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認知療法,スキーマ,自動思考の意味,心理学

認知療法,スキーマ,自動思考の意味

みなさんこんにちは。公認心理師の川島達史と申します。私はこちらのコミュニケーション教室を開催しています。認知療法コラム①では基本モデルやコラム法などについて解説をしてきました。当コラムは認知療法シリーズの2回目です。

今回は認知療法で重要な「スキーマ」「自動思考」について解説をしていきたいと思います。

目次

スキーマと自動思考のイメージ図

①スキーマの意味

スキーマとは

スキーマとは、「認知の偏りに影響する、より深い思い込み・信念の体系」を意味します。価値観と言い換えてもいいかもしれません。幼少や青年期に形成されるとされています。

豆知識:スキーマの語源

スキーマは元々ギリシャ語のschēmatが由来とされています。schēmatは「図、回路、仕組み」という意味があります。ちなみに「スキーマ=Schema」とはドイツ語読みで、英語ではシェマと読みます。

蛇足ですが,精神分析の用語にイド(id)という概念がありますが,英語では es(エス)と言います。現代心理学自体はドイツが発祥のなので,ドイツ語と英語が混在しているのです。

歴史

スキーマはその後、哲学の世界で使われてきましたが、心理学の世界では1929年前後から、ゲシュタルト心理学や認知心理学で使われるようになってきました。

認知療法では使われるようになったのは、1960年代で、アーロン・ベックが心理療法に取り入れていきました。2003年になると、心理学者のジェフリー・ヤングがスキーマ療法を提唱し、発展してきました。

以下は代表的な提唱であるアーロン・ベックの様子です。2021年11月1日までご存命でした。

基本モデル

ベックが提唱したモデルはこちらです。まずは全体像を把握してみてください。

ベックのスキーマと自動思考の基本モデル図

スキーマ(信念)の影響を受けて、自動思考が浮かびます。ここに、ネガティブな出来事や推論の誤りがあると、ネガティブな自動思考が生まれやすくなると言えます。

スキーマの種類

スキーマは人によって個人差があり、多種多様です。例えば、高達成スキーマ、他者依存的スキーマ、失敗不安スキーマ、私は愛されないスキーマ、私は落伍者であるスキーマなどが挙げられます。

家接ら(1999)[1]は、大学生341名を対象に調査を行い、抑うつスキーマ尺度を作成しました。その結果、抑うつスキーマ尺度には「高達成思考スキーマ」「他者依存的評価スキーマ」「失敗不安スキーマ」の3つの因子があることがわかりました。それぞれの内容は以下の通りです。

高達成思考スキーマ

何事も妥協は許されない
平凡な生き方ではダメだ
何もしなかった日があってはダメだ
人並みの成績で満足してはいけない
自分に厳しくしないと二流止まりだ
問題は早く解決しなければならない
同じ失敗は繰り返してはいけない
後悔することがあってはならない
*一部簡略化

他者依存的評価スキーマ

他人が私をどう評価するかが重要だ
構ってくれないと孤独感に駆られる
他人から孤立するのは不幸なことだ
魅力がないと評価されると動揺する
人から嫌われたら幸せにはならない
支えてくれる人がいなければ悲惨だ
私はいい人でなければならない
幸せには人からの評価が欠かせない
*一部簡略化

失敗不安スキーマ

弱さを他人に知られたら拒絶される
本当の姿を知られたら、軽蔑される
弱さを見せることは恥ずべきことだ
大きな失敗をしたら挽回できない
裏切られるので、他人は信用しない
相手に質問すると、馬鹿にされる
世の中結果がすべてである
仕事で失敗したら、人生の敗北者だ
*一部簡略化

 

子供の頃に形成される

スキーマは元々持っている気質、家庭や外部の影響を受け強化されます。特に幼少期に以下の2つの自己スキーマを採用し始めます。これは主に「良い子」「悪い子」という方向性に向かうとされます。

「良い子」という基本的なスキーマが完成すると、成人になっても自分と他人にポジティブに関わります「悪い子」という基本的なスキーマが完成すると、成人になっても自分と他人にネガティブに関わるようになります。

このように,発達期にはその人の言動を形成するスキルが次々と獲得されていきます。これを発達心理学用語では,内的作業モデル(内的ワーキングモデル;Internal Working Model)と言います。ここでいうスキーマは,内的ワーキングモデルの認知的スキーマのことです。幼児期に形成され,青年期,成人期での言動にも深く影響します。

②推論の誤り,自動思考

推論の誤りとは

推論の誤りとは、スキーマから生じる偏った考え方、物の見方になります。認知の歪みと言われることがあります。具体的には、白黒思考、選択的知覚、べき思考などだ表的なものは10種類程度あります。

