オペラント条件付けの意味

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「オペラント条件づけ」について解説していきます。

オペラント条件づけとは

目次は以下の通りです。

①オペラント条件付けとは
②強化子,罰子とは
③学習理論の体形
④オペラント条件付けの活用

是非最後までご一読ください。

①オペラント条件付けとは

提唱者

オペラント条件付け(operant conditioning)はバラス・フレデリック・スキナー(Burrhus Frederic Skinner)によって1938年に提唱されました[1]

スキナーはアメリカの心理学者で、新行動主義と呼ばれる学派で有名な人物です。

スキナーは「スキナー箱」と呼ばれるレバーを押すと餌が出る装置を使って、ネズミの学習行動を研究していました。この時、レバーを押すという行動が餌という報酬につながることで、レバーを押す頻度が増えるという行動変容をオペラント条件付けとしました。

オペラント条件付けは1950年代までは、主にラットやハトを対象に行われていましたが、1960年代になると、人間にも研究の対象が広がっていきました[2]

 

意味

オペラント条件付けとは以下の意味があります。

自発的な行動に対して、何らかの刺激を与えることで、行動を変容させる過程
(心理学辞典,1999より簡略化して掲載)[3]

オペラント条件付けは別名、「道具的条件付け」とも言います。オペラントには”自発的な”という意味があり、自発的な行動に対し、報酬や罰を与えることで学習をするということです。

オペラント条件付けは、報酬による行動の変化と、罰による行動の変化があります。それぞれ具体例としては以下のようになります。

報酬による行動変化

算数のテストで100点を取って褒められた
→他の教科も頑張る

筋トレをしてモテた
→さらに筋トレに励む

罰による行動変化

車のスピード違反で切符を切られた
→安全運転を心がける

余計な一言で怒られた
→以後、余計な発言を控える

 

②強化子,罰子とは

オペラントの条件づけは、行動主義心理学の基本的な考え方で、学習理論をもとに構成されています。基本的な理論を図にすると、以下の通りです。

オペラント条件づけ

それぞれの意味を詳しく解説します。

弁別刺激とは

弁別刺激とは、オペラント行動を引き起こす刺激のことです。例えば、電話が鳴ると、電話に出るという行動フローがあるとき、電話の着信音が弁別刺激に当たります。

オペラント行動とは

オペラント行動とは、弁別刺激によって自発的に引き起こされる行動のことです。上図の「電話に出る」という行動の部分に当たります。行動した直後の刺激や環境によって、頻出回数が変わります。

強化子とは

強化子とは、オペラント行動によって得られる好ましい刺激のことを意味します。別名、「強化刺激」「正の強化子」「好子」とも呼びます。上図の好きな人からの電話だったという部分に当たります。また強化子によって、オペラント行動の自発頻度が高まることを「強化」と呼びます。

罰子

罰子とは、オペラント行動によって得られる嫌な刺激のことを意味します。別名、「嫌悪刺激」「負の強化」「嫌子」とも呼びます。上図の嫌いな人からの電話だったという部分に当たります。また罰子によって、オペラント行動の自発頻度が低くなることを「弱化」と呼びます。

三項随伴性とは

三項随伴性とは、ある刺激を受けることで、他の行動と結果を伴う性質のことを言います。オペラント条件づけにおいては、刺激-反応-結果の三項からなる連鎖のことを意味します。上図の電話が鳴るところから、好きな人・嫌いな人からの電話だったという一連の体験までの部分に当たります。

 

③学習理論の体系

学習理論の体系

スキナーは学習理論を体系立てたことにも貢献しています。パブロフ条件反射を、古典的条件付け(レスポンデント条件付け)とし、ソーンダイクの試行錯誤理論をオペラント条件付けに分けました。

パブロフ,ワトソンと古典的条件付け

古典的条件付けは「餌を見たら唾液が出る」などの、生理的な現象に表されるように受動的な反応です。

イヴァン・パブロフ(Ivan Pavlov)は、19世紀末から20世紀初頭にかけてロシアで活動した生理学者であり、犬を用いて唾液の分泌を条件付ける過程を研究しました。パブロフは、最初は犬が食べ物を見ると唾液が分泌されるという自然反応(無条件刺激)があることを発見しました。それから、食べ物と共に鳴らすベルの音(条件刺激)を何度も繰り返し提示することで、ベルの音だけでも唾液が分泌されるようになることを確認しました。

