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5つの基本的欲求とは

5つの基本的欲求とは,選択理論の基礎

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、選択理論シリーズの2本目です。「5つの基本的欲求」をテーマに解説していきます。

5つの基本的欲求とは、選択理論で、人が生まれながらに持っているとされる「生存」「愛・所属」「力」「自由」「楽しみ」の5つの欲求のことです。選択理論では、私たちの行動はすべて、これらの欲求を満たすために選ばれていると考えます。

今回は、5つの欲求の中身と、自分の欲求の強さを知る方法、欲求を満たす行動の選び方を、具体例とともに解説します。目次は以下の通りです。

目次

①5つの基本的欲求とは

5つの基本的欲求は、選択理論の土台となる考え方です。まずは、その基本を確認しましょう。

行動の源になる欲求

グラッサー[1]は、人の行動の源には、遺伝子に組み込まれた5つの基本的欲求があると考えました。お腹がすけば食べ物を探し、さみしければ誰かに連絡をとるように、私たちは、欲求を満たすための行動を選んでいます。

満たされないと苦しくなる

欲求が満たされないとき、私たちはイライラしたり、落ち込んだりします。例えば、職場で認められない日が続くと「力」の欲求が満たされず、やる気を失うことがあります。つらい気持ちの背景に、どの欲求が満たされていないかを知ることが、解決の第一歩になります。

②5つの欲求の中身

5つの欲求には、それぞれ次のような中身があります。自分に当てはまるものを考えながら読んでみてください。

生存の欲求

食べる、眠る、体を休める、安全な場所にいるなど、体と命を守る欲求です。お金を貯めて将来に備えたい、健康でいたいという気持ちも含まれます。

愛・所属の欲求

家族や友人、恋人と愛し合い、仲間とつながっていたいという欲求です。人の役に立ちたい、誰かと一緒に何かをしたいという気持ちも含まれます。

力の欲求

人に認められたい、何かを達成したい、自分には価値があると感じたい、という欲求です。勝ちたい、上達したいという気持ちも含まれます。

自由の欲求

自分で選びたい、自分のやり方で行動したい、束縛されたくない、という欲求です。時間やお金を自分の思うように使いたいという気持ちも含まれます。

楽しみの欲求

新しいことを知りたい、遊びたい、笑いたい、という欲求です。趣味に夢中になる、学ぶことを楽しむといった気持ちが含まれます。

③自分の欲求の強さを知る

5つの欲求の強さは、人によって違います。自分の欲求の強さを知ると、自分に合った生き方や働き方が見えてきます。

5段階でチェックする

次の質問に、1(あてはまらない)〜5(とてもあてはまる)で点数をつけてみましょう。

生存:安定した生活や、将来への備えを大切にしている

愛・所属:一人より、誰かと一緒にいる方が好きだ

力:人から認められたり、目標を達成したりすると、うれしい

自由:人に指図されず、自分で決めたい

楽しみ:新しいことを学んだり、遊んだりするのが好きだ

結果の見方

点数の高い欲求が、今のあなたにとって特に大切な欲求です。この点数は、診断ではなく、自分を知るための目安です。また、欲求の強さは、年齢や生活の状況によっても変わります。定期的にチェックしてみるのもよいでしょう。

チェック結果の例

Aさん:生存3、愛・所属5、力2、自由3、楽しみ4

Aさんは、愛・所属の欲求が特に強いタイプです。一人で黙々とこなす仕事より、チームで協力する仕事の方が満たされやすいかもしれません。一人で過ごす時間が続くと、つらく感じやすいことも分かります。

④欲求を満たす行動を選ぶ

満たされていない欲求が分かったら、それを満たすための行動を選びます。選ぶときのポイントを紹介します。

満たされていない欲求を探す

最近イライラしたり、落ち込んだりした場面を思い出し、「どの欲求が満たされていなかったのか」を考えます。例えば、休日も仕事の連絡に追われてイライラしていたなら、「自由」や「楽しみ」の欲求が満たされていなかったのかもしれません。

人を傷つけない方法を選ぶ

欲求を満たす方法は一つではありません。ただし、他の人の欲求を妨げる方法は、長い目で見ると人間関係を壊してしまいます。「力」の欲求を満たすために人を見下すのではなく、自分の得意なことで人の役に立つ、といった方法を選びましょう。

