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NLP

NLPとは,神経言語プログラミングを解説

NLP(神経言語プログラミング)とは、1970年代のアメリカで生まれた、コミュニケーションや自己変革のための手法の体系です。自己啓発やビジネス研修、コーチングなどの分野で広く知られていますが、その理論や効果は科学的な研究によって裏づけられておらず、エビデンスが確立した心理療法ではありません。

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。当コラムのテーマは「NLP(神経言語プログラミング)」です。

書店やインターネットで「NLP」という言葉を見かけたことがある方もいるでしょう。当コラムでは、NLPの考え方と主な技法、そして研究によってどのように検証されてきたのかを紹介し、こうした情報との上手なつきあい方を考えます。目次は以下の通りです。

目次

①NLPとは

NLPは、Neuro-Linguistic Programmingの頭文字をとった言葉で、日本語では「神経言語プログラミング」と訳されます。

名前の意味

「神経(Neuro)」は五感を通した体験、「言語(Linguistic)」はその体験を表す言葉、「プログラミング(Programming)」は、体験と言葉によって身についた行動のパターンを指すとされています。行動のパターンを「書き換える」ことで、自分を変えられると主張しているのが特徴です。

心理療法としての位置づけ

NLPは、心理療法やカウンセリングの技法を参考にして生まれましたが、学術的な心理学の研究の中で、効果が確かめられてきた心理療法ではありません。日本を含め、NLPの講座や資格は民間団体が独自に運営しているものです。このコラムでは、NLPを紹介すると同時に、その科学的な位置づけを正しく理解することを目的にしています。

②成り立ち

NLPは、1970年代のアメリカで、リチャード・バンドラーとジョン・グリンダーによって考案されました。

セラピストの観察から

バンドラーとグリンダーは、ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、家族療法のヴァージニア・サティア、催眠療法のミルトン・エリクソンといった、当時評判の高かったセラピストたちの話し方や関わり方を観察しました。そして、その「うまくいくパターン」を取り出して、誰でもまねできる手順にしようとしたのが、NLPの始まりとされています。

自己啓発やビジネスへの広がり

NLPは、その後、心理療法の分野よりも、自己啓発セミナーや営業・接客の研修、コーチングなどの分野で広まりました。現在では、さまざまな団体がそれぞれ独自の講座を開いており、内容も団体によって大きく異なります。

③主な考え方と技法

NLPでよく紹介される考え方と技法には、次のようなものがあります。

代表的な考え方

優位表象システム:人には、視覚・聴覚・体感覚のうち主に使う感覚があり、相手のその感覚に合わせて話すと伝わりやすいという考え

目の動き:考えるときの目の動きから、その人が使っている感覚がわかるという考え

地図は領土ではない:人は現実そのものではなく、自分なりにつくった「地図」で世界を見ているという考え

代表的な技法

ラポール(ミラーリング、ペーシング):相手の姿勢や話す速さに合わせて、信頼関係を築く

アンカリング:特定の動作と気持ちを結びつけ、その動作で気持ちを呼び起こす

リフレーミング:出来事の枠組み(見方)を変えて、意味をとらえ直す

④研究による検証

NLPの考え方や効果については、これまでにさまざまな研究が行われてきました。

理論の検証

NLPの中心的な考えである「優位表象システム」について、1980年代前半までの研究をまとめたレビュー[1]では、人が主に使う感覚を見分けられる、そしてその感覚に合わせて話すと効果が高まる、という主張は、研究で支持されていないと結論づけられています。目の動きから使っている感覚がわかるという考えも、この中で検証され、支持されていません。また、NLPの研究を集めたデータベースを分析した研究[2]でも、NLPに実証的な根拠があるという主張は、データによって支持されないと報告されています。

効果の検証

健康上の問題に対するNLPの効果を調べた研究を集めた系統的レビュー[3]では、条件を満たした研究は10件だけで、研究の質にも問題が多く、NLPが健康状態を改善するという根拠はほとんどないと結論づけられています。

⑤なぜ広まったのか

科学的な根拠が乏しいにもかかわらず、NLPが広く知られるようになったのには、いくつかの理由が考えられます。

わかりやすさと体験談

NLPは、「短時間で変われる」「誰でも身につけられる」といった、わかりやすく魅力的な言葉で紹介されることが多くあります。また、講座を受けた人の体験談が多く語られます。しかし、体験談は、他の要因(その場の雰囲気や期待、時間の経過など)の影響を区別できないため、効果の証拠としては不十分です。

他の心理療法と共通する部分

NLPの技法の中には、他の心理療法と共通する考え方も含まれています。例えば、リフレーミングは家族療法や認知療法でも使われる考え方で、相手のペースに合わせて話を聴くことは、傾聴の基本でもあります。NLPに触れて役立ったと感じる人がいるのは、こうした一般的な要素が含まれているからかもしれません。ただし、それはNLP独自の理論が正しいことを意味するわけではありません。

