みなさん、こんにちは。公認心理師・精神保健福祉士の川島達史と申します。私はこちらのコミュニケーション教室を開催しています。
「なぜか同じような人間関係で、いつも悩んでしまう」「昨日見た夢の意味が気になる」。自分の行動や感情の理由が、自分でもわからないことは、よくあります。そんなとき、「無意識」という言葉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。今回は、精神分析の中心となる概念「無意識」について、フロイトとユングの考え方を中心に解説します。

無意識とは
フロイトによる説明
フロイトは、無意識を次のように説明しています。
何らかの理由で、自分のものと認めがたい欲求、願望、感情などは、抑圧され、本人には自覚されない存在である「無意識」となる。しかし、それらは存在し続け、意識レベルの行動に影響を与える。
心の3層構造(局所論)
フロイトは、この仮定をもとに、心が「意識」「前意識」「無意識」の3つの層からできているという「局所論」を示しました。自分や周りの状況など、はっきり認識できている部分が「意識」、状況に応じて思い出せる部分が「前意識」、思い出そうとしても思い出せない部分が「無意識」です。局所論のくわしい説明は、精神分析とはのコラムをご参照ください。

こんな経験はありませんか
次のようなことに心当たりがある方は、無意識の働きと関係しているかもしれません。
・なぜか同じような人間関係で、いつも悩んでしまう
・理由もなく、その人が苦手だと感じる
・大事な場面ほどミスを繰り返してしまう
・自分の本当の気持ちが、自分でもよく分からない
もう少し詳しい背景を知りたい方は、以下を開いてみてください。読み飛ばしても、この先の内容は問題なく読み進められます。
どちらの研究も、「関連」を示したものであり、無意識の存在を直接証明するものではありません。研究結果は、無意識という考え方を検証する手がかりの1つとして、参考程度に受け止めてください。
抑圧と葛藤、心の症状
抑圧とは
無意識には、悩みの「一時避難場所」のような側面があります。私たちは、現実で大きなストレスを感じると、その記憶を無意識に抑圧して、自分を守ろうとします。たとえば、次のようなものです。
失恋した記憶を、すぐに忘れようとする
つらい体験を、無意識に押し込める
大変なのに、感じないふりをする
こうした、心を守ろうとする働きを「防衛機制」といいます。くわしくは、自我防衛機制のコラムをご参照ください。
無意識と葛藤
一方でフロイトは、抑圧することが多すぎたり、無意識の葛藤が強くなりすぎたりすると、その結果として、心の症状が生じると考えました。たとえば、体に医学的な原因が見つからないのに、体が動かしにくくなる、視力や聴力が落ちる、といった症状です。
私が実際に出会った事例では、毎日元気そうに見えていた女性が、体がしびれるという症状を訴えました。いくつもの病院を回っても、すぐにぶり返してしまいます。心理カウンセリングを受けたところ、実は彼女は職場でパワハラを受けており、本人も自覚しないまま我慢し続けていたことがわかりました。実際に対策をとったところ、しびれがおさまったというケースがありました。
ただし、体の症状が出たときは、自己判断で「心の問題」と決めつけず、まず医療機関で身体の検査を受けることが大切です。
元型で自分を振り返る
ユングが示した6つの元型
ユング[7]は、集合的無意識には、共通のパターン「元型(Archetypes)」があると考えました。代表的なものを紹介します。
・ペルソナ
その時々の場面や役割に合わせて見せる、自己の側面
・シャドウ
無意識に抑圧された、劣等感、不道徳な心理、敵意、不安など
・グレートマザー
あらゆるものを育む、母親(地母神)のイメージ
・アニマ
男性の無意識にある、女性的なもののイメージ
・アニムス
女性の無意識にある、男性的なもののイメージ
・セルフ
意識と無意識を含む、心全体の中核。心を統合させる働きを持つ

自分にあてはめてみる
元型は、あくまで1つの見方であり、科学的に実証されたものではありません。ただ、「職場では頼れる先輩を演じるけど(ペルソナ)、本当は甘えたい気持ちもある」というように、自分の中の複数の側面に気づく、きっかけとして使えます。次の質問を、気軽に考えてみてください。
・普段、人前でどんな自分を「演じて」いるだろうか(ペルソナ)
・認めたくない、隠している自分の一面はないだろうか(シャドウ)
・自分の中の、優しさや厳しさは、それぞれどこから来ているだろうか
答えが出なくても構いません。「そういう見方もあるんだ」と、自分を眺める視点が1つ増えることに意味があります。
心理療法での無意識の扱い
制度上の位置づけと現代の治療
無意識は、目に見えない心の領域のため、科学的に検証しにくい面があります。そのため、精神分析の無意識の理論には、批判もあります。一方で、無意識を扱う治療は、制度上の位置づけもあります。
日本の診療報酬制度には、口述の自由連想法を用いて、抵抗、転移、幼児体験などの分析を行い、洞察へと導く「標準型精神分析療法」の項目があります(診療報酬点数表)[8]。ただし、この療法は、習熟した医師が行うものとされ、実際に行っている医療機関は多くありません。
現代の精神分析の流れをくむ治療の中には、無意識の深い部分ではなく、意識に近い体験に焦点を当てるものもあります。たとえば、メンタライゼーションに基づく治療(MBT)は、自由連想で無意識を探るのではなく、意識に近い心の体験を扱うとされています(Batemanら)[9]。また、面接室での関係の中に現れる感情のパターンについては、転移・逆転移のコラムで解説しています。
自分の内側にある無意識を、無理に探ろうとする必要はありません。日常の中で、少しずつ気づいていく方法があります。
パターンに気づくノート
「なぜか、いつも同じ場面で不安になる」「同じような人間関係を繰り返す」と感じたときに、次の3つを書き留めてみてください。
①どんな場面で、その気持ちになったか
②似たような場面が、過去にもなかったか
③そのとき、心の中でどんな考えが浮かんだか
1回で答えが出なくても構いません。数週間かけて書きためると、自分でも気づいていなかった「くり返しのパターン」が見えてくることがあります。つらい記憶に近づいて苦しくなるときは、無理をせず、専門家に相談しましょう。
まとめ
無意識の世界は、実証が難しく、これからさらに研究が進む領域です。それでも私たち心理療法家は、相談に来られる方の中に、本人も気づかない心の動きがあり、その中に悩みの手がかりがあることを、日々感じています。自分の心に興味を持つことが、心を理解する第一歩になります。
講師の視点
無意識という言葉は、少し難しく聞こえるかもしれません。でも、「なぜか毎回、同じところでつまずく」といった感覚があるなら、それが手がかりです。カウンセリングでは、その「なぜか」を一緒に眺めていきます。答えを急いで出すより、「そういえば、いつもそうかも」と気づくことが大切だと感じています。
理解度チェック(練習問題)
問題1
つらい記憶や認めたくない感情を、無意識の中に押し込めて、意識しないようにする働きを何というでしょうか。
問題2
ユングが示した、人類に共通して受け継がれている無意識のパターンを、何というでしょうか。
問題3
フロイトとユングの無意識の考え方の違いを、簡単に説明してください。
よくある質問Q&A
私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。
・認知療法の基礎
・思考の歪みの改善
・行動療法の学習
・マインドフルネスワーク
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)
個別レッスン
個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで精神分析の考え方を深めたい方は、下記をご参照ください。
シリーズの続きを読む
精神分析の全体像を知る
心を守る無意識の働きを学ぶ
感情を表に出すことの意味を知る
自分の感情を相手に映す心の働きを知る
面接室で生じる感情のパターンを知る
精神分析の流れをくむ現代の治療を知る
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




