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無意識とは

無意識とは,フロイトとユングの心理学

みなさん、こんにちは。公認心理師・精神保健福祉士の川島達史と申します。私はこちらのコミュニケーション教室を開催しています。

「なぜか同じような人間関係で、いつも悩んでしまう」「昨日見た夢の意味が気になる」。自分の行動や感情の理由が、自分でもわからないことは、よくあります。そんなとき、「無意識」という言葉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。今回は、精神分析の中心となる概念「無意識」について、フロイトとユングの考え方を中心に解説します。

目次

無意識,行動心理,イラスト作成wai13991様

無意識とは

フロイトによる説明

フロイトは、無意識を次のように説明しています。

何らかの理由で、自分のものと認めがたい欲求、願望、感情などは、抑圧され、本人には自覚されない存在である「無意識」となる。しかし、それらは存在し続け、意識レベルの行動に影響を与える。

心の3層構造(局所論)

フロイトは、この仮定をもとに、心が「意識」「前意識」「無意識」の3つの層からできているという「局所論」を示しました。自分や周りの状況など、はっきり認識できている部分が「意識」、状況に応じて思い出せる部分が「前意識」、思い出そうとしても思い出せない部分が「無意識」です。局所論のくわしい説明は、精神分析とはのコラムをご参照ください。

精神分析におけるフロイトの無意識について

こんな経験はありませんか

次のようなことに心当たりがある方は、無意識の働きと関係しているかもしれません。

・なぜか同じような人間関係で、いつも悩んでしまう
・理由もなく、その人が苦手だと感じる
・大事な場面ほどミスを繰り返してしまう
・自分の本当の気持ちが、自分でもよく分からない

もう少し詳しい背景を知りたい方は、以下を開いてみてください。読み飛ばしても、この先の内容は問題なく読み進められます。

フロイトによる発見の歴史

無意識という考え方自体は、フロイト以前にも、哲学や医学の分野で論じられていました。それを、心の治療の理論の中心に据え、体系化したのが、精神科医のジークムント・フロイトです。フロイトは開業医として、心に問題を抱える患者を治療するなかで、自由連想法という手法を発展させていきました(精神分析事典)[1]。

患者がカウチソファでくつろぎながら自由に話すと、普段は意識できなかった、心にたまっていた悩みが出てくるようになります。そして、悩みを十分に語り尽くすと、悩みが大きく軽くなることがある。フロイトは、それは「無意識」のわだかまりが整理されるからだと考え、1915年に、論文「無意識」で理論としてまとめました(中野, 2011)[2]。当時、こうした「話すことで治る」という考え方は、多くの医師から懐疑的に見られていましたが、フロイトは症例の記録を重ねることで、理論を少しずつ洗練させていきました。自由連想法など、精神分析の基本は、精神分析とはのコラムで解説しています。

ユングとの決別と集合的無意識

フロイトが示した無意識の世界は、当時の心理学の中心的な概念になりました。スイス出身の医師カール・グスタフ・ユング(Jung, C.G.)は、フロイトとともに精神分析を発展させようとしていましたが、意見の違いから1913年ごろに決別し、独自に「分析心理学」を創始しました。

ユングも、無意識の働きを重視しました。フロイトと異なる点は、「集合的無意識(普遍的無意識;Collective Unconscious)」という概念をつくり、新たな無意識の領域を示したことです(分析心理学事典)[3]。集合的無意識とは、人類に共通して受け継がれている、無意識のパターンのことです。その上に、私たちの意識と、個人的無意識(生まれてから人生の中で経験したことが無意識になったもの)があると考えました。フロイトが無意識を主に個人の抑圧された欲求としてとらえたのに対し、ユングは、人類共通の心の型という、より広い視点を持ち込んだ点が特徴です。

現代の心理学における研究

「無意識」は、精神分析の中で生まれた言葉ですが、現代の心理学でも、意識に上らない心の働きは、さまざまな形で研究されています。たとえば、目標に向かう行動が、本人が気づかないうちに影響を受けていることを示した研究があります(Custersら10)[4]。以下では、無意識に関連する研究を2つ紹介します。いずれも、研究結果の一例として、参考にご覧ください。

感情を抑え込むことと心身の不調

佐藤ら[5]は、小学5年生から中学1年生までの児童・生徒849名を対象に、質問紙で、感情の抑え込み(情動抑制)や、心身の不調(心身症状)などについて調べました。その結果、つらい感情の体験が多いと、感情を抑え込みやすく、それが感情の調整の難しさにつながり、心身症状の多さとも関連するという関係が示されました。

つらい出来事があったときに、感情を我慢したり、無理に抑え込んだりすることが、体にも影響する可能性を示唆しています。ただし、これは質問紙による調査で、関連の強さもそれほど高くありません。また、著者らも、この調査の尺度では、感情の抑え込みが無意識のものなのか、意識的なものなのかは区別できていない、と述べています。