⑥情報を見分けるポイント

NLPに限らず、心理学をうたう講座や本、サービスを選ぶときに、確認したいポイントを紹介します。

チェックリスト

効果の根拠が、体験談だけになっていないか

効果を比べた研究(比較する対象のある研究)が示されているか

「すぐに」「誰でも」「必ず」など、断定的な言葉が多くないか

高額な上位講座や資格への勧誘が続かないか

大学や学会などの第三者による評価があるか

宣伝の言葉を確かめる練習

気になる講座の宣伝を1つ選び、「この主張の根拠は何か」「誰と比べて効果があったと言っているのか」を書き出してみましょう。例えば、「受講者の9割が満足」という言葉は、満足度であって、悩みが改善した証拠とは限りません。言葉の中身を確かめる習慣が、情報を見分ける力になります。

研究の読み方を知る

研究にもとづく心理療法とは何か、研究をどう読めばよいかについては、エビデンスに基づく心理療法とはで詳しく解説しています。

⑦根拠のある方法を選ぶ

悩みを改善したいときは、研究で効果が確かめられている方法を選ぶことをおすすめします。

悩みに合わせた方法の例

不安や苦手な場面がある:エクスポージャー法などの行動療法

考え方のくせで気分が落ち込む:認知療法

人間関係でうまく気持ちを伝えられない:アサーティブコミュニケーション

NLPを学んだことがある人へ

NLPを学んで「話を聴く姿勢が変わった」「見方を変えられるようになった」と感じている人もいるでしょう。そうした変化は、傾聴やリフレーミングなど、他の心理療法でも大切にされている要素によるものかもしれません。これらは、研究の積み重ねがある傾聴技法や認知療法などを通して、学びを深めることもできます。

専門家に相談する

どの方法が合うかわからないときは、公認心理師や臨床心理士などの専門家に相談してみましょう。医療機関で行われる心理療法の中には、健康保険が使えるものもあります。

⑧注意

NLPの講座やサービスを検討するときに、気をつけたい点をまとめます。

契約や勧誘のトラブル

高額な講座の契約や、強引な勧誘でトラブルになった場合は、一人で悩まず、消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談しましょう。

心の不調があるときは

気分の落ち込みや不安が強く、日常生活に支障が出ている場合は、セミナーや自己啓発の講座ではなく、まず医療機関や専門家に相談してください。

⑨確認してみよう

ここまでの内容を、3つの問題で確認してみましょう。答えを考えてから、正解と解説を開いてください。

問題1

NLPの科学的な位置づけとして、最も適切なものはどれでしょうか。

ア 多くの研究で効果が確かめられた、標準的な心理療法である

イ 中心的な理論や効果が研究によって支持されておらず、エビデンスが確立した心理療法ではない

ウ 研究はまだ一度も行われていない

問題1の正解と解説

正解はイ(中心的な理論や効果が研究によって支持されておらず、エビデンスが確立した心理療法ではない)です。NLPについてはこれまでに研究が行われてきましたが、中心的な理論は支持されず、健康問題への効果の根拠もほとんど示されていません。そのため、エビデンスが確立した心理療法とはいえません。

問題2

NLPの「優位表象システム(人には主に使う感覚があり、それに合わせて話すと効果が高まる)」という考えは、研究でどのように評価されているでしょうか。

ア 研究で強く支持されている

イ 研究で支持されていない

ウ 研究で評価することはできない

問題2の正解と解説

正解はイ(研究で支持されていない)です。優位表象システムに関する研究をまとめたレビューでは、この主張は研究で支持されていないと結論づけられています。

問題3

心理学をうたう講座やサービスの効果を判断するときに、最も参考になるものはどれでしょうか。

ア 受講した人の感動的な体験談

イ 「誰でも必ず変われる」という宣伝

ウ 比較する対象を設けて効果を調べた研究

問題3の正解と解説

正解はウ(比較する対象を設けて効果を調べた研究)です。体験談は、その場の雰囲気や期待、時間の経過など、他の要因の影響を区別できません。効果を判断するには、比較する対象を設けた研究の結果を確かめることが大切です。

⑩まとめ

NLPは、コミュニケーションや自己変革の手法として広まった理論体系ですが、その中心的な理論や効果は研究によって支持されておらず、エビデンスが確立した心理療法ではありません。

今回のポイント

NLPは1970年代に生まれ、主に自己啓発やビジネスの分野で広まった

優位表象システムや目の動きの考えは、研究で支持されていない

健康問題への効果の根拠も、ほとんど示されていない

体験談より、比較研究による根拠を確かめる

あわせて読みたいコラム

心理療法の効果を確かめる研究の読み方は、次のコラムで解説しています。

エビデンスに基づく心理療法とは|読み方を解説

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NLPとは,神経言語プログラミングを解説,心理学講座

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Sharpley, C. F. (1984). Predicate matching in NLP: A review of research on the preferred representational system. Journal of Counseling Psychology, 31(2), 238-248.
 
 
[3] Sturt, J., Ali, S., Robertson, W., Metcalfe, D., Grove, A., Bourne, C., & Bridle, C. (2012). Neurolinguistic programming: A systematic review of the effects on health outcomes. British Journal of General Practice, 62(604), e757-e764.
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