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行動療法のやり方,研究,不安階層表の使い方

行動療法のやり方,研究,不安階層表の使い方

みなさんこんにちは。公認心理師の川島です。私はこちらの心理学講座を開催しています。当コラムは認知行動療法の入門シリーズです。全4回で解説しています。

①認知行動療法の全体像
②認知行動療法と認知療法
③認知行動療法と行動療法
④マインドフルネス療法への展開

今回は「③行動療法」について解説していきます。

行動療法,心理療法

行動療法は名前の通り、行動に焦点をあてた心理療法で、生活していく上で問題となっている行動を改善し、健康的な行動を習得する方法です。医療機関では、社交不安障害、うつ病、潔癖症の治療などに幅広く活用されています。

また、病気だけでなく、積極性を身につけたい、恋愛力をつけたい、引っ込み思案をなおしたい、こんな日常的なお悩みにも活用できる守備範囲が広い心理療法なのです。今回の目次は以下の通りです。

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    ①行動療法とは何か
    ②行動療法と効果
    ③トークンエコノミー法
    ④罰則法
    ⑤不安階層表の使い方
    ⑥自立訓練法のやり方
    ⑦その他の技法
    ⑧不安の性質を知る

    ご自身でも活用できそうなワークを組み合わせてご活用ください。

    ①行動療法とは

    行動療法とは何か

    学習心理学という心理学の領域の実験に基づく実証的理論を臨床心理学に応用した心理療法です。行動療法という用語が最初に使われたのは1950年代の頃です。ハーバード大学のB.F.スキナーらの研究ではじめて使われました。

    その後、イギリスのアイゼンク、南アフリカのウォルピら、複数の学者によって、10種類以上の手法が生み出されていくことになります。行動療法は、これらの手法の総称となります。

    古典的であり歴史的にはやや衰退した時期もあるのですが、現在では長所と短所が明確になってきて、健康的な使い方ができるようになっています。筆者もカウンセリングでよく実施しています。

    歴史

    行動療法は、心理学の行動主義に基づき、観察可能な行動の変化を目指す心理療法です。その発展には複数の心理学者が関与しており、治療技法も進化を遂げました。以下に、その歴史と主要な技法について解説します。

    行動主義の誕生(1910年代)
    行動療法の基盤は、ジョン・ワトソンによる行動主義心理学の提唱に遡ります。彼は、観察可能な行動のみを科学的研究の対象とし、内面的な感情や思考は排除すべきと主張しました。この考え方が後の行動療法の基盤を築きました。

    古典的条件づけ(1920年代)
    イワン・パブロフの犬の実験による古典的条件づけの発見は、行動療法に重要な影響を与えました。刺激と反応の関係を明確にし、恐怖症の治療における基礎理論となりました。

    また、ワトソンとレイナーによる「アルバート坊やの実験」は、恐怖が学習によって形成される過程を示し、行動療法の実践的可能性を示しました。

    オペラント条件づけ(1930~1950年代)
    B.F.スキナー(B.F. Skinner)は、行動が報酬や罰といった環境要因によって変化することを示し、オペラント条件づけを提唱しました。

    スキナーの研究は、行動療法の技法として用いられる強化法やトークンエコノミーの基礎を築きました。これにより、治療対象となる行動の増減を効果的に操作する手法が確立されました。

    B.F.スキナー(B.F. Skinner)

    *B.F.スキナー(B.F. Skinner)

    行動療法の確立(1950年代)
    行動療法が具体的な治療法として確立されたのは、ジョセフ・ウォルピの貢献によります。彼は、恐怖症治療のために「系統的脱感作」を開発しました。

    この技法では、不安を感じる状況を段階的に克服するため、不安階層表を用いて恐怖対象に少しずつ暴露し、不安とリラクゼーションを同時に体験させることで恐怖を和らげます。

    また、ハンス・アイゼンク(Hans Eysenck)は、従来の心理療法の効果を批判的に検討し、行動療法の科学的有効性を支持しました。

    行動療法を提唱したハンスアイゼンク

    *ハンス・アイゼンク(Hans Eysenck)

