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精神分析②自我防衛機制の意味とは,種類,具体例

精神分析②自我防衛機制の基礎,種類

みなさん、こんにちは。公認心理師・精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。コラム1では、精神分析の局所論、構造論について解説しました。今回は「自我防衛機制」について解説していきます。

1.精神分析と局所論,構造論
2.自我防衛機制の基礎
3.カタルシス効果
4.投影の意味とは
5.無意識の発展

 

防衛機制の意味とは?

意味

心理学辞典(1999)[1]によると、防衛機制とは以下のように定義されています。

不安や抑うつ・罪悪感・恥など、不快な感情の体験を弱めたり、避けることによって、安定を保つために用いられる心理的作用。通常、意識して生じることはない。

つまり、心が傷つくことを避けるための機能というわけです。さらに、通常意識されることはなく、無意識に行っているとされています。

歴史

防衛機制は、ジークムント・フロイトが精神療法の中で使用した用語です。その後、アンナ・フロイトが1936年に「自我と防衛のメカニズム」[2] という本を出版し、体系化していきました。

防衛機制は、人が生きていくためにとても大切な役割を果たします。一方で、未熟な防衛や過剰すぎる防衛は、時として問題となります。

今回のコラムでは、心理学の研究などを引用しながら、防衛機制の種類や特徴、覚え方のコツについて解説していきます。

防衛機制,アンナフロイト

 

4つの段階

ハーバード大学医学部教授であるヴァイラント(Vaillant, G.E.)は、防衛機制を以下の4段階にレベルわけしました。[3]

①病理的防衛
②未熟な防衛
③神経症防衛
④成熟した防衛

当コラムでは、ヴァイラントの分類を参考に、4段階のレベルと合わせてそれぞれ紹介していきます。

 

①病理的防衛

最も原始的な防衛機制です。「夢の中で起こり、他人から見ると不合理」という特徴があります。5歳以前の子どもや、精神疾患を持つ患者によくみられるとされています。

否認

目の前で起きている悲惨な状況に耐え切れず、目をそらして「否認」する。心を閉ざし、現実を認識しないようにする。

例:大きな病気を患っているにも関わらず、健康的であると思い込む。

分裂

相手の良い部分と悪い部分を「分裂」させてしまい、一人の人間として認識・統合できない状態。相手に対して良し悪しを総合的に考えることができず、激しいこきおろしと理想化を繰り返す。

例:短期間で好きになり、短期間でお別れ・復縁を繰り返す。

躁的防衛

喪失体験から身を守るために、無理に感情を高揚させたり、別感情でごまかす。「躁的」な感情を持つことで、抑うつ気分を感じないようにする。

例:失恋をした辛さに直面するのが苦しいので、刹那的な恋愛をする。

 

②未熟な防衛

通常、3歳から15歳の未成年の子どもに見られる防衛機制ですが、成人にも見られることがあります。不快な現実によって引き起こされる苦痛を軽減する効果があるものの、人間関係や社会生活に障害をもたらすこともあります。

退行

障害を乗り越えることが困難と思える時に、現在の自分よりも幼い発達段階に「退行」し、困難を回避しようとする。

例:一人でいろいろなことが出来るようになっていた子どもが、弟が出来たときに一時的に親から食事を食べさせてもらったり、着替えさせてもらったりする。

投影

自分の中にある認めたくない感情を、他人の中に「投影」してしまう。自分の感情を自分のものと認識せず、相手の側に転嫁することで自分を守ろうとする心の働き。

例:「自分は相手から嫌われているんだ」と思っていたが、実は自分が先に相手のことを嫌っていた。(誰かを嫌いになる自分を受け入れられなかった)

投影は下記の動画と、投影コラムで解説しています。

 

③神経症的な防衛

「神経症」とは、昔の表現でざっくりと「心の問題」という意味があります。神経症的防衛は、ストレスへの対処として成人でもよく認められる防衛機制です。日常生活で問題になるのであれば修正が必要です。

抑圧

思い出したくない記憶や感情、本当はやりたくてもできないことを無意識の中に押し込めて「抑圧」し、意識しないようにする心の働き。

例:本当はやりたい事があったのに、経済的な問題であきらめた。その後、やりたい気持ちを心の底にしまうことで、日常生活の中で意識することはなくなった。

逃避

ストレス要因から心理的にも物理的にも「逃避」し、逃れようとする心の働き。

例:テスト勉強をしなければいけないのに部屋の掃除を始めてしまう。

反動形成

簡単には受け入れられない考えや感情を抑圧した「反動」から、実際に持っている感情とは正反対の行動や態度を取ってしまう心の働き。社会的に望ましくない感情を制御しようとした結果としてあらわれることが多い。

例:大嫌いな人に対して、大好きなようにふるまう。

知性化

受け入れるのが難しい状況や感情を理屈や論理的思考により頭で理解しようとする。「知性」でもって捉え、つらい感情と切り離そうとする心の働き。

例:理不尽な批判を受けて本当は辛いのに「統計的にみると悪口は必ず一定数受けるものである」と分析し、自分のつらい気持ちと出来事を切り離す。

合理化

自分の欲求が満たされないとき、「合理的」な理由を付け足すことで自分自身を納得させる心の働き。

例:ぶどうを食べたいためぶどうに手を伸ばしたが、届かなかった。そこで、「あのぶどうはすっぱいに違いない。食べなくてよかった」と理由付けをしてあきらめる。

 

