みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、アサーティブコミュニケーションシリーズの2本目です。「感謝とセット法」をテーマに解説していきます。
感謝とセット法とは、頼みや誘いを断る前に、声をかけてくれたことへの感謝をクッションとして伝え、相手の気持ちを大切にしながら自分の考えを伝える断り方のことです。アサーションの考え方に基づく、日常ですぐに使える方法です。
今回は、感謝とセット法のやり方と、場面別の具体例、練習問題を解説します。目次は以下の通りです。
①感謝とセット法とは
感謝とセット法は、「断る」ことと「相手の好意を受け取る」ことを、同時に伝える方法です。まずは、その考え方を確認しましょう。
感謝をクッションにする
ただ「無理です」と断るのではなく、「ありがとう」「頼りにしてもらえてうれしい」と、まず相手の気持ちを受け止めてから断ります。
誘ってくれたこと、必要としてくれたこと自体には感謝をして、その気持ちをしっかり伝えましょう。その上で断れば、相手も「自分の気持ちは受け取ってもらえた」と感じやすくなります。
なぜ伝わりやすいのか
お願いをする人は、悪いと思いつつ、勇気を出して頼んでいることもあります。そんなときに「嫌です」とだけ言われると、自分そのものを拒絶されたように感じてしまいます。
感謝を先に伝えると、断っているのは「頼みの内容」であって、「あなた自身」ではないことが伝わります。そのため、断った後も関係が気まずくなりにくいのです。

②やり方3ステップ
感謝とセット法は、3つのステップで組み立てると、誰でも使いやすくなります。
3つのステップ
①感謝:声をかけてくれたことにお礼を言う
②理由:自分の状況を「私は」を主語にして伝える
③断り:はっきり断り、できれば代わりの案を添える
②では、アイメッセージを使うと、相手を責める響きが出にくくなります。③で代わりの案を添えると、「断られた」より「調整してもらえた」という印象になります。
感謝の言葉の引き出し
場面に合わせて使える感謝の言葉を、いくつか用意しておくと安心です。
「声をかけてくれてありがとう」
「頼りにしてもらえてうれしいです」
「誘ってもらえて、とてもうれしい」
「いつも丁寧に提案してくださって、ありがとうございます」
③場面別の具体例
ここでは、仕事とプライベートの2つの場面で、感謝とセット法を使った言い方の例を紹介します。
仕事の依頼を断る
「私に依頼してくださるのですね。光栄です。」(感謝)
「ただ、最近仕事が重なっていて、今は時間がとれなさそうです。」(理由)
「申し訳ありません。来週以降なら、お手伝いできるかもしれません。」(断り+代案)
プライベートの誘いを断る
「お誘いありがとうございます。素敵な場所ですね。」(感謝)
「ただ、今は新しい予定を入れる余裕がなくて…」(理由)
「ごめんなさい、今回は見送らせてください。」(断り)
このように、いきなり「NO」を突きつけるのではなく、感謝とセットで断ると、相手の気持ちにも配慮した言い方になります。
④練習してみよう
ここからは練習問題です。3つのステップで、感謝とセットで断る言い方を考えてみてください。考えた後に、解答例を開いて確認しましょう。
練習1 上司からの依頼
上司が険しい顔で「すまんが、新しい仕事をお願いしてもいいかな…」と頼んできました。あなたは手一杯で、余裕がありません。
練習2 同僚からの飲み会
同僚から「金曜日に飲みに行こうよ!」と誘われました。その日は外せない予定があり、参加できません。
練習3 美容院での提案
美容院で「追加でトリートメントもどうですか?」と提案されました。今回は予算に余裕がありません。

⑤うまくいかない時
感謝とセット法を使っても、相手がなかなか引き下がらないこともあります。そんなときの対応と、注意しておきたい点を紹介します。
しつこく頼まれたとき
一度断っても何度も頼まれる場合は、理由を増やさず、同じ断りの言葉を落ち着いて繰り返す「壊れたレコード法」が役立ちます。それでも続く場合は、段階を追って主張するシリーズ7本目のDESC法も試してみてください。
感謝は本心から
感謝の言葉は、形だけになると、かえって相手に違和感を与えます。「誘ってくれたこと」「頼ってくれたこと」など、本当にありがたいと思える部分を探して伝えましょう。
断れない場面は相談を
上司からの不当な要求や、断ると不利益をちらつかされるような場面は、言い方の工夫だけでは解決できません。ハラスメントにあたる可能性がある場合は、一人で抱え込まず、社内の相談窓口や信頼できる人に相談してください。
⑥よくある質問Q&A
私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。
⑦まとめ
感謝とセット法は、相手の好意を受け取ったうえで断ることで、自分も相手も大切にする断り方です。感謝、理由、断りの3ステップで組み立てると、誰でも使いやすくなります。
今回のポイント
断る前に、声をかけてくれたことへの感謝を伝える
理由は「私は」を主語にして伝える
できれば代わりの案を添える
しつこい相手やハラスメントには別の対応を
「声をかけてくれてありがとう」と、感謝をちょっと示すだけで、お互いの気持ちが楽になります。ぜひ、次に誘いを断るときに試してみてください。
シリーズの他のコラム
アサーティブコミュニケーションシリーズでは、基本の考え方から、断り方、研修で使えるワークまでを解説しています。あわせてご覧ください。
しっかり身につけたい方へ
アサーティブコミュニケーションは、公認心理師による講座で、実際に学ぶことができます。内容は以下のとおりです。
・アサーション権を学ぶ
・感謝の気持ちと断る練習
・アイメッセージ実践練習
・自分を大事に,他人を大事にする
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^)
講座の日程が合わない方や、自分のペースで学びたい方は、個別レッスンのご相談も受け付けています。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