認知の歪み10種類を学ぶ

自動思考とは

自動思考とは、スキーマや推論の誤りの影響を受けて、瞬間的に浮かぶ考え方のクセのようなものです。自動思考は、気分や感情にさらに影響を与え、私たちの行動を変化させます。

コラムでもお伝えしたように、認知療法では自動思考を発見し、修正していくことでメンタルヘルスを改善していきます。自動思考を見直す対話の技法として「ソクラテス式質問法」もあわせて参考にしてみてください。

自動思考とスキーマの違い

自動思考とスキーマには以下のような違いがあります。

*自動思考
より瞬間的な浅いレベルの認知。意図せず出来事に対して浮かぶ様々な考えのこと

*スキーマ
より継続的な深いレベルの認知。過去の経験から形成された頑固な信念や価値観のこと

このように、「認知の根底にはスキーマがあり、その影響を受けて自動思考が生まれる」と考えるといいでしょう。認知の偏りを修正する時には、まずは自動思考を見つけ、修正したり、受け入れたりしていく中で、最終的には根底にあるスキーマに気づいていくことが大切になります。

③スキーマ療法の手順

認知行動療法でよく使われる「コラム法」では、自動思考や推論の誤りには触れるものの、スキーマについてはそこまで深掘りしません。しかし、スキーマは推論の誤りに深く影響するため、修正する必要がある方もいます。

そこでスキーマを修正するには、スキーマ療法(Schema Therapy)が進められるケースもあります。スキーマ療法は、ジェフェリー・ヤング(Jeffrey E. Young)により開発された、不健康なスキーマを改善することを目的とした心理療法です。

スキーマの選定

スキーマ療法ではまずはじめに、自分にあてはまるスキーマを見つけていくことから始めていきます。「高達成スキーマ」「他者依存的スキーマ」などを把握します。

原体験を語る

スキーマには幼少期の原体験が影響していることがよくあります。そうした原体験を見つけ、理解していくことはスキーマを修正する上でとても大事になります。ただし、この過程は心に大きな負担がかかるので、慎重に進めていく必要があります。

修正,受容

自分がなぜそのスキーマを持つようになったかを充分整理することができたら、健康的なスキーマを考え、実践経験を積みながら、少しずつ修正していくようにしていきます。加藤(2021)[2]は、スキーマの改善方法として、日記をつける、スキーマの正しさについてディベートする、イメージをして修正する、などを挙げています。

具体例で理解する

3つのステップを、事例を通して見てみましょう。

事例:頑張りすぎてしまうBさん

Bさんは仕事でもプライベートでも常に全力investmentで、少しでも手を抜くと強い罪悪感を覚えていました。同僚からは「そこまでしなくても」と言われますが、やめられません。

①スキーマの選定
カウンセラーと話す中で、「高達成思考スキーマ」(何事も妥協は許されない、というスキーマ)が強く働いていることに気づきました。

②原体験を語る
子どもの頃、成績が良い時だけ両親から褒められ、平凡な時は褒められなかった記憶がよみがえりました。「頑張らないと認めてもらえない」という思い込みが、ここで作られたようです。

③修正,受容
「平凡な日があってもいい」と頭では分かっていても、すぐには受け入れられません。そこで、小さな「手を抜いた日」を日記に記録し、実際にどうなったかを振り返る練習を続けました。数ヶ月かけて、少しずつ「そこまで頑張らなくても大丈夫だった」という実感が積み重なっていきました。

このように、スキーマ療法は短期間で終わるものではなく、時間をかけて少しずつ思い込みをほぐしていくプロセスです。

動画でも解説

スキーマについて動画でも解説しました。仕上げとしてご活用ください。

考え方が偏っていると感じた場合、その根底にはスキーマがあるかもしれません。スキーマによる認知の偏りが生み出した自動思考の修正には時間がかかります。ゆっくり焦らず進めていきましょう!

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

・認知療法の基礎
・思考の歪みの改善
・行動療法の学習
・マインドフルネスワーク

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

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個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースでスキーマを深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら

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認知療法の基本モデルやコラム法の具体的な手順から確認したい方はこちら。

①認知療法の概要,コラム法

頭の中で考えを検証するのではなく、実際に行動して予測が正しいか確かめたい方はこちら。

③行動実験のやり方

自動思考を見直す際に使える、対話による質問の技法を体系的に学びたい方はこちら。

④ソクラテス式質問法

認知行動療法シリーズ全体(行動療法・マインドフルネスへの展開)に戻りたい方は、こちらの全体像コラムからどうぞ。

認知行動療法の全体像

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] 家接 哲次・小玉 正博(1999).  新しい抑うつスキーマ尺度の作成の試み 健康心理学研究, 12, 37-46.