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動機づけ面接

動機づけ面接とは,MIの基礎と具体例を解説

動機づけ面接(MI:Motivational Interviewing)とは、「変わりたいけれど、変わりたくない」という迷いを抱えた人と協力しながら、その人自身の中にある変わる理由や意欲を引き出し、強めていく会話の方法です。相手を説得したり指示したりするのではなく、本人が自分の言葉で変化を語れるよう支えるのが特徴です。

みなさん、こんにちは。公認心理師、精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。当コラムのテーマは「動機づけ面接(MI)」です。

「お酒を減らしたほうがいいのはわかっているけれど…」「運動しなきゃと思っているのに…」。わかっていても変われないとき、周りから強く言われるほど、かえって反発したくなるものです。当コラムはシリーズの1本目として、動機づけ面接の考え方と基本の進め方、日常での使い方を紹介します。目次は以下の通りです。

目次

①動機づけ面接とは

動機づけ面接は、行動を変えることに迷いがある人の、変わる意欲を引き出すための会話の方法です。

説得しない面接

動機づけ面接を提唱したミラーとロルニック[1]は、動機づけ面接を、本人自身の変わる動機と決意を強めるための、協働的な会話のスタイルだと説明しています。

援助する側が「こうすべきだ」と答えを与えるのではなく、本人がすでに持っている「変わりたい理由」を、会話の中で引き出していきます。人は、他人から言われたことよりも、自分で口にした理由によって動かされやすいと考えるからです。

「迷い」を出発点にする

動機づけ面接では、変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちが同時にある状態(両価性)を、自然なものとして受け止めます。迷っている人を「やる気がない」と決めつけるのではなく、その迷いを一緒に整理していくことから始めます。

②成り立ち

動機づけ面接は、アルコール問題の支援の中から生まれ、その後、幅広い分野に広がりました。

アルコール問題の支援から

アメリカの臨床心理学者ウィリアム・ミラーは、1980年代初めに、飲酒の問題を抱える人への面接の方法として、動機づけ面接の考え方を発表しました。その後、イギリスを拠点に活動する臨床心理学者ステファン・ロルニックとともに体系化し、1991年に最初の解説書を出版しました。

さまざまな分野への広がり

現在、動機づけ面接は、飲酒や喫煙、薬物などの依存の問題だけでなく、生活習慣病の予防、服薬の継続、医療や福祉、司法、教育などの幅広い場面で使われています。来談者中心療法の共感的な聴き方を土台にしながら、変化の方向に会話を進める点が特徴です。

③MIのスピリット

動機づけ面接では、技法の前に、相手と向き合う姿勢(スピリット)を大切にします。

4つの姿勢

協働:援助者と本人は対等なパートナーとして、一緒に考える

受容:本人の価値や自律性(自分で決める権利)を尊重し、ありのままを受け止める

思いやり:本人の幸せや利益を第一に考える

喚起:答えは本人の中にあると考え、それを引き出す

「正したい反射」に気をつける

ミラーとロルニック[1]は、援助者が相手の問題を見ると、つい正しい方向へ直そうとして説得したくなる傾向を、「正したい反射」と呼びました。

しかし、迷っている人に「やめるべきだ」と説得すると、本人は無意識に反対側の「やめなくてもいい理由」を話し始め、かえって今のままでいる気持ちが強まることがあります。動機づけ面接では、この反射を抑え、本人の言葉に耳を傾けることを重視します。

④4つのプロセス

動機づけ面接は、次の4つのプロセスを行き来しながら進みます。

関わる・焦点化・引き出す・計画する

関わる:信頼関係を築き、本人が安心して話せる関係をつくる

焦点化:何について話し合うのか、変化の方向を一緒に定める

引き出す:変わりたい理由や意欲を、本人の言葉で引き出す

計画する:変わる決意が固まってきたら、具体的な計画を一緒に立てる

順番より行き来が大切

4つのプロセスは、階段のように一つずつ進むものではありません。計画の途中で迷いが出てきたら、引き出す段階に戻ることもあります。土台になるのは、いつでも「関わる」ことです。関係が崩れそうになったら、まず関係づくりに立ち返ります。

