みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、内的家族システム療法(IFS)シリーズの2本目です。「IFSのパーツ」をテーマに解説していきます。
IFSのパーツとは、心の中にある、それぞれに考えや感情、役割をもった「部分」のことで、どのパーツも本人のために何かを守ろうとしている、と考えるのがIFS(内的家族システム療法)の特徴です。
当コラムでは、パーツの特徴と、パーツに気づき関わる方法を、ワークと具体例で紹介します。目次は以下の通りです。
①パーツとは
IFSでいうパーツとは、心の中にある、それぞれ独自の考えや感情、役割をもった「部分」のことです。
誰の心にもある複数の声
「もう少し動画を見ていたい自分」と「早く寝なければと止める自分」。このように、一つの場面で、心の中に違う声が同時にあることは珍しくありません。IFSでは、こうした声を、それぞれ一つのパーツとして捉えます。
IFSを提唱したシュワルツ[1]は、心が複数のパーツから成り立っていることは、病気ではなく、人間の心の自然なあり方だと考えました。
多重人格とは違う
パーツという考え方は、解離性同一症(いわゆる多重人格)とは違います。IFSのパーツは、誰もが日常的に体験している「心の中の複数の傾向や声」を、理解しやすくするための見方です。
②パーツの特徴
パーツには、いくつかの共通した特徴があります。
それぞれに意図がある
どのパーツも、本人のために何かをしようとしています。自分を厳しく責めるパーツも、「もっとがんばれば、人から認められる」「失敗して傷つかないように」と、本人を守ろうとしているのかもしれません。IFSでは、この肯定的な意図を理解することを大切にします。
極端な役割を背負うことがある
過去のつらい体験によって、パーツが本来の性質とは違う、極端な役割を背負わされることがあります。例えば、子どもの頃に失敗を強く叱られた経験から、「絶対に失敗してはいけない」と見張り続ける役割を担うようになったパーツです。役割が極端になると、本人の生活を窮屈にしてしまうことがあります。
パーツ同士の対立
パーツ同士が、正反対の方向に引っ張り合うこともあります。「休みたいパーツ」と「休んではいけないと言うパーツ」が対立すると、どちらにも決めきれず、疲れだけがたまっていきます。こうした対立は、どちらかが悪いのではなく、それぞれが別のものを守ろうとしている状態です。
③パーツに気づく方法
パーツと関わる第一歩は、パーツに気づくことです。IFSでは、注意を内側に向けて、パーツを見つけていきます。
見つけて、注意を向ける
IFSの練習用マニュアル[2]では、パーツと関わる手順として、パーツを「見つける」こと、そのパーツに「注意を向ける」ことから始めるとしています。気になっている感情や考え、体の感覚を1つ選び、それに静かに意識を向けてみましょう。
パーツを具体的にする
体のどこで感じますか?(胸、喉、お腹など)
どんな形や色、イメージで浮かびますか?
どんな言葉を言っていますか?
何歳くらいの感じがしますか?
答えがはっきり浮かばなくてもかまいません。「なんとなくこんな感じ」で十分です。パーツを具体的に感じられるほど、それを自分そのものではなく、自分の一部として眺めやすくなります。
④パーツとの関わり方
パーツに気づいたら、次は、そのパーツとどう関わるかが大切になります。
パーツへの気持ちを確かめる
見つけたパーツに対して、自分が今どんな気持ちを向けているかを確かめます。「うっとうしい」「怖い」「なくなってほしい」と感じるなら、それは別のパーツの反応です。その反応しているパーツに、「少しだけ下がってもらえるかな」と頼んでみます。
「このパーツのことを知りたい」という好奇心や、穏やかな気持ちが感じられたら、パーツと関わる準備ができたサインです。
好奇心をもって問いかける
「あなたは、私のために何をしてくれているの?」
「そうしないと、何が起きると心配しているの?」
「いつ頃から、その役割を担っているの?」
返ってくる答えを、評価せずにそのまま受け取ります。パーツの思いを理解し、「守ってくれてありがとう」と伝えるだけでも、パーツの緊張がゆるむことがあります。
⑤パーツを書き出すワーク
迷いや葛藤を感じている場面で、パーツを紙に書き出してみましょう。
葛藤するパーツを書き出す
最近、迷っていることや、やめたいのにやめられないことを1つ選びます。その場面で心の中にある声を、パーツごとに書き出し、それぞれに名前をつけてみましょう。
場面:休日に仕事のメールを見てしまう
パーツA「心配係」:見ておかないと、月曜日に困ったことになる(守りたいもの:安心)
パーツB「くたびれ係」:もう休みたい、放っておいてほしい(守りたいもの:休息)
それぞれの意図を認める
書き出したパーツそれぞれに、「あなたは〇〇を守ろうとしてくれているんだね」と、意図を認める言葉をかけてみます。どちらかを打ち負かすのではなく、両方の思いを認めたうえで、「日曜の夜に5分だけメールを確認する」のように、双方が納得できる方法を考えてみましょう。
⑥場面で考えてみよう
パーツの見方を、よくある場面に当てはめてみましょう(架空の例です)。
先延ばしがやめられない
Eさんは、大事な企画書をいつも締め切り直前まで先延ばしにして、自分を責めていました。パーツに注意を向けてみると、「始めたら、完璧にできない自分に向き合うことになる」と心配するパーツが、先延ばしで本人を守ろうとしていることに気づきました。
Eさんがそのパーツに「傷つかないように守ってくれていたんだね」と伝え、「まず15分だけ下書きをする」と約束したところ、以前より取りかかりやすくなりました。
自分を責める声が止まらない
Fさんは、仕事で小さなミスをするたびに、頭の中で「お前はいつもダメだ」という声が響いていました。その声をパーツとして眺め、「何を心配しているの?」と問いかけると、「もっと大きな失敗をして、居場所を失うのが怖い」という思いが返ってきました。
声を消そうとするのではなく、心配に耳を傾けたことで、Fさんは声に飲み込まれにくくなりました。
⑦注意
パーツと関わるときに、気をつけたい点をまとめます。
深い痛みには一人で踏み込まない
パーツに問いかけていると、思いがけず、過去のつらい記憶や強い感情が出てくることがあります。そのときは、無理に続けず、いったん注意を外の景色や呼吸に戻しましょう。つらい体験に関わるパーツに取り組むときは、IFSの訓練を受けた専門家と一緒に行うことをおすすめします。
症状が強いときは医療機関へ
記憶が途切れる、自分が自分でない感じが続く、気分の落ち込みや不安で日常生活に支障が出ている、といった場合は、まず医療機関に相談してください。
「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、医療機関や、電話・SNSの相談窓口(厚生労働省の「まもろうよ こころ」で探せます)、お住まいの地域の精神保健福祉センターに相談してください。命の危険が差し迫っているときは、救急(119番)に連絡してください。
⑧まとめ
IFSのパーツは、心の中にある複数の部分で、どのパーツも本人のために何かを守ろうとしています。パーツに気づき、好奇心をもって関わることが、心のバランスを取り戻す第一歩になります。
今回のポイント
心の中に複数のパーツがあるのは自然なこと
どのパーツにも、本人を守ろうとする意図がある
見つける、注意を向ける、具体的にする、の順で気づく
深い痛みに関わるパーツは、専門家と一緒に
IFSの全体像はIFSとはで、パーツの3つの種類とセルフについてはSelf・パーツの種類とはで解説しています。
シリーズの他のコラム
IFSシリーズでは、基本の考え方から、パーツの理解、Selfとパーツの種類までを解説しています。あわせてご覧ください。
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監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




