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今ここ・気づき(awareness)とは

今ここ・気づきとは,ゲシュタルト療法

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。

このコラムは、ゲシュタルト療法シリーズの3本目です。「今ここ・気づき」をテーマに解説していきます。

今ここ・気づき(アウェアネス)とは、過去の後悔や未来の心配から離れ、「今、この瞬間に、自分の内側と外側で何が起きているか」にありのままに気づくことです。ゲシュタルト療法で最も大切にされている考え方で、すべての技法の土台になっています。

今回は、気づきの3つの領域と、日常で「今ここ」に戻るための具体的なワークを解説します。目次は以下の通りです。

目次

①今ここ・気づきとは

ゲシュタルト療法を始めたパールズは、「気づき」そのものに、心を癒す力があると考えました。まずは、その意味を確認しましょう。

気づき(アウェアネス)とは

気づきとは、今この瞬間に、自分が何を感じ、何を考え、何をしているのかに、そのまま気づいていることです[1]。良い・悪いと評価したり、理由を分析したりする前の、「今、こうなっている」という素直な気づきを大切にします。

「今ここ」とは

「今ここ」とは、過去でも未来でもなく、今この瞬間の、この場所での体験のことです。私たちは、気づくと、昨日の失敗を思い返したり、明日の予定を心配したりして、今ここから離れてしまいがちです。ゲシュタルト療法では、何度でも「今ここ」に戻ってくることを練習します。

②3つの気づきの領域

パールズは、気づきの対象を、内側・外側・中間の3つの領域に分けました。3つの領域を意識すると、自分の状態をより具体的に捉えられます。

内側の領域

体の感覚や感情など、自分の内側で起きていることです。

例:「肩に力が入っている」「お腹のあたりが重い」「少し不安を感じている」

外側の領域

五感を通して感じる、外の世界との接点です。

例:「エアコンの音が聞こえる」「窓から光が差し込んでいる」「手に持ったカップが温かい」

中間の領域

考えや想像、記憶、計画など、頭の中で起きていることです。

例:「明日の会議のことを考えている」「昨日言われた一言を思い出している」

中間の領域は、問題を解決したり計画を立てたりするのに役立ちます。ただ、ここに入り込みすぎると、内側や外側の今ここの体験に気づけなくなってしまいます。

③なぜ今ここが大切か

ゲシュタルト療法やマインドフルネスなど、多くの心理療法で「今ここ」が大切にされています。その理由を見てみましょう。

悩みは過去と未来から生まれる

私たちの悩みの多くは、「あのとき、こうすればよかった」という過去への後悔や、「この先どうなるだろう」という未来への不安から生まれます。一方、今この瞬間だけに注意を向けると、「少し寒いな」「お茶がおいしいな」というように、悩みは意外と小さくなることが多いものです。

今ここはベースキャンプ

過去や未来を考えてはいけない、ということではありません。振り返りや計画は大切です。ゲシュタルト療法では、「今ここ」を登山のベースキャンプのように考えます。過去や未来に思いを巡らせても、いつでも今ここに戻ってきて、落ち着きを取り戻せる。そんな足場を持つことが大切なのです。

気づくと選べるようになる

パールズ[2]は、気づきが深まることで、人は自分の行動に責任を持ち、自分で選べるようになると考えました。「今、自分はイライラして、早口になっている」と気づけば、「ゆっくり話そう」と選ぶことができます。気づかないままでは、いつものパターンをくり返すしかありません。

④気づきを高めるワーク

ここでは、今ここへの気づきを高めるための3つのワークを紹介します。1回5分ほどで、どこでも取り組めます。

「今、私は気づいている」

ゲシュタルト療法で使われる、代表的な練習です。「今、私は〜に気づいています」という文を、思いつくままに声に出して(または心の中で)くり返します。

「今、私は、時計の音に気づいています」

「今、私は、肩が少しこっていることに気づいています」

「今、私は、早く終わらないかなと考えていることに気づいています」

内側・外側・中間のどの領域の気づきか、意識しながら行うと、自分がどの領域に偏りやすいかが分かってきます。

五感を順番にたどる

見えるものを5つ、聞こえるものを4つ、触れている感覚を3つ、においを2つ、味を1つ、順番に心の中で挙げていきます。外側の領域に注意を向けることで、頭の中の考えごとから離れ、今ここに戻ってきやすくなります。