    対象となる心の悩み

    行動療法は、病気だけでなく、日常生活の悩みを解決するための方法です。不安障害やうつ病などの心の病気に加えて、友達との付き合いや学校生活、ストレスや生活習慣の問題にも役立ちます。

    不安障害の治療では、怖いと感じることに少しずつ慣れる練習を行い、うつ病では心が軽くなる、行動を増やして気持ちを前向きにします。また、学校や家で緊張を減らしたり、時間の使い方を工夫したり、悪い癖を直したりすることにも使えます。行動に直接働きかけるので、分かりやすく実践しやすい方法です。

    ②行動療法の効果

    行動療法は以下の悩みや症状に効果を発揮します。

    不安の軽減

    暴露療法により、恐怖を引き起こす状況に段階的に慣れ、不安を軽減します。回避行動を減らし、恐怖反応を抑えることができます。

    高所恐怖症の患者が、最初に低い場所から徐々に高い場所に登る訓練を行い、恐怖を克服する

    無気力の改善

    行動活性化を用いて、活動的な行動を増やし、楽しさや達成感を感じる機会を増やします。無気力感や抑うつを改善します。

    うつ病の患者が毎日散歩を始めることで、気分が改善し、社会とのつながりを持つようになる

    強迫行動の改善

    反応阻止法や暴露反応法を通じて、強迫行動を減らし、思考と行動のコントロールを学びます。症状の軽減を目指します。

    手を洗う強迫行動を持つ患者が、汚れを感じても手を洗わずに過ごす訓練を行い、恐怖を軽減する

    依存症の改善

    依存行動を減らすために、トリガーとなる状況や思考を識別し、健康的な行動に置き換える方法を学びます。禁煙や断酒をサポートします。

    喫煙者が、ストレス時に喫煙をしないために深呼吸やガムを噛む代替行動を取り入れる

    研究紹介

    以下、行動療法に関する効果研究を紹介します。理解を深めたい方は参考にしてみてください。

    ①社交不安症の改善

    Anderssonら[1](2006)は、社交不安障害の患者に対して、自分でできる行動療法をインターネット上で実施してもらいました。以下の表は、行動療法を受けた人、受けていない人、それぞれの改善率が示されています。%が多いほど、改善した人の割合が多いことを意味しています。まずは社交不安から見ていきましょう。

    ちなみに社交不安障害とは「他人からの評価に対する過剰な不安(たいていネガティヴな評価「自分がどう思われているか?」)によって,対人関係,社会生活に問題が生じている状態」です。

    行動療法で社交不安が改善したの割合

    このように行動療法を受けた人の方が、受けていない人と比べてグラフが伸びていることが分かります。行動療法を行うことで、少しずつ会話への恐怖心が消えて、社交不安が軽減されることが考えられます。

    次に会話への自信について見ていきましょう。

    行動療法による社会不安の改善:会話への自信

    こちらも行動療法を受けた人のグラフの方が、受けていない人と比べて伸びています。行動療法を行うことでコミュニケーション場面が増え、少しずつ会話への自信も高まっていくのかもしれません。

    ②強迫症の改善

    矢野ら (2018)[2]では、行動療法で強迫症が改善した事例が紹介されています。

    Aさんは15歳の高校1年生の男子で、強迫症の症状が現れたのは中学1年生の時です。最初は野球の練習中にスパイクの裏を何度も確認するようになり、その後、冷蔵庫の扉やドアの鍵を何度も開け閉めするなど、確認行為が増加しました。

    その後も強迫観念や強迫行為はエスカレートし、以下のような症状も現れるようになりました。

    「ハリガネムシがついている」
    という強い不安
    「悪いゾーンから行動を始めると人が死ぬのではないか」
    という考えにとらわれる
    これらの不安から、確認行為を繰り返さずにはいられない状態

    精神科でアミトリプチリンという薬による治療を受け、一時的に症状は落ち着きました。しかし、高校入学後に症状が再び強くなり、母親の希望でカウンセリングを始めることになりました。

    最初の面談では、Aさんと母親に強迫症についての説明が行われました。強迫症は「強迫観念」と「強迫行為」が悪循環を起こす病気で、「暴露反応妨害法」という治療法が効果的だと伝えられました。

