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投影同一視とは

投影・投影同一視とは,意味と種類

みなさん、こんにちは。公認心理師・精神保健福祉士の川島達史と申します。私はこちらのコミュニケーション教室を開催しています。

「あの人は、私のことを嫌っているに違いない」。そう感じたものの、あとで振り返ると、実は自分のほうが、その人を苦手に思っていた。こうした心の動きを、精神分析では「投影」と呼びます。今回は、投影と、そこから発展した「投影同一視」の意味、種類、具体例、対処法を解説します。

投影は、防衛機制の1つとしてよく知られています。人間関係のトラブルの背景にあることも多いため、知っておくと、他人の言動に振り回されにくくなります。

目次

投影,精神分析

投影の意味

基本の定義

投影は、英語では psychological projection です。一般に、自分の中にある受け入れがたい感情や考えを、他人のものとして感じる防衛機制と説明されます(防衛機制事典)[1]。これを、次のように言い換えると理解しやすくなります。

自分の感情が、あたかも相手の中にあるかのように感じることで、自分を守ろうとする心の仕組み

自分の中に認めたくない感情が芽生えたとき、その感情を素直に受け入れるのは難しいことです。そんなとき、それが相手の中にあるかのように考えることで、自分の心を守ろうとします。これが投影の仕組みです。

「投映」との違い

なお、まれに「投映」と書かれていることがありますが、精神分析の防衛機制は「投影」(または投射)と表記します。ロールシャッハテストなどの性格検査の手法を「投映法」と呼ぶため、混同されることがあります。

次のようなことに心当たりがある方と、特に相性が良い内容です。

・人からの決めつけにヤモヤすることが多い
・「自分は悪くない」と感じるのに、なぜか人間関係がうまくいかない
・特定の人を理由もなく苦手に感じてしまう

もう少し詳しい背景を知りたい方は、以下を開いてみてください。読み飛ばしても、この先の内容は問題なく読み進められます。

投影という考え方の歴史

投影は、フロイトが初期の著作の中で使い始めた概念の1つです。もともとは、妄想症状を説明するための考え方として登場しました。1911年に発表された「シュレーバー症例」の分析では、患者が抱く被害妄想を、自分自身の中にある受け入れがたい感情が、相手のものとして外に投げ出された結果として説明しています。

その後、投影は、妄想に限らず、日常的な防衛機制の1つとして、より広い意味で使われるようになりました。娘のアンナ・フロイトは、1936年の著書で、投影を防衛機制の体系の中に位置づけ、他の防衛機制(抑圧、反動形成など)と並ぶものとして整理しています。この整理をもとに、投影は現在、臨床の現場でも広く使われる基本的な概念の1つになっています。

精神分析以外の心理療法でも、「人間関係のトラブルの背景に、投影的なやり取りがある」という見方が、応用されることがあります。くわしくは、自我防衛機制のコラムもご参照ください。

他の防衛機制との違い

投影と混同されやすい概念に、「置き換え(displacement)」があります。置き換えは、ある対象に向けていた感情を、別の対象に向け直すことで、感情そのものを他人のものだと感じるわけではありません。

たとえば、上司に対する怒りを、家で家族にぶつけてしまうのは置き換えです。一方、投影は、自分の感情の存在そのものを、相手のものとして感じる点が異なります。

また、「取り入れ(introjection)」は、投影とは逆に、他人の考えや価値観を、自分のものとして取り込む働きで、対になる概念として説明されることがあります。なお、現代の社会心理学にも、「自分の考えや好みを、他人も同じように持っていると感じやすい」という、似た現象(フォールス・コンセンサス効果)の研究があります。ただし、これは投影と全く同じ現象ではなく、無意識の防衛という視点を持たない、別の理論的な枠組みで説明されている点に注意が必要です。

投影の具体例

2つの事例で理解する

「自分の感情が相手の中にあるかのように感じる」とは、どういうことでしょうか。2つの例を紹介します。

投影例①嫌いを押しつける花子さん

あるところに、「先生が嫌い!」と、無意識に感じている花子さんがいました。よくある投影の例

しかし、花子さんは無意識の中で葛藤します。先生を嫌いになるのは良くない、と罪の意識を持ちました。その罪の意識は、知らず知らずのうちに大きくなりました。

そこで花子さんは、自分の心を軽くするために、無意識に「投影」をします。「私が先生を嫌っている」のではなく、「先生が私を嫌っているんだ」と思い込むようになったのです。よくある投影の具体例

このように花子さんは、自分の中にある否定的な感情を、先生に投影することで、自分を守ろうとしたのです。

投影例②浮気を疑う月子さん

あるところに、恋人の太郎くんが浮気するのではないかと心配している月子さんがいました。月子さんは、太郎くんに不信感を抱いていますが、無意識のため、自分ではそのことに気づいていません。投影の例