ジョン・ワトソン(John Watson)は、20世紀初頭のアメリカの心理学者で、パブロフの条件付けのアイデアをさらに発展させ、人間の行動に関する研究に応用しました。彼は、”Little Albert”と呼ばれる幼児を対象にした実験を行いました[4]。ワトソンはネズミと共に鳴らす大きな音を何度も繰り返し提示することで、幼児がネズミだけでなく白いもの全般に対して恐怖反応を示すようになることを実証しました。

ソーンダイクとオペラント条件付け

エドワード・L・ソーンダイク(Edward L. Thorndike)は、アメリカの心理学者であり、試行錯誤学習(Trial and Error Learning)の理論を提唱しました。

有名な実験の一つは、キャット・イン・ア・パズルボックス(Cat in a Puzzle Box)と呼ばれるものです[5]。パズルボックスに閉じ込められた猫は初めのうちは無目的に行動し、ランダムな試行錯誤を繰り返します。その後、特定の行動(例えば、レバーを引く)が正解につながり、パズルボックスからの脱出が可能になると、猫はその行動を覚え、効果的な行動パターンを獲得することができました。

古典的条件付け,オペラント条件付けの違い

古典的条件づけは、刺激と反応の結びつきを強化または弱化する学習形式です。自発性は関与しません。オペラント条件づけは、行動とその結果との関連を通じて学習が行われ、自発的な行動に基づいて報酬や罰により行動が変化します。

 

④オペラント条件付けの活用

オペラント条件付けは人の学習の過程を理論化したもので、様々な場面で応用されています。

心理療法での活用

心理療法では行動療法があります。行動療法とは、問題行動を新しい学習を通して適応的な行動に変えるという方法を取ります。オペラント条件付けを使った行動療法には、トークンエコノミー、行動変容法などがあります。例えば、アルコール依存になっている方に、アルコールを飲むと嫌悪感を覚える薬を処方されることで飲酒量を抑える治療がなされることがあります。

学習場面での活用

子どもの教育や勉強の成績アップにオペラント条件付けの理論が活用されることがあります。例えば、「100点を取るとシールをもらえる」「成績が上がって褒められると、より勉強を頑張るようになる」などが挙げられます。

ビジネスでの活用

また、ビジネス場面では社員の仕事の効率化や、モチベーションのアップにも役立っています。「営業成績があがるとボーナスが出る。次もボーナスを目指して頑張るようになる」「笑顔でかわいらしい女性従業員がいる飲食店にいく、次もその飲食店に行くようになる」などが挙げられます。

⑤関連コラム

行動療法

行動療法を実際に勉強してみたい方は以下のコラムを参照ください。オペラント条件付けを理論的基礎として、メンタルヘルスの向上を目指す手法を理解することができます。

行動療法入門

恐怖条件付け

オペラント条件付けに近い概念として、恐怖条件付けがあります。オペラント条件付けと合わせて学習することで、条件付けの理解を深めることができます。

恐怖条件付の意味とは

古典的条件付け

古典的条件付けはパブロフやワトソンによって展開された条件付けです。オペラント条件付けと合わせて学ぶことをおすすめします。

古典的条件付けとは 

 

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オペラント条件づけの意味とは,心理学講座

ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 中島 義明・子安 増生・繁桝 算男・箱田 裕司・安藤 清志(編)(1999).心理学辞典.有斐閣

[2] Wikipedia Babbling
*[3][5][6][7]の記述は[2]を参考にしました

[3] Owens, R. E. (2005). Language Development: An Introduction. Boston: Pearson. pp. 125–136

[4] Watson, J. B.; Rayner, R. (1920). “Conditioned emotional reactions“. Journal of Experimental Psychology. 3: 1–14.

[5] Wikipedia Trial and error

[6] Thorndike E.L(1898). Animal intelligence: an experimental study of the association processes in animals. Psychological Monographs #8