みなさんこんにちは。公認心理師,精神保健福祉士の川島達史と申します。私は現在、こちらの初学者向け心理学講座で講師をしています。
このコラムは、ポジティブ心理学シリーズの2本目です。今回は、「PERMA理論」をテーマに解説していきます。
PERMA理論とは、ポジティブ心理学の提唱者セリグマン[1]が示した、ウェルビーイング(持続的な幸福)を構成する5つの要素の理論です。ポジティブ感情、エンゲージメント、よい人間関係、意味、達成の英語の頭文字から、PERMA(パーマ)と呼ばれます。
目次は以下の通りです。
①PERMA理論とは
PERMA理論は、「幸せとは何か」を、5つの具体的な要素に分けて考える理論です。まずは5つの要素の全体像と、理論が生まれた経緯を確認しましょう。
5つの要素の全体像
P:ポジティブ感情(喜び・感謝など)
E:エンゲージメント(没頭する)
R:よい人間関係
M:人生の意味
A:達成(やりとげる)
セリグマンは、5つの要素には共通して、それ自体を求める価値があること、それぞれ単独で測れることなどの特徴があると説明しています。5つのどれか1つだけで幸せが決まるのではなく、いくつもの道筋から幸せに近づけるという考え方です。
生まれた経緯
セリグマンは、2002年の著書では、幸福を「楽しい人生」「夢中になる人生」「意味のある人生」の3つに分けて説明していました。しかし、この考え方では「気分のよさ」に重点が置かれすぎていると考えるようになります。
そこで2011年の著書『Flourish(ポジティブ心理学の挑戦)』[1]で、よい人間関係と達成を加えた5つの要素からなるPERMA理論を示しました。基本となるポジティブ心理学の考え方は、ポジティブ心理学とはのコラムで解説しています。
②P:ポジティブ感情
1つ目の要素は、喜び、感謝、安らぎ、希望、愛情などの「ポジティブ感情」です。心地よい感情を日常の中で感じることは、心だけでなく、体の健康とも関係していると考えられています。
体の健康との関係
コーエンら(2003)[2]は、健康な成人334名を対象に、ふだんの感情の傾向を調べたうえで、風邪のウイルスを含む点鼻薬を使い、その後の発症を調べました。その結果、ポジティブな感情を感じやすい人ほど、風邪を発症しにくい傾向が見られました。
一方、ネガティブな感情の傾向は、発症のしやすさと関係していませんでした。

研究者たちは、この関係は生活習慣やホルモンの違いでは説明できなかったと報告しています。ただし、ポジティブな感情が風邪を防ぐ直接の原因であると証明されたわけではありません。
ポジティブ感情を増やす練習
1日の終わりに、良かったことを3つ書く
お世話になった人に感謝を伝える
好きな音楽や景色を味わう時間をとる
「3つの良いこと」の詳しいやり方は、ポジティブ心理学とはのコラムで紹介しています。
③E:エンゲージメント
2つ目の要素は、時間を忘れるほど何かに没頭する「エンゲージメント」です。仕事でも趣味でも、夢中になれる活動を持つことが、充実感につながると考えられています。
フローとの関係
エンゲージメントは、心理学者チクセントミハイが研究した「フロー」と深く関係しています。フローとは、目の前の活動に完全に集中し、時間の感覚がなくなるような状態のことです。
フローは、自分の能力と課題の難しさがちょうどよく釣り合っているときに起こりやすいとされます。詳しくはフロー心理学のコラムで解説しています。
エンゲージメントを高める練習
夢中になれた経験を書き出してみる
少し難しい目標を設定して取り組む
通知を切り、1つの作業に集中する
自分の強みを活かせる活動ほど、エンゲージメントを感じやすいともいわれます。自分の強みについては、VIA強み診断のコラムも参考にしてください。
④R:よい人間関係
3つ目の要素は、家族、友人、同僚などとの「よい人間関係」です。セリグマンは、人生で楽しかった瞬間の多くは、ほかの人と一緒にいるときだと述べています。
幸福感との関係
ディーナーとセリグマン(2002)[3]は、大学生222名の中で、とても幸福感が高い上位10%の学生の特徴を調べました。その結果、とても幸福な学生は、ほかの学生に比べて、友人や恋人、家族とのつながりが豊かだったことが報告されています。
ただし、よい人間関係があれば必ず幸せになれるというわけではありません。研究者たちは、よい人間関係は幸福の「必要条件」に近いものだと考えています。
関係を育てる練習
相手のよい知らせに、心から一緒に喜ぶ
感謝の気持ちを言葉にして伝える
相手の話を最後までじっくり聴く