    治療では、恐怖の対象に少しずつ向き合う方法を取りました。具体的には、

    まずは黒い線やしみを触る練習から始める
    家では黒いケーブルに触れる練習を行う

    などの練習から始めました。最初は「ハリガネムシに寄生されるかも」という不安があったものの、実際に触れる体験を重ねることで「触れても大丈夫かもしれない」という気持ちが芽生えました。

    徐々にAさんの症状は改善していきました。特に気になっていた「良いゾーン・悪いゾーン」への不安も、継続的な治療により改善に向かいました。

    この事例は、薬物療法だけでなく、症状に向き合う心理療法を組み合わせることで、強迫症の改善が期待できることを示しています。また、本人の勇気ある取り組みと、家族のサポートが回復の大きな力となったことがわかります。

    ③パニック発作の改善

    志和ら(1999)[3]では、パニック発作が行動療法によって改善した事例が紹介されています。

    Bさんは過呼吸発作をきっかけに、パニック発作が頻繁に起こるようになりました。その結果、以下のような症状が現れました。

    電車に乗れなくなる
    一人での外出が困難になる
    広場恐怖の症状が出現

    これらの症状により、Bさんは仕事を休職し、実家に戻ることを余儀なくされました。

    地元の病院で薬物治療を受け、パニック発作の頻度は減少しましたが、広場恐怖は改善せず、新たな病院での治療が必要となりました。

    新しい病院では、以下のような治療方法が取られました。

    ストレス反応の詳しいチェック
    不安への対処法を段階的に学ぶ
    小さな不安から大きな不安へと、順を追って取り組む

    治療中は、筋肉の緊張具合や皮膚温度などを測定し、Bさんがどのように反応しているかを観察しました。

    実際に、治療を進めることで、最初は病院内のロビーに行くことから始め、少しずつデパートや公共交通機関に乗ることができるようになりました。治療が進むにつれて、Bさんの不安が減り、心身の緊張も和らいでいきました。最終的には、治療を終えた段階で、再び仕事に復帰し、日常生活を送ることができるようになりました。

    また、治療前後でストレスに対する反応も変化が見られました。心拍数や血圧の変化を測定するテストを行い、治療後はこれらの値が改善し、ストレスに対して適切に反応できるようになったことが確認されました。このように、MBF療法を通じて、Bさんは不安のコントロールができるようになり、生活の質が向上しました。

    ③トークンエコノミー法

    ここからは行動療法の具体的な手法を紹介します。まず1つ目はトークンエコノミー法です。当コラムでは、初学者向けの手法を紹介しますが、すべてのやり方で「記録すること」が基本になります。例えば、会話力をつけたいのであれば、

    ・今日は何分会話したか?
    ・相槌は打てたか?
    ・誰と会話したか?

    など具体的な行動を記録していきます。しっかりと記録をすると分析がしやすくなり、問題を改善しやすくなります。スマフォ、ノート、PC、などをまずは用意しましょう。

    記録-行動療法

    さて!具体的な話に進んで言います。トークンエコノミ法とは、ご褒美を人為的に作り、やる気を持続させる方法で、オペラント条件付けをベースとしています。

    行動療法の方向性は大きく

    「望ましい行動を継続できるようにする」
    「悪い習慣をやめる」

    の2つに分けられます。望ましい行動とは、例えば、

    人前に立てるようになる
    嫌なことをされたら嫌だと主張できるようになる
    高いところに登れるようになる
    勉強を途中でやめないで最後までする

    などが挙げられます。「こうなりたい」という目標があり、前向きな行動を増やしたい場合は、トークンエコノミー法が有効です。例えば、以下のような例が挙げられます。

    達成したらお菓子を食べる
    ミシュランにのっているケーキを食べる
    温泉旅行に行く
    達成すると給料があがる

    ご褒美は自分で用意できそうなものでもいいですし、誰かからもらえるものでもOKです。要は、達成したらメリットがある状態にすることが大事なのです。

    ご褒美を用意するやり方は、行動療法の根幹をなす手法です。シンプルですが効果的なので、是非意識してみてください。

    報酬-行動療法

    ④罰則法

    次に「悪い習慣をやめる」について考えて行きます。悪い習慣をやめるとは例えば、

    お酒の過剰摂取をやめる
    ギャンブルをやめる
    暴食をやめる
    喫煙をやめる

    などが挙げられます。このような悪い習慣を減らしたい場合は罰を用意しておくと良いでしょう。例えば、以下のような例が挙げられます。

    約束を破ったらお小遣いを減らす
    約束を破ったら恋人と1か月会えない
    SNSで宣言して挫折したら恥をかくようにする
    失敗したら上司に強く叱ってくれとお願いしておく