プライミングと無意識

プライミングとは、先に触れた情報が、無意識のうちに、その後の情報処理や行動に影響を与える現象のことです。アールツら[6]は、「パズルをする」のような目標に関連する語を、ポジティブ・ネガティブな感情を表す語と組み合わせて示す実験を行いました。その結果、ネガティブな語と組み合わせた場合、その目標に関連する語が思い浮かびにくくなり、目標に沿った行動も少なくなることが報告されています。

ただし、行動に対するプライミングの効果については、追試で同じ結果が得られにくいものがあるなど、研究の再現性をめぐる議論もあります。結果は、慎重に受け止める必要があります。

どちらの研究も、「関連」を示したものであり、無意識の存在を直接証明するものではありません。研究結果は、無意識という考え方を検証する手がかりの1つとして、参考程度に受け止めてください。

 

抑圧と葛藤、心の症状

抑圧とは

無意識には、悩みの「一時避難場所」のような側面があります。私たちは、現実で大きなストレスを感じると、その記憶を無意識に抑圧して、自分を守ろうとします。たとえば、次のようなものです。

失恋した記憶を、すぐに忘れようとする
つらい体験を、無意識に押し込める
大変なのに、感じないふりをする

こうした、心を守ろうとする働きを「防衛機制」といいます。くわしくは、自我防衛機制のコラムをご参照ください。

無意識と葛藤

一方でフロイトは、抑圧することが多すぎたり、無意識の葛藤が強くなりすぎたりすると、その結果として、心の症状が生じると考えました。たとえば、体に医学的な原因が見つからないのに、体が動かしにくくなる、視力や聴力が落ちる、といった症状です。

私が実際に出会った事例では、毎日元気そうに見えていた女性が、体がしびれるという症状を訴えました。いくつもの病院を回っても、すぐにぶり返してしまいます。心理カウンセリングを受けたところ、実は彼女は職場でパワハラを受けており、本人も自覚しないまま我慢し続けていたことがわかりました。実際に対策をとったところ、しびれがおさまったというケースがありました。

ただし、体の症状が出たときは、自己判断で「心の問題」と決めつけず、まず医療機関で身体の検査を受けることが大切です。

元型で自分を振り返る

ユングが示した6つの元型

ユング[7]は、集合的無意識には、共通のパターン「元型(Archetypes)」があると考えました。代表的なものを紹介します。

・ペルソナ
その時々の場面や役割に合わせて見せる、自己の側面

・シャドウ
無意識に抑圧された、劣等感、不道徳な心理、敵意、不安など

・グレートマザー
あらゆるものを育む、母親(地母神)のイメージ

・アニマ
男性の無意識にある、女性的なもののイメージ

・アニムス
女性の無意識にある、男性的なもののイメージ

・セルフ
意識と無意識を含む、心全体の中核。心を統合させる働きを持つ

集合的無意識

自分にあてはめてみる

元型は、あくまで1つの見方であり、科学的に実証されたものではありません。ただ、「職場では頼れる先輩を演じるけど(ペルソナ)、本当は甘えたい気持ちもある」というように、自分の中の複数の側面に気づく、きっかけとして使えます。次の質問を、気軽に考えてみてください。

・普段、人前でどんな自分を「演じて」いるだろうか(ペルソナ)
・認めたくない、隠している自分の一面はないだろうか(シャドウ)
・自分の中の、優しさや厳しさは、それぞれどこから来ているだろうか

答えが出なくても構いません。「そういう見方もあるんだ」と、自分を眺める視点が1つ増えることに意味があります。

心理療法での無意識の扱い

制度上の位置づけと現代の治療

無意識は、目に見えない心の領域のため、科学的に検証しにくい面があります。そのため、精神分析の無意識の理論には、批判もあります。一方で、無意識を扱う治療は、制度上の位置づけもあります。

日本の診療報酬制度には、口述の自由連想法を用いて、抵抗、転移、幼児体験などの分析を行い、洞察へと導く「標準型精神分析療法」の項目があります(診療報酬点数表)[8]。ただし、この療法は、習熟した医師が行うものとされ、実際に行っている医療機関は多くありません。

現代の精神分析の流れをくむ治療の中には、無意識の深い部分ではなく、意識に近い体験に焦点を当てるものもあります。たとえば、メンタライゼーションに基づく治療(MBT)は、自由連想で無意識を探るのではなく、意識に近い心の体験を扱うとされています(Batemanら)[9]。また、面接室での関係の中に現れる感情のパターンについては、転移・逆転移のコラムで解説しています。

