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ボディースキャン法とは

ボディースキャン法とは,身体の観察練習

みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは「マインドフルネス療法シリーズ」の3本目です。「ボディースキャン法」をテーマに解説していきます。

ボディースキャン法とは、足先から頭まで、体の各部分に順番に注意を向け、そこで感じられる感覚をそのまま観察していく練習です。マインドフルネスストレス低減法(MBSR)で最初に取り組む、代表的な練習の1つです(カバット・ジン)[1]。

目次は以下の通りです。

目次

①ボディースキャンとは

ボディースキャンは、体を「スキャン(走査)」するように、注意を少しずつ移動させながら感覚を観察する方法です。まずは、その目的と特徴を確認しましょう。

体の感覚に気づく練習

マインドフルネスで観察する対象は、大きく「考えや感情などの心の面」と「呼吸や体の感覚などの体の面」に分けられます。ボディースキャンは、特に体の面に気づく力を育てる練習です。

私たちは普段、肩のこりや足の疲れに、つらくなるまで気づかないことがよくあります。体の小さな変化に気づけるようになると、ストレスがたまっているサインにも早く気づきやすくなります。

リラックス法との違い

ボディースキャンを行うと、結果としてリラックスすることがよくあります。しかし、目的はリラックスすることではなく、体の感覚に「気づく」ことです。

体を変えようとするより、今の状態に気づくことを一貫して大切にする点が、ボディースキャンの特徴とされています(ドリーベンら)[2]。

緊張している部分があれば、無理にゆるめようとせず、「ここが緊張しているな」と観察します。この点が、筋肉をゆるめることを目的とするリラクセーション法との違いです。

②始める前の準備と姿勢

ボディースキャンは、慣れるまでは20〜30分ほどかけて、ゆっくり行います。落ち着いて取り組めるよう、環境と姿勢を整えましょう。

環境を整える

部屋は暑すぎず寒すぎない温度にし、人に邪魔されない時間を選びます。体が冷えやすい方は、薄い毛布などをかけておくとよいでしょう。

初めての方は、最初から30分に挑戦せず、10分ほどの短い形から始めてもかまいません。

姿勢をとる

床に仰向けになり、両腕を体の横に置きます。頭やひざの下に薄い枕やクッションを置くと、楽な姿勢を保ちやすくなります。

眠くなりやすい方や、横になるのが落ち着かない方は、椅子に座って行っても大丈夫です。

ガイド音声を使う

慣れないうちは、注意を移す順番を覚えるのが難しいものです。指導者の声に合わせて進めるガイド音声を使うと、順番を気にせず、体の感覚に集中しやすくなります。

ガイド音声がない場合は、このコラムの手順を自分の声で録音し、それを聞きながら行う方法もあります。ゆっくりとした話し方で、各部分の間に十分な間を取って録音しましょう。

③ボディースキャンの手順

ここでは、足先から頭へと注意を移していく基本の手順を、3つの段階に分けて紹介します。各部分で、温かさ、重さ、触れている感覚、何も感じないことなど、そのときの感覚をそのまま観察します。

呼吸と足先から始める

①目を閉じて、呼吸の感覚を感じる
②床に支えられている体の重みを感じる
③左足のつま先に注意を向ける
④足の裏・かかと・甲・足首へ移す

つま先では、指の1本1本の感覚や、靴下が触れている感覚などを観察します。体について「考える」のではなく、体を「感じる」ことを意識しましょう。

脚から胴体へ移す

⑤すね・ふくらはぎ・ひざ・太ももへ
⑥右足も、つま先から同じように進む
⑦腰・お腹・胸・背中・肩へ移す

注意がそれて考えごとをしていることに気づいたら、そのことに気づけたことを大切にして、直前に観察していた部分に注意を戻します。

腕と頭、そして全身へ

⑧両手の指先から手首・腕・肩へ
⑨首・のど・顔・頭へと移す
⑩最後に体全体と呼吸を感じる

終えるときは、大きな呼吸を何回か行い、手を握ったり開いたりしてから、ゆっくり目を開けます。急に起き上がらず、体を横に向けてから起きるようにしましょう。

④うまくいかないとき

ボディースキャンに取り組むと、多くの人が同じようなつまずきを経験します。よくある3つのケースと対処法を紹介します。

感覚がよく分からない

何も感じない部分があるのは自然なことです。「ここには特に感覚がないな」と気づければ、それで十分です。

感覚を無理に作り出す必要はありません。

眠くなってしまう

横になって行うと眠くなりやすいものです。眠気が強いときは、椅子に座って行う、目を軽く開ける、疲れていない時間帯に行うといった工夫をしてみましょう。

不快な感覚に気づいた

痛みやかゆみ、こわばりなどに気づいたときは、それを消そうとせず、「ずきずきする」「ちくちくする」など、感覚の特徴を観察します。つらいときは、呼吸や別の部分に注意を移してかまいません。