月子さんは、「恋人を疑うなんて、私はひどい人間なのではないか」と、無意識に葛藤します。その葛藤が大きくなり、心の負担になってきました。そこで月子さんは、「太郎くんが私に不信感を持っている」「私は太郎くんに浮気の心配をされている」と思い込むようになっていきました。投影の具体例

このように月子さんは、自分の中にある否定的な感情を、太郎くんに投影することで、自分を守ろうとしたのです。

2つの事例に共通する流れ

どちらの事例にも、「認めたくない感情が生まれる→葛藤が大きくなる→相手の中にあると思い込む」という共通の流れがあります。まず自分の中にどんな感情があるかに気づくことが、投影を見直す出発点になります。

投影のメリットとデメリット

投影のメリット

私たちは、なぜ投影してしまうのでしょうか。投影には、次のような利点があります。

自分の中の否定的な感情を相手のものとすることで、一時的に、自分は「きれい」でいられる

あくまで錯覚ですが、「自分にマイナスの感情がある」という不都合な状態を、相手に映し出すことで、ストレスを軽くしているのです。たとえば月子さんは、「太郎くんを信頼できていない」という気持ちを認めるのは、勇気がいることでした。信頼していない状態は、疲れてしまいます。そのため、自分の気持ちを相手に押し付けることで、自分の心を守ろうとしたのです。

投影のデメリット

一方で投影は、さまざまなトラブルにつながりやすく、未熟な防衛と言われています。

人間関係のトラブル
投影は、相手にとって理不尽なものです。たとえば「軽蔑している」という気持ちを投影された側は、自分では考えてもいないことを決めつけられるため、関係が悪くなりやすくなります。

自分と向き合えない
投影を繰り返すと、マイナスの感情から逃げる癖がつき、その感情と向き合う経験ができなくなります。つらい感情をコントロールできず、さらに投影を繰り返すことになってしまいます。

投影同一視とは

投影から、もう一歩進んだ概念が「投影同一視」です。精神分析家メラニー・クライン(Klein, M.)[2]が1946年の論文で示した考え方から発展した概念です。

自分の中の受け入れがたい感情を相手に投げ入れるだけでなく、相手がその感情どおりに感じたり、ふるまったりするよう、無意識のうちに働きかけてしまう心の働き。

投影は、自分の心の中で「相手がそう思っている」と感じるところで完結します。一方、投影同一視では、その感情を相手の中に見るだけでなく、相手を通してその感情を扱い続けようとします。そのため、相手が実際に、その感情や態度をとるよう、追い込まれてしまうことがあります。オグデン(Ogden, T.)[3]は、投影された人が、投影の内容に沿って考えたり、感じたり、行動したりするよう、対人関係の中で圧力を受ける過程として説明しています。

投影同一視の例

例:職場の後輩Aさんは、上司に強い不満を持っているが、そのことを認められない。そこで、「上司は、私を見下している」と繰り返し言い、とげとげしい態度をとる。上司は次第に、Aさんに苛立ち、距離を置くようになる。するとAさんは、「やっぱり、見下されている」と確信を深めてしまう。

(理解のために作成した架空の例です。)

このように、投影同一視では、はじめの思い込みが、現実の関係の中で「本当のこと」になっていくことがあります。

投影同一視の広がり

投影同一視は、もともとは、乳児と母親の関係を説明する理論の中で提唱され、その後、重い心の問題の理解にも使われてきました。さらに、この概念は広がり、親密な関係の中で起こる、無意識の「感情のコミュニケーション」の1つとしても理解されるようになりました(Young12)[4]。また、心理療法では、面接の中で援助者に生じた感情が、患者の心の状態を知る手がかりになると考えられています。これについては、転移・逆転移のコラムで解説しています。なお、投影同一視の定義は、学派や研究者によって異なる点にも注意が必要です。

投影・投影同一視への対処法

自分が投影された時

たとえば、次のように、情報が少ないのに決めつけるような発言を投げかけられるときは、投影が起きていることが多いです。

〇〇さんって、裏の顔があるでしょう
実は、裏で悪口を言っているでしょう

投影は、相手の世界観が、自分に映されているだけです。相手の言葉に傷つくことがあるかもしれませんが、内容をそのまま受け止めすぎないようにしましょう。「私のこと軽蔑しているでしょう」と言われたら、「そんなふうに見えたの?軽蔑なんてしていないけどな」くらいに受け止めます。相手の意見や感情に無理に付き合わないことが、巻き込まれないコツです。

また、投影同一視のように、相手の言葉に引っ張られて、自分の中に強い苛立ちや不安が湧いてきたときは、「これは、本当に自分の気持ちだろうか」と、一呼吸おいて確かめてみてください。