    などが挙げられます。罰は自分で用意できそうなものでもいいですし、誰かにお願いしてもOKです。要は、悪い習慣が再発したらデメリットがある状態にすることが大事なのです。

    罰-弱化

    トークンエコノミー法、罰則法は、シンプルですが、行動療法のもっとも基本的なやり方で、わかりやすいものです。是非参考にしてみてください。

    ⑤不安階層表の使い方

    ここからは本格的なやり方を解説していきます。まずは不安階層表を紹介します。

    スモールステップを徹底

    不安階層表とは、スモールステップを作って1つ1つ丁寧に達成していくシートを意味します。具体的には、1番上に最終目標を記入し、3段階くらいの小さな練習を設定します。そして各練習について、不安得点や実行日を記入します。

    不安階層表の例

    不安階層表はダウンロードできるようにしておきました。ご自身の状況に合わせて活用してみてください♪
    不安階層表

    以下の記入例は、私(川島)が引きこもりの時期に書いた不安階層表です。

    不安階層表の練習問題

    目標設定のポイントは、具体的な行動で本当に小さな目標にすることです。トークンエコノミー法と合わせて、達成できたときには自分にご褒美をあげても良いかもしれません。以下事例に応じてサンプルを折りたたんでおきました。参考にしてみてください。

    潔癖症が治らない人の不安階層表

    潔癖症を改善するための不安階層表です。手を洗う回数を少しずつ減らすステップになっています。

    潔癖症な人の不安階層表

    パニック障害,広場恐怖の不安階層表

    パニック障害の方の治療用の不安階層表です。少しずつ人が多い場所に行動範囲を広げています。

    不安階層表の記入例

    飲み会が苦手な人の不安階層表

    飲み会が苦手な花子さんの不安階層表です。コミュニケーションの幅を少しずつ広げています。

    飲み会が苦手な人の不安階層表

    婚活中の不安階層表

    婚活中の方の不安階層表です。婚活パーティーに慣れることからはじめて、少しずつアプローチを強くしています。

    不安階層表の記入例

     

    ⑥自律訓練法

    行動予定を立てたとしても、体が緊張してなかなか動かない…という方もいると思います。そんなときは自律訓練法がオススメです。

    自律訓練法とは?

    自律訓練法は、交感神経と副交感神経のバランスを整えるリラクセーション法です。

    神経には、交感神経と副交感神経の2種類あります。副交感神経は、落ち着いたときに働くリラックス系です。一方で、交感神経は、集中している時や緊張や怒りなどで力が入るようなときに働きます。

