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自我防衛機制とは

自我防衛機制とは,種類と具体例

みなさん、こんにちは。公認心理師・精神保健福祉士の川島達史と申します。私はこちらのコミュニケーション教室を開催しています。

本当は悔しいのに「別にどうでもいい」と言ってしまう。嫌いな相手なのに、なぜか愛想よく接してしまう。こうした「自分でも不思議な心の動き」を説明してくれるのが、精神分析の「自我防衛機制(防衛機制)」です。今回は、防衛機制の意味、種類、具体例を、公認心理師の視点でわかりやすく解説します。

防衛機制は、精神分析の重要な概念の1つです。心を守るための大切な働きですが、使い方によっては、人間関係や生活に影響することもあります。読み進めると、自分や身近な人の心の動きを、少し落ち着いて眺められるようになります。

目次

自我防衛機制とは

意味

防衛機制は、強い不安や不快な感情から自分を守るために、無意識のうちに働く心理的な仕組みとして説明されます(防衛機制事典)[1]。不快な感情を弱めたり、避けたりして、心の安定を保つ働きです。

防衛機制とは、心が傷つくことを避けるための、無意識の働き

イド・自我・超自我との関係

精神分析の考え方では、「イド(欲求)」と「超自我(良心)」がぶつかったときに、「自我」が心のバランスを保つために防衛機制を使うと考えます。イド・自我・超自我については、精神分析の基礎のコラムをご参照ください。

次のようなことに心当たりがある方と、特に相性が良い内容です。

・強いストレスがあると、つい人のせいにしてしまう
・つらい記憶を、思い出さないようにしている
・「大丈夫」と言い聞かせて、無理をしてしまう

もう少し詳しい背景を知りたい方は、以下を開いてみてください。読み飛ばしても、この先の内容は問題なく読み進められます。

防衛機制という考え方の歴史

フロイトは、1890年代前半に、つらい考えや感情を心から遠ざける働きを「防衛」という考え方でとらえはじめました(1894年の論文「防衛による神経症と精神異常」など)(中野, 2011)[2]。その後、防衛の考え方を整理し、具体的な種類にまとめたのが、娘のアンナ・フロイトです。アンナ・フロイト[3]は、1936年の著書『自我と防衛』で、否認や投影など、自我が不安や葛藤に対処するための働きを整理しました。

さらに1970年代には、ハーバード大学のヴァイラント(Vaillant, G.E.)[4]が、長期にわたる追跡研究にもとづいて、防衛機制を成熟の度合いによって整理しました。この研究は、当時30年近くにわたって同じ人たちを追跡した、非常に規模の大きな調査にもとづいています。理論だけでなく、実際のデータから防衛機制を分類した点が、それまでの精神分析の研究とは大きく異なる特徴でした。この整理は、後の研究者たちにも大きな影響を与えています。

愛着と防衛機制の研究

防衛機制と、人との関わり方(愛着)の関連を調べた研究を紹介します。ある特徴と別の特徴が「関連している」ことを調べた研究で、原因と結果を示すものではない点に注意してください。

蓮花[5]は、大学生(256名)と、大学生の子どもを持つ母親(202名)を対象に、質問紙で、愛着のスタイルと防衛のスタイルの関連を調べました。その結果、どちらの群でも、「見捨てられ不安」(他人に見捨てられることへの不安)が高い人ほど、また「親密性の回避」(他人と親密になることを避ける傾向)が高い人ほど、未熟な防衛を使う傾向が強いという、正の相関が示されました。

ただし、これは相関であり、原因と結果を示すものではありません。また、対象が大学生と、その母親(女性のみ)に限られている点にも注意が必要です。同じ人でも、状況によって使う防衛機制が変わるため、「この人はこの防衛機制のタイプ」と固定的に決めつけないことも大切です。

防衛機制の4つのレベル

4段階の一覧

ヴァイラントは、防衛機制を次の4つのレベルに分けました[4]。

レベル1:病理的な防衛(否認、妄想的投影など)

レベル2:未熟な防衛(投影、空想、行動化など)

レベル3:神経症的な防衛(抑圧、知性化、反動形成など)

レベル4:成熟した防衛(昇華、ユーモア、愛他主義、抑制など)

分類の見方

このコラムでは、ヴァイラントの4つのレベルを参考に、代表的な防衛機制を紹介していきます。防衛機制の分類は、研究者や版によって少しずつ異なります。ここでの振り分けは、学習のための目安としてご覧ください。また、レベルが低いからといって「ダメな人」ということではありません。私たちは、場面に応じていくつもの防衛機制を使い分けています。

レベル1:病理的な防衛

最も原始的なレベルの防衛機制です。現実の受け止めを大きく変えてしまうため、他の人から見ると不合理に映ることがあります。幼い子どもによく見られ、大人でこれが中心になっている場合は、専門的な支援が必要なことがあります。

