ストレスを診断・チェックする,尺度
みなさん、こんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
前回はストレスコーピングの基礎を解説してきました。今回は3回目として「ストレスを診断・チェックする方法」について解説していきます。
①ストレスマネジメント理論の基礎
②6種類のコーピングスキル
③ストレスを診断する方法
ストレスコーピング力を高めるには、診断やチェックを定期的に行うことが大切です。たとえば体重は、毎日測定して予想外に増えていたら急いでダイエットする人も多いと思います。
同じように、心の健康状態も定期的にチェックしてよい状態を保つことが必要です。変化を見逃すと、うつ病や適応障害に発展する可能性もあります。目的にあった方法で、心の状態を定期的に把握しましょう。
今回は以下の5つの診断を紹介します。いずれもWEBで手軽にできる方法です。
①職場のストレスチェック
②ストレスコーピング診断
③心と体のストレス診断
④うつ症状の診断
⑤災害後のストレス診断
ストレスの状況、ストレスへの強さを把握したい方は是非参考にしてみてください。
①職場のストレスチェック
1つ目に紹介するのは、厚生労働省が提供している「5分でできる職場のストレスセフルチェック」です。簡単な質問から、職場におけるストレスレベルが測定できます。
この尺度は、2015年から始まった労働安全衛生法が根拠になっています。50人以上の会社にはストレスチェックが義務づけられており、よく使われています。
使い方
Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンの検索窓に「ストレスチェック 5分」と入力してもアクセスできます。診断結果は、総合評価に加えて、ストレスの原因、ストレスによる心身反応、ストレス反応への影響因子がグラフで解説されています。以下のリンクからもアクセスできます。
診断・チェック後の対応
結果があまり良くなかった場合には、衛生管理者、産業カウンセラー、産業医に相談するようにします。なお会社に相談する場所がない場合は、心療内科や精神科の利用も視野に入れましょう。
身体的疲労感が高い場合は心療内科、不安感や抑うつ感などが大きい場合は精神科を受診してください。
②ストレスコーピング力診断
2つ目に紹介するのは、「ストレスコーピング力診断」です。夫婦仲、恋愛関係、友人関係、通勤状態など生活の幅広い場面でのストレス分析できます。
この方法は、アメリカの社会学者ホームズ、内科医のレーによって、患者5,000人を対象に1960年に作られたものです。アメリカ人向けに作られた古い診断のため、弊社で2020年にあった尺度に改変しています。
使い方
Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンの検索窓に「ストレス 診断 ダイレクト」と入力してもアクセスできます。結果は、総合評価に加えて、ストレス環境とその環境でのストレス状態について、それぞれ3段階の診断が確認できます。以下のリンクからもアクセスできます。
診断・チェック後の対応
診断結果として、ストレスが小さい環境にも関わらず、ストレスが大きい場合は、ストレスコーピング力が不足していることになります。結果には、コーピング力をつけるためのリンクがありますので、参考にしてみてください。
③心と体のストレス診断
3つ目に紹介するのは「お疲れ度チェック」です。簡単な質問に答えることで、心とからだの疲労度についてチェックできます。
この方法は、公益財団法人 世田谷保健センターが健康状態を確認するために実施しているストレス度チェックになります。
使い方
Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンの検索窓に「お疲れ度チェック」と入力してもアクセスできます。診断・チェックはweb上でできます。からだの疲れ編・こころの疲れ編、それぞれ15の質問にYes・Noのどちらかで解答するだけです。以下のリンクからもアクセスできます。
チェック後の対応
ストレス度をパーセントで数値化し、3つのタイプに分けて評価しています。
0-25%:疲れ知らず
30-65%:ややお疲れ
70-100%:かなりお疲れ
かなりお疲れ以上の場合、医療機関を視野に入れるといいでしょう。ややお疲れレベルまでなら、心理療法でストレスコーピング力を高めるようにしましょう。
④うつ症状の診断
4つ目は、簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS -J)です。うつ病の重症度を診断できます。アメリカ精神医学会の診断基準 DSM-IV の大うつ病性障害の診断基準にも対応しています。
適応障害やうつ病は、病気のレベルにも関わらず、我慢してしまう方がいます。簡易抑うつ症状尺度を使い、客観的な数字で把握すると、病院に行く決意をするきっかけになるかもしれません。
使い方
Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンの検索窓に「簡易 うつ病 厚生労働省」と入力しても出てきます。web上でも診断・チェックはできますが、PDFの資料のため印刷をすると進めやすいでしょう。以下のリンクからもアクセスできます。
診断・チェック後の対応
診断は、点数に応じて重症度が確認できます。
0-5:正常 6-10:軽度 11-15:中等度 16-20:重度 21-27:きわめて重度
重度以上の場合、医療機関を視野に入れるといいでしょう。中程度なら、心理療法を学び、ストレスコーピング力を高めていきましょう。
⑤ 災害後のストレス診断
5つ目に紹介するのは「外傷後ストレス診断尺度(Posttraumatic Diagnostic Scale, PDS)」です。強いストレスにあった後に、PTSDの傾向がどれぐらいあるかを診断することができます。
PDSはアメリカの心理学者エドナ・フォア(Edna B. Foa)により開発された方法です。「ストレス・災害時こころの情報支援センター」が無料で公開しています。
PDSは、自由記述式の調査票で10分~15分で実施できます。一番悩まされている出来事について回答することで、簡易な PTSD判定とPTSD重症度評価ができます。
使い方
Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンの検索窓に「こころの情報支援センター PDS」と入力してもアクセスできます。web上でも診断・チェックはできますが、PDFの資料のため印刷をすると進めやすいでしょう。以下のリンクからもアクセスできます。
ただしこちらの尺度は専門家向けなので、個人で症状が重たい方は、自分ではチェックしないほうがいいでしょう。診断のタイミングは慎重にしてください。
診断・チェック後の対応
PTSD重症度評価が確認できます。DSM-IVの診断基準から、以下のすべてを満たす場合にPTSDと判定されます。
A 基準
負傷または命の危険…「ハイ」が1つ以上
出来事の最中の無力さまたは恐怖…「ハイ」が1つ以上
B 基準
再体験…1以上の評定値が一つ以上
C 基準
回避・麻痺…1以上の評定値が三つ以上
D 基準
過覚醒 …1以上の評定値が二つ以上
E 基準
1ヶ月以上の症状持続…2以上の評定値
F 基準
生活機能障害…「ハイ」が1つ以上
PTSD重症度は、17症状項目について評定値の合計を求め評価します。
繰り返しになりますが、PTSDは自己診断は負担になることがあるので、精神的に辛い場合は精神科医の先生にお願いするようにしましょう。
仕上げ動画
ストレスの診断については動画でも解説しています。仕上げとしてご活用ください。
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