    交換神経と副交感神経

    自律訓練法の手順

    自律訓練法は背景公式と6つの訓練公式で構成されています。

    【背景公式】
    心が落ち着いている状態を作ります。

    ①環境設定をする
    基本的には横になるか、イスに腰掛ける姿勢をとります。楽な姿勢で、肩の力を抜いて目を閉じます。体を締め付けているベルトなどは外します。

    ②腹式呼吸をする
    5回から10回くらい行います。鼻から3秒吸って、6秒吐くを繰り返します。

    横隔膜が上下運動するように進めてみてください。腹式呼吸で、よい空気を吸って悪い空気を出すイメージで進めます。

    ③落ち着いているか確認
    深呼吸をしながら、「心が落ち着いている」と心の中でつぶやき実感させます。

    自立訓練法のやり方

    本番直前など時間がない時は、背景公式だけでもOKです。1分程度行うだけでも少し落ち着くことができます。背景公式が終わったら次の公式に入っていきます。

    【第一公式】
    両腕、両足の重さを感じる
    「両腕両足が重たい」と感じる練習です。重感練習は、脳と筋肉の両方がリラックスできる方法です。

    【第二公式】
    両腕、両足の暖かさを感じる
    「両腕両足が温かい」と感じる練習です。温感練習は、重感練習と同様にリラックス効果が高い方法になります。

    【第三公式】
    心臓が静かに鼓動を打っているのを感じましょう。

    【第四公式】
    楽に呼吸している自分を確認していきます。

    【第五公式】
    お腹の温度を感じます。ぽかぽか暖かいことを実感します。

    【第六公式】
    額を意識します。額が涼しい感覚を味わいます。

    *消去動作
    自律訓練法をすると、深いリラックス状態になります。再び、活動を再開する場合は、消去動作として、首や肩を回したり、グーパー・グーパーをしたりして意識を活性化させるようにします。

    第二公式までは、安全性が高いとされています。緊張しやすい場面や不眠の時には、第二公式までを3分間3セットくらいで実践してみてください。うつ病、糖尿病、消化器系の疾患をお持ちの方は、第三公式以降は専門家と行ってください。

    ⑦その他の技法

    ここから先は行動療法をより深く理解したい方向けの内容です。さまざまな研究や知識をお伝えします。基礎的なことは理解したけど、もっと様々な手法を知りたい方、医療関係者や福祉関係の学生さんは参考にして頂けると幸いです。

    発展編:方法論系①~⑤

    方法論系は古典的条件付けを前提とした行動療法です。5種類紹介します。

    ①暴(曝)露療法,エクスポージャー法

    暴(曝)露療法はエクスポージャー法とも呼ばれます。恐怖場面に思い切って突入していくことで、慣れてくるという方法です。暴(曝)露療法は2つのやり方で実施されます。

    *フラッティング
    フラッティングは恐怖心がある場面にいきなりさらされることで、段々と慣れていくやり方です。行動療法の中でもかなり強い手法です。たとえば、高所恐怖症の人がいたとして、やや強引ですが思い切って高い場所で訓練していきます。最初は恐怖がありますが、時間とともに緊張が解けることを狙いとしています。

    *不安階層表
    不安階層表は少しづつ成功を積み重ねていく方法で、当コラムでも紹介しました。スモールステップで対応していきます。

    詳しくはこちらの暴露療法コラムで解説しています。

    行動療法ブラッティング

    ②暴(曝)露反応妨害法

    暴(曝)露反応妨害法は、不適切な繰り返し行動などをあえてやらないことで健康的な行動を取れるようにする手法です。例えば、戸締りを何度も確認してしまう方の場合は、あえて確認しないという行動を目指して練習していきます。暴(曝)露反応妨害法は先程と同じく、フラッティングや不安階層表を使いながら実施されます。

    ③嫌悪療法
    問題行動に罰を与え、行動を抑制する法です。たとえば、アルコール依存症の人の場合。お酒を飲むと気分が悪くなる抗酒剤を飲んでもらうなどが挙げられます。お酒を飲む→気分が悪くなるというフローを脳に覚えさせ、飲酒を抑制していきます。当コラムでは罰則法として紹介しました。

    嫌悪療法の例

    ④自律訓練法
    自己催眠を用いたリラックスで、心身を安定させる方法です。背景公式と6つの訓練公式で構成されています。当コラムで紹介しました。

    ⑤系統的脱感作法
    緊張しやすい場面を想像しながら、同時に筋弛緩法などを用いて身体をリラックスさせる方法です。この方法は、強迫性障害や恐怖症に対する治療法で、逆制止という原理を活用しています。逆制止とは、恐怖や不安が現れた際に、反対の感情を起こすことで、恐怖や不安が少なくなるのです。ちなみに先に紹介したウォルピによって提唱されたものです。

    系統的脱感作法の例

    発展編:徹底論系⑥~⑨

    徹底論系はオペラント条件付けをベースにした手法です。報酬を多用する特徴があります。

    ⑥シェーピング
    スモールステップで練習を重ね、成果が出るとお菓子やお金など、何かが与えられる方法です。不安階層表に似ている技法です。

    ⑦トークエコノミー
    子どもによく利用する療法です。できないことができたときに、シールをあげたり、バッチを与える方法です。

    ⑧バイオフィードバック
    自分が本当にリラックスしているかを、数字でみながら確認していく方法です。リラックスしているかどうかは判断が難しいため、脳波計などをみながら自分の状態を確認していきます。