④成熟した防衛

防衛機制は、人のこころを守る大切な働きですが、病理的防衛、未熟な防衛、神経症的な防衛を過剰に使ってしまうと不適応につながる恐れがあります。

そのため、成熟した防衛を使用していくことが精神的健康や社会適応には良いとされています。

同一視

他人の素晴らしいと思うところを真似て自分の中に取り入れた上で、自分自身と重ねて「同一視」し、自己評価を高めていこうとする心の働き。

例:憧れの俳優がつけていた腕時計を買って、自分も身につける。 

昇華

自分の中で受け入れがたい欲求や衝動を、学問や芸術活動など社会的に望ましい方向に変化させ「昇華」し、別の形で発散させていく心の働き。

例:社会に対する反骨精神を詩にして歌手として活動する。どうしようもない苛立ちを小説にぶつけ、物語として昇華する。

以下は、筆者が実際に出会ったクライアントさんの事例です。個人情報を変えながら解説しました。理解を深めたいた方は展開してみてください。

大学生の太郎くんは、野球漬けの毎日で充実していました。しかし、あるとき、練習中に大怪我をしてしまい、野球はもうできない状態になってしまいました。

太郎君は野球に人生をかけていたためにその失望は大きく、投げやりになっていました。イライラして友人と喧嘩したり、攻撃的な言動が増えていました。

そんな折、太郎くんは、カウンセリングで「昇華」の概念と出会います。太郎君は、自分のイライラと向き合いました。そうして太郎君は自分の選手として活躍する夢をあきらめる代わりにその情熱を

今後スポーツ関連の仕事に就く!
体を動かすことのすばらしさを伝える

という目標に変えて頑張ることを決意しました。太郎くんは新しい目標を達成するために勉強を始め、日々充実して過ごせるようになりました。

 

防衛機制研究

ここまで、防衛機制とは何か?ということについて解説しました。次はもう少し具体的に、実際の研究や統計データについて触れたいと思います。

以下結論のみ掲載しました。興味がある題名を展開してみてください。

心理学者の蓮花(2008)[4]は、大学生と大学生の親を対象に、未熟な防衛機制と見捨てられ不安について調査を行いました。その結果が以下の図です。

精神分析 心理学研究 未熟な防衛と見捨てられ不安

このように、未熟な防衛と見捨てられ不安がプラスの相関を示していることが分かります。つまり、未熟な防衛傾向がある人は、他人に見捨てられることを過剰に気にする傾向があると推測できます。

蓮花(2008)[4]は、は大学生と大学生の親を対象に、未熟な防衛機制と親密性への回避について調査を行いました。その結果が以下の図です。

精神分析 心理学研究 未熟な防衛と親密性の回避

このように、未熟な防衛と親密性の回避にはプラスの相関があることが分かります。つまり、退行を行ったり、自分を相手に投影してしまう人は、深い関係を避ける傾向にあると予測されます。

清水(2017) [5]は、216名の大学生を対象に「思考抑制」と「強迫行動・強迫観念」
の関連を調査しました。

・思考抑制
考えないようにすることで、頭に浮かんだ考えを締め出そうとすることです。

・強迫観念

「〜しなければならない」、「〜してはならない」という考えのことです。

・強迫行動

安心感を得るために取る極端な行動のことです。たとえば、長時間の手洗いや、鍵の閉め忘れを何度も確認する確認行動のことを指します。

その結果を図で示しました。

精神分析 思考抑制と強迫観念・強迫行為に関係

この結果から、思考抑制が強いと、強迫観念や強迫行為も強くなるということが言えます。これらの結果から、思考を無理にとめようとすると、「〜しなければならない」という強迫観念が増加し、強迫行動も変化するということが示されました。

防衛機制で言えば、神経症的な防衛である抑圧、否認、逃避などがこの「思考を抑制すること」にもあたります。ストレスへの対処として成人でもよく認められる防衛機制ではありますが、使いすぎには注意が必要です。

まとめ

自我防衛機制は自分の心を守るものですが、すべての方法が適切なわけでなく、社会的に望ましくない形で行われることもあります。よくない防衛機制を行ってしまうと、更に心が不安定になったり、心の病気を引き起こすこともあると考えられています。

一方で、防衛機制は人生を前向きに変化させていくきっかけにもなるものです。例えば「昇華」は極めて優れた創作物に結びつくこともあります。

みなさんが、不安や不満、心が不安定になっている時、みなさんの周りの人の心が不安定な時、「どんな防衛機制をしているんだろう?」とほんの少し立ち止まって考えてみると、心の中が理解できるかもしれません。

 

紹介動画

下記はPsych2Go Japanさんの防衛機制の動画です。英語なので、やや難しいかもしれないですが、イラストがかわいいので紹介させて頂きます。

 

次回のコラム

今回は精神分析的心理療法の2回目について解説をしました。次回はカタルシスコラムです。是非ご参照ください。

1.精神分析と局所論,構造論
2.自我防衛機制の基礎
3.カタルシス効果
4.投影の意味とは
5.無意識の発展

 

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・出典
[1] 中島 義明・子安 増生・繁桝 算男・箱田 裕司・安藤 清志 (1999).  心理学辞典  有斐閣
 
[2] Ferud, A. (1937, 1966, 1993). The Ego and the Mechanisms of Defence. New York, NY: Routledge. (アンナ・フロイト  外林 大作(訳)(1936). 『自我と防衛』 誠心書房)
 
[3] Vaillant, G.E. (1977, 1998).  Adaptation to life. Cambridge, MA: Harvard University Press.
 
[4] 蓮花 のぞみ (2008). 青年期と成人期における愛着スタイルと防衛スタイルの関連性  生老病死の行動科学, 13, 3-13.
 
[5] 清水 健司・清水 寿代 (2017). 思考抑制と曖昧さ耐性が強迫傾向に及ぼす影響  信州大学人文科学論集, 4, 103-112.