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投影同一視の意味とは,種類,具体例

投影同一視の意味とは,種類,具体例

みなさん、こんにちは。公認心理師・精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。今回は「投影」について解説していきます。

1.精神分析と局所論,構造論
2.自我防衛機制の基礎
3.カタルシス効果
4.投影の意味とは
5.無意識の発展

投影,精神分析

 

投影の意味とは?

意味

投影は心理学辞典(2013)[1]では、以下のように定義されています。英語では,psychological projection です。ちなみに稀に「投映」と書いてある(呼ばれる)ことがありますが,これは間違いです。ロールシャッハテストに代表される性格・人格検査の手法を「投映法」と言い,それと混同されてしまっているのです。精神分析の防衛機制の一つは,投影あるいは投射と呼ばれます。

精神分析理論や心理力動理論において、ある人が自分のもつ肯定的・否定的特徴や感情、衝動を、他人や集団に帰属する過程を指す(一部改変)

こちらは学術的で少し難しいですね。もう少し簡単にすると、

自分の感情があたかも相手の中にあるかのように感じることで、自分を守ろうとする心理的な仕組み

こちらの定義で充分だと思います。自分の中に認められない感情が芽生えたとき、その感情を素直に受け入れるのは難しいことです。そんなとき、それがあたかも相手の中にあるかのように考えることで、自分の心を守ろうとするのが投影の原理になります。

具体例

「自分の感情があたかも相手の中にあるかのように感じる」とはどういうことなのでしょうか?以下に、2つの具体例を折りたたんで解説しました。理解を深めたい方は展開してみてください。

あるところに「私は先生が嫌い!」と「無意識」に感じている花子さんがました。

よくある投影の例

しかし、花子さんは無意識の中で葛藤します。先生を嫌いになるのは良くない…と罪の意識を持ちます。その罪の意識は知らず知らずのうちに大きくなりました。

そこで花子さんは自分の心を軽くするために、無意識に「投影」をすることにしました。結果的に、「私が先生を嫌っている」のではなく、「先生が私を嫌っているんだ」と思い込むようになったのです。

よくある投影の具体例

このように花子さんは、自分の中にある負の感情を先生に投影することで、自分を守ろうとしたのです。

あるところに、「恋人の太郎くんが浮気するのではないか」と心配している月子さんがいました。「私は太郎くんに不信感を抱いている」けれど、無意識なので、月子さん自身そのことに気づいていない状態です。

投影の例

月子さんは、恋人を疑うなんて私は酷い人間なのではないかと無意識に葛藤します。そしてその葛藤は大きくなり、心の負担になってきました。そこで月子さんは自分の心を守るために、「太郎くんが私に不信感を持っている」「私は太郎くんに浮気の心配をされている」と思い込むようになっていきました。

投影の具体例

このように月子さんは、自分の中にある負の感情を太郎君に投影することで、自分を守ろうとしたのです。

投影のメリット

私たちは、なぜ投影してしまうのでしょうか。投影には

自分の中の負の感情を相手に投げることで、自分自身はきれいでいられる

という利点があります。あくまで錯覚なのですが、自分にマイナス感情がある…という自分にとって不都合な状態を、相手に映し出すことでストレスを軽減しているのです。

例えば、先程の月子さんは太郎君を信頼していませんでしたが、信頼してないという気持ちを認めるのは勇気がいる事ですし、信頼していない状態は疲れてしまいます。

そのため、自分が持っている感情を相手に押し付け、自分の感情を一見綺麗に保っているかのように取り繕おうとするのです。

投影のデメリット

一方で投影は、様々なトラブルにつながりやすく、未熟な防衛と言われています。

人間関係のトラブル
投影は相手にとって理不尽なものと言えます。投影をすることで相手との関係が悪くなり、人間関係のトラブルが発生しやすくなります。例えば、「軽蔑している気持ち」を投影された相手はたまったものではありません。自分では考えてもいないことを決めつけられたりするので、人間関係が悪くなってしまうのです。

自分と向き合えない
投影を繰り返すと、マイナス感情から逃げる癖がつき、負の感情と向き合う経験ができなくなってしまいます。辛い感情をコントロールできず、さらに投影を繰り返すことになってしまうのです。

