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心理療法の種類とは?臨床心理士が解説しています

心理療法とは?3つの基礎から学ぶ! 臨床心理士が解説①

ごあいさつ

みなさん、こんにちは。
私は臨床心理士として、現在悩みを抱えた人や心の病気を抱えた人へカウンセリングをしたり、心理学の視点からコンサルテーションを行っています。臨床心理士という言葉を聞いても、なじみが無かったり、仕事がイメージできないという方もいらっしゃるかもしれませんね。

臨床心理士は、いわば心の専門家です。心理学のさまざまな技法の中から適切な方法を選んでカウンセリングなどを行っています。今回は、さまざまな技法の中から「心理療法」について全5コラムで解説していきます。

心理学には興味があるけれど、

・何を勉強したらよいかわからない…
・生活にも心理学は使えるのかな…?

このような思いや疑問にお応えできるよう、わかりやすくご紹介してまいります。心理学が少しでも身近に感じられ、 仕事や学業、さらには日常の生活のお役に立てたらうれしいです。

心理療法について心理の専門家が解説

心理療法とは?

心理療法とは、人々の心の健康を維持したり回復、さらにはもっと健康にさせるために、 手助けをする理論や技法のことをいいます。

少し難しく書いてしまいましたが、
「みなさんの心が安定し安心して暮らせるよう」
手助けをするための専門的な技法です。

英語ではサイコセラピー(psychotherapy)と呼ばれ、 精神科などの医学分野では精神療法などといわれることもあります。現代では「カウンセリング」という言葉も浸透していますね。

カウンセリングとは、
「人の悩みを解決すること、 その人の心や内面が成長していけるよう支援をすること」
を指します。このカウンセリングに必要なのが「心理療法」です。有名な技法には

・精神分析
・来談者中心療法
・行動療法

などがあります。このような心理療法や心についての理論を学ぶ学問を「心理学」と呼びます。

心の専門家が取り扱う

心理療法を行う人のことを、カウンセラー、サイコセラピストと呼びます。法律上はカウンセリングを行うのには資格が必須ではありませんが…、一般的に専門的な知識や資格をもつ必要があります。

いろいろな資格がありますが、 有名な資格のひとつに「臨床心理士」があります。 おもに、この臨床心理士などの カウンセラーがいるところでは心理療法が使われています。

心理療法に出会えるところ

カウンセラーによる心理療法はさまざまな場所で使われています。

例えば、
・病院(精神科や心療内科)
・学校
・企業
・市区町村の役所
などがあります。

また最近では、子どもの通う塾や習い事のスクールにもカウンセラーがいたり、大人向けの習い事スクールにもカウンセラーがいることもあります。

そして身近でないかもしれませんが、警察や児童相談所、老人ホームなどの高齢者施設などさまざまな分野でカウンセラーが働いています。 また、カウンセラーが個人で経営をする私設のカウンセリングルームもあります。

必見…!日常生活にも活かせる!

心理療法を専門的に行うには知識や資格が必要になると書きましたが、 考え方や簡単な方法はどんな人にも理解しやすく実践することができます。

話の聴き方や、相手にどんな言葉をかけたらよいか…他人のためだけではなく、自分が悩んだ時にどうやって解決すればよいだろうなど、日常生活や仕事などで活用できる、ヒントやエッセンスが含まれています。実際に企業や学校などでは、研修に導入されているところもあります。

歴史を知ろう!