否認

目の前で起きている耐えがたい現実から目をそらし「なかったこと」にしようとする働き。

例:大きな病気を患っているにもかかわらず、「自分は健康だ」と思い込む。

妄想的投影

根拠のない被害的な確信を、外の世界に映し出してしまう働き。

例:周囲の人が皆、自分を陥れようとしていると強く確信してしまう。

レベル2:未熟な防衛

主に子どもの頃に多く見られるレベルですが、大人にも見られます。不快な現実による苦痛を和らげる効果はある一方で、人間関係や社会生活に影響が出ることもあります。

投影

自分の中にある認めたくない感情を、相手の中にあるものとして感じてしまう働き。

例:自分が先に相手を嫌いになっていたのに、「自分は相手から嫌われている」と感じる。

投影は投影・投影同一視のコラムでくわしく解説しています。

投影については、動画でも解説しています。

退行

困難な状況に直面したときに、現在よりも幼い段階の行動や態度に戻ってしまう働き。

例:一人でなんでもできていた子どもが、弟や妹が生まれたときに、一時的に食事や着替えを親にしてもらいたがる。

分裂

相手の良い面と悪い面を統合して見ることができず、「すべて良い」か「すべて悪い」のどちらかで見てしまう働き。

例:短期間で急激に好きになり、その後、急に激しく批判する。関係の始まりと終わりを、繰り返してしまう。

分裂は、ヴァイラントの原著の分類には含まれませんが、境界性パーソナリティの理解などでよく用いられる考え方のため、ここで紹介しました。

躁的防衛

喪失体験のつらさから逃れるために、無理に気分を高揚させたり、別の感情でごまかしたりする働き。

例:失恋のつらさに向き合うのが苦しいので、次々と短期間の恋愛をする。

躁的防衛も、ヴァイラントの原著の分類にはありませんが、精神分析でよく用いられる考え方です。

レベル3:神経症的な防衛

「神経症」とは、昔の表現で、ざっくりと「心の問題から起きる強い悩み」を意味します。神経症的な防衛は、ストレスへの対処として、大人でもよく見られます。日常生活で困りごとが生じている場合は、見直しが必要です。

抑圧

思い出したくない記憶や感情、本当はやりたくてもできないことを、無意識の中に押し込めて意識しないようにする働き。

例:本当はやりたいことがあったのに、経済的な理由であきらめた。その気持ちを心の底にしまうことで、日常生活の中で意識しなくなった。

反動形成

受け入れがたい感情を抑えつけた反動で、実際の感情とは正反対の態度をとってしまう働き。

例:苦手な相手に対して、やたらと愛想よく、親切にふるまう。

知性化

つらい状況や感情を、理屈や論理的な思考で処理し、感情から切り離そうとする働き。

例:理不尽な批判を受けて本当はつらいのに、「統計的にみて、悪口は一定数ある」と分析して、つらい気持ちと出来事を切り離す。

合理化

欲求が満たされないときに、もっともらしい理由をつけて、自分を納得させる働き。

例:ぶどうを食べたくて手を伸ばしたが届かなかった。そこで、「あのぶどうはすっぱいに違いない。食べなくてよかった」と考える(イソップ童話の「すっぱいぶどう」)。

回避(逃避)

ストレスの原因から、心理的にも物理的にも距離を置いて逃れようとする働き。

例:テスト勉強をしなければならないのに、部屋の掃除を始めてしまう。

回避は、ヴァイラントの原著の分類には含まれませんが、日常的によく見られる防衛的な対処としてここで紹介しました。

同一視

他人の素晴らしいと感じるところを取り入れて、自分と重ね合わせ、自己評価を高めようとする働き。

例:憧れの俳優が着けていた腕時計を買って、自分も身に着ける。

同一視は、分類によって、神経症的な防衛にも、成熟した防衛にも含められることがあります。ここでは、神経症的な防衛のところで紹介しました。

レベル4:成熟した防衛

病理的、未熟、神経症的な防衛を過剰に使い続けると、不適応につながる可能性があります。そのため、成熟した防衛を使えることが、精神的健康や社会への適応につながると考えられています。

昇華

自分の中の受け入れがたい欲求や衝動を、学問や芸術活動など、社会的に望ましい方向に変えて発散する働き。

例:社会への反骨精神を、歌詞にして歌手として活動する。どうしようもないいら立ちを、小説にぶつけて物語として昇華する。

大学生の太郎くん(実際の事例)

大学生の太郎くんは、野球漬けの毎日を送っていました。しかし、練習中に大けがを負い、野球を続けることができなくなりました。野球に人生をかけていた太郎くんは、大きく落ち込み、投げやりになりました。イライラして友人とけんかをしたり、攻撃的な言動が増えたりしていました。

