ストレスコーピングの種類と活用方法
みなさん、こんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
前回はストレスマネジメント理論の基礎を解説してきました。今回は2回目として、「6種類のコーピングスキル」について解説していきます。
①ストレスマネジメント理論の基礎
②6種類のコーピングスキル
③ストレスを診断する方法
ストレスコーピングは、イライラや不安を発散するストレスの解消方法です。複数のコーピングスキルを活用できると、ストレスが強い環境でも柔軟に対処することができるようになります。ストレスコーピングの引き出しを増やして、ストレスに強くなりましょう!
6種類のストレスコーピング
コーピングスキルは全部で以下の6種類があります。
①情動焦点型
②問題解決型
③認知評価型
④社会支援型
⑤身体的改善型
⑥気晴らし型
以下それぞれについて詳しく解説していきます。ご自身でも活用できそうなものを組み合わせてご活用ください。
①情動焦点型コーピング
情動焦点型コーピングとは、感情を抑圧せず吐き出し、表出する解消方法です。情動解決コーピングとしては以下のような例が挙げられます。
日記につらい気持ちを書く
悲しいことがあった時に我慢せず泣く
不快な気持ちを我慢せず伝える
スポーツで感情を発散する
ため込んだマイナス感情を表に出すと、心が整理されて安定することがよくあります。
精神分析という心理療法では、心には意識と無意識の領域があると考えていきます。意識は自分でも意識できる領域です。一方で無意識は、自分でもよくわからない領域になります。
ここで、何らかのストレッサーで悩みができたとします。悩みが解決できない場合には、心の防衛機能が働き、悩みを無意識のエリアに押し込んでしまう事があります、これを心理学では「抑圧」といいます。
抑圧された感情は、なんらかの形で意識化されると、スッキリする事があります。この状態を「カタルシス効果」と言います。ストレスがたまったら我慢せず、素直に表現していくことも大事なのです。
松浦(2015)[1]は、大学生100人を対象に、カタルシス効果を調査しました。調査では、興奮してサッカー観戦をした人、静かにサッカー観戦をした人が比較されました。その結果の一部が下図となります。
図のように、静かに観戦した人より興奮して観戦した人の方が、カタルシス効果が高いことが分かりました。
感情を出すことを我慢しすぎると、ストレスがたまりやすくなります。スポーツを観戦したり、日記を書いたり、たまには泣いてみるのも立派なストレスコーピングなのです。
悩みを吐き出す場所がない、感情をおさえることが多い、と感じる方は素直な感情表現を意識してみましょう。カタルシス効果の理解を深めたい方は、以下のコラムを参照ください。
②問題解決コーピング
問題を直接的に解決していく発散方法です。問題解決コーピングとしては以下のような例が挙げられます。
残業が多すぎる会社から転職する
深夜までうるさい隣人に抗議をする
長距離通勤を改善するため引っ越す
喧嘩した友人と話し合い仲直りする
もし抱えているストレスが、解決可能なものであるならば、物理的、精神的に解決してしまうことも大事です。比較的簡単に解決できそうなものは、問題解決コーピングも意識するようにしましょう。
③認知的コーピング
考え方を増やしたりほぐす解消方法です。認知的コーピングとしては以下のような例が挙げられます。
偏った考え方から多角的な考え方にする
マイナス面だけでなくプラス面を見つける
失敗から得たことを考える
たとえば、飲み会の席で一人ぼっちになったとしましょう。この時に「孤立は恥ずかしいこと」考えたら落ち込んだり、ツライ気持ちになるかもしれません。
この時にいろいろな角度から考えてみるのが認知的コーピングになります。たとえば「徐々に慣れていけばOK」「次は話題を用意してみよう!」など、考え方を増やすと、ストレスも軽くなります。
認知的コーピングは認知療法を学ぶと実践しやすくなります。以下のコラムでは認知行動療法についてより詳しく紹介しています。
④社会支援コーピング
周りからの支援をもらう助けを求めて、ストレスを軽くする方法です。社会支援コーピングとしては以下のような例が挙げられます。
悩みを周囲に打ち明ける
友人や家族に相談する
詳しい人に助言を求める
このように親しい人や詳しい人のサポートを得ることで、ストレスに対処することを意味します。心理学の研究では、周りから励ましてもらったり、肯定してもらう機会が多いほど、ストレスを感じにくくなることがわかっています。
困った時はお互い様です。辛い時は周りの助けをもらえるようにしておきましょう。社会支援コーピングをより深く知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
⑤身体的コーピング
身体の健康を向上させるストレスコーピングです。身体的コーピングとしては以下のような例が挙げられます。
十分な睡眠
適度に運動する
食生活を整える
日光浴をする
現代の生理学では、心と身体はつながっているという考え方が主流です。そのため、生活習慣を整えることで、内側からストレスも少なくなっていくのです。
甲斐(2011)[2]は、IT 関連企業 の従業員2952名に対して、運動量が抑うつにどの程度関係するかを調査しました。この調査では、135分以上運動している人たちと135分未満の人たちを比較しています。
結果は、135分以上運動している人たちと比較すると、135分未満の人たち抑うつが2倍以上になることがわかりました。
つまり、定期的に運動する人はメンタルヘルスも良好になると推測できます。
運動不足、身体がなまっている、不健康な食生活になっている…と感じる方は、以下のコラムをご参照ください。
⑥気晴らしコーピング
趣味や嗜好品、レジャーでストレスを発散するコーピングです。気晴らしコーピングとしては以下のような例が挙げられます。
旅に出る
趣味に没頭する
美味しい食事
このように自分にとってリフレッシュできる方法で、ストレスのコーピングをします。一度、問題から離れて、思いっきり羽を伸ばすことで、ストレスがリセットされていきます。ご自身が気兼ねなく楽しめる活動を見つけて、気晴らしを行ってみてくださいね。
仕上げ動画
動画でも解説しています。仕上げとしてご活用ください。
まとめ
現代社会に生きる私たちは、経済的、人間関係、ウイルスなど様々なストレスにさらされています。ストレスコーピング力をつけると、この複雑な社会を力強く乗り越えていくことができます。皆さんが、コーピングスキルを身に着け、心身ともに健康で、メンタルヘルスが安定した生活を過ごされることを願っています。
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