体の感覚に名前をつける

目を閉じて、頭のてっぺんから足先まで、ゆっくり注意を移していきます。感覚が見つかったら、「温かい」「重い」「ちくちくする」など、短い言葉で名前をつけます。感覚を変えようとせず、ただ気づくことがポイントです。

⑤言葉を変えてみる

ゲシュタルト療法では、ふだん使っている言葉を少し変えることで、自分の気持ちや選択に気づきやすくする工夫をします。

「できない」を「しない」に

「早起きできない」を「早起きしない」と言い換えてみます。すると、「実は、夜更かしを選んでいるのかもしれない」と、自分で選んでいる部分に気づくことがあります。自分を責めるためではなく、自分の選択に気づくための練習です。

「でも」を「そして」に

「挑戦したい、でも怖い」を「挑戦したい、そして怖い」と言い換えます。「でも」は片方の気持ちを打ち消してしまいますが、「そして」にすると、両方の気持ちが自分の中にあることを、そのまま認めることができます。

「それ」を「私」に

「それはつらいよね」と言う代わりに、「私はつらい」と、自分を主語にして言ってみます。気持ちを自分のものとして言葉にすると、気持ちとの距離が近づき、より素直に感じられるようになります。

⑥日常での活かし方

今ここへの気づきは、特別な時間をとらなくても、日常のさまざまな場面で練習できます。

悩みが止まらないとき

同じ悩みを何度も考えてしまうときは、「今、私は、〜について考え続けていることに気づいています」と言葉にしてみます。そのうえで、五感のワークで外側の領域に注意を戻すと、悩みの渦から少し抜け出しやすくなります。

人と話しているとき

会話中に、相手の話を聞きながら次に何を言おうか考えていることがあります。そんなときは、相手の声のトーンや表情など、今ここで起きていることに注意を戻してみましょう。相手の気持ちに気づきやすくなり、会話も深まります。

⑦取り組むときの注意

気づきのワークは、多くの人が安全に取り組める方法ですが、次の点に気をつけましょう。

評価しないことを大切に

気づいた気持ちや考えを、「こんなことを感じてはいけない」と評価する必要はありません。どんな気づきも、「今、こうなっている」と受け止めることが大切です。

つらくなったら外側へ

体の内側に注意を向けると、かえって不安が強まったり、つらい記憶がよみがえったりすることがあります。そのときは、目を開けて、見えるものや聞こえる音など、外側の領域に注意を移しましょう。つらさが続く場合は、専門家に相談してください。

⑧まとめ

今ここ・気づきとは、過去や未来から離れ、今この瞬間の自分の内側と外側で起きていることに、ありのままに気づくことです。気づきが深まると、いつものパターンから離れ、自分で行動を選べるようになります。

今回のポイント

気づきには内側・外側・中間の3つの領域がある

今ここは、いつでも戻れるベースキャンプ

「今、私は〜に気づいています」と言葉にする

「できない」を「しない」、「でも」を「そして」に

「今ここ」の感覚を育てる方法は、マインドフルネスの基礎でも解説しています。あわせてご覧ください。

シリーズの他のコラム

ゲシュタルト療法シリーズでは、基本の考え方から具体的な技法までを解説しています。あわせてご覧ください。

ゲシュタルト療法とは|今ここへの気づきを解説

エンプティチェア技法とは|ゲシュタルト療法

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Perls, F. S., Hefferline, R. F., & Goodman, P. (1951). Gestalt therapy: Excitement and growth in the human personality. New York: Julian Press.
 
[2] Perls, F. S. (1969). Gestalt therapy verbatim. Lafayette, CA: Real People Press.
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