心理療法とは何か?またどのような場面で活用されているかがわかったところで、歴史について見ていきましょう。

18世紀!からはじまった

心理学という考え方ができたのは、16世紀半ば頃で心理療法ができたのは18世紀頃といわれています。

それまでは、心の病気や心についての知るために、医学や物理学、自然科学、哲学などの学問が用いられていたため、16世紀に心理学ができたといっても、この頃は哲学的な思想が強かったようです。

「心をどのように捉えているか」という考え方の違いからさまざまな分野、理論に分かれています。現在方法としては、400以上あるといわれていますが、 おおよそ4つに分類されます。

①精神分析的アプローチ
②(認知)行動的アプローチ
③人間性アプローチ
④システムアプローチ

この4つの中でも、

①精神分析的アプローチ
②(認知)行動的アプローチ
③人間性アプローチ
 

については、「三大勢力」「三大心理療法」と呼ばれます。では、代表的な3つの理論はどのように発展したのでしょうか?確認していきましょう。

始まりはドイツから

まず最初の基礎をつくったのは、フランツ・アントン・メスメルです。

メスメルは、治療者(カウンセラー)と患者(クライエントと呼びます。)の間に「信頼関係」を築く、暗示療法という催眠術を開発するなど、 それまでになかった新しい概念をつくったことで、 後々の理論に大きな影響を与えました。

その後、19世紀にドイツの心理学者のヴントが 世界で初めて大学に実験室を創ります。これを機に、心理学という学問が成立し、心理療法も発展していきました。

ドイツ発祥!「精神分析」

心理療法はドイツで始まり発展してきました。ドイツで生まれた分野のひとつに 「精神分析」 があります。これは現在でも使われるとても有名な理論です。

精神分析という理論は、精神医学の第一人者と言われているジークムント・フロイトが作りました。彼はドイツの神経科医でした。昔は、精神病など心の病気に医師が治療をするものでした。そのため、多くの神経科医が理論を作っており、フロイトもその一人でした。

「精神分析」で述べられている理論はいろいろとあります。そのなかでも「無意識」「自我」「抑圧」などの用語と考え方が心の内面を理解するための全体図を示したことで、後の心理学に大きな影響を与えました。

3つの基礎!心理療法の基本理論

ここからは、心理療法の基礎となる3つの理論「精神分析」「行動療法」「来談者中心療法」について解説していきます。

①精神分析とは?

精神分析とは、心の内面を理解するための全体図を示した理論です。ではその内容をほんの少しご紹介します。

精神分析は、心の内面の全体図

フロイトは、人間が発達、成長していくとともに心の中が変化していくと考えました。もともとの人間の心の中は「~したい」などといった本能で満たされているけれども、それが成長していくにつれ、理性的に変化していくというのです。

フロイトはその本能のことを「イド(エス)」、「~してはいけない」などの理性を「超自我」と呼びました。この本能「イド(エス)」と理性「超自我」が対立する中で、2つをコントロールする機能をフロイトは「自我」と呼びました。

実際に「自我」を思い浮かべてみましょう。

日常生活の中で挙げられる自我について考えてみましょう。

私の、しようもない日常なのですが…私は食べることが好きです。ご飯も、お菓子も、お肉もお魚も。何でも好きです。…それはともかく、好きなだけ食べてしまうとどうなるでしょう?そう、太ってしまうのです。

もしかすると、生活習慣病などの病気になってしまうかもしれないのです。このとき、
「食べたいなぁ…」と思うのが、本能=イド(エス)と呼びます。反対に「食べると太るよ!」「病気になるよ!」という理性的な考えが、「超自我」と呼びます。

この対立した気持ちと考えを心はどうしているのでしょうか?「今日はこのくらいにしておこうっと。」と、本能と理性のバランスをとり区切りをつけます。これが精神分析では「自我」と呼びます。

「無意識」と「抑圧」とは、自分でも知らない心の奥底

フロイトの有名な理論に「無意識」と「抑圧」があります。フロイトは、人間の心は意識的な心と無意識的な心から成り立つと考えました。その2つのうち、「無意識」がとても重要であるとフロイトは考えました。

フロイトは、無意識のうちの葛藤が(昔で言われた)神経症を引き起こすことに気づき、「無意識」が神経症の治療に役立つことを発見したのです。フロイトは、心を氷山に例えました。海から見える氷山の部分を「意識」、隠れている大部分を「無意識」と捉えました。