考えごとが止まらない

体の感覚に注意を向けようとしても、仕事や人間関係の考えごとが次々に浮かんでくることがあります。考えが浮かぶのは自然なことなので、「考えごとをしていたな」と気づいたら、直前の体の部分に注意を戻しましょう。

何十回それても、そのたびに戻ってくることが練習です。うまく集中できなかった日も、「それに気づけた回数が多かった日」と考えてみてください。

⑤効果と研究の状況

ボディースキャンは、MBSRなどのプログラムの中で、他の練習と組み合わせて行われることがほとんどです。そのため、ボディースキャンだけの効果を調べた研究は、まだ多くありません。

プログラムの中での役割

ドリーベンら(2013)[2]は、ボディースキャンがMBSRで最初に取り組む自宅練習であり、その後に学ぶすべての練習の土台になっていると説明しています。一方で、ボディースキャンだけに注目した研究は、これまでほとんど行われてこなかったことも指摘しています。

MBSRのプログラム全体の効果については、MBSRのコラムで紹介しています。

期待できることの目安

ボディースキャンを続けることで、体の緊張やストレスのサインに気づきやすくなることが期待されます。ただし、「感情をコントロールできるようになる」「病気が治る」といった効果が、誰にでも起こるわけではありません。

まずは、体の感覚に気づく時間を持てたこと自体を、小さな成果として大切にしましょう。

⑥練習するときの注意

ボディースキャンは体の感覚に深く注意を向けるため、人によってはつらい感覚や記憶が呼び起こされることがあります。安全に取り組むための注意点を確認しましょう。

体に関するつらい経験

体に関するつらい経験をした方は、体の特定の部分に注意を向けることで、不安が強まることがあります。その場合は、目を開けたまま行う、その部分は飛ばす、外の音や景色に注意を向けるなど、自分に合った形に変えてください。

痛みのある病気や、原因の分からない体の症状がある場合は、まず医療機関で検査を受けることが大切です。

中止の目安

練習中に強い不安や息苦しさ、自分が自分でないような感覚が出てきたときは、すぐに中断してください。安全に続けるための目安は、マインドフルネスの副作用と安全な実践法のコラムで詳しく解説しています。

⑦よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

何も感じない部分がある

何も感じない部分があるのは、ごく自然なことです。たとえば、ひざやすねなどは、普段あまり注意を向けないため、感覚がはっきりしないことがよくあります。その場合は、「今、ここには特に感覚がないな」と気づくだけで十分です。感覚を無理に作り出そうとする必要はありません。何も感じないことに気づくことも、体を観察する大切な練習です。

続けるうちに、少しずつ細かな感覚に気づけるようになっていきます。感覚に気づく力は、練習を重ねるほど育っていきます。

途中で寝てしまう

横になって行うボディースキャンでは、途中で眠ってしまう人がとても多いです。眠ってしまうこと自体を責める必要はありません。ただ、ボディースキャンの目的は、眠ることではなく、目を覚ましたまま体の感覚に気づき続けることです。眠気が強い場合は、椅子に座って行う、目を軽く開ける、時間を短くする、疲れていない時間帯に行うといった工夫をしてみてください。

寝つきをよくするために寝る前に行うのであれば、そのまま眠っても構いません。自分に合った時間帯や姿勢を探しながら続けてみてください。

体の痛みがあるときは?

痛みのある部分にも、無理のない範囲で注意を向けることはできます。痛みを消そうとするのではなく、「ずきずきする」「熱い感じがする」など、その感覚の特徴を観察します。つらくなったら、痛みのない部分や呼吸に注意を移して構いません。

ただし、原因の分からない痛みや、強い痛みが続いている場合は、まず医療機関で体の検査を受けることが大切です。ボディースキャンは、医療の代わりではなく、治療と並行して取り入れるものと考えてください。痛みとの付き合い方を学ぶ方法の1つとして、無理のない範囲で取り入れてみてください。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

マインドフルネスの学習
心が落ち着く呼吸法
はじめての認知行動療法
感情コントロールの練習

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースでマインドフルネスを深めたい方は、下記をご参照ください。

個別レッスンの詳細はこちら。

シリーズの続きを読む

座ったり横になったりする練習が苦手な方は、歩きながら体の感覚を観察する方法も試してみてください。

④歩行瞑想とは,マインドフルネスで歩く方法

ボディースキャンを中心に組み立てられた8週間のプログラムについて知りたい方は、こちらのコラムがおすすめです。

⑨MBSRとは,マインドフルネスストレス低減法

シリーズでは他に、基本となるマインドフルネス呼吸法や、食べる体験を観察するレーズンエクササイズも紹介しています。

他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。

心理療法の一覧

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Kabat-Zinn, J. (1990). Full catastrophe living: Using the wisdom of your body and mind to face stress, pain, and illness. New York: Delacorte.
 
[2] Dreeben, S. J., Mamberg, M. H., & Salmon, P. (2013). The MBSR body scan in clinical practice. Mindfulness, 4(4), 394-401.
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