⑤基本スキルOARS

動機づけ面接の会話を支えるのが、OARSと呼ばれる4つの基本スキルです。

4つのスキル

O(開かれた質問):「はい・いいえ」で終わらない質問をする

A(是認):本人の強みや努力を認めて伝える

R(聞き返し):本人の言葉の意味をくみ取って返す

S(要約):話の内容をまとめて伝え返す

聞き返しを中心にする

4つの中でも、動機づけ面接で特に大切にされるのが聞き返しです。質問ばかりを重ねると、本人は尋問されているように感じやすくなります。聞き返しを多めにすることで、本人は自分の考えを深めやすくなります。詳しくは、OARS技法とはで解説しています。

⑥両価性とチェンジトーク

動機づけ面接の中心にあるのが、両価性とチェンジトークという2つの考え方です。

両価性とは

「健康のためにお酒を減らしたい。でも、仕事の後の一杯は楽しみだ」。このように、変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちが同時にある状態を、両価性と呼びます。両価性は、変化の途中にいる人にとって自然な状態です。詳しくは、両価性とはで解説しています。

チェンジトークとは

本人が口にする「変わりたい」「変われそう」「変わる理由がある」といった、変化に向かう発言をチェンジトークと呼びます。動機づけ面接では、チェンジトークに気づき、それを引き出し、強めていくことを目指します。詳しくは、チェンジトークの引き出し方で解説しています。

⑦効果と研究

動機づけ面接は、多くの研究で効果が調べられています。

119の研究のメタ分析

119の研究をまとめたメタ分析[2]では、飲酒、喫煙、薬物、運動や食事などの健康行動、ギャンブル、治療への参加などを対象に、動機づけ面接の効果が調べられました。その結果、何もしない場合や待機などの比較群に比べると、動機づけ面接には小さいながらも統計的に意味があり、長続きする効果が見られました。

他の治療との比較

一方、同じメタ分析[2]では、他の特定の治療と比べた場合、効果に大きな差は見られませんでした。動機づけ面接は、他の方法より特別に優れているというより、他の確立した方法と同じくらいの効果が期待できる方法だと考えられます。また、行動を変える前の「やる気を高める段階」で、他の治療と組み合わせて使われることも多くあります。

⑧日常で使ってみよう

動機づけ面接の考え方は、家族や職場での会話にも活かせます。

家族の健康が心配なとき

説得する言い方:「タバコは体に悪いんだから、やめなきゃだめだよ」

動機づけ面接の考え方:「タバコについて、自分ではどう思っているの?」(開かれた質問)

相手:「まあ、体に悪いのはわかってるけど、吸うと落ち着くんだよね」

聞き返し:「落ち着くためにも吸っている。でも、体に悪いことも気になっているんだね」

最後の聞き返しでは、変わりたくない理由と変わりたい理由の両方を返し、変わりたい理由(体に悪いことが気になる)を後に置いています。こうすると、本人は変化の側について話を続けやすくなります。

部下のやる気を引き出したいとき

「もっと主体的に動いてほしい」と伝える代わりに、「この仕事で、あなたが大事にしたいことは何ですか」と尋ねてみましょう。本人が語った理由をもとに、「では、次の一歩として何ができそうですか」と、本人に決めてもらいます。変わると決めたあとの具体的な解決策の立て方は、問題解決療法とはで紹介しています。

子どもが勉強に向かわないとき

「勉強しなさい」とくり返す代わりに、「勉強について、自分ではどう思っている?」と尋ねてみます。「やらなきゃとは思うけど、つまらない」と返ってきたら、「つまらないけど、やらなきゃとも思っているんだね」と聞き返します。「どうしてやらなきゃと思うの?」と続けると、子どもが自分なりの理由(行きたい高校がある、など)を語り始めることがあります。

⑨自分の迷いに使ってみよう

動機づけ面接の考え方は、自分自身の迷いを整理するときにも役立ちます。

迷いを両方の言葉で書く

変えたいと思っている習慣を1つ選び、「〜したくない気持ちもある。でも、〜したい気持ちもある」という形で、迷いを一文に書いてみます。例えば、「夜のスマートフォンをやめたくない気持ちもある。でも、朝すっきり起きたい気持ちもある」です。自分に聞き返しをするつもりで、変わりたい気持ちを後ろに置くのがコツです。