一方、意識は、私たちが感じることのできる心の内面です。しかし、無意識は、私たちが気づかない心の内面のさらに奥底であるとフロイトは考えました。

考えてみよう「無意識」

みなさん、よくボーっとしながら違うことをする…そんなことありませんか?コーヒーに砂糖を入れようとしたのに、近くの塩をとってしまった…など。かなり、うっかりしてるのではないか?という話もありますが、こんな時は、「無意識に塩とってた!」とみなさんおっしゃるのではないでしょうか。これも無意識のひとつです。

しかし、精神分析でいう無意識はさらに心の奥底なのです。なぜ、ボーっとして塩をとってしまったのでしょうか…?「考え事をしていたから」「つい、うっかり」…さまざまな理由があるでしょう。

しかし、その理由にさらに「なぜ?」と質問するとわかるようでわからない…精神分析では「砂糖を取らなかった」「砂糖を取ることから逃げた」と人間のわからない「なぜ?」の裏側を分析します。

さらに、精神分析では、わかるようで、わからないことを「抑圧」と呼びます。意識的にわからなくするために、心の奥底の無意識に押し込めているのです。

ネガティブな「抑圧」が心の病気を引き起こす

抑圧された気持ちの多くが「~したい」という欲求だったり、自分が直面したくない受け入れたくないネガティブな感情であると考えられています。

また、幼い頃の記憶体験がもとになっていると考えられます。この、無意識に「抑圧」された気持ちが昔の神経症、そして心の病気を引き起こすとフロイトが考えたのです。

ドイツから世界へ発展

このように、心の全体図を示したことで、精神分析が一躍心理学、神経・精神医学界で有名になり、フロイトにはたくさんの弟子がつきました。そして、弟子たちが新しい心理療法の理論を世界中に広めていきました。

しかし、(ここではご紹介していませんが)理論が性的な内容を含む衝撃的な内容であったり、それが、当時のドイツではタブーと考えられていたので、多くの批判も受けました。

弟子たちもフロイトの理論をそのまま受け継ぐというよりは、自分の理論を付け加え改良した形で世界へ広めています。

②行動療法とは?

つづいては、実際の行動に効果的な方法「行動療法」について見ていきましょう。

イギリスやアメリカでも発展

心理療法がドイツの次に発展した国はイギリスとアメリカです。アメリカでは様々な治療理論が発展し、有名な「行動療法」がつくられました。

アイゼンクによる行動療法

20世紀になると、心と人の行動に注目をした「行動主義心理学」という理論がつくられます。これを土台につくられたのが「行動療法」というものです。詳しい年代で示すと1950年代です。

行動療法は「精神分析」とはまったく反対の考え方をし、精神分析を批判する理論でした。ハンス・アイゼンクが「行動療法と神経症」という本を出版し、が科学的に証明できる治療方法として有名になりました。

「行動療法」は行動と心の科学

行動療法は、精神分析の「無意識」を真っ向から批判しました。無意識という考え方は、目に見えない曖昧なものだと言ったのです。行動療法は、精神分析とは反対に、「心を客観的に捉えよう」ということに重きを置きました。

行動療法は、心の病気を、行動の習慣が引き起こすと考えました。心の病気を引き起こす行動を消去し、新しい行動を再び学習すればよいという、「学習理論(=S‐R理論)」が土台になる心理論です。

学習理論とは、身体や心が反応する刺激に対し人がどのような反応や行動を起こすのか分析します。そして問題となる行動を、正しい行動に修正するのです。 

「学習理論」について考えてみよう

少し難しくお伝えしてしまいしたが、学習理論について考えてみましょう。みなさんの生活の中にけっこう隠れているのです。みなさん、直したいけれど、どうしても直せない…そんな習慣はありませんか?