投影同一視
投影をする人は、相手を操作しようとする傾向があります。投影をした相手が自分の投影した通りに生きていないと、つじつまが合わなくなってしまうからです。そのため、自分が投影した感情を実際に相手が持つように仕向け、操作してしまうのです。

 

投影への対処法

自分が投影された時

投影をされた時には、どのように対処したらいいのでしょうか。たとえば、

〇〇さんって、裏の顔があるでしょう
実は裏で悪口を言っているでしょう

このように、情報が少ないのに決めつけるような発言を投げかけられる場合、投影が起きていることが多いです。投影は、相手の世界観が自分に投影されているだけです。相手の言葉に傷つくことがあるかもしれませんが、気にしないようにしましょう。

たとえば「私のこと軽蔑しているでしょう」と言われた場合。「そんな風にみえた?軽蔑なんてしていないけどな~」くらいに捉えると良いでしょう。相手の意見や感情と無理に付合わないことが、投影に巻き込まれないコツです。

 

自分が投影をした時

逆に、自分自身が投影してしまいそうになったらどうすれば良いのでしょうか?投影は無意識にやってしまうものなので、なかなか自分では気がつきにくかったりします。

しかし、いくつかのコツを覚えておくと確認しやすくなると思います。投影が出やすいのは、相手が自分へネガティブ感情を持っていると感じた時です。

相手が自分を嫌い
相手が自分をむかついている
嘘をついていると思われている
信用されていないと感じる

これらの感情があるときは、「実は自分自身がその感情を持っているのではないか?」と、いったん立ち止まって確認してみましょう。投影を発見しやすくなります。

もしこういったことがよくある場合は、自分の負の感情とうまく向き合えていない可能性があります。その場合、相手の気持ちを想像する癖をやめて、「自分は本当はどう感じているのか」を意識するようにしてみてください。

 

援助者と投影の分析

援助者にとって投影はチャンス

私たちカウンセラーは、日常的に投影されます。

先生って私のこと嫌いでしょう?
先生の笑顔って嘘くさいですよね
先生はステータスで人をみますよね

このような発言があったときは、チャンスと考えられています。私たちカウンセラーは投影は重要な指標として考えます。

投影には悩みを改善するヒントがたくさんあるので、カウンセリングの中で慎重に扱い、心の問題の根幹を探るために役立ています。

援助の仕方,具体例

例えば、

先生って私の事嫌いでしょう…

としきりにいう相談者の方がいたとします。私はこう返します。

嫌われていると感じるのですね。でも私は〇〇さんとお会いできると嬉しいですよ。どうして、私が嫌っていると感じたんだろうね・・・

このように、自分自身の気持ちを洞察するように促していきます。うまく行くと、

嫌いな気持ちを押しつけていた
人が嫌いになる自分が恥ずかしいと思っていた
自分の気持ちに蓋をすることが癖になっていた

これらの気づきが得られることがあります。このように自分の気持ちと向き合い、心が整理できるようになると、問題のある投影は減っていくのです。

 

投影に巻き込まれないコツ

仕上動画

投影について動画でも解説しています。仕上としてご活用ください。

 

関連コラム

今回は精神分析的心理療法の4回目について解説をしました。以下のコラムのうちまだ読んでいないものがありましたら是非ご参照ください。

1.精神分析と局所論,構造論
2.自我防衛機制の基礎
3.カタルシス効果
4.投影の意味とは
5.無意識の発展

しっかり身につけたい方へ

心理療法を公認心理師の元でしっかり学びたい方は、私たちが主催する講座をおすすめします。内容は以下の通りです。

・はじめて学ぶ,心理療法
・不安を軽くする,認知療法の基礎
・やる気を引き出す,行動療法
・自分を客観視,マインドフルネス療法

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

投影同一視の意味とは,種類,具体例,心理学講座

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] VandenBos, G.R. (Ed.). (2007). APA Dictionary of Psychology. Washington, D.C.: American Psychological Association. (ファンデンボス, G.R. (監修)繁枡 算男・四本 裕子(監訳) APA 心理学大辞典 p. 636  培風館)