認知療法の効果,コラム法のやり方
「同じ出来事なのに、人によって受け止め方がこんなに違うのはなぜだろう?」そう感じたことはありませんか?その理由を解き明かすカギが、今回ご紹介する「認知療法」にあります。
みなさんこんにちは。公認心理師の川島達史と申します。私はこちらのコミュニケーション教室を開催しています。
私たちの悩みの根本は、身に起きた出来事ではありません。解釈が、苦しみを生み出しているのです。
これは認知療法の提唱者であるアーロン・ベックの言葉です。例えば、最近ですと新型コロナウイルスの問題がありましたが、その反応は千違万別です。
すごく警戒する人、ピリピリする人、いつも通りな人、むしろチャンスと考える人、それぞれ違います。なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
認知療法を学ぶとこのような人間の感情の違いが理解しやすくなり、メンタルヘルスを向上させやすくなります。是非最後までご一読ください。
①認知療法の概要
まずはじめに認知療法の基礎的な知識を抑えていきましょう。
歴史
認知療法は、今から70年ほど前に少しずつ形になってきました。ざっくり言うと「考え方のクセを見直すと、気持ちが楽になる」というアイデアが、時代とともに磨かれてきた、というイメージです。
詳しい歴史の流れが気になる方は、以下の折り畳みを開いてみてください。読み飛ばしても大丈夫です。
認知行動療法では、エリスの論理療法を含めますが、当コラムではベックの認知療法を土台として解説していきます。論理療法に興味がある方は下記を参照ください。
認知療法の効果
認知療法は、思考の歪みを修正し、感情や行動の改善を促進します。ストレスや不安、うつ病の症状を軽減し、自己理解を深め、日常生活における問題解決能力を向上させます。
また様々な効果研究があり、科学的な研修もたくさん行われているのが特徴です。理解を深めたい方は以下の折り畳みをご参照ください。
認知療法と具体的な手法
認知療法は細かく分類すると以下のような関係になります。

②考え方を扱う
前述したように、認知療法は様々な手法がありますが、当コラムでは、ベックが開発した認知療法を土台として進めていきます。認知療法には、「考え方」が感情に影響を及ぼすという前提があります。例えば、以下の図をご覧ください。

「残業が減った」という事実に対して、「給料が少なくなる…」と考えると、元気が出てきませんね。一方で以下のように考えると、どうなるでしょうか。

「副業にチャレンジする時間が増える!もっと稼げるかも!」と考えると、やる気が出てきそうですね。このように、私たちの感情は、考え方や解釈の仕方が影響していると認知療法では想定していくのです。
③コラム法(思考記録法)
考え方を修正していく手法としては「コラム法」が代表的です。コラム法とは、ネガティブな思考や非現実的な考え方を修正していく方法で、正式名称は「認知再構成法」といいます。英語では「Thought Record(思考記録法)」とも呼ばれ、海外文献ではこちらの名称の方が一般的です。具体的には以下の7つのステップでワークシートを使いながら進めていきます。

表(コラム)にして書くため、コラム法と呼ばれています。コラム法のワークシートは支援者によってたくさんの種類があります。以下複数の種類をダウンロードできるようにしてあります。ご自身に合うシートを使用してみてください。
ここからはコラム法のやり方について、事例を用いながら詳しく解説していきます。
①出来事を書く
・明日20人の前でスピーチする
・明日は社長も出席する
・部長から「しっかりやれよ」と言われた
*記入のポイント
不安な気持ちが思い浮かんだシュチエーションを具体的に書きましょう。あくまで客観的な状況を書いていくのがコツです。5Wを意識して記入しましょう。
②気分を書く(%)
・緊張(70%)
・恐怖(40%)
・不安(60%)
*記入のポイント
感情の強さを0~100%の数値で書き込みましょう。感覚的な数値でOKです。
③自動思考を書く
自動思考とは、「出来事に直面した時、頭の中に浮かんでくる思考やイメージ」を指します。例えば以下のような考え方が挙げられます。
「失敗したらどうしよう」
「ミスしたら評価が落ちるに違いない」
「皆から笑われるかもしれない」
*記入のポイント
①で書いた不安な出来事に直面した時、瞬時に浮かんだ思考を書きだしましょう。また自動思考には認知の歪みが関わっていることがあります。考え方が極端になりやすい方は、こちらの認知の歪み10パターンも参考にしてみてください。自動思考の背景にある「スキーマ」について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
④自動思考の根拠
・スピーチする時は高確率であがってしまう
・以前、自分の発表でクスクス笑っている人がいた
*記入のポイント
③で挙げた自動思考を裏付ける客観的な事実を書きます。主観的なことや推論は書かないように注意しましょう。
⑤自動思考の反証
・あがっていてもスピーチはできる。
・自分のことを笑っていた確証はない。
・単純に隣の人と雑談していただけかもしれない。
・緊張しつつも気持ちを伝えることはできる。
*記入のポイント
自動思考とは逆の事実を書きます。こちらも主観的にならず、冷静に客観的に事実を探していきましょう。事実だけでは反証が思いつかない場合、ソクラテス式質問法という対話の技法も参考になります。
⑥適応的思考を書く
・多少はあがっても経験を積めたからOKと考えよう。
・確かに緊張するかもしれないけど、自分の気持ちを伝えることに集中しよう。
・人前に立てるだけでも充分成長だ。
*記入のポイント
よりバランスの取れた現実的な思考を考えていきます。現実的なマイナス面を書いたあと、「しかし~」「ただ~」を活用して、プラス面を書いていくのがコツです。
⑦今の気分を書く(%)
・緊張(40%)
・恐怖(30%)
・不安(50%)
*記入のポイント
再び、気分を再確認していきます。③の自動思考が誤ったものであれば、ネガティブ感情が小さくなっているはずです。
このように7つのステップを踏んで考え方を柔らかくすることで、マイナスな感情を減らしていきます。先ほどのテンプレートに書きこむと以下のようになります。

