みなさん、こんにちは。公認心理師・精神保健福祉士の川島達史と申します。私はこちらのコミュニケーション教室を開催しています。
このコラムは、精神分析シリーズの3本目です。今回は、「カタルシス効果」をテーマに解説していきます。
友人に悩みを聞いてもらったら、なんだか心が軽くなった。思いきり泣いたら、すっきりした。そんな経験はありませんか。この心の動きを、心理学では「カタルシス効果」と呼びます。目次は以下の通りです。
読み進めると、上手なカタルシスの得方と、注意したい点がわかります。
カタルシス効果の意味
基本の意味
カタルシス効果は「心の浄化作用」とも呼ばれ、次のような意味で使われます。
心の中にため込んだ悩みを、何らかの形で吐き出し、発散することで、悩みが整理され、心理的に安定すること。
悩みが整理されるプロセス
私たちは、悩みやストレスを抱えているとき、苦しいので、なんとか解消しようとします。さまざまな手段で心を整理でき、うまくいったときに「カタルシス効果を得た」と表現します。大切なのは、単に「スッキリする」ことではなく、悩みが整理されて心が安定することです。
次のようなことに心当たりがある方と、特に相性が良い内容です。
・つらいことを話したら、少し楽になった経験がある
・悩みを我慢して、一人で抱え込みやすい
・気持ちを吐き出す方法が分からず、モヤモヤが続く
もう少し詳しい背景を知りたい方は、以下を開いてみてください。読み飛ばしても、この先の内容は問題なく読み進められます。
講師の視点
カタルシス効果はカウンセリングの場面でとても重要です。お悩みを相談されるクライアントさんは、皆さんよく泣かれます。しかし、その涙と共に悩みは整理され、前向きな気持ちが出てくるのです。そういった姿を見ると、カタルシス効果は本当にあるのだな…と感じます。
健康的なカタルシスと、注意したい「発散」
健康的なカタルシス
悩みやストレスを、自分や他人を傷つけない形で表に出し、整理していくことを、健康的なカタルシスといいます。たとえば、次のようなものがあります。
悩みを信頼できる人に話して、整理する
日記やノートに、気持ちを書き出す
絵や音楽、創作活動で表現する
スポーツや散歩など、体を動かす
注意したい「怒りの発散」
一方で、怒りを「発散」しようとして、物を殴ったり、SNSで暴言を吐いたり、相手にぶつけたりする方法は、おすすめできません。心理学者のブッシュマン(Bushman)は、怒らせた相手のことを考えながらサンドバッグをたたく人たちと、何もしない人たちを比べる実験を行いました。その結果、相手のことを考えながらサンドバッグをたたいた人たちのほうが、怒りが強く、攻撃的になりました。何もしなかった人たちのほうが、怒りも攻撃性も低い結果でした(Bushman02)[3]。
怒りを繰り返し思い浮かべながら発散することは、気持ちを鎮めるどころか、かえって高ぶらせる可能性があります。「思いきり出せばスッキリする」という考えは、注意が必要です。怒りとの付き合い方は、アンガーマネジメントや、アサーティブコミュニケーション(相手を傷つけずに自分の気持ちを伝える方法)も参考になります。つらい気持ちが強く、自分で整理しきれないときは、無理をせず、医療機関や公的な相談窓口、専門家に相談してください。
カタルシスの研究と活かし方
ここからは、カタルシスに関する研究を参考に、日常生活での活かし方を紹介します。小規模な調査や事例報告も含まれるため、「必ず効果がある」ということではなく、ヒントとして参考にしてください。
①悩みを話す
悩みを誰かに聞いてもらい、つらかったことや嫌だったことを十分に語ると、気持ちが整理されることがあります。石川・井上[4]は、保育所実習の前後に、大学4年生49名を対象として、ストレスへの対処(ストレスコーピング)の推移を質問紙で調べました。その結果、よく行われた対処として、「計画立案」「カタルシス」「肯定的解釈」が挙げられています。ただし、これは「よく使われていた」対処を示すもので、それが効果的だったかどうかを示すものではありません。
一人で抱え込まず、信頼できる人に話す機会を持ちましょう。同じ愚痴を何度も繰り返して怒りを膨らませるだけになっていないか、時々振り返ることも大切です。
②アートで表現する
言葉にしにくい気持ちは、絵やコラージュなどで表現する方法もあります。橋場ら[5]は、就労移行支援事業所を退所した11名について、フォーカシングという方法とアートを組み合わせたプログラムの実践を報告しています。この報告では、作品づくりを通して「満たされる感覚」や「カタルシス」が得られたことが、有効な点の1つとして挙げられています。小規模な事例報告ですが、表現することの意味を考えるヒントになります。
③物語を思い描く(空想)
フェッシュバック[6]は、大学生を侮辱して攻撃的な気持ちを引き起こしたあとで、空想をする活動を行う場合と、行わない場合とで、その後の攻撃衝動の強さを比べました。その結果は、空想が攻撃衝動を部分的に下げるという仮説と一致するものでした。物語を思い描くことで、いら立ちが和らぐ可能性を示す、古典的な研究です。ただし、先に紹介したブッシュマンの実験のように、怒りを発散しても攻撃性が下がらないとする結果もあり、研究の結果は一致していません。
まとめ
抑え込んでいた気持ちを外に出すことは、心を安定させる助けになります。ただし、大切なのは、ただ「発散する」ことではなく、気持ちを整理することです。悩みを打ち明ける相手がいない、感情を出す機会がない、という方は、相談相手をつくったり、書いたり、表現したりすることから始めてみてください。つらさが強いときは、専門家にご相談ください。
理解度チェック(練習問題)
問題1
カタルシス効果の説明として、最も適切なものはどれでしょうか。
(ア)怒りを発散するほど、攻撃性が下がる
(イ)ため込んだ悩みを吐き出し、整理されて心が安定する
(ウ)感情を表に出さないほど、心が強くなる
問題2
腹が立ったとき、相手のことを考え続けながらクッションをたたいた。この方法について、ブッシュマンの実験は、どのような結果を示しているでしょうか。
問題3
「アンナ・O.」の事例は、心理療法の歴史の中で、どのような意味を持っているでしょうか。
よくある質問Q&A
私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。
・認知療法の基礎
・思考の歪みの改善
・行動療法の学習
・マインドフルネスワーク
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)
個別レッスン
個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで精神分析の考え方を深めたい方は、下記をご参照ください。
シリーズの続きを読む
精神分析の全体像を知る
心を守る無意識の働きを学ぶ
自分の感情を相手に映す心の働きを知る
自分では気づかない心の領域を知る
面接室で生じる感情のパターンを知る
精神分析の流れをくむ現代の治療を知る
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