そんな折に、カウンセリングで「昇華」の考え方と出会います。太郎くんは、自分のイライラと向き合いました。そして、選手として活躍する夢をあきらめる代わりに、その情熱を、次の目標に向けることを決めました。

スポーツ関連の仕事に就く
体を動かすことのすばらしさを伝える

太郎くんは、新しい目標のために勉強を始め、日々充実して過ごせるようになりました。

ユーモア

つらい状況を、笑いに変えながら、その状況とほどよく向き合う働き。

例:大きな失敗をしたあとに、「これで話のネタが増えた」と笑い話にして、同僚と振り返る。

愛他主義

他の人の役に立つ行動を通じて、自分の心の満足を得る働き。

例:つらい経験をした人が、同じ悩みを抱える人の相談に乗る活動を始める。

抑制

つらい感情や欲求を、意識したうえで、今は横に置いておくと決める働き。

例:大事な発表の前に、不安な気持ちを認めたうえで、「発表が終わってからゆっくり考えよう」と決める。

抑制は、無意識に押し込める「抑圧」とは違い、自分でそれと気づいたうえで保留にする点が特徴です。

防衛機制とのつきあい方

まとめ

防衛機制は、自分の心を守るための大切な働きです。ただし、すべての方法が同じように役立つわけではなく、使い方によっては、心が不安定になったり、人間関係に影響したりすることもあります。一方で、「昇華」のように、人生を前向きに変えるきっかけになる防衛機制もあります。

自分や身近な人の心が不安定なとき、「今、どんな防衛機制が働いているのかな」と少し立ち止まって考えてみてください。心の中を理解するヒントになるかもしれません。ただし、他人の防衛機制を決めつけて指摘することは、控えましょう。

紹介動画

Psych2Go Japanさんによる、防衛機制の動画です。英語の動画のため、やや難しいかもしれませんが、イラストがかわいいので紹介します。

講師の視点

防衛機制は「悪者」ではありません。私たちは、つらいことが起きたとき、無意識のうちに心を守っています。カウンセリングでは、その防衛が「今の生活に役立っているか」「そろそろ手放してもよいか」を、一緒に確認していきます。防衛を無理にはがすのではなく、必要なときには使い続けてよいと考えています。

理解度チェック(練習問題)

次の場面は、どの防衛機制にあたるでしょうか。

問題1

嫌いな上司なのに、顔を合わせるたびに、やたらと丁寧で愛想のよい態度をとってしまう。

問題1の答え

反動形成です。嫌いという感情を抑え込んだ反動で、正反対の態度をとっています。

問題2

志望校に落ちたあとで、「あの大学は自分に合っていなかった」と考えて、自分を納得させる。

問題2の答え

合理化です。思いどおりにならなかったことに、もっともらしい理由をつけています。

問題3

自分が相手を苦手に思っているのに、「あの人は私のことを嫌っている」と感じる。

問題3の答え

投影です。自分の中の認めたくない感情を、相手の中にあるものとして感じています。

よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

Q. 使わないほうがいい?

いいえ。防衛機制は心を守る大切な働きなので、なくす必要はありません。問題になるのは、特定の防衛機制を使いすぎて、生活や人間関係に困りごとが出ているときです。そのようなときは、防衛の使い方を見直すことが役立ちます。

Q. 自分の防衛機制は分かる?

防衛機制は無意識に働くため、自分では気づきにくいものです。「本当はどう感じていたのだろう」と後から振り返ることで、気づくきっかけになることがあります。ただし、自己判断で決めつけず、必要に応じて専門家に相談してください。

Q. コーピングとの違いは?

一般に、防衛機制は無意識に働くものとして扱われ、ストレスへの対処(コーピング)は、意識して選ぶ工夫として扱われることが多いです。ただし、両者の境目は、研究者によって考え方が異なります。

Q. 大人の退行はおかしい?

いいえ。大人でも、強いストレスがかかったときや、体調が悪いときに、甘えたくなったり、幼い言動が出たりするのは自然なことです。一時的なものであれば、心配しすぎなくて大丈夫です。長く続いて生活に支障が出るときは、専門家に相談してみてください。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

・認知療法の基礎
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・マインドフルネスワーク

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

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メンタライゼーション(MBT)とは

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Defense mechanisms. In EBSCO Research Starters(Psychology).
 
[2] 中野 明徳 (2011). S.フロイトのヒステリー論:心的外傷の発見. 福島大学総合教育研究センター紀要, 10, 15-24.
 
[3] Freud, A. (1936). Das Ich und die Abwehrmechanismen. Wien: Internationaler Psychoanalytischer Verlag. (英訳 The Ego and the Mechanisms of Defence, 1937)
 
[4] Vaillant, G. E. (1977). Adaptation to life. Boston: Little, Brown.
 
[5] 蓮花 のぞみ (2008). 青年期と成人期における愛着スタイルと防衛スタイルの関連性. 生老病死の行動科学, 13, 3-13.
 
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