨床的な性格を扱っているからだと考えられます。
孤独感との関連研究
エゴグラムと孤独感の関係を調べた珍しい研究も行われています。学生200名を対象とした研究では、LSO(ロンリネススケール)という孤独感を測る尺度を使って、各自我状態との相関が調べられました。
その結果が以下の表です。

上図のように、CPと孤独感には負の相関があり、CPが高い人ほど孤独感を感じにくいことが分かりました。ルールを守ることで信頼関係を築きやすいためと考えられています。一方、NPと孤独感には正の相関がありました。
思いやりを持って接しても、期待した反応が返ってこないと感じやすく、孤独感が高まってしまうようです。ACについては意外にも孤独感と負の相関がありました。協力的な姿勢により人間関係が円滑になり、孤独感を感じにくいと考えられます。
この研究から、孤独感を防ぐには、CP(誠実さ)を適度に保ち、NP(思いやり)を過度に高くしすぎず、AC(協調性)もある程度必要だということがわかりました。
まとめ
エゴグラムは、自分の性格を客観的に分析し、心の問題や人間関係の改善に役立てることができる非常に有用なツールです。50年以上の歴史を持ち、多くの研究によってその有効性が確認されています。
重要なのは、結果に一喜一憂するのではなく、自分の特徴を理解し、必要に応じて調整していく姿勢です。どの自我状態が高いから良い、低いから悪いということではなく、自分の環境や価値観、目標に合わせて、バランスを取っていくことが大切です。
エゴグラムを通じて、皆さんの心の健康と人間関係の豊かさに少しでも貢献できれば幸いです。自己理解を深め、より良い人生を歩んでいくためのツールとして、ぜひ活用してみてください。
仕上げ動画
当コラムの仕上げとしてエゴグラムの動画を見るとより理解が深まると思います。参考にしてみてください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。
・エゴグラム診断
・個人の結果ごとのアドバイス
・自己理解の方法
・暖かい人間関係を築くコツ
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連