自分が投影をした時

自分が投影しているときは、気づきにくいものです。投影が出やすいのは、相手が自分にマイナスの感情を持っていると感じたときです。

相手が自分を嫌っている
相手が自分に腹を立てている
嘘をついていると思われている
信用されていないと感じる

こうした感情が出たときは、「実は自分自身が、その感情を持っていないだろうか」と、いったん立ち止まって確認してみましょう。投影に気づきやすくなります。こうしたことがよくある場合は、自分の否定的な感情と、うまく向き合えていない可能性があります。相手の気持ちを想像する前に、「自分は本当はどう感じているのか」を意識してみてください。

投影については、動画でも解説しています。仕上げにご活用ください。

援助者と投影の分析

援助者にとって投影は手がかり

私たちカウンセラーは、日常的に投影されます。

先生って、私のこと嫌いでしょう?
先生の笑顔って、嘘くさいですよね
先生は、ステータスで人を見ますよね

このような発言があったときは、心の問題を理解する重要な手がかりになると考えます。投影の中には、悩みを改善するヒントがたくさんあるため、カウンセリングの中で慎重に扱います。

援助の仕方の具体例

たとえば、「先生って私の事、嫌いでしょう…」としきりにいう相談者がいたとします。私は、次のように返すことがあります。

嫌われていると感じるのですね。でも私は、〇〇さんとお会いできると嬉しいですよ。どうして、私が嫌っていると感じたんだろうね…

このように、相手が自分の気持ちを見つめ直すよう促していきます。うまくいくと、次のような気づきが得られることがあります。

嫌いな気持ちを押しつけていた
人が嫌いになる自分を恥ずかしいと思っていた
自分の気持ちに蓋をすることが癖になっていた

自分の気持ちと向き合い、心が整理できるようになると、問題のある投影は減っていきます。

*講師の視点 
「先生は私を嫌っていますよね」と言われたとき、否定して安心させるだけでは、うまくいかないことがあります。まず、「そう感じるのですね」と受け止めたうえで、その気持ちがどこから来たのかを、一緒に眺めていきます。そのやりとりの中で、相手の対人関係のパターンが見えてくることも少なくありません。

理解度チェック(練習問題)

問題1

自分が相手を嫌っているのに、「相手が自分を嫌っている」と感じてしまう。これは何でしょうか。

問題1の答え

投影です。自分の中の認めたくない感情を、相手の中にあるものとして感じています。

問題2

投影と投影同一視の違いを、簡単に説明してください。

問題2の答え

投影は、自分の感情が相手にあると「感じる」ことです。投影同一視では、さらに、相手がその感情どおりに感じたり、ふるまったりするよう、無意識のうちに働きかけてしまいます。

問題3

「あなたは私を軽蔑しているでしょう」と決めつけられたとき、巻き込まれないための対処として、どのようなものが考えられるでしょうか。

問題3の答え

内容をそのまま受け止めすぎず、「そんなふうに見えたの?」くらいに受け流すことが1つの方法です。相手の意見や感情に無理に付き合わないことがコツです。

よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

Q. 投影は誰でもしている?

はい、程度の差はありますが、誰でも日常の中で投影をしています。自分の感情を、そのまま自分のものとして受け止めるのは、意外と難しいことです。大切なのは、投影が起きていないかを、時々振り返ることです。

Q. 投影しているか分かる方法は?

「相手が自分を嫌っている」と強く感じたときに、「自分が相手をどう感じているか」を確認してみるのが、最初の一歩です。それでもわからないときは、信頼できる人に話して、別の見方を聞いてみるのも役立ちます。

Q. 決めつけられて疲れたら?

まずは、相手の言葉のすべてを「自分のこと」として受け止めなくて大丈夫です。距離をとる、第三者を交える、といった工夫も大切です。心身の不調が出ているときや、暴力・威圧的な言動があるときは、我慢せず、専門の相談窓口や医療機関に相談してください。

Q. 投影は悪いこと?

いいえ。心を守るための自然な働きなので、悪いこととは言えません。ただ、使いすぎると、人間関係にトラブルが出たり、自分の本当の気持ちに気づきにくくなったりします。バランスが大切です。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

・認知療法の基礎
・思考の歪みの改善
・行動療法の学習
・マインドフルネスワーク

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

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個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで精神分析の考え方を深めたい方は、下記をご参照ください。

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Defense mechanisms. In EBSCO Research Starters(Psychology).
 
[2] Klein, M. (1946). Notes on some schizoid mechanisms. International Journal of Psycho-Analysis, 27, 99-110.
 
[3] Ogden, T. H. (1979). On projective identification. International Journal of Psycho-Analysis, 60, 357-373.
 
[4] Young, R. M. (2012). Projective identification. Free Associations: Psychoanalysis and Culture, Media, Groups, Politics, 63.
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