小さな行動から始める

満たす行動は、小さなもので構いません。「楽しみ」が足りないなら、帰り道に新しいお店に寄ってみる。「愛・所属」が足りないなら、友人に一言メッセージを送ってみる。今日できる小さな行動を1つ決めてみましょう。

⑤人間関係に活かす

5つの欲求の考え方は、自分だけでなく、家族や職場の人との関係を理解するのにも役立ちます。

相手の欲求を想像する

相手の行動にイライラしたときは、「相手は、どの欲求を満たそうとしているのだろう」と考えてみましょう。例えば、子どもが親の言うことを聞かないのは、「自由」の欲求を満たそうとしているのかもしれません。行動の理由が分かると、責める気持ちが和らぎます。

欲求の違いを話し合う

夫婦や同僚との間で、欲求の強さが違うことはよくあります。「愛・所属」が強い人と「自由」が強い人では、休日の過ごし方の希望も違ってきます。どちらが正しいかではなく、お互いの欲求を伝え合い、両方が満たされる方法を話し合ってみましょう。

⑥場面で考えてみよう

2つの場面で、満たされていない欲求と、満たす行動を考えてみましょう。考えた後に、解説を開いてください。

場面1 仕事にやる気が出ない

毎日同じ作業のくり返しで、誰からも評価されない。仕事に行くのがつまらなく感じる。

場面1の解説

「力」(認められたい、達成したい)と「楽しみ」(新しいことを学びたい)の欲求が満たされていない可能性があります。作業の改善案を1つ上司に提案してみる、仕事に関係する新しいスキルを少しずつ学んでみる、などの行動が考えられます。

場面2 子どもが言うことを聞かない

中学生の子どもに「宿題をしなさい」と何度言っても、反発してやろうとしない。

場面2の解説

子どもは、「自由」(自分で決めたい)の欲求を満たそうとしているのかもしれません。「何時から始めるか、自分で決めていいよ」と、選ぶ余地を渡してみましょう。親自身の「力」(言うことを聞かせたい)の欲求にも気づき、命令ではなく相談の形で話すことがポイントです。

⑦確認してみよう

ここまでの内容を、3つの問題で確認してみましょう。答えを考えてから、正解と解説を開いてください。

問題1

「人に認められたい、何かを達成したい」という欲求は、5つのうちどれでしょうか。

ア 自由

イ 力

ウ 楽しみ

問題1の正解と解説

正解はイ(力)です。力の欲求は、認められたい、達成したい、自分に価値があると感じたい、という欲求です。

問題2

「自分で選びたい、束縛されたくない」という欲求は、5つのうちどれでしょうか。

ア 自由

イ 生存

ウ 愛・所属

問題2の正解と解説

正解はア(自由)です。自由の欲求は、自分で選び、自分のやり方で行動したいという欲求です。子どもが指示に反発するとき、この欲求が関わっていることがあります。

問題3

欲求を満たす方法を選ぶときのポイントとして、適切なものはどれでしょうか。

ア 自分の欲求のためなら、相手を見下してもよい

イ 他の人の欲求を妨げない方法を選ぶ

ウ 大きな行動から一気に始める

問題3の正解と解説

正解はイ(他の人の欲求を妨げない方法を選ぶ)です。他の人の欲求を妨げる方法は、長い目で見ると人間関係を壊してしまいます。人を傷つけない方法で、小さな行動から始めましょう。

⑧まとめ

5つの基本的欲求とは、生存、愛・所属、力、自由、楽しみの5つで、私たちの行動はすべて、これらを満たすために選ばれていると、選択理論では考えます。

今回のポイント

5つの欲求は誰にでもあるが、強さは人それぞれ

つらいときは、満たされていない欲求を探す

人を傷つけない方法で、小さな行動から満たす

相手の行動の背景にある欲求を想像する

シリーズの他のコラム

選択理論シリーズでは、基本の考え方から実践の手順までを解説しています。あわせてご覧ください。

選択理論とは|グラッサー提唱の心理学を解説

WDEPモデルとは|選択理論の実践手順、具体例も紹介

上質世界とは|選択理論の重要概念と具体例を解説

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Glasser, W. (1998). Choice theory: A new psychology of personal freedom. New York: HarperCollins.(柿谷 正期(訳)(2000). グラッサー博士の選択理論 アチーブメント出版)
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