友人の数を増やすことより、今ある関係の質を高めることが大切です。信頼できる人が1人か2人いるだけでも、大きな心の支えになります。
⑤M:人生の意味を感じる
4つ目の要素は、自分よりも大きな何かに役立っているという感覚、つまり「人生の意味」です。家族、地域、仕事、信念など、自分が大切にしているものとのつながりが、意味の感覚を支えます。
意味を感じる場面
たとえば、誰かの役に立てたとき、後輩の成長を支えられたとき、大切な人のために力を尽くせたときなどに、人は「意味がある」と感じやすくなります。
楽しさとは違い、意味を感じる活動は、ときに大変さや苦労を伴うこともあります。それでも、振り返ったときに深い満足感をもたらすのが特徴です。
意味を見つける練習
心が動いた経験を5つ書き出す
共通する「大切にしている価値」を探す
その価値に沿った行動を1つ決める
人生の意味は、すぐに答えが見つかるものではありません。迷いながら探し続けること自体が、意味のある人生の一部だと考えてみてください。
⑥A:目標を達成する力
5つ目の要素は、目標に向かって取り組み、それをやりとげる「達成」です。大きな成功だけでなく、自分なりの小さな目標を達成することも含まれます。
達成と自信
目標を立てて一つひとつやりとげていくと、「自分にもできる」という感覚が育っていきます。この感覚が、次の挑戦への意欲につながります。
セリグマンは、達成そのものを目的として追い求める人もいると述べています。ほかの4つの要素と違い、必ずしも楽しさや人とのつながりを伴わなくても、達成は幸福の一部になりうるという考え方です。
達成を積み重ねる練習
大きな目標を小さな段階に分ける
今週やることを1つだけ決める
できたことを記録して振り返る
目標は、他人と比べるためのものではなく、自分にとって意味のあるものを選ぶことが大切です。達成にこだわりすぎて疲れてしまわないよう、休むことも計画に入れましょう。
⑦測り方と理論の限界
PERMA理論は、ウェルビーイングを測るための質問紙も作られ、世界中で研究に使われています。一方で、理論に対する批判的な研究もあります。
両方の面を知っておきましょう。
PERMAを測る質問紙
バトラーとカーン(2016)[4]は、5つの要素をそれぞれ測る質問紙「PERMAプロファイラー」を作成しました。この質問紙を使うと、自分がどの要素で満たされていて、どの要素が足りていないかを整理することができます。
理論への批判
グッドマンら(2018)[5]は、PERMAで測ったウェルビーイングと、従来の主観的ウェルビーイング(幸福感や人生の満足度)を比べました。その結果、両者は非常に強く重なっており、PERMAが本当に新しいものを測っているのかには疑問があると指摘しています。
PERMA理論は、幸せを考えるための分かりやすい「地図」として役立ちますが、幸せのすべてを説明できる完全な理論というわけではありません。
⑧よくある質問Q&A
私たちは普段カウンセリングや、教室で以下のような質問を頂きます。回答例も参考にしてみてください。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した内容は、「ダイコミュ」のコミュニケーション教室で、仲間と実践しながら学ぶことができます。学べる内容は以下のとおりです。
ポジティブ心理学の基礎
強みを見つけるワーク
はじめての心理療法
前向きになれる認知行動療法
講師に質問をしたり、仲間と相談しながら進めていくと、理解しやすくなります。まずは体験受講からお試しください。筆者も講師をしています(^^)
個別レッスン
個別にじっくり学びたい方は、マンツーマンでのレッスンも可能です。オンラインで学べるので全国どこからでもご相談いただけます。講師は国家資格を持つ公認心理師です。ご自身のペースでポジティブ心理学を深めたい方は、下記をご参照ください。
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PERMAのエンゲージメントや達成を高めるうえで役立つ、自分の強みの見つけ方と活かし方を知りたい方は、こちらのコラムがおすすめです。
ポジティブ心理学の全体像や、3つの良いことの練習について知りたい方は、シリーズ1本目のコラムをご覧ください。
他にも数多くの心理療法があります。ご自身の興味やお悩みに合った理論をじっくり探したい方は、一覧から選んでみてください。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連