頭の中で考え方を検証するコラム法に対して、実際に行動して予測が正しいか確かめる「行動実験」という技法もあります。詳しくはこちらのコラムで解説しています。
④適応的思考を増やす方法
認知療法が苦手な方は、「適応的思考」が不足している傾向があります。なかなか思い浮かばない…と感じる方は参考にしてみてください。以下の9つの問いかけは、対話によって新しい視点に気づく「ソクラテス式質問法」の考え方を、日常で使いやすい形にしたものです。
質問① その考えは現実的?
悩んでいるときは、悪い未来をどんどん想像してしまうものです。そこで「その考えは現実的?確率はどれくらい?」と投げかけ、客観的な数字で考えて行きます。
質問② 他人ならどう考える?
「いつも明るい〇〇さんならどう考えるかな?」など、別の人の考え方を想像してみます。いつも楽観的な人の考え方がおすすめです。思わぬ発想ができたりします。
質問③ できた(る)ことはあるかな?
悩んでいるときは「ない」という発想で物事をとらえがちです。できていない部分ではなく、できたところ、できることに注目して、前向きな考えを増やしていきます。
質問④ 最悪よりマシなのでは?
目の前の良くない状態は、広い視野を持てば最悪の状態ではないことは多々あります。今の状態を「最悪の時よりはマシかもしれない」と考えてポジティブな考えを出していきます。
質問⑤ 人の痛みが分かるかも?
人生ではいろいろな経験をします。辛く悲しい経験が、心の成長になることもあります。辛い経験をしたからこそ、人の心の痛みが分かると前向きにとらえるといいでしょう。
質問⑥ チャンスな面はあるかな?
上手くいかない状態は、成功につながるチャンスと考えることもできます。ピンチをチャンスとして考えてみます。
質問⑦ 人生経験にプラスになったかな?
苦しみも成功も体験するからこそ、人生は豊かになっていきます。失敗や挫折も人生のドラマチックな一面と考えると良いかもしれません。
質問⑧ ネタになるかな?
目の前の不安も、笑いに変えることで、気持ちが楽になるものです。友だちと話す時にネタになるかも(^^;…そんな気持ちでとらえてみるといい考えが思いつくものです。
質問⑨ 仙人ならどう考える?
たまには達観した視点で考えてみるのもありです。仙人ならどう考えるかな?と想像してみると良いでしょう。ちなみに私は、どうせこの世は幻(笑)と言って苦難と乗り越えています。
以下、練習問題を2つ作成しました。認知療法の練習としてご活用ください。
⑤認知療法と発展知識
ここから先は認知療法をより深く理解したい方向けの内容です。さまざまな研究や知識をお伝えします。
仕上げの動画
認知療法につい動画解説もあります。動画を見るとより理解が深まると思います。仕上げとしてご活用ください♪
コラム法の基礎
コラム法の基礎について動画でも解説しました。シンプルなやり方として、5コラム法として紹介しています。自動思考、適応思考の解説もあります。
認知の歪みを改善する
認知療法を効果的にするには、白黒思考、完全主義、べき思考など、考え方の偏りを発見することも大事です。コラム法の仕上げとして以下のコラムも参照ください。
論理療法を理解する
認知療法に近しい心理療法として、論理療法があります。一緒に勉強すると、より現実的に考える力をつけることができます。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。
・認知療法の基礎
・思考の歪みの改善
・行動療法の学習
・マインドフルネスワーク
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)
個別レッスン
個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで認知療法を深めたい方は、下記をご参照ください。
シリーズの続きを読む
認知療法シリーズは全4回です。今回は①概要とコラム法を扱いました。考え方の土台にある「スキーマ」について、幼少期の形成過程や具体的な種類まで詳しく知りたい方はこちら。
コラム法のように頭の中で考えを検証するのではなく、実際に行動して予測が正しいか確かめたい方はこちら。
「④適応的思考を増やす方法」で紹介した9つの質問の土台となる、対話による認知修正の技法を体系的に学びたい方はこちら。
認知行動療法シリーズ全体(行動療法・マインドフルネスへの展開)に戻りたい方は、こちらの全体像コラムからどうぞ。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連