自分の内側にある無意識を、無理に探ろうとする必要はありません。日常の中で、少しずつ気づいていく方法があります。

パターンに気づくノート

「なぜか、いつも同じ場面で不安になる」「同じような人間関係を繰り返す」と感じたときに、次の3つを書き留めてみてください。

①どんな場面で、その気持ちになったか
②似たような場面が、過去にもなかったか
③そのとき、心の中でどんな考えが浮かんだか

1回で答えが出なくても構いません。数週間かけて書きためると、自分でも気づいていなかった「くり返しのパターン」が見えてくることがあります。つらい記憶に近づいて苦しくなるときは、無理をせず、専門家に相談しましょう。

まとめ

無意識の世界は、実証が難しく、これからさらに研究が進む領域です。それでも私たち心理療法家は、相談に来られる方の中に、本人も気づかない心の動きがあり、その中に悩みの手がかりがあることを、日々感じています。自分の心に興味を持つことが、心を理解する第一歩になります。

講師の視点

無意識という言葉は、少し難しく聞こえるかもしれません。でも、「なぜか毎回、同じところでつまずく」といった感覚があるなら、それが手がかりです。カウンセリングでは、その「なぜか」を一緒に眺めていきます。答えを急いで出すより、「そういえば、いつもそうかも」と気づくことが大切だと感じています。

理解度チェック(練習問題)

問題1

つらい記憶や認めたくない感情を、無意識の中に押し込めて、意識しないようにする働きを何というでしょうか。

問題1の答え

抑圧です。防衛機制の1つです。

問題2

ユングが示した、人類に共通して受け継がれている無意識のパターンを、何というでしょうか。

問題2の答え

集合的無意識(普遍的無意識)です。その中の共通パターンを「元型」といいます。

問題3

フロイトとユングの無意識の考え方の違いを、簡単に説明してください。

問題3の答え

フロイトは、個人が抑圧した欲求や記憶などが無意識になると考えました。ユングは、それに加えて、人類に共通する「集合的無意識」があると考えた点が異なります。

よくある質問Q&A

私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。

Q. 無意識は本当に存在する?

意識に上らない心の働きが、私たちの行動に影響していることは、現代の心理学でも研究されています。一方、フロイトの言う「抑圧された欲求としての無意識」を、科学的に証明することは難しいとされています。どこまでを無意識と呼ぶかは、立場によって異なります。

Q. 夢は無意識の表れ?

フロイトは、夢を無意識の願望が形を変えて現れたものと考えました。ただし、夢がなぜ生じるかについては、現代でもさまざまな説があります。夢の意味を、自己流で決めつけすぎないことも大切です。

Q. 無意識を知る方法は?

無意識を直接のぞくことはできませんが、「いつも同じ場面で感情が強く動く」「同じ失敗を繰り返す」といったパターンに気づくことは、手がかりになります。日記に書き留めたり、信頼できる人に話したりしてみてください。

Q. 無意識は変えられる?

無意識そのものを操作することは難しいですが、自分のパターンに気づき、対応の仕方を変えていくことはできます。気づきが増えるほど、無意識に振り回されにくくなると考えられています。

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。

・認知療法の基礎
・思考の歪みの改善
・行動療法の学習
・マインドフルネスワーク

講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)

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個別レッスン

個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースで精神分析の考え方を深めたい方は、下記をご参照ください。

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投影・投影同一視とは

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メンタライゼーション(MBT)とは

監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Psychoanalytic treatment. In Encyclopedia.com.
 
[2] 中野 明徳 (2011). S.フロイトのヒステリー論:心的外傷の発見. 福島大学総合教育研究センター紀要, 10, 15-24.
 
[3] Analytical psychology. In The SAGE Encyclopedia of Theory in Counseling and Psychotherapy. SAGE Knowledge.
 
[4] Custers, R., & Aarts, H. (2010). The unconscious will: How the pursuit of goals operates outside of conscious awareness. Science, 329, 47-50.
 
[5] 佐藤 幸子・塩飽 仁・遠藤 芳子・佐藤 志保 (2016). 子どもの情動調整と心身症状の関連. 小児保健研究, 75, 343-349.
 
[6] Aarts, H., Custers, R., & Holland, R. W. (2007). The nonconscious cessation of goal pursuit: When goals and negative affect are coactivated. Journal of Personality and Social Psychology, 92, 165-178.
 
[7] Jung, Carl Gustav (1875-1961). In Encyclopedia.com.
 
[8] 医科診療報酬点数表 I003 標準型精神分析療法(1回につき)および通知. しろぼんねっと(令和8年版).
 
[9] Bateman, A. W., & Fonagy, P. Mentalization-based treatment. In Kaplan & Sadock’s Comprehensive Textbook of Psychiatry (Chapter 33.18). UCL Discovery 掲載版.
 
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