    行動療法リラックスを確認する方法

    ⑨タイムアウト
    子どもによく使われる方法です。感情が爆発しているときには、時間に区切りをつけ、場所を移動して心を落ち着けていく方法です。。ADHDなど発達障害を持つ子どもに効果的であり,学校・臨床場面でも多用されています。

    この方法は、大人にも効果があります。悩みが強くなった時には、カフェなど、静かな場所に移動してみると心を落ち着けることができますよ。

    発展編:学習系⑩

    ⑩モデリング・ロールプレイ
    模擬場面を設定して、人の行動を観察しながら勉強する方法です。ソーシャルスキルトレレーニング(SST)の中でよく用いられています。

     

    ⑧不安の性質を知る

    行動療法はその名の通り、行動することを大事にした心理療法です。行動には不安がつきものなので、その特性を理解しておくと成果が出やすくなります。不安には以下の性質があります。

    ・不安はゼロになることはない
    ・不安は常に揺れ動いている
    ・不安はきっかけがあると急に強くなる
    ・5~10分がピークとなる
    ・それ以上たつと自然と小さくなっていく

    坂野(2013)[4]はこのような性質を以下のように図に示しています。

    要約すると、「長期的にみると、回避するよりも行動したほうが、不安は小さくなる」ということです。勇気をもって行動するようにしましょう。

    仕上げ動画

    当コラムの仕上げとして行動療法の動画を見るとより理解が深まると思います。参考にしてみてください。

    4つの心理療法を抑えよう

    認知行動療法入門は、4つのシリーズで紹介しています。

    認知行動療法の基礎①全体像
    認知行動療法の基礎②認知療法
    認知行動療法の基礎③行動療法
    認知行動療法の基礎④マインドフルネス療法

    まだ読んでいないコラムがありましたら是非、ご一読ください。

    しっかり身につけたい方へ

    当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。

    ・行動療法の基礎
    ・スモールステップの作り方
    ・対人不安の改善
    ・暖かい人間関係を築くコツ

    講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)

    行動療法のやり方,研究,不安階層表の使い方,心理学講座

    監修

    名前

    川島達史


    経歴

    • 公認心理師
    • 精神保健福祉士
    • 目白大学大学院心理学研究科 修了

    取材執筆活動など

    • NHKあさイチ出演
    • NHK天才テレビ君出演
    • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
    • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


    YouTube→
    Twitter→
    元専修大学教授 長田洋和

    名前

    長田洋和


    経歴

    • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
    • 東京大学 博士 (保健学) 取得
    • 公認心理師
    • 臨床心理士
    • 精神保健福祉士

    取材執筆活動など

    • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
    • うつ病と予防学的介入プログラム
    • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

    臨床心理士 亀井幹子

    名前

    亀井幹子


    経歴

    • 臨床心理士
    • 公認心理師
    • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
    • 精神科クリニック勤務

    取材執筆活動など

    • メディア・研究活動
    • NHK偉人達の健康診断出演
    • マインドフルネスと不眠症状の関連

    ・出典
    [1] Andersson, G., Carlbring, P., Holmström, A., Sparthan, E., Furmark, T., Nilsson-Ihrfelt, E., Buhrman, M., & Ekselius, L. (2006). Internet-based self-help with therapist feedback and in vivo group exposure for social phobia: A randomized controlled trial. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 74, 677–686.
     
    [2] 矢野宏之・黒木俊秀 (2018). 強迫症者に対して暴露反応妨害法及び行動実験を使い分けることが有効であった一例. 九州大学心理臨床・人間発達研究センター紀要, 9, 195-204.
     
    [3] 志和資朗,松田俊,佐々木高伸(1999).広場恐怖を伴う慢性のパニック障害患者に対して現実的脱感作法とマルチフィードバック療法を併用した 1 症例 – バイオフィードバック研究, – jstage.jst.go.jp