私はというと、夜にテレビを見ながらソファで寝てしまうのです。今日こそは布団で…!と思うのですが、それが難しい…私のズボラな話はともかく、これをもとに「学習理論」を考えてみましょう。

私が夜にテレビをつけ、テレビを見ます。テレビからは光や音が流れます。この音や光のことを学習理論では「刺激(S)」と呼びます。さて、テレビを見ていると、だんだんと眠気が襲ってきます。これを学習理論では「反応(R)」と呼びます。心や身体が眠気となって反応しているのですね。そして、とうとうソファの上で寝てしまいます。これを学習理論では「行動」と呼びます。ソファで寝ている私に、毛布をかけてくれる心優しい人がもしいたとしたら、私はますますソファで寝てしまうかもしれません。

このように、行動を強めるものがあるとき、それを学習理論では「強化子」と呼びます。こうやって人間の行動は毎日積み重ねていくうちに学習され、習慣となっていくのです。

直したい行動について、刺激・反応・強化子・行動を分析することで、問題となる行動を修正することができます。

今回ご紹介したのは、日常の何気ない習慣ですが、学習された行動が心の病気を引き起こすこともあります。行動療法はそのような場合に治療をする心理療法なのです。

抑えておきたい3つの理論「精神分析、行動療法、来談者中心療法」

③来談者中心療法とは?

アメリカでは、20世紀に入り新しくできた「行動療法」の後に、現代のカウンセリング場面での基礎となる理論が作られました。それが「来談者中心療法」です。

ますます発展!アメリカで生まれた「来談者中心」

行動療法が発展したおよそ10年後、1960年代には「人間性心理学」という理論が生まれました。人間性心理学は、カール・ロジャースの提唱した「来談者中心療法」が基礎になっています。

来談者中心療法は、それまでアメリカで発展した行動療法を批判する立場をとりました。また、医学の要素が入っていた精神分析も批判をしました。そのため、それまで心の病気を抱えた人を「患者」と呼んでいたのに対しロジャースは「クライエント(依頼人)」と呼びました。日本には1940年代ごろ導入されました。

来談者中心とは「人の成長を促すこと」

来談者中心療法では、人は「成長・自律・独立等」に向かうと考えられています。カウンセラーは、それを共感的に理解することに重要であるとされています。ここでもっとも大切な方法が「傾聴」です。

傾聴とは、クライエントの話をじっくり聴くという方法です。カウンセラーがクライエントの気持ちを受け止め共感的に理解すれば、クライエントは自らの力で立ち直っていくと考えられています。そのため、じっくりとクライエントの語る内容に耳を傾けるのです。

また、来談者中心療法では、理想の自分(自己)と現在の自分(体験された自己)のずれが大きいと心の病気が引き起こされると考えられています。これは自己理論といって、理想の自己を見つめなおすことで、悩みを解決していくという方法をとります。

心理学講座について

 実際に専門家から心理学の講義を受けたいという方は、私たち臨床心理士・精神保健福祉士が開催している心理学講座もおすすめします。当コラムで紹介している心理療法やソーシャルスキルの練習を行っています。1人で抱え込まずに、専門家やたくさんの仲間と相談しながら進めていくと、心強いと思います。

コラムを読んでもっと勉強したい!と感じましたら、こちらの心理学教室のページを参照ください。それでは先に進みましょう♪

3つの理論を押さえておこう!

ここまで、心理療法とは何か?そして、3つの基礎理論についてご紹介してきました。いかがでしたか。

人間性心理学の学者の一人である、アブラハム・マズローは、精神分析、行動療法、来談者中心療法を含む人間性心理学を「三大勢力」と呼びました。この3つの理論は心理療法の軸を築き、現在の心理療法に大きな影響を与えました。

「三大勢力」精神分析、行動療法、来談者中心療法の3つは、それぞれが違う視点を持ち、お互いを批判をする部分はありますが、人の心の中や内面を理解するうえで、そして人の手助けをするうえでどれも大切な理論です。心理学を勉強する上でも、教科書には必ずと言っていいほど有名な理論なので、この機会に覚えていってくださいね♪

今回のコラムでは、外国の理論が主でしたが、次回は、日本に目を向けてさまざまな理論についてご紹介します。お楽しみに!

★心理療法の発展の歴史・3つの理論をまずは理解しよう!