自分の言葉で決める

「〜しなければ」と自分を責める代わりに、「自分は〜したい。なぜなら〜だから」と、自分の言葉で書いてみます。最後に、今週できる小さな一歩を1つ決めましょう。点数を使った迷いの整理の仕方は、両価性とはでも詳しく紹介しています。

⑩注意

動機づけ面接を学ぶうえで、気をつけたい点をまとめます。

相手を操作する道具ではない

動機づけ面接は、相手をこちらの思い通りに動かすためのテクニックではありません。本人が変わらないことを選ぶ自由も尊重します。相手を操作しようとする気持ちで使うと、相手はそれを感じ取り、信頼関係が損なわれます。

依存の問題があるときは

お酒やギャンブル、薬物などがやめられず、生活や健康に影響が出ている場合は、依存症の可能性があります。本人や家族だけで抱え込まず、お住まいの地域の精神保健福祉センターや、依存症の専門医療機関に相談しましょう。家族だけで相談することもできます。

⑪確認してみよう

ここまでの内容を、3つの問題で確認してみましょう。答えを考えてから、正解と解説を開いてください。

問題1

動機づけ面接でいう「両価性」の説明として、最も適切なものはどれでしょうか。

ア 変わる気持ちがまったくない状態

イ 変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちが同時にある、自然な状態

ウ 意志が弱いために起きる、性格の問題

問題1の正解と解説

正解はイ(変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちが同時にある、自然な状態)です。両価性は、変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちが同時にある状態で、変化の途中にいる人にとって自然なものです。動機づけ面接では、迷いを責めるのではなく、出発点として受け止めます。

問題2

迷っている人を「正したい反射」に従って強く説得すると、どうなりやすいでしょうか。

ア 本人の変わる気持ちが、すぐに強まる

イ 本人が反対側の「変わらなくてもいい理由」を話し始め、今のままでいる気持ちが強まりやすい

ウ 説得の影響は、特にない

問題2の正解と解説

正解はイ(本人が反対側の「変わらなくてもいい理由」を話し始め、今のままでいる気持ちが強まりやすい)です。迷っている人は、強く説得されると、無意識に反対側の理由を口にしやすくなります。人は自分で口にした理由に動かされやすいため、説得がかえって現状維持を強めることがあります。

問題3

動機づけ面接で、相手への共感を示す方法として、最も適切なものはどれでしょうか。

ア 「その考えは間違っていますよ」と指摘する

イ 相手の言葉の意味をくみ取って聞き返し、理解したことを伝える

ウ 自分の似た体験を詳しく話す

問題3の正解と解説

正解はイ(相手の言葉の意味をくみ取って聞き返し、理解したことを伝える)です。動機づけ面接では、相手の言葉を聞き返して、理解したことを伝えることを重視します。聞き返しは共感を示すと同時に、本人が自分の考えを深める助けにもなります。

⑫まとめ

動機づけ面接は、説得や指示ではなく、協働的な会話を通して、本人の中にある変わる理由と意欲を引き出し、強めていく方法です。

今回のポイント

変わりたい気持ちと変わりたくない気持ち(両価性)は自然なもの

「正したい反射」を抑え、本人の言葉を引き出す

協働・受容・思いやり・喚起の姿勢と、OARSのスキルを使う

効果は小さいながら確認され、他の治療と組み合わせて使われる

シリーズの他のコラム

動機づけ面接シリーズでは、チェンジトーク、OARS技法、両価性について、次のコラムで詳しく解説しています。

チェンジトークとは|引き出し方と具体例を解説

OARS技法とは|動機づけ面接の基本スキル

両価性とは|変わりたいけど変われない心理

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監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Miller, W. R., & Rollnick, S. (2013). Motivational interviewing: Helping people change (3rd ed.). New York: Guilford Press.(原井 宏明・岡嶋 美代・山田 英治・黒澤 麻美(訳)(2019). 動機づけ面接〈第3版〉上・下 星和書店)
 
[2] Lundahl, B. W., Kunz, C., Brownell, C., Tollefson, D., & Burke, B. L. (2010). A meta-analysis of motivational interviewing: Twenty-five years of empirical studies. Research on Social Work Practice, 20(